3 / 4
3
しおりを挟む***
「これでもない……ああ、どこに行ったのかしらっ……」
宴が行われている城で、ステラは宴を抜け出し一人で自身の物置部屋を漁っていた。
「あったわ!」
ようやく見つけた目当ての魔法石をステラは急いで衣服の中にしまう。
そして誰にも見つからないように部屋から出ると、早速侍女に見つかった。
「皇女様っ!どちらにいらしたのですかっ。」
「ごめんなさい、部屋に忘れ物があったの。」
「だからといって一人で行動されると危ないですわ。」
ステラは微笑みで誤魔化しながら、侍女に連れられて会場に戻る。
賑やかな会場では本日の主役であるエリクセンを多くの人が囲んでいた。
元々人前に出ず、近寄りがたい雰囲気を持つ騎士であるエリクセンだが、この日はここぞとばかりに彼に興味のある者たちが群がっていた。
器量は悪くないので様々な言葉に淡々と返事を返していくエリクセンをステラは遠巻きに眺めながら、どうしてもエリクセンとの未来を描けないと戸惑っていた。
エリクセンは口数が少なく、今まで会った時にもほぼ会話らしい会話をしてこなかった仲だったのもあり、家族になる未来が描けない。
だが、それにも関わらずエリクセンは妙にステラに執着を見せてきた。
それが異性への好意だとステラが気付いたのは奇しくも今日のパレードだった。
妙に熱い眼差しを向けられて察してしまったが、どうしようもなく人間関係築くのが下手くそな婚約者とこれからどう向き合っていけばいいものか。
もちろん、これから関係を築くために努力する。
けれど、どうしても想う相手はこの先もただ一人だけだと疑わないステラはエリクセンに心を開ける自信がなかった。
一方、エリクセンはといえば、最愛のステラの元へ向かいたいが取り囲む貴族達を無下にすることも出来ず、内心もどかしい思いをしていた。
騎士として訓練校に通い、卒業するとすぐに戦地に向かわされたこともありこの数年はステラと会う機会が少なく、それでもステラの婚約者という地位に見合う男になるために血を吐く思いをしながら今のこの時まで生きてきたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
放課後の保健室
一条凛子
恋愛
はじめまして。
数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。
わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。
ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。
あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
憐れな妻は龍の夫から逃れられない
向水白音
恋愛
龍の夫ヤトと人間の妻アズサ。夫婦は新年の儀を行うべく、二人きりで山の中の館にいた。新婚夫婦が寝室で二人きり、何も起きないわけなく……。独占欲つよつよヤンデレ気味な夫が妻を愛でる作品です。そこに愛はあります。ムーンライトノベルズにも掲載しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる