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壱の章 最西端軍事国家キギス
弐什 和
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弐什. 『和』
キギス城北西に位置するホウセンカ家の屋敷。僕がこの屋敷の家僕になって四か月という時間が過ぎた。この屋敷には僕以外にも家僕が多くいたけど、地下室のサツキ様たちに仕える僕は彼らと一緒に行動することがまずなかった。それで僕は同じ家僕の人たちよりもサツキ様と和様の方が仲が良かった。
サツキ様はホオズキ様の内妻だった。普段なら屋敷の個室で暮らしているはずだけど、ホオズキ様の社会的地位やサツキ様は敵国のケイリンから来た神族だという立場もあって地下室で暮らすようになったという。娘の和様も同じく。
屋敷には正妻のアザミ様とその息子クチナシ様がいる。アザミ様はサツキ様が屋敷に来ることをすごく反対していたらしいけど、ホオズキ様はその反対をよそにサツキ様を屋敷に連れてきてサツキ様のことを憎んでいる。
クチナシ様はホオズキ様に次ぐキギスが誇る武将だけど、彼が喋っていることは一度も見たことなかった。同じ屋敷にいながらも謎だらけの男だった。
ある日、僕がサツキ様たちのために厨房から地下室へ料理を運んでいるとアザミ様と出会した。
「そこ!こっちに。」
「は、はい!」
僕は料理を盛ったお盆を持ったままアザミ様のところへ駆けつけた。すると、アザミ様は右手で僕のお盆を打ち落とす。そのせいで料理が全て地べたに落ちた。
「あんな動物以下の尼たちには食い物ももったいない!」
「そ、そんな…。」
パチン!
アザミ様は僕の左頬を強く引っ叩いた。
「下民の分際で妾に口答えするでない!」
「も、申し訳ありません…。」
僕は地面に這いつくばって土下座をする。すると、アザミ様は僕を踏みつけながら言った。
「お前がこんな仕打ちを受ける理由は全てあの尼たちのせいだ。」
「あの方達はとても優しい方ですよ…。」
「黙るのだ!あいつらのせいでホオズキは妾に目もくれなくなった。あの尼さえ現れなければ!あの尼さえこの屋敷に来なければ!」
アザミ様の踏みつけはだんだん怒りがこもって強くなっていった。僕は地面に這いつくばったまま踏みつけられ続けた。砂塗れになった体に血が滲んでいくと後ろから男の声が聞こえた。
「そこまでしてください。お姐さん。」
蹲っていた僕が後ろを向けるとホオズキ様が若返ったような顔つきの少年がサツキ様とはまた違う異国の衣装を着て立っていた。
「ちっ、戻ってきたのか、ホオノキ。」
「やあ、相変わらず弱いものいじめですな、アザミお姐さんは。ハハッ。」
「久々会うお姐さんにしっ失敬であるぞ?」
さっきまで乱暴に僕を踏みつけていたアザミ様は急に顔を赤らめてモジモジしながら紫色の髪を弄る。
——いったい二人はどんな関係なんだ…?あの人は誰だろう…。
ホオノキという人はアザミ様を部屋に帰らせた。そして地面に這いつくばっていた僕に手を差し伸べる。
「大丈夫かい?見ない顔だね。新しく入った子かな?」
「は、はい…。新しいと言っても四か月も経っていますけどね…。」
その男の人の手を握ると僕を引っ張り起こしてくれた。
「ハハッ、そうか。俺はホオノキだ。ホオズキの兄貴は元気かい?」
「ホオズキ兄貴って…ひょっとしてホオズキ様の弟君ですか?」
「そうそう。でも二年間海の向こうにあるロンジンって国で留学をしてたからね。あれ以来まだ会ってないんだ。」
——どおりで今まで一度も屋敷で見たことがなかったんだ…。
「え、ではただ今キギスにお戻りになったんですか?」
「ああ、二年ぶりに帰ってきたというのに屋敷に誰もいないなんてね。みんなも相変わらず忙しそうだ。」
ホオノキ様は
「あ、そうだ!君、名前は?」
「佐次郎です。」
「佐次郎か!君はどこ所属だ?」
「僕は…。」
僕は黙ったまま向こうにある地下室の小屋に指を差す。すると、
「君、サツキのお姐さんに仕えている子か!」
と、嬉しそうに言っていた。
「は、はい…。」
「サツキさんは元気かい?」
「はい!最近笑うことが増えました!」
「それは良かった!」
ホオノキ様は急いで地下室に向かった。
「え…?!」
僕は地面に落としたお盆を取ってすぐにホオノキ様の後を追った。地下室の入り口から笑い声が聞こえる。階段を降りるとホオノキ様はサツキ様たちと楽しげに話をしていた。
「和ちゃん、大きくなったな~。これはこれは、可愛さも増したんじゃない?」
「もう叔父様ったら~。へへへ…。」
僕が三人に近づけるとサツキ様が僕に気づきてくれる。
「あ、佐次郎君!」
「佐次郎!お腹空いた。お料理は?」
「そ、それが…。」
僕は外であったことを話した。すると、サツキ様は
「怪我はない?」
と、僕の体を先に心配してくれた。
「はい、僕は大丈夫です!けど…。」
「俺が外で買ってきます!」
僕が困った顔をしていると、隣にいたホオノキ様が目を光らせて言った。そしてそのまま地下室から出て行った。
「あー、叔父様行っちゃった…。」
僕は呆然とその光景を眺める。すると、サツキ様が言う。
「元気な子でしょう?」
「はい…。なんかホオズキ様とは顔以外似てませんね…。」
サツキ様は笑みを浮かべた。
「フフッ、そう。あの二人随分歳も離れていて性格も全く違うの。私がこの屋敷に来た時唯一私に話をかけてくれたわ。」
「そうだったんですね…。」
「二人の性格は全然似てなかったけど、なぜか優しさだけはしっかり似ていてね。やっぱり兄弟だねって思った。」
「そう、叔父様は優しいし面白いよ!お兄ちゃんみたい!」
どうやら二年前まではホオノキ様が今の僕がやっていることをしていたらしい。僕はそんなホオノキ様の姿を想像して微笑む。
「優しい人ですね。」
暫く地下室で話をしているとホオノキ様が帰って来た。僕たちは四人で食事をしてホオノキ様の留学先でのエピソードを聞きながら大笑いした。夕方になるとホオズキ様やホウセンカ様が屋敷に顔を見せた。僕はホオズキ様の後ろに立つ。ホウセンカ様とホオズキ様はホオノキ様の顔を見て喜んで迎えた。
「おお、帰ってきたのか!我が息子よ。」
「はい!無事帰ってきましたよ、父上!ご健勝そうで何よりです!」
「ホオノキ、留学は楽しかったか?」
「はい、兄貴!」
「今日は帰りの祝いだな!」
そうして今夜は屋敷内で晩餐会が開かれ、みんなが夜が明けるまでお酒を飲んだ。僕はその酒臭い場でお酌をしていた。泥酔したホウセンカ様がアザミ様と家来たちに寝室まで運ばれる間にホオズキ様とホオノキ様は庭園がある屋敷裏に場所を変える。僕も二人に付いて庭園に行った。
「兄貴…。」
「ん?」
「サツキお姐さんたちはこれからどうなるんですか?」
「さあな…。俺は自分がホウセンカ家の長男であることが憎いよ。次男であるお前が羨ましいくらいだ。」
ホオズキ様は拳を握って夜空を見上げた。
「そんなことないです…!」
「いや、俺のせいでサツキたちはまともに陽の光も浴びてないから…。すべて俺のせいだよ。」
「……。」
ホオズキ様の言葉に一瞬空気が重くなった。
「そ、そんなことないです。二人は地下室で暮らしながらも楽しいって言ってくれました。」
「佐次郎…。あ、そうだ!休みの日に遠くに出かけましょう!」
ホオノキ様は首を傾げる。
「外出?」
「はい!地下室の二人と一緒に!」
「だめだ。誰かに見られたらどうする?」
「あれがあるじゃないですか!誰にも見つけられない方法!」
ホオノキ様は庭園の北側に指を差しながらどや顔を見せる。
「まさか、あの隠し通路か。」
「はい!俺、今日帰って来た時もあの隠し通路から入って来ました!」
「相変わらずお茶目な奴だなお前は。」
「あそこから抜け出したら誰にも見つからずに外に出られますよ?行きましょうよ、兄貴!」
「ハア…。仕方ないな。分かったよ。」
ホオノキ様の勧誘にホオズキ様は否応なしにみんなと一緒に出掛ける約束をした。
——あのホオズキ様が弟には弱いんだ…。
「な、ホオノキ。」
「はい?」
「ありがとうな。サツキたちのこと思ってくれて。」
「えへへ…。大したことないですよ。」
ホオズキ様の一言にホオノキ様は顔を崩して子供のように笑った。そして、ホオズキ様は、
「佐次郎、お前もありがとうな。」
と、僕にもお礼を言ってくれた。
「い、いえ…。僕は役目を果たしたまでです…。」
と、僕がへりくだるとホオズキ様は僕の頭を撫でてくれた。
「今日はもう地下室に戻っていいぞ。」
「はい。では、お先に失礼します。」
僕は地下室に戻って二人にお出かけのことを話して上げた。すると、
「ほんと?!わーい!」
と、和様が欣喜雀躍して喜ぶ。サツキ様も嬉しそうに言った。
「じゃあ、佐次郎君の故郷に行こうか。」
「え、お出かけって滅多にない機会なんですよ…?僕の故郷なんかで大丈夫ですか?」
「佐次郎、故郷の話するとすっごく楽しそうな顔するもん。和も行きたいな~。」
僕は顔を赤らめながらおたおたする。
「そ、そうでしたっけ…。」
「そうだよ!あと、佐次郎のママにも挨拶しに行きたいから!」
「そうよね。挨拶がてら行きたいもんね?」
「「ね~~。」」
なぜか、二人が意気投合して僕を見つめている。
「まあ、そう言われると僕は嬉しいですけど…。」
「「じゃあ、決まりだね!」」
そういうことで行き先は香咲町に決定された。あれから三週間という時間が過ぎて地下室の母娘は地下室の外の世界に足を踏む。
「うわ…。外だ…。」
「さあ、こちらへ。」
二人は人たちに目立たないように質素な身なりで出かけることにした。僕は二人を屋敷の北側にある隠し通路に案内した。庭園の裏にあるやぶを横にどけると人が這って通れそうな通路が現れた。僕たちはその通路を通り抜けて壁の外へ出る。その前にはホオズキ様とホオノキ様が馬車を停めていた。
「さ、早く乗れ。」
僕は二人を馬車に乗せた。そしてみんなが出発することを待っていた。すると、
「佐次郎、モタモタしないで早く乗れ!」
と、ホオノキ様に言われる。
「え、僕もですか?」
「当たり前だろ?」
そうして僕も一緒に香咲町へ行くことにした。馬車でみんなとお喋りをしながら数時間走ると、懐かしい故郷の香りがした。
「うわあ、ここが佐次郎の故郷なんだ!綺麗!!」
馬車の窓から顔を突き出すと赤色、黄色、青色、桜色、紫色の花が町を包み込むように咲いていた。そしてそよ風に花びらが舞い散って道中に芳しい花の香りがした。サツキ様と和様はその風景を見ながら感心する。前に目を向けると馬を御しているホオズキ様も笑っていた。
香咲町の入り口に差し掛かると僕は母のことを思い出した。
——ママ…。僕に会ってくれるのかな…。
僕が渋い顔をして項垂れると膝の上に置いた手に暖かい何かが当たる。和様の手だ。僕は和様に顔を向けると和様は笑顔で僕を安心されてくれた。
「和様…。」
「ヘヘ…。」
僕は和様の色白い顔を見て視線を泳がせる。その瞬間馬の嘶きとともに馬車が停まった。
「さ、降りていいぞ。」
「わー。もう着いたみたい!」
「和、足元気を付けてね。」
「はい!マ…じゃなくてお母様!」
僕たちは馬車から降りて香咲町の大通りを歩いた。町中も花びらが舞い散っていてホオズキ様はその光景を見ながら何かを思いついたように言う。
「そうだ!今年の花鳥宴はここの風景のような演出をしよう。」
「それいいですね!花王様も喜んで受け入れると思いますよ。」
しかし僕の頭の中には母のことでいっぱいでずっと母がいる路地裏の方を見据えていた。和様がそういう僕の姿を見て僕の手を握って僕が眺めている方向に歩き出した。
「え、和様?!」
「あそこに何かあるんでしょ?行こう!」
「和!どこに行くの?!」
和様は僕の手を握ったまま路地裏に向けて走り出した。サツキ様も慌てて僕たちを追いかけて来た。僕は和様を追い抜いて突っ走った。そして僕が暮らしていた住処に辿り着くと、そこには誰もいなかった。
「ママ…?どこにいるの?」
僕は急いで隣の八百屋に入った。そして八百屋のお婆さんに母の行方を聞いた。
「あら、佐次郎ちゃんじゃないかい?!」
「お婆さん!僕はママはどこに行った?」
するとお婆さんが残念そうな顔をして言う。
「佐次郎ちゃん、君のお母さんはつい先月…。」
「嘘…。」
和様とサツキ様はその話を耳にして手のひらで口を塞ぐ。僕は腰の力が抜けて膝から崩れ落ちた。
「幸せになってって言ったじゃん…。なんで…。」
お婆さんは座り込んだ僕の前にしゃがんで肩を軽く叩きながら言う。
「ナデシコが最後に残した言葉がある。」
「ママが…?」
「もし佐次郎ちゃんがここに戻ってきたらもっと自分のことを考えて幸せになって欲しいってよ。また、強くなって愛する人を守って上げてって。最後に、こんな形で君を生んでごめんねって…。」
僕は声も出さずに涙を流した。涙はとめどなくあふれ出て膝を濡らした。サメザメと泣いている僕の姿を見ていた周りの三人も静かに涙を流す。
そして僕たちは町の南にある母の墓に行った。墓の前で僕はサツキ様と和様を母に紹介した。二人も母に挨拶をした。そしてみすぼらしい墓場に白い花と生前母が好きだった握り飯を置いて墓から去った。その後僕たちは香咲町の象徴であるブナの大木の下で気持ちを落ち着かせた。
暫くその大木の緑陰の下で横になっているとグウーとお腹が鳴った。その音に和様が反応する。
「佐次郎、お腹空いた?」
「いいえ…。」
「嘘だ~。今お腹鳴らしたでしょ?」
僕は恥ずかしくて横になったまま後ろに向きを変える。
「二人はここで待ってて。ママが町で食べ物を買ってくるから。」
「はーい!」
「僕も行きます!」
僕もサツキ様について行こうとしてたサツキ様は決めポーズを取って言う。
「ママに任せなさーい!佐次郎君も大人しく待っててね?」
「は、はぁ……。」
サツキ様は一人で街に行ってしまった。大木の下には僕と和様だけが残った。清楚に座っていた和様は、左手でこっちに来て座りなさいと言わんばかりに地面を掌で軽く叩いた。僕は和様の隣に腰を掛けて座る。すると、和様は首を傾げて僕に訊いた。
「あの…佐次郎。大丈夫…?」
僕は悲しみをすべて押し包んで言った。
「はい、大丈夫です。」
「佐次郎のママのことは残念だと思うよ。」
「……。」
僕は黙り込んだ。が、和様は話を続けた。
「でも…。佐次郎は一人じゃないよ。和がいる。ママもいるし、お父様も叔父様だっている。だから。だからね…?もう悲しまないで…。」
その時僕の顔に小さく温かい手が僕の顔を右に向かせた。そして僕のおでこに柔らかい何かが当たった。僕が視線をおでこの方に向けると、和様が僕のおでこに口をつけていた。
「の、ののの、和様…?!」
僕は突然のことに体が凍った。そして胸がドキドキし出した。和様はおでこから口を離して言う。
「佐次郎が泣いたら和も心が痛いの…。だから、もう泣かないでね?」
「はい…。」
「それから…、これからもずっと和の側にいて…。」
「はい?」
最初僕はその言葉の意味が良く分からなかった。和様は顔を赤らめて言う。
「だから!…どこにも行かないでってこと…!!」
「は、はい。どこにも行きません…。」
「何があってもだよ?」
「はい、何があっても必ず側にいます。」
「絶対?」
「はい。」
和様は可愛らしい顔を赤らめて笑みを浮かべる。
「約束だよ?へへ…。」
彼女の笑顔は幼い自分には形容できないほど愛おしくて唇を乾かした。そして、鳴り止まないこの不可解な動悸は僕の顔を赤らめる。
…………。
僕はなぜ今になってこんな昔のことを思い出しているんだろう…。
キギス城北西に位置するホウセンカ家の屋敷。僕がこの屋敷の家僕になって四か月という時間が過ぎた。この屋敷には僕以外にも家僕が多くいたけど、地下室のサツキ様たちに仕える僕は彼らと一緒に行動することがまずなかった。それで僕は同じ家僕の人たちよりもサツキ様と和様の方が仲が良かった。
サツキ様はホオズキ様の内妻だった。普段なら屋敷の個室で暮らしているはずだけど、ホオズキ様の社会的地位やサツキ様は敵国のケイリンから来た神族だという立場もあって地下室で暮らすようになったという。娘の和様も同じく。
屋敷には正妻のアザミ様とその息子クチナシ様がいる。アザミ様はサツキ様が屋敷に来ることをすごく反対していたらしいけど、ホオズキ様はその反対をよそにサツキ様を屋敷に連れてきてサツキ様のことを憎んでいる。
クチナシ様はホオズキ様に次ぐキギスが誇る武将だけど、彼が喋っていることは一度も見たことなかった。同じ屋敷にいながらも謎だらけの男だった。
ある日、僕がサツキ様たちのために厨房から地下室へ料理を運んでいるとアザミ様と出会した。
「そこ!こっちに。」
「は、はい!」
僕は料理を盛ったお盆を持ったままアザミ様のところへ駆けつけた。すると、アザミ様は右手で僕のお盆を打ち落とす。そのせいで料理が全て地べたに落ちた。
「あんな動物以下の尼たちには食い物ももったいない!」
「そ、そんな…。」
パチン!
アザミ様は僕の左頬を強く引っ叩いた。
「下民の分際で妾に口答えするでない!」
「も、申し訳ありません…。」
僕は地面に這いつくばって土下座をする。すると、アザミ様は僕を踏みつけながら言った。
「お前がこんな仕打ちを受ける理由は全てあの尼たちのせいだ。」
「あの方達はとても優しい方ですよ…。」
「黙るのだ!あいつらのせいでホオズキは妾に目もくれなくなった。あの尼さえ現れなければ!あの尼さえこの屋敷に来なければ!」
アザミ様の踏みつけはだんだん怒りがこもって強くなっていった。僕は地面に這いつくばったまま踏みつけられ続けた。砂塗れになった体に血が滲んでいくと後ろから男の声が聞こえた。
「そこまでしてください。お姐さん。」
蹲っていた僕が後ろを向けるとホオズキ様が若返ったような顔つきの少年がサツキ様とはまた違う異国の衣装を着て立っていた。
「ちっ、戻ってきたのか、ホオノキ。」
「やあ、相変わらず弱いものいじめですな、アザミお姐さんは。ハハッ。」
「久々会うお姐さんにしっ失敬であるぞ?」
さっきまで乱暴に僕を踏みつけていたアザミ様は急に顔を赤らめてモジモジしながら紫色の髪を弄る。
——いったい二人はどんな関係なんだ…?あの人は誰だろう…。
ホオノキという人はアザミ様を部屋に帰らせた。そして地面に這いつくばっていた僕に手を差し伸べる。
「大丈夫かい?見ない顔だね。新しく入った子かな?」
「は、はい…。新しいと言っても四か月も経っていますけどね…。」
その男の人の手を握ると僕を引っ張り起こしてくれた。
「ハハッ、そうか。俺はホオノキだ。ホオズキの兄貴は元気かい?」
「ホオズキ兄貴って…ひょっとしてホオズキ様の弟君ですか?」
「そうそう。でも二年間海の向こうにあるロンジンって国で留学をしてたからね。あれ以来まだ会ってないんだ。」
——どおりで今まで一度も屋敷で見たことがなかったんだ…。
「え、ではただ今キギスにお戻りになったんですか?」
「ああ、二年ぶりに帰ってきたというのに屋敷に誰もいないなんてね。みんなも相変わらず忙しそうだ。」
ホオノキ様は
「あ、そうだ!君、名前は?」
「佐次郎です。」
「佐次郎か!君はどこ所属だ?」
「僕は…。」
僕は黙ったまま向こうにある地下室の小屋に指を差す。すると、
「君、サツキのお姐さんに仕えている子か!」
と、嬉しそうに言っていた。
「は、はい…。」
「サツキさんは元気かい?」
「はい!最近笑うことが増えました!」
「それは良かった!」
ホオノキ様は急いで地下室に向かった。
「え…?!」
僕は地面に落としたお盆を取ってすぐにホオノキ様の後を追った。地下室の入り口から笑い声が聞こえる。階段を降りるとホオノキ様はサツキ様たちと楽しげに話をしていた。
「和ちゃん、大きくなったな~。これはこれは、可愛さも増したんじゃない?」
「もう叔父様ったら~。へへへ…。」
僕が三人に近づけるとサツキ様が僕に気づきてくれる。
「あ、佐次郎君!」
「佐次郎!お腹空いた。お料理は?」
「そ、それが…。」
僕は外であったことを話した。すると、サツキ様は
「怪我はない?」
と、僕の体を先に心配してくれた。
「はい、僕は大丈夫です!けど…。」
「俺が外で買ってきます!」
僕が困った顔をしていると、隣にいたホオノキ様が目を光らせて言った。そしてそのまま地下室から出て行った。
「あー、叔父様行っちゃった…。」
僕は呆然とその光景を眺める。すると、サツキ様が言う。
「元気な子でしょう?」
「はい…。なんかホオズキ様とは顔以外似てませんね…。」
サツキ様は笑みを浮かべた。
「フフッ、そう。あの二人随分歳も離れていて性格も全く違うの。私がこの屋敷に来た時唯一私に話をかけてくれたわ。」
「そうだったんですね…。」
「二人の性格は全然似てなかったけど、なぜか優しさだけはしっかり似ていてね。やっぱり兄弟だねって思った。」
「そう、叔父様は優しいし面白いよ!お兄ちゃんみたい!」
どうやら二年前まではホオノキ様が今の僕がやっていることをしていたらしい。僕はそんなホオノキ様の姿を想像して微笑む。
「優しい人ですね。」
暫く地下室で話をしているとホオノキ様が帰って来た。僕たちは四人で食事をしてホオノキ様の留学先でのエピソードを聞きながら大笑いした。夕方になるとホオズキ様やホウセンカ様が屋敷に顔を見せた。僕はホオズキ様の後ろに立つ。ホウセンカ様とホオズキ様はホオノキ様の顔を見て喜んで迎えた。
「おお、帰ってきたのか!我が息子よ。」
「はい!無事帰ってきましたよ、父上!ご健勝そうで何よりです!」
「ホオノキ、留学は楽しかったか?」
「はい、兄貴!」
「今日は帰りの祝いだな!」
そうして今夜は屋敷内で晩餐会が開かれ、みんなが夜が明けるまでお酒を飲んだ。僕はその酒臭い場でお酌をしていた。泥酔したホウセンカ様がアザミ様と家来たちに寝室まで運ばれる間にホオズキ様とホオノキ様は庭園がある屋敷裏に場所を変える。僕も二人に付いて庭園に行った。
「兄貴…。」
「ん?」
「サツキお姐さんたちはこれからどうなるんですか?」
「さあな…。俺は自分がホウセンカ家の長男であることが憎いよ。次男であるお前が羨ましいくらいだ。」
ホオズキ様は拳を握って夜空を見上げた。
「そんなことないです…!」
「いや、俺のせいでサツキたちはまともに陽の光も浴びてないから…。すべて俺のせいだよ。」
「……。」
ホオズキ様の言葉に一瞬空気が重くなった。
「そ、そんなことないです。二人は地下室で暮らしながらも楽しいって言ってくれました。」
「佐次郎…。あ、そうだ!休みの日に遠くに出かけましょう!」
ホオノキ様は首を傾げる。
「外出?」
「はい!地下室の二人と一緒に!」
「だめだ。誰かに見られたらどうする?」
「あれがあるじゃないですか!誰にも見つけられない方法!」
ホオノキ様は庭園の北側に指を差しながらどや顔を見せる。
「まさか、あの隠し通路か。」
「はい!俺、今日帰って来た時もあの隠し通路から入って来ました!」
「相変わらずお茶目な奴だなお前は。」
「あそこから抜け出したら誰にも見つからずに外に出られますよ?行きましょうよ、兄貴!」
「ハア…。仕方ないな。分かったよ。」
ホオノキ様の勧誘にホオズキ様は否応なしにみんなと一緒に出掛ける約束をした。
——あのホオズキ様が弟には弱いんだ…。
「な、ホオノキ。」
「はい?」
「ありがとうな。サツキたちのこと思ってくれて。」
「えへへ…。大したことないですよ。」
ホオズキ様の一言にホオノキ様は顔を崩して子供のように笑った。そして、ホオズキ様は、
「佐次郎、お前もありがとうな。」
と、僕にもお礼を言ってくれた。
「い、いえ…。僕は役目を果たしたまでです…。」
と、僕がへりくだるとホオズキ様は僕の頭を撫でてくれた。
「今日はもう地下室に戻っていいぞ。」
「はい。では、お先に失礼します。」
僕は地下室に戻って二人にお出かけのことを話して上げた。すると、
「ほんと?!わーい!」
と、和様が欣喜雀躍して喜ぶ。サツキ様も嬉しそうに言った。
「じゃあ、佐次郎君の故郷に行こうか。」
「え、お出かけって滅多にない機会なんですよ…?僕の故郷なんかで大丈夫ですか?」
「佐次郎、故郷の話するとすっごく楽しそうな顔するもん。和も行きたいな~。」
僕は顔を赤らめながらおたおたする。
「そ、そうでしたっけ…。」
「そうだよ!あと、佐次郎のママにも挨拶しに行きたいから!」
「そうよね。挨拶がてら行きたいもんね?」
「「ね~~。」」
なぜか、二人が意気投合して僕を見つめている。
「まあ、そう言われると僕は嬉しいですけど…。」
「「じゃあ、決まりだね!」」
そういうことで行き先は香咲町に決定された。あれから三週間という時間が過ぎて地下室の母娘は地下室の外の世界に足を踏む。
「うわ…。外だ…。」
「さあ、こちらへ。」
二人は人たちに目立たないように質素な身なりで出かけることにした。僕は二人を屋敷の北側にある隠し通路に案内した。庭園の裏にあるやぶを横にどけると人が這って通れそうな通路が現れた。僕たちはその通路を通り抜けて壁の外へ出る。その前にはホオズキ様とホオノキ様が馬車を停めていた。
「さ、早く乗れ。」
僕は二人を馬車に乗せた。そしてみんなが出発することを待っていた。すると、
「佐次郎、モタモタしないで早く乗れ!」
と、ホオノキ様に言われる。
「え、僕もですか?」
「当たり前だろ?」
そうして僕も一緒に香咲町へ行くことにした。馬車でみんなとお喋りをしながら数時間走ると、懐かしい故郷の香りがした。
「うわあ、ここが佐次郎の故郷なんだ!綺麗!!」
馬車の窓から顔を突き出すと赤色、黄色、青色、桜色、紫色の花が町を包み込むように咲いていた。そしてそよ風に花びらが舞い散って道中に芳しい花の香りがした。サツキ様と和様はその風景を見ながら感心する。前に目を向けると馬を御しているホオズキ様も笑っていた。
香咲町の入り口に差し掛かると僕は母のことを思い出した。
——ママ…。僕に会ってくれるのかな…。
僕が渋い顔をして項垂れると膝の上に置いた手に暖かい何かが当たる。和様の手だ。僕は和様に顔を向けると和様は笑顔で僕を安心されてくれた。
「和様…。」
「ヘヘ…。」
僕は和様の色白い顔を見て視線を泳がせる。その瞬間馬の嘶きとともに馬車が停まった。
「さ、降りていいぞ。」
「わー。もう着いたみたい!」
「和、足元気を付けてね。」
「はい!マ…じゃなくてお母様!」
僕たちは馬車から降りて香咲町の大通りを歩いた。町中も花びらが舞い散っていてホオズキ様はその光景を見ながら何かを思いついたように言う。
「そうだ!今年の花鳥宴はここの風景のような演出をしよう。」
「それいいですね!花王様も喜んで受け入れると思いますよ。」
しかし僕の頭の中には母のことでいっぱいでずっと母がいる路地裏の方を見据えていた。和様がそういう僕の姿を見て僕の手を握って僕が眺めている方向に歩き出した。
「え、和様?!」
「あそこに何かあるんでしょ?行こう!」
「和!どこに行くの?!」
和様は僕の手を握ったまま路地裏に向けて走り出した。サツキ様も慌てて僕たちを追いかけて来た。僕は和様を追い抜いて突っ走った。そして僕が暮らしていた住処に辿り着くと、そこには誰もいなかった。
「ママ…?どこにいるの?」
僕は急いで隣の八百屋に入った。そして八百屋のお婆さんに母の行方を聞いた。
「あら、佐次郎ちゃんじゃないかい?!」
「お婆さん!僕はママはどこに行った?」
するとお婆さんが残念そうな顔をして言う。
「佐次郎ちゃん、君のお母さんはつい先月…。」
「嘘…。」
和様とサツキ様はその話を耳にして手のひらで口を塞ぐ。僕は腰の力が抜けて膝から崩れ落ちた。
「幸せになってって言ったじゃん…。なんで…。」
お婆さんは座り込んだ僕の前にしゃがんで肩を軽く叩きながら言う。
「ナデシコが最後に残した言葉がある。」
「ママが…?」
「もし佐次郎ちゃんがここに戻ってきたらもっと自分のことを考えて幸せになって欲しいってよ。また、強くなって愛する人を守って上げてって。最後に、こんな形で君を生んでごめんねって…。」
僕は声も出さずに涙を流した。涙はとめどなくあふれ出て膝を濡らした。サメザメと泣いている僕の姿を見ていた周りの三人も静かに涙を流す。
そして僕たちは町の南にある母の墓に行った。墓の前で僕はサツキ様と和様を母に紹介した。二人も母に挨拶をした。そしてみすぼらしい墓場に白い花と生前母が好きだった握り飯を置いて墓から去った。その後僕たちは香咲町の象徴であるブナの大木の下で気持ちを落ち着かせた。
暫くその大木の緑陰の下で横になっているとグウーとお腹が鳴った。その音に和様が反応する。
「佐次郎、お腹空いた?」
「いいえ…。」
「嘘だ~。今お腹鳴らしたでしょ?」
僕は恥ずかしくて横になったまま後ろに向きを変える。
「二人はここで待ってて。ママが町で食べ物を買ってくるから。」
「はーい!」
「僕も行きます!」
僕もサツキ様について行こうとしてたサツキ様は決めポーズを取って言う。
「ママに任せなさーい!佐次郎君も大人しく待っててね?」
「は、はぁ……。」
サツキ様は一人で街に行ってしまった。大木の下には僕と和様だけが残った。清楚に座っていた和様は、左手でこっちに来て座りなさいと言わんばかりに地面を掌で軽く叩いた。僕は和様の隣に腰を掛けて座る。すると、和様は首を傾げて僕に訊いた。
「あの…佐次郎。大丈夫…?」
僕は悲しみをすべて押し包んで言った。
「はい、大丈夫です。」
「佐次郎のママのことは残念だと思うよ。」
「……。」
僕は黙り込んだ。が、和様は話を続けた。
「でも…。佐次郎は一人じゃないよ。和がいる。ママもいるし、お父様も叔父様だっている。だから。だからね…?もう悲しまないで…。」
その時僕の顔に小さく温かい手が僕の顔を右に向かせた。そして僕のおでこに柔らかい何かが当たった。僕が視線をおでこの方に向けると、和様が僕のおでこに口をつけていた。
「の、ののの、和様…?!」
僕は突然のことに体が凍った。そして胸がドキドキし出した。和様はおでこから口を離して言う。
「佐次郎が泣いたら和も心が痛いの…。だから、もう泣かないでね?」
「はい…。」
「それから…、これからもずっと和の側にいて…。」
「はい?」
最初僕はその言葉の意味が良く分からなかった。和様は顔を赤らめて言う。
「だから!…どこにも行かないでってこと…!!」
「は、はい。どこにも行きません…。」
「何があってもだよ?」
「はい、何があっても必ず側にいます。」
「絶対?」
「はい。」
和様は可愛らしい顔を赤らめて笑みを浮かべる。
「約束だよ?へへ…。」
彼女の笑顔は幼い自分には形容できないほど愛おしくて唇を乾かした。そして、鳴り止まないこの不可解な動悸は僕の顔を赤らめる。
…………。
僕はなぜ今になってこんな昔のことを思い出しているんだろう…。
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