罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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二章 三者三様

賑やかな朝のひととき

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「ふぁ……あ……!」

 翌朝——朝の五時。
 眠い目をこすりながらベッドから起きた僕は、弁当を作るために一階へと降りた。
 すると、すでにキッチンには真奈美さんの姿があった。

「真奈美さん……?」

「あら……?彼方くんおはよう、早いのね」

「おはようございます、いつも僕が自分と父さんの弁当作ってたので……」

「なるほどね、でもこれからは私が作るから彼方くんはもう少し寝てていいのよ?」

「いえ、折角なので僕も手伝います」

「そう……?ならお願いしようかしら……?」

「任せてください!」

「ならお弁当の方はだいたい出来てるから彼方くんには朝ごはんをお願いしようかしら」

「どういうのがいいですか?」

「それは彼方くんに任せるわ。好きに作ってちょうだい」

 真奈美さんは笑顔でそう言った。
 僕はキッチンへと立つと朝食のメニューを考える……。

(何でもいいと言ってたけど……何にしようかな……)

 冷蔵庫の中にある食材を思い起こしながら朝食の献立を考える……。

 確か鮭があったな……あとはウインナーに目玉焼き……?

「あの、真奈美さん。亜希と由奈ちゃんは朝ってご飯派ですか?それともパン派?」

「二人ともご飯だけど……あらあら……?彼方くん、いつの間に亜希ちゃんを下の名前で呼ぶようになったのかしら~?」  

 真奈美さんはニヤニヤしながら僕を見つめてくる。

「えっと……その……昨日亜希から下の名前で呼び合おうって提案を受けて……」

「あらあら、まあまあ~……。それは私としてはうれしい限りだわ!ついでと言ったらなんだけど私のことも"お母さん"って呼んでくれてもいいのよ!あと、敬語も使わないでくれたらもっと嬉しいわ」

「あは……あははは……、それは追々……」

 僕は真奈美さんに苦笑しながら朝食を作った。


 朝食を作り終えた頃、階段から誰かが降りてくる足音が聞こえてきた。
 亜希か由奈ちゃんが起きてきたのかもしれない。

「ふぁ……、おかあさん、おはよぅ~……」

 僕はリビングの入り口へと眼をやるとお腹を掻きながら眠そうに欠伸を噛み殺している亜希の姿があった。

 Tシャツの裾からちらりと見えた亜希のお腹に、僕は思わずドキッとしてしまう。  
 ……いや、見たくて見たわけじゃないけど!

「もぅ~、彼方くんがいるのに亜希ちゃんだらしないわよ!」

「ふぇ……?」

 まだ眠そうな顔の亜希が僕と目が合うとみるみるうちに顔が真っ赤になっていくのがわかる……。

「あは……あははは……おはよう……」

「き……きゃあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー……っ!!」

 そして悲鳴をあげると亜希は再び二階へと戻ってしまった……。

「ごめんね彼方くん、亜希ちゃんだらしない子で……」

「い……いえ……」

 何ていうか……学園では完璧女子として振る舞っているだけにそのギャップに思わず苦笑する。

 でも……なんか親しみは湧くかな……。


 亜希が二階に戻ると今度は入れ替わるように軽快な様子で階段を降りてくる足音が聞こえてくる。

(亜希が着替えてきたのかな……?)

 そう思いながら出来上がった朝食をテーブルへと並べていると不意に僕の背中へと誰かが抱きついてきた。

「お兄ちゃん、おはよ~♡」

「ちょ……!由奈ちゃん……っ!?」

 なんと抱きついてきたのはパジャマ姿の由奈ちゃんだった!

「あ~、良かった……。あたし、朝起きたら昨日のこと全部夢だったらどうしようって思ってたけど現実で良かった」

「あ……あの……由奈ちゃん……っ!?」

 由奈ちゃんはそう言いながら僕へとしがみつく。

 いや、それ自体はいいんだけど……その……背中に二つの柔らかな膨らみが当たってですね……!
 耐えろ……!僕の理性……っ!

「もう~、由奈ちゃん彼方くんが困ってるでしょ?早く離れなさい」

「えぇ~いいじゃない、家族のスキンシップだよ。ね~お兄ちゃん♡」

「あは……あははは……」

 もう乾いた笑いしか出ない……。

 しかも由奈ちゃんの体が揺れる度に僕の背中に押し付けられておる柔らかな膨らみもまたムニムニと動くわけで否が応にも男として反応してしまう。
 沈まれ……沈まれ僕の心……!

「あーーー……っ!」

 と、その時リビングの入り口から声が聞こえたため僕は振り返るとそこには制服へと着替え、僕へと指をさしてワナワナと震えている亜希の姿があった。

「あ、お姉ちゃんおはよう、お姉ちゃんもお兄ちゃんちゃんにぎゅ~ってする?」

「しないわよ!て言うか彼方……、朝から由奈に抱きつかれていい気になってるんじゃないでしょうね……?」

 亜希は冷ややかな目で僕を見ると昨日座っていた席へと座る。

「うぐ……!」

 一方の僕はというと、亜希の冷たい視線が突き刺ささり、精神的ダメージを受けた!

「なに?お姉ちゃん嫉妬?そう言えば昨日の夜、お姉ちゃん枕抱えてゴロゴロしてたよね~。あの時なんて言ってたっけ?ねぇ、お姉ちゃん♪」

「ちょ……!由奈っ!」

 由奈ちゃんはニヤニヤとした笑みを亜希へと浮かべると、対する亜希は顔を赤くしながらキッと由奈ちゃんを睨みつける。

 どうでもいいけど僕を挟んでケンカするのは止めて欲しい……。

「こら二人とも!そこでケンカしないのっ!彼方くんが困ってるでしょっ!?」

「はっはっは……っ!彼方は朝から大変だな」

 真奈美さんの一喝でようやく亜希と由奈ちゃんのケンカは終わり、いつの間にやって来たのか父さんは僕の様子を見ながら笑っていた。

 こうして、家族になって初めての朝は笑いと照れと、ちょっとした騒がしさで幕を開けた。
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