一度死んだら美形の魔法使いに異世界転生させられて、その後溺愛してくる彼と悪役令嬢を婚約破棄までさせてしまいました

蓮恭

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5. 空色のジャン

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――家政婦兼秘書とは言っても、この世界のことは全く分かっていないので、アレクの侍従だという空色の髪の人と一緒に勉強しながら過ごすことになった。

高梨 由莉奈たかなし ゆりなです。アレクの家政婦兼秘書として傍にいることになったのでよろしくお願いします。」

 空色の髪の人はアレクのようにローブは纏っておらず、チュニックのような上着とズボンを身につけている。

「僕の名前はジャン・デ・ロワイです。ユリナ、アレクサンドル様のお側は本当に本当に本当に!大変だと思うけれど、頑張ろうね。」
「は、はい。」

 何度も念押しするところ、気持ちが入ってるなぁ。

「とりあえず、まだこの世界のことは何も知らないだろうから簡単に説明するところから始めよう。」

 それからジャンが教えてくれたことは、やはり元の世界のマンガみたいな世界観で。

 もう元の世界の自分は死んでしまったのだから。

 改めて実感してみると両親や友達に会えない寂しさはやはりあるものの、それでも最後に子どもの命を救えた。
 もしあの時私が助けずに子どもの方が亡くなっていても、アレクは何もしてくれなかったかも知れない。

 そう考えると新たな生をもらって生き直すチャンスを得た私は幸運なのだから。

 そしてジャンの話を整理すると……

 この世界は基本的に魔法のない世界である。
 この世界で魔法使いはアレクただ一人だけ。

 生活の様子については、歴史の苦手な私には元の世界のいつ頃が当てはまるのかはよく分からないけれど、多分現代の日本よりはずいぶん遅れている。

 アレクは元々長寿の一族で、二百歳くらいが平均寿命の為、私のせいで寿命が半分に減っても普通の人間以上には生きることができる。

 アレクは唯一の魔法使いの為、色々な国や人から依頼を受けて仕事をしたり研究をしている。

 寿命の話は少しホッとしたけれど、それでも私のせいで元々の命の時間を削ってしまったのだから罪悪感を感じずにはいられなかった。

「ではユリナ、早速食事の準備から始めよう。こちらの世界では朝昼夕と三回食事をとる。あとは午後のお茶の時間を取ることもあるけど、アレクサンドル様は寝食を忘れがちなので気をつけて。」
「了解です。」

 それから厨房で食事の支度を少し手伝ったけど、今日はほとんどジャンが作って、メニュー自体はパンや煮込み料理などあまり日本の洋食と大差ない感じだったので安心した。

 ただ、水道のようなものはあるけど火の元が竈門とか直火しかなくて、ガスコンロもIHもない。
 フライパンや鍋はあるけど、箸やお茶碗はなくて洋食器だけだった。

「なんだかチグハグしてるんだね。」

 思わずそう言うとジャンは不思議そうな顔をして、日本での話を聞きたがった。

 食事はアレクのお邸の中にある食堂でジャンと三人で食べたけれど、ジャンがどこからか調達してきた日本では慣れないドレスみたいなワンピース姿を汚さないよう食べるのは結構大変だった。

「アレク、もう少しシンプルな服の方が動きやすいかなと思うんだけど……。」

 私は居候みたいなもんで、お金も持ってないので言葉尻が小さくなってしまった。

「そうだな、何着か準備しておこう。」
「ありがとう。ごめんね。」
「謝る必要はない。ユリナが着ていた服は部屋に置いてあるが、こちらでは目立ち過ぎる。どうせいくつか必要だったしな。」

 いちいち美形のアレクが言うと何気ない言葉にさえときめいてしまいそうになるのが心臓に悪い。


 




 

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