鍛冶師ですが何か!

泣き虫黒鬼

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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)

第弐百六拾壱話 魂鋼を再び鍛えたら、とんでもないモノになったみたいですが何か!

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「・・・真安、そんな風に頭を下げられてちゃ話も出来ないじゃないか。頭を上げてくれ。」

魂鋼を提供する代わりに羅漢獣王国に来て欲しいと言って鍛冶場の土間に手をついて頭を下げる真安に、俺は話をするなら頭を上げてくれと言うと、真安はゆっくりと頭を上げたもののその顔には申し訳なさそうは表情をしていた。
真安としては俺を羅漢獣王国に招くために魂鋼を取引の材料にした行為が、真安の商人としての心得と合致せず、俺に対して引け目を感じているのだろう。
それでも、自分の心情に合わない事をしてでも俺を羅漢獣王国に連れて行きたい訳が真安には有るのだろう。
その事を踏まえ、俺は紫慧やアルディリアに視線を向けると、紫慧は何時もと変わらずニコニコと微笑み、アルディリアは苦笑しながら俺の判断に任せると言うように軽く頷いてくれた。
そんな二人の反応を確認して、真安へと視線を向ける。

「で、ファレナの武具に使う為に魂鋼を提供する、その代り武具を鍛え終わったらリンドブルム街に帰る前に羅漢獣王国にも寄って欲しいってことだな。
う~ん、そうだなぁ。
あんまりリンドブルム街へ帰るのが遅くなるとスミス爺さんが無茶をしないか心配にはなるが、スミス爺さんにはテルミーズとタロスの二人がついているから、羅漢獣王国へちょっと・・・・寄り道するくらい大丈夫だろう。
 それに、獣王国にも優秀な鍛冶師が居る様だから、獣王国の鍛冶師とも親交を深めて鍛冶師としての腕を磨いてからリンドブルム街に帰った方がスミス爺さんに良い土産話が出来るし・・・この魂鋼は使わせてもらうぞ♪」

そう言って真安の肩を右手でポンと叩きながら左手でフクス達が持つ木箱の中から魂鋼を取り出して笑顔を見せると、真安は少し驚いたような表情を浮かべたが、直ぐに満足そうに笑い、もう一度深々と頭を下げてフクス達を従えて何事も無かったかのように鍛冶場の壁際へと下がって行った。
 壁際へと下がる真安たちを見送り、何事も無かったかのように手に魂鋼を持って炉の前に移動し鍛冶仕事の準備に入る俺。
だが、それに『待った!』を者が・・・

「か、鍛冶師殿! 私の武具を鍛える為に羅漢獣王国へ渡る約束をされては、リンドブルム街のアルバート殿になんと言ったら良いのか・・・」

少し焦った様に困り顔で、声を上げるファレナ。
 ファレナからすれば、俺は娘のフィーンが難癖をつけ強引にレヴィアタン街に招いたと言う負い目があった。しかも、アルバートは俺と紫慧をリンドブルム街を上げて護ると大々的に宣言し、カンヘル国の各街の領主や天樹国、羅漢獣王国に対しても通達を出している。
その通達に今回レヴィアタン街での諸々抵触するのではという懸念を抱えていた。
その上、ファレナの武具を鍛える金属鋼(魂鋼)を入手するために羅漢獣王国行が決まったとなると、アルバートやリンドブルム街に対して更に負い目を抱える事になると考えたとしても致し方ない事だろう。が、

「ファレナ、気にするな。これは武具製作の依頼を受けた・・が、納得のゆく武具を鍛える為に行う事で、言ってしまえば俺の我儘だ。
アルバートも俺の性格は知っているから経緯を知れば、「仕方のない奴だ」と笑って済ませてくれるさ。
という事で、アリア! 今からポリティスと共にレヴィアタン街のギルドに行って事の経緯をリンドブルム街ギルド経由でアルバートの元に届くように手配を頼むぞ。」

「あぁ、任せておけ。ではポリティス殿、参りましょう!」

とアルディリアは『委細承知!』とばかりにポリティスを促してギルドに向かうように鍛冶場を出て行った。
 その場に残されたファレナと真安たちは、トントン拍子に進んで行く事の成り行きに唖然となり、俺のハチャメチャな行動とその尻拭いに動くアルディリアの働きを何時も目にしている紫慧以下リンドブルム街から来た仲間たちは、『またか!』と苦笑を浮かべていた。
そんな仲間たちに頭を掻き掻き、ニヤリ顔で軽く頭を下げてから自分に喝を入れるように大きく息を吐き出して両頬を『パン!』と叩いて気合を入れ直し、手に持っていた魂鋼の原鋼を炉に入れて熱した。

 魂鋼は前回リンドブルム街で俺の焔の時と同じ要領で炉で熱している時間を利用し、真眼でファレナを視る。

名前:ファレナ・アミール・レヴィアタン
種族:海竜人族
使役精霊:海精霊ネーレーイス
レヴィアタン街領主

これまで、レヴィアタン街の領主として自らも海に出て周辺海域の治安を護る為に戦って来たと聞いていた通り、ファレナには海精霊ネーレーイスとの相性がいいようだ。ここは一も二も無く付与する精霊石粉は真珠パールで間違いないだろうと、懐からゼーメッシュ島から持ってきた真珠パール粉を付与し鍛えて行く事にする。

 当初は、鈍色をしていた魂鋼だったが、真珠粉を付与しながら鍛えて行くと次第に色が変わり、徐々に青というか海の紺碧色を示すようになって行った。その様子を見ていた真安以下羅漢獣王国の者達が驚きの表情と共に漏らした言葉が『青生生魂アポイタカラ』だった。
青生生魂と言えば、緋々色金ヒヒイロカネと同一視される幻想金属の一つだが、まさか魂鋼に真珠を付与する事で真安たちが青生生魂と呼ぶ金属鋼になると・・・。
魂鋼とは一体なんなのか?非常に気になる。これは羅漢獣王国に入ったらその辺の事も詳しく根掘り葉掘りと聞き倒す!と頭の中に刻み込み、そのまま鍛錬を続けて行った。
 結局この日から三日を要し、満足出来る鍛錬をした魂鋼改め青生生魂を二と三十分割に分けた。
先に分けた二分割分の青生生魂は他の三十分割した物よりも分量を多くし、これを扇子で言う所の親骨(外側骨)にし三十分割にした物はその親骨に挟まれる扇子で言う所の中骨と扇面を合わせた物として細い板状に均一に打ち延ばした。
 今回、俺がファレナの為に鍛えようとしている『武具にも使える扇』は俺の鉄扇では無く、檜扇子や白檀扇子と呼ばれる扇面まで親骨などと同じ木製で作られる扇子を金属鋼(青生生魂)に置き換えて作ろうと考えたのだ。
 二本の厚みのある親骨の間に、均一に整えられた板状中骨を配した形状の板扇子。その板状中骨の板面には開閉を容易に行い、尚且つ板中骨同士がバラバラにならない様お互いを繋ぎとめる溝と爪を設け、更に先端には開いた時の補強に鉄喰い蚕の糸を通す穴を開た。
 ここまでの鍛練と成形の間に、魂鋼に宿る水蛇は焔の時と同じように、水蛇~蛟~龍と成長していた。その成長具合で、魂鋼≒青生生魂が順調に鍛錬できている事を確信し、最後の仕上げへと取り掛かる。

 一度組上げて開閉に支障が無い事を確認した後、親骨と板状中骨の一枚一枚に焼き刃土を盛って十分に乾かした後、再び組上げて焼き入れの為に炉に入れる。
 慎重に炉内の温度を上げてゆっくりと板扇子を熱し、両の眼で熱が入り色を変える板扇子の表面を見ながら、額の真眼で魂鋼≒青生生魂に宿る龍の様子を視てその瞬間を待つ・・・と、板扇子の表面が炉の炎で熱せられて一際朱く強い輝きを放ったと時を同じくして、宿りし龍が天へと咆哮を上げた。
その期を逃さず、一気に炉の脇に設置されている水槽へと板扇子を差し入れると、立ち込める水蒸気の中に青く輝く猛々しい青竜が姿を現し、俺に瞳を向けていた。


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感想 98

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みんなの感想(98件)

郡道
2023.06.22 郡道

書籍も2桁越えしたのに何で打ち切られたんやろ、、、

解除
影野狐仁
2023.06.18 影野狐仁

めっちゃ面白いです。

解除
ハビット
2021.03.30 ハビット

1話目を読んでいる最中なのですが、「、は恥ずかしそうに」など主語が抜けているのは何かしらの技法なのでしょうか? もしくは「は」を余計につけてしまったのでしょうか? 文法に詳しいわけではないので分かりませんけど読みにくいな〜と感じました

解除

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