ステラ皇女と初恋の捕虜様

雑煮

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「これでもない……ああ、どこに行ったのかしらっ……」


宴が行われている城で、ステラは宴を抜け出し一人で自身の物置部屋を漁っていた。



「あったわ!」

ようやく見つけた目当ての魔法石をステラは急いで衣服の中にしまう。


そして誰にも見つからないように部屋から出ると、早速侍女に見つかった。



「皇女様っ!どちらにいらしたのですかっ。」

「ごめんなさい、部屋に忘れ物があったの。」

「だからといって一人で行動されると危ないですわ。」


ステラは微笑みで誤魔化しながら、侍女に連れられて会場に戻る。



賑やかな会場では本日の主役であるエリクセンを多くの人が囲んでいた。


元々人前に出ず、近寄りがたい雰囲気を持つ騎士であるエリクセンだが、この日はここぞとばかりに彼に興味のある者たちが群がっていた。


器量は悪くないので様々な言葉に淡々と返事を返していくエリクセンをステラは遠巻きに眺めながら、どうしてもエリクセンとの未来を描けないと戸惑っていた。


エリクセンは口数が少なく、今まで会った時にもほぼ会話らしい会話をしてこなかった仲だったのもあり、家族になる未来が描けない。


だが、それにも関わらずエリクセンは妙にステラに執着を見せてきた。



それが異性への好意だとステラが気付いたのは奇しくも今日のパレードだった。


妙に熱い眼差しを向けられて察してしまったが、どうしようもなく人間関係築くのが下手くそな婚約者とこれからどう向き合っていけばいいものか。


もちろん、これから関係を築くために努力する。

けれど、どうしても想う相手はこの先もただ一人だけだと疑わないステラはエリクセンに心を開ける自信がなかった。






一方、エリクセンはといえば、最愛のステラの元へ向かいたいが取り囲む貴族達を無下にすることも出来ず、内心もどかしい思いをしていた。


騎士として訓練校に通い、卒業するとすぐに戦地に向かわされたこともありこの数年はステラと会う機会が少なく、それでもステラの婚約者という地位に見合う男になるために血を吐く思いをしながら今のこの時まで生きてきたのだ。
  
  
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