『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン

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7章 救世主冬将軍

7-3 ゴーシャ貧民街

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 貧民街ひんみんがいと呼ばれている貴族街の東ハズレのエリアは、わらの屋根の木造もくぞうの家々が目立ち、むき出しの土の道沿いにある木のかこいでは、はたけ仕事に精を出す農民や、はないにされているブタたちがいます。人々の着ているものは、貴族街の人々のそれとはことなり、つぎはぎのぼろの服が目立ちます。

「わぁ、貴族街とは全然、雰囲気がちがうね」
貧富ひんぷの差がはげしいんですね、ゴーシャ国は」
「あの豊かさにありつけない人たちもいるんだな・・・」

「あたしの家はこっちよ」レナはエルニスたちを北西の粗末そまつな家に案内します。
 家の中には、同じくぼろの服を着た男女が住んでいました。
「パパ、ママ、お客さんよ」レナは両親にエルニスたちを紹介しました。

「そうですか、貴族街では娘がお世話になりました」レナの母がロレンスにお礼を言いました。
「いいえ、これも職務しょくむですから・・・!」
「それで、あなたたちはなぜこの国に来たのですか?」

「ぼくたちは、世界征服を企む魔王軍に立ち向かうために、4つの神器と船を探しています。残る神器は北のラップランドにあるらしいんですよ」エルニスが言いました。

「それはおそらく、冬将軍が持っている『聖者の杖』の事かもしれませんね」
「だったら、ヤツを倒して手に入れるしかないな・・・!」
ロレンスが指を鳴らして言うと、レナがうったえました。

「えっ!?おにいちゃんたち、冬将軍を倒しちゃうの!?おねがい、やめて!」
「なぜだ?ヤツは金品をドロボーする悪いヤツだぞ!」レナの父は首をよこにふります。
「とんでもない!冬将軍さんは偉大いだいな方です!むしろ、王侯おうこう貴族きぞくの方が悪いヤツらです!」
「だって・・・それは・・・!?」ロレンスが戸惑っていると、レナの父は話始めました。

「この町での生活はまずしく、明日に希望きぼうが持てないんです。なぜならこの国は税金ぜいきんが重く、いくらはたらいても生活が楽になりません。王侯貴族のやつらは、同じく人間の私たちをゴミみたいに扱(あつか)います。それに毎月、ムチを持った役人やくにんがやって来て、税の取り立てをしてきて、はらえない場合はムチで百たたきにされ、場合によっては牢屋ろうやおくりになってしまうんです。

 そんな明日が見えない生活をくり返してきたある日、ゴーシャに冬将軍メガロがひきいる『海賊団シルト』がやって来て、子供でさえムチでたたこうとする役人を逆にたたきのめしてくれ、貴族街から奪ってきた金品を私たちにめぐんでくれました」レナの母も言います。

「私たちだけではありません、ひもじくて貴族街からパンを盗んでしまった男の子をつかまえようとした追っ手たちの前に、氷の魔法で壁を作って男の子を逃がしてあげました。

 ある親子は、冬将軍が持ってきてくれた金貨きんかのおかげで、子供のためのくすりを買ってあげられました。でなかったら、その子は死んでいたでしょう」それを聞いたエルニスたちはおどろきます。

「確かに、この国の貴族たちの偉そうな態度たいどを見たら、その話はウソじゃなさそうだ」
「冬将軍がめぐまれない人たちにとっての英雄えいゆうなのは、本当みたいですね」
「この国は、そこまでひどかったのか・・・!?」

「そうなんです、冬将軍がいなくなったら、私たちはどうすればいいのかわかりません・・・」

 家を出ると、エルニスたちはこれからの事を相談しました。
「確かに、この町のありさまはひどいですけど・・・」
「同情するけどよ、このままにはしておけねぇぞ・・・!」これにエルニスが言いました。

「よし、冬将軍に会って話してみよう!そして、いっしょに来てもらって王様にこう言うんだ!「賞金しょうきんはいらないから、冬将軍を許し、貧しい人たちを助けて」と!」これに一同は賛成さんせいし、北の港を目指します。

「それにしても、冬将軍って『メガロ』って名前だったんだな、なんだかヤバそうだ・・・!」
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