ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

文字の大きさ
218 / 262

ポリクリ①

しおりを挟む


——数ヶ月後





夏樹「うおっしゃぁぁー!!」


七海「夏樹、テンション上がりすぎ」


夏樹「そりゃ上がるだろ!白衣だぞ……!」





今日は白衣授与式。

4年生も終盤に入り、"ポリクリ"と呼ばれる臨床実習がいよいよ始まる。

臨床実習に向けて行われるこの式は、医大生の一大イベント。

実習に参加するための試験をパスし、待ちに待った白衣を受け取った学生たちは皆大興奮。

ノワールのロゴと名前が刺繍された真っ新な白衣。





ひな「わぁ……!」





初めての白衣に袖を通せば、胸躍らずにはいられない。





夏樹「なぁ!みんなで写真撮ろうぜ!」





式終了後、まだまだお祭り騒ぎになっている中、夏樹の号令によりポリクリ班のメンバーが集合した。



ポリクリでは1、2週間ごとに全ての診療科を回り、診察や手術を見学したり、研修会に参加したりするのだが、これを5人1組の班で実施する。

実習期間は約1年。

この間ずっと同じメンバーで行動するため、班員はかなり重要だと先輩たちから聞いていた。

けれど、わたしは運よく夏樹と傑と同じ班で、他の2人も社会人から医学生になったという、賢くて頼りになるお兄さんとお姉さん。

良いメンバーが集まる班に、上手くやっていけそうでひと安心。



そんな、これから苦楽を共にする仲間で写真を撮ると、





夏樹「あっ、そうだ。ひなの1人の写真も撮ろう!」


ひな「え、なんで!いいよ、そんなの……っ!」


夏樹「ひなのはいらなくても五条先生がいるだろ?初めての白衣姿見せないと。ほら、早く!」





と、夏樹のスマホでわたし1人の写真も撮られ。

翌週からポリクリ実習がスタートした。










***



——数ヶ月後





コンコンコン——


ひな「失礼します」


藤堂「こんばんは、ひなちゃん。いらっしゃい」


ひな「こんばんは。お疲れ様です」





夜8時過ぎ。

白衣を脱いだわたしは、藤堂先生の健診を受けに診察室へ。



ポリクリ中はローテーションによって、朝から晩まで忙しかったり、数時間の空きができたり。

不規則で時間が読めなくて、今までのように定期健診を受けるのが物理的に難しくなってしまった。

でも、藤堂先生がそのことを考慮してくださり、朝でも夜でも、わたしの都合に合わせて数週間に一度は健診を行ってくれる。





藤堂「お疲れ様。今日も遅くまでだったね。今ローテは……麻酔科だっけ?」


ひな「はい、そうです」


藤堂「そしたら、オペも入るね。ひなちゃんのポリクリの様子は噂に聞いてるよ。積極的に質問したり、見学態度も素晴らしいって」


ひな「いえ、そんな……!」


藤堂「2週間くらい前だったかな。外科のローテ中、オペ見学で10時間立ちっぱなしだったんだって?みんな体が揺れ始める中、ひなちゃんだけはじーっと先生たちの動きを見てたって」


ひな「はい、そうでした。オペでも診察でも、実習中は時間の感覚がなくなるんです。勉強になることばかりで楽しくて、せっかくの機会だと思うと、しんどいとか感じなくって」


藤堂「ポリクリ生がそうして一生懸命やってくれるのは、指導医にとって嬉しいことだよ。ただね、ひなちゃん。この調子を続けていくと、どこかで必ず倒れるからね」


ひな「えっ……?」


藤堂「正直、ひなちゃんの身体には無理なスケジュールが続いてる。それでも平気な感じがするのは、ひなちゃんがハイになってるからだよ。身体には相当な負担が掛かっているから、このポリクリ期間、途中で躓きたくないと思うなら、もう少し自分で気をつけないと」


ひな「はい……」


藤堂「休憩が取れていないと思ったら、たとえ5分でも休憩時間をもらうように。オペ室に椅子がないなら、用意してもらうように伝えないと。そんなことで怒る人も評価を下げる人もいないんだから」


ひな「わかりました……」


藤堂「大事な実習だというのはわかるから、しばらくは大目に見るつもりだけど、ドクターストップをかけないわけじゃないからね」


ひな「……はい……」


藤堂「班員のみんなと行動するのに、いろいろ言い出しにくいというのも、もちろんわかる。だけど、ひなちゃんはそういったことも含め、覚悟を決めて医師の道に進むことを決めたはずだから。言い訳はもう通用しないよ」


ひな「……はぃ……」





ポリクリが始まって数ヶ月。

わたしなりに精一杯取り組んできて、その頑張りを褒めてもらえたのかと思ったら、藤堂先生が続ける言葉は厳しいものだった。



それも、どこか一線を置いたような感じ。



いよいよ臨床の現場に出て、学生とはいえドクターと並んで患者さんの前に立つ身。いずれはこのノワールで後輩医師にだってなる。

今はただの患者でなく、半分、そんな1人のポリクリ生として接してくれているんだろうと。

あえて、医者と学生の距離で話をしてくれているんだって、わかるんだけど……



なんだか落ち込まずにはいられない。





藤堂「とはいえ、躓く前に全力で支えてあげるから。ある程度は思い切りやったらいいよ。そのために、こうして定期的に診てるんだしね」





と、いつもの藤堂先生に戻った藤堂先生に、いつも通り診察をしてもらい、





藤堂「ひなちゃん、今日採血もしておこうか」


ひな「え……?」


藤堂「実習はまだ先が長いから、血液検査して、具合悪いところあれば早めに対処しよう」


ひな「……はい、お願いします……」





ということで、藤堂先生に採血もしてもらい、





藤堂「お薬も2、3個出しておくね。予防的に飲んでもらうものを、朝と夜だけ飲む分にしておくから、きちんと飲んでね」





薬も処方してもらって、この日の健診を終えた。










***



それから、さらに数ヶ月後。

ポリクリが始まって、半年が経った頃のある日。





五条「……なぁ、ひなちょっと」


ひな「うん??」





就寝前、寝室に行こうとしたところを、まだお風呂上がりの五条先生に呼び止められる。





五条「貧血ひどいのか?」


ひな「え?」


五条「鉄剤打ってもらってるだろ?前回いつだった?」





言いながら、下瞼をめくって見る五条先生。

Tシャツにスウェットに濡れた髪にバスタオル。

そんな姿で頬に触れられたら、ドキッ……とはしてしまう。





ひな「先週の金曜日……です」


五条「週1でしてもらうって言ってたよな?次また金曜か?」


ひな「そうですけど、どうしてですか……?」





体調に気を遣いつつ、薬を飲みつつ、ついつい張り切る気持ちも抑えつつ。

おかげさまで滞りなく実習をこなしてきたものの、少し前から鉄剤注射をしているわたし。

症状にひどくは出ていなかったけど、忙しさや疲れからか数値がどんどん下がってるからと、早い段階で治療を始めた。

それなのに五条先生に突然そんなことを言われて、今度は違う方のドキッとがする。





五条「どうしてって、ひなさっき何食ってた?」


ひな「え?」


五条「冷蔵庫開けて水飲むのかと思ったら氷食べてただろ?風呂入る前も食ってたし、昨日もそうだ。ボリボリ氷ばっかり、氷食症なってるぞ」





氷食症……。

言われてみれば、ここ数日無性に氷が食べたくて、気づいたら氷を口にしている。





ひな「それは……そうかもしれません……。でも」


五条「"でも大丈夫"じゃないだろ」





……っ。





ひな「まだ何も言ってないのに……」





少しむくれて俯いたわたしの頭に、ぽんっと手を乗せる五条先生。

そのまま背中を押されるように寝室に入り、





五条「ごろんして」





布団を捲られベッドに横になると、五条先生が今度はわたしの手首を掴み脈をとりながら、





五条「明日、藤堂先生に相談しなさい。週1の注射じゃ追いついてなさそうだ。せっかく頑張ってるのにこのままじゃ倒れる。俺からも伝えとくから」





と。





ひな「わかりました……」





五条先生の言うとおり。

貧血の症状がここまではっきり出ているのは、もう認めざるを得ないし、ひどくなって倒れるのはわたし自身が1番避けたいこと。

ただ、ポリクリの合間を縫ってさらに注射に通うと思うと、さすがに少し憂鬱だなって……。

そんなわたしの気持ちを読んだのか、





五条「ひなよく頑張ってる。毎日本当に頑張ってるからこそ、悔しい思いはして欲しくないんだ。せっかく喘息も出ずに来れてるし、貧血の治療はしっかりしとこう。な?」





五条先生はわたしの頭をなでて、





ちゅっ……





五条「ゆっくり寝るんだぞ。俺も少ししたら寝るから。明日の朝は一緒に行こう」


ひな「はい……おやすみなさい……//」


五条「ん、おやすみ」





ちゅっ……





おでこに優しいキスを落とされて、わたしは夢の中に入った。










が、そんな話をした矢先の翌日。

わたしの身にある事が起こってしまう……。


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写と他もすべて架空です。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

処理中です...