小さな村の弱い僕

しそみょうが

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8 『漢の部屋着セット』☆少しR18

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両想いになった僕達は、しばらくの間はディエゴの家に住むことになった。

ディエゴの父親のデレクおじさんは冒険者兼学者さんで、村には無い研究の素材を探し求めて家にいないことが多いからディエゴもおばさんも気付かなかったのだけれど、考えてみたらおじさんが前に家を出てから便りもないまま3年ほど帰っていなかったのだそうだ。

連絡が途絶える直前に妖精の里の近くにいたから、うっかり里に迷い込んで帰ってこれなくなったのだろうと、ディエゴのおばさんが妖精の里に詳しい村のお婆さんに助っ人を頼んで迎えに行った。おじさんとおばさんが帰ってきたら、僕とディエゴの結婚式を身内だけでささやかに開く予定になっている。

おばさん達が帰ってくるまでは完全に2人っきりの生活だ。ディエゴは昔から優しかったけれど、両想いになったら前以上に優しく甘い雰囲気になって、僕は毎日ドキドキしっぱなしだった。

だけどちょっと前からそんなディエゴの様子が急に変わってしまった。険しい顔をすることが多くなって、今日もリビングのソファに座って僕を見ていたかと思ったら、別の部屋に行ってしばらくしてから戻ってくるのを繰り返している。なんだかすごく落ち着かない様子だ。

「あの、ディエゴ」

「わりいルーイ、後にしてくれ」

僕が声をかけるのを遮るように返事して、ディエゴはまたリビングを出て行ってしまった。もしかして僕が何か怒らせるようなことをしてしまったのかも。

「謝らなくちゃ」

そう思っていたところにピンポーンと玄関の呼び鈴が鳴らされた。心配症のディエゴから、お客さんが来ても1人で玄関先に出ないように言われている。でも今のディエゴにお客さんの相手をする余裕はなさそうだから、僕が応対しなければ。

「はーい。どちら様ですか?」

玄関のドアを開けるとカッツェとセリヤの兄弟がいて、僕を見るなりすごく驚いた表情になる。

「ル、ルーイ⋯お前、その格好っ⋯」

「あ、これ?ちょっと前にディエゴから誕生日プレゼントに貰ったんだ」

僕が着ているのはミンネ婆さんの洋品店で昔から売られている『漢の部屋着セット』だ。

すごく丈夫で着心地が良くて、村の大人の男の人達のほとんど皆がこれを着ている。スタンピードの魔物の攻撃を受けてもちょっとくらいなら破れたり汚れたりしないらしくて、討伐のときに着て行く人もいるほどだ。

『漢の部屋着セット』は一人前の男の象徴みたいな感じで僕にはずっと憧れだった。僕の父さんも僕が子どものころは着ていたような気がするんだけど、ある日を境にパタリと着なくなってしまった。理由は訊いても教えてもらえなかった。

成人済の兄さん達は家の中で寝間着として着ていて、僕と違って男らしい兄さん達にはとても似合っていてかっこよかった。僕も成人を機に買いに行こうとしたら『アンタに合うサイズは無いから絶っっっっっ対にやめときな』と母さんにかなり強めに止められてしまった。

だからちょっと前の僕の誕生日になにか欲しい物はあるかとディエゴに訊かれて、真っ先に頭に浮かんだのがこれだった。今は母さんとは別の家に住んでいるから止められることはないし、ちょっとくらい大きくても1番小さいサイズなら着られるんじゃないかと思ったんだ。

僕のリクエストにディエゴは微妙な反応をしていたけれど、ちゃんと誕生日にプレゼントしてくれた。すごく嬉しかったし評判どおりに抜群の着心地で、気がついたらこればかり着ている。

「カッツェもセリヤもびっくりした顔してるけど⋯⋯僕、やっぱり似合ってないかな?」

洋品店で売られている中で1番小さいサイズは、やっぱり僕にはちょっとだけ大きかった。水色に白のストライプ柄の短パンはウエストをヒモで調節できるからずり落ちることなく着られるけど、白いタンクトップはぶかぶかで中で身体が泳いでいる感じだから、みっともなく見えるのかもしれない。

「いいや?ぜんぜん変じゃねーよルーイ!すっげえ似合ってる!」

「そうそう、似合いすぎてエッ⋯」

「えっ?何?」

その時ちょうど僕の後ろからやってきたディエゴがドア枠にバン!と手をついて、反対側の手でカッツェが持っていたカゴをひったくるようにして奪い取った。カゴには木の実が山盛りに入れられていたから、その勢いで何粒か玄関に落ちてしまう。

「この木の実、俺・の・恋・人・の・ルーイの大好物じゃねーか。ありがとなあ。礼に後日うちの畑で採れた野菜を持ってくわ。俺1人で」

「じゃあな!」とディエゴは乱暴にドアを閉めると、3つある鍵を物凄い速さで上から順にぜんぶ閉めていった。僕はディエゴが持っている木の実のカゴを受け取ってシューズボックスの上に置く。

「もう、ディエゴったら。こんなにたくさんお裾分けを持ってきてくれたのに、あんな態度を取ったら悪いよ」

「ディエゴったら。じゃねえっての。客が来ても1人で出ないって約束したよな?」

「う、うん⋯⋯だけどディエゴ、なんだかイライラしてたみたいだから、代わりに僕が出なきゃって⋯⋯」

「⋯イライラ、か。確かにイラついてはいたな」

そう言うとディエゴはフーッと長いため息をついて、黙ってうつむいてしまった。どうしよう。ただでさえ機嫌が悪い様子だったのに、僕が約束を破ったからますます怒らせてしまったのかも。

謝ろうとしたら、僕の後ろに回ったディエゴに背後から抱き竦められてしまった。ディエゴは僕のタンクトップの脇からズボッと両手を差し込んで、そのまま手のひらで僕の胸を撫で回し始めた。

「ンッ⋯くすぐったいよ、ディエゴ」  

僕はそのときディエゴがふざけてじゃれているんだと思っていて、くすぐったさに身をよじって笑っていたんだけど、そうじゃなかった。

それまで僕の胸を撫で回していたディエゴにキュッと両方の乳首を摘ままれてしまい、僕の口からは「アンッ♡」とエッチな声がもれてしまう。

「こんなユルユルのタンクトップ、どっからでも手ぇ入れられてルーイのエロい乳首弄り放題じゃねーか!こんなの着てるお前が1人のときにあいつらが訪ねてきたら、イクまで乳首弄り倒されるっての」

フゥフゥとディエゴの荒い吐息が耳元で聞こえて、僕のお尻に硬くて熱いものが押し当てられる。ディエゴは興奮しているんだ。
 
僕もずっと乳首をくりくりと弄ばれる気持ちよさに、股間に熱が集まってくる。両想いになってから僕達は何度もエッチしてるから、お尻もディエゴを求めて切なく疼いてしまう。

「っ⋯ンッ⋯カッツェもセリヤも、僕にそんなことしないよぉ」

「んなことねえって。見てろよ」

ディエゴが玄関のドアをガンッと蹴った途端、とっくに帰ったとばかり思っていた2人の気配がして「ヤベ」っていう声もきこえた。

「隠蔽魔法使ってまで聞き耳立ててんじゃねー!ブッ殺すぞ!」

ディエゴが怒鳴ると「うるせーディエゴ!お前が死ね!」「ルーイ、立ち聞きしたんじゃなくて隠蔽魔法使ってたらたまたまルークのエッチな声が聞こえちゃっただけだからね!?」とそれぞれ口々に言って去っていった。

「な?ルーイ。これでわかっただろ?」

「うん⋯⋯よくわかったよ⋯⋯ディエゴに乳首をくりくりされると、気持ちよくなってお尻にディエゴのおチンチンを挿れてほしくなっちゃうのが⋯⋯♡」

「ぐっ⋯わかってほしいのはそっちじゃねえんだけど⋯じゃあまあベッド行くか!俺もちんこ限界だわ」

「うん♡」


後でわかったんだけど、僕のタンクトップが大きすぎて下を向いたりすると乳首がちらちら見えるせいで、ディエゴはずっと股間がイライラしていたのだそうだ。怒っていたんじゃなくてひと安心だ。

ミンネ婆さんにサイズを直してもらえないか訊ねに行ったら『料金上乗せでオーダーメイドもやってるよ!』とのことだったので僕にピッタリのサイズを作ってもらったのだった。  




 
おしまい


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