『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

7章 救世主冬将軍

7-9 フレイヤの懺悔

　ゆっくりと起き上がったメガロは人の姿に戻りました。
「お前たちの力と覚悟を見せてもらった・・・！なら、お前たちに従したがおう！」
「ありがとう」その直後、何者かが階段を下りてくる足音が聞こえてきました。

「あら、シルトは弱っているみたいね、助かったわ」エルニスたちが声のした方を振り向くと、フレイヤとレイドが立っていたのです。
「姉さん！？」
「レイドの野郎！」エルニスたちは身構えます。

「シルト、今までさんざん手こずらせてくれたわね・・・！魔王アガレス様の命により、貴様を倒す！」
「待って！」さらに階段の方から声がして振り向くと、フレイヤは口をあんぐりと開けてハッとします。

「父さん・・・母さん・・・！どうしてここにいるの！？」
降りてきたのは、ローブを着た赤毛の男性と、ケープを羽織った赤毛のボブヘアーの女性だったのです。

「私たちはあの後、人売りの船に乗せられたが、ラップランドの近海を航海していたメガロさんが人売りたちを叩きのめし、私たちをかくまってくれたのだ・・・！」
「町中で偶然ぐうぜん、あなたを見かけて追いかけてきたの・・・！」

「そ・・・そんな・・・！」フレイヤは目から大粒の涙を流し、うなだれました。

「私は・・・大切なものを奪うばってきた者たちに復讐ふくしゅうするために戦ってきた・・・！でも・・・その大切なものが戻ってきた・・・！じゃあ、私のしてきたことは・・・なんだったの・・・！？」

「フレイヤ！何をしている！？お前がやらないのなら、おれがやる！」レイドは剣をかまえてメガロに向かっていくと、レイドの背中にフレイヤの炎の魔法が爆発しました。

「貴様・・・！裏切るのか！？魔王軍に歯向かう者は・・・死あるのみ！」レイドが剣をフレイヤに向けなおすと、なんとメガロがフレイヤをかばい、杖の一振りで剣をはじき落としました。
「くっ！覚えていろ！」レイドは尻尾を巻いて逃げていきます。

「どうして、私をかばったの！？あなたを・・・殺そうとしたのに・・・！？」フレイヤは泣き声でメガロに聞きました。

「お前もおれをかばっただろ？情けには情けで応こたえるのが礼儀れいぎというもの・・・！」

「・・・私は・・・どうしたらいいの・・・もう・・・戦う理由が・・・ない・・・！」
これにキャンベルがフレイヤの手を取って言いました。

「姉さん、これからは復讐ふくしゅうのためでなく、償つぐないのために、正義のために力を尽つくしてください！」それを聞いたフレイヤはハッとします。

「キャンベル・・・あなた・・・こんな私を姉さんって呼んでくれるの！？」キャンベルは微笑ほほえみながらうなずきます。
「もちろんです！」

　これにフレイヤは、さらに涙をあふれさせてキャンベルを抱きしめると、二人の両親はじっとその場を見守りました。