シェヘラザードに蛇足

「結局イキモノなんてのはなあ、何にでもナレルんだよ。どうせ誰にも見出してもらえないから。とか言って端から諦めるくらいなら、とりあえず曝け出してみればいいんじゃね?」
──これはピエロが嫌で逃げ出した子ザルの話。

七月二十日 夕方、代々木公園で蛇兄さんを拾った。

 大きな樹の下の縁石にドカッと座り、項垂れているから顔は見えない。
 ぐしゃぐしゃの黒髪、だぼだぼの服、黒いつっかけサンダル。
 通り過ぎ様に横目で見てはいけない。見惚れるなんてほど遠い様子。
 持て余したように組んだ長い指。その違和感の正体は薬指に彫られたタトゥーのせいだと思う。左右の耳に開けられたピアスは確認できるだけでも合わせて五つ。大きな黒い塊の耳元で揺れるシルバーの飾りが、現代的でありながら人ならざるモノの象徴にも思えた。

 ソレに私の心は惹かれ、そそられる。

「その物語は手の平を返した村人達によって永遠に語り継がれましたとさ」
──これは村人を救う発明をした王様を処刑した国の話。

「そうやっていつまでも『普通は』とか言ってからお前は『不通』のままなんだよ」
──これは地球に取り残された宇宙人の話の第六話。

 私のセカイは創られたモノ。
24h.ポイント 0pt
0
小説 183,836 位 / 183,836件 ライト文芸 7,316 位 / 7,316件