13 / 28
第二章
part.12 雷雲再び
しおりを挟む
「――お前……まさかとは思うけど……」
シュウウはゴクリと唾を飲み込み、聞いた。
この前で懲りたのだ。ちゃんと最後まで聞かないで、後悔したから。
シュウウも半ば信じられなかったが、ヨハネの表情を見ているうちにみるみる確信に変わる。気まずそうな、ヨハネの顔と言ったらない。
ヨハネは、シュウウから目を逸らしている。でもこうしていても何も進まないし、始まらないので、シュウウは思い切って聞いてみる。
「……社長の部屋にいたの?」
そうだよね? だって他にないもん。
「……うん」
シュウウの問いに、観念したようにヨハネは頷いた。その後の問いは、何してたの? と聞きたいのだが。
それは要するに、社長と寝てたの? ということである。そうそう口に出来る問いではない。
するとヨハネは、急に破顔し、頭を掻いた。
「……ははー、バレたか……」
その返事は、認めたということだ。社長の部屋にいて、同時に、彼と寝ていたということを。
シュウウは絶句した。
ヨハネは、用があって早く帰ったはずでは……いや、用というのはそれだったのか? 早く終わって自分の部屋に来るよう、社長がヨハネを誘ったのだろうか。
「……」
シュウウの頭は真っ白だ。これって何だろう。もしかして、ショックを受けている? どうして? それはきっと、あんまりだと思ったからだ。いくら何でも職場でヤるか? ヨハネもそうだし、社長だって、社長なんだぞ? この会社のボスなんだぞ? それに、確か結婚してるはずじゃ。ゲスもいい加減に……。
とにかく、真面目に仕事をしていた自分の頭の上でヤッてたのかと思うと、シュウウの頭はこれ以上ないほど煮えたぎった。
「……サイテー不潔……」
「え……」
「――あーそう。そうだったの。社長とそういう関係だったの。いつから?」
「……」
「社長とデキてるかとか俺に聞いて来たくせに、デキてんの自分じゃん。……あーそっか、あれも社長を狙ってた様子見だったんだな。そうならそうと、ハッキリ言えよ……」
「……えーと、センパイ?」
「センパイとか呼ぶんじゃねー。俺はお前の先輩でも何でもねー」
「……シュウウくん、もしかして怒ってる……?」
怒ってる? おう、これ以上ないほど怒っているさ。
「――ガッカリした。恋愛とかのゴタゴタを、仕事に持ち込む奴は大嫌いだ。特に仕事場でとか、他の奴が仕事してる最中とか、ありえねーだろ?」
「……」
「せめてやるなら外でやれよ。せっかくお前のこと、思ったよりマジメなやつだって、見直してた、のに……」
そう、結局はそこである。シュウウはヨハネのことを、結構良い奴だと思い始めていた。その気持ちが裏切られたようで悲しい。
他人に期待してもムダとは、こういうことなのだろうか。
「センパイ……」
「……もしかして、この前の駅でも、社長とのことでモメてたんだな? あんなモデルみたいな彼氏がいながら二股なんて、サイテーじゃねーか。ハッ、それも職場で不倫とは……」
「……え? あの、この前の人はそういうんじゃ」
「お前の言うことなんて、何も信じらんねーよ!」
ヨハネの食い下がりを、ピシャリと切り捨てたシュウウである。
「シュウウくん……」
「気安く呼ぶんじゃねー」
最後にそう言うと、プイと背を向けて、ヨハネの横をすり抜けたシュウウである。さっさと荷物をまとめると、再度廊下に出た。
「……戸締りは頼んだ。社長と二人でどーぞ」
そう、捨て台詞を唱えて、今さっきヨハネが降りて来た階段を、腹立たしい思いで1階まで駆け降りたシュウウである。
シュウウはゴクリと唾を飲み込み、聞いた。
この前で懲りたのだ。ちゃんと最後まで聞かないで、後悔したから。
シュウウも半ば信じられなかったが、ヨハネの表情を見ているうちにみるみる確信に変わる。気まずそうな、ヨハネの顔と言ったらない。
ヨハネは、シュウウから目を逸らしている。でもこうしていても何も進まないし、始まらないので、シュウウは思い切って聞いてみる。
「……社長の部屋にいたの?」
そうだよね? だって他にないもん。
「……うん」
シュウウの問いに、観念したようにヨハネは頷いた。その後の問いは、何してたの? と聞きたいのだが。
それは要するに、社長と寝てたの? ということである。そうそう口に出来る問いではない。
するとヨハネは、急に破顔し、頭を掻いた。
「……ははー、バレたか……」
その返事は、認めたということだ。社長の部屋にいて、同時に、彼と寝ていたということを。
シュウウは絶句した。
ヨハネは、用があって早く帰ったはずでは……いや、用というのはそれだったのか? 早く終わって自分の部屋に来るよう、社長がヨハネを誘ったのだろうか。
「……」
シュウウの頭は真っ白だ。これって何だろう。もしかして、ショックを受けている? どうして? それはきっと、あんまりだと思ったからだ。いくら何でも職場でヤるか? ヨハネもそうだし、社長だって、社長なんだぞ? この会社のボスなんだぞ? それに、確か結婚してるはずじゃ。ゲスもいい加減に……。
とにかく、真面目に仕事をしていた自分の頭の上でヤッてたのかと思うと、シュウウの頭はこれ以上ないほど煮えたぎった。
「……サイテー不潔……」
「え……」
「――あーそう。そうだったの。社長とそういう関係だったの。いつから?」
「……」
「社長とデキてるかとか俺に聞いて来たくせに、デキてんの自分じゃん。……あーそっか、あれも社長を狙ってた様子見だったんだな。そうならそうと、ハッキリ言えよ……」
「……えーと、センパイ?」
「センパイとか呼ぶんじゃねー。俺はお前の先輩でも何でもねー」
「……シュウウくん、もしかして怒ってる……?」
怒ってる? おう、これ以上ないほど怒っているさ。
「――ガッカリした。恋愛とかのゴタゴタを、仕事に持ち込む奴は大嫌いだ。特に仕事場でとか、他の奴が仕事してる最中とか、ありえねーだろ?」
「……」
「せめてやるなら外でやれよ。せっかくお前のこと、思ったよりマジメなやつだって、見直してた、のに……」
そう、結局はそこである。シュウウはヨハネのことを、結構良い奴だと思い始めていた。その気持ちが裏切られたようで悲しい。
他人に期待してもムダとは、こういうことなのだろうか。
「センパイ……」
「……もしかして、この前の駅でも、社長とのことでモメてたんだな? あんなモデルみたいな彼氏がいながら二股なんて、サイテーじゃねーか。ハッ、それも職場で不倫とは……」
「……え? あの、この前の人はそういうんじゃ」
「お前の言うことなんて、何も信じらんねーよ!」
ヨハネの食い下がりを、ピシャリと切り捨てたシュウウである。
「シュウウくん……」
「気安く呼ぶんじゃねー」
最後にそう言うと、プイと背を向けて、ヨハネの横をすり抜けたシュウウである。さっさと荷物をまとめると、再度廊下に出た。
「……戸締りは頼んだ。社長と二人でどーぞ」
そう、捨て台詞を唱えて、今さっきヨハネが降りて来た階段を、腹立たしい思いで1階まで駆け降りたシュウウである。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる