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ユウキ カノ

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1.佐々木愛人

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 はじめて恋をしたのは幼稚園のときだった。近所に住んでいた同い年の男の子で、だれともあそばず、教室の隅でひとり絵本を読んでいるような子だった。おれが近くに寄るとうれしそうに笑うその子のそばに座り、言葉を交わすでも一緒に絵本を読むでもなく、ただ身体をくっつけているのが好きだった。
 たった一度、ふざけて唇と唇とをくっつけたことがあったけれど、小学校に上がる前に彼が引っ越していって、それ以来会ったことはなかった。
 はじめて恋人ができたのは、中学に入学したすぐあとだった。「つきあって」と何人もの女の子に告白されたなかで、こちらを見る瞳が一番きらきらしていた子の手を取った。彼女が勉強しているようすを、黙って眺めている図書館での時間がしあわせだった。結局「好かれている感じがしない」と言われて、一ヶ月後には別れてしまった。
 人生のかなり早い段階で、自分が関係を持つ相手の性別というものに頓着しないことに気づいていた。そして同時に、自分が性別を問わず好かれる存在であることにも、自覚的にならずにはいられなかった。

愛人まなとくん、おはよー」
「おはよ」
「愛人くん、この前話してたCDなんだけど」
「うん、貸してくれる?」
「愛人くん、そのCDわたしも持ってるよ」
「そうなんだ。どの曲がおすすめ?」
 一日がはじまる前の教室で、おれの周囲には言葉が飛び交っていた。紺色のスカートを揺らめかせて、女の子たちがころころ笑う。「愛人くん」と呼ぶ声が耳に入るたび、おれは右へ左へと会話を振った。
 黒板の端、日直の名前を書く欄に「佐々木愛人」の文字が白く浮かんでいる。昨日の日直だった女の子は自分の名前を消した跡におれの名前を重ねながら、きっと胸を高鳴らせたはずだ。だって今、遠くからおれのことをちらちらと盗み見ているのが見える。
 そのまなざしの熱っぽさに、名前を呼ぶ声に、自分の身体を支える骨の一本一本が強固になっていくのを感じた。
「ねーえ、今度いっしょにあそびにいこうよ」
 会話の合間を縫って、後ろの席の子が身を乗りだす。最近変わった席順のせいで、おれを取り巻く状況はまたすこし変化した。学校という空間では、話しかけてくる子と、甘酸っぱい視線を送るだけの子が、一定の周期でくるくると入れ替わる。更新されていく人間関係を把握して、どの子とどの子が友だちで、どのグループに確執があり、だれがおれのことを気に入っているかを見極める日々が、ようやく落ち着いたところだった。
 後ろのこの子はクラスでも目立つし、グループのなかでも、かわいいと騒がれているタイプだ。机の上に乗せられた大きめのおっぱいが、制服の赤いスカーフを押しあげている。
「いいよ。どこいきたい?」
 女の子からの誘いは基本、断らないことにしている。このあたりにはあそべる場所なんてなくて、遠出をすればそれだけお金がかかるけど、かあさんに頼めばお小遣いをくれる。そうしてもらえるだけの態度と成績と、そして容姿を示せていることはわかっていた。
「やった、うれしい。カラオケいきたいな」
「わかった。予定考えといて」
 心底うれしそうな声が跳ねた。この瞬間、教室のなかで、好奇心と嫉妬と落胆が渦巻く。人間はこわい。笑っていても、その皮膚の下ではなにを考えているか、だれにも見えない。もちろんそれは、おれにも言えることだけれど。
 女の子はいい。香水もつけていないのに甘いにおいがするし、痩せている子でも触れば必ずやわらかい。ひとやものを好きな気持ちに正直で、感情を隠すことより、表現することにその魂を費やしている。恋をした女の子のきらきらした瞳を見ていると、身体の芯から震えが起きる。
「はいはい、授業はじめますよー」
 チャイムとともに現れた先生が声を張り、教室じゅうがざわざわ音に包まれる。自分の席に戻る生徒、教科書の準備をする生徒。おれの近くに集っていた女の子たちも、それぞれ散り散りになった。
 教室が授業の色に染まった瞬間、紺色のスカートと黒の詰襟が行き交うあいだを縫って、だれにも気づかれないように、廊下のほうへ視線を送る。黒板に向かってクラス全員が前を見つめるなかで、おれの背中に向けられるもの。
 ひょろ、と縦に長い身体が、全身でこちらに注意を向けていた。一瞬、ほんの一瞬だけ視線が絡みあって、慌てたようにすぐ解かれる。
 真泉海まいずみかい、というそのクラスメイトは、真面目という概念をそのまま形にしたようなやつだった。陸上部のエースらしいけれど、そんな称号が似合うような華のある人間には見えない。太い黒縁の眼鏡で囲まれた瞳はいつも無感情で、色彩に欠けていた。
 彼に見られている、と気づいたのは、同じクラスになった今年の春だった。それ以来、視線を感じたらそっと目を合わせるようにしている。毎回気まずい表情を浮かべた視線が外されて、それでも、真泉くんはこちらを見ることをやめようとはしなかった。
 授業中、休み時間、たとえばそう、体操着に着替えているときの、ふとした瞬間とか。全身を舐めるような瞳で、彼はおれを見ていた。一度も話したことはない。記憶をたどっても、どんな声をしているかすら思い出せない。
「……なんでそんな見てんのかな」
「え?」
 となりの女の子が耳に髪をかけて聞きかえす。なにかを期待しているのか、頬がピンクに染まった。ほほえみながら、なんでもないよ、と応える。
 真泉くんの平らなまなざしは、こちらを見るときだけ熱を帯びた。彼の視線にも、その温度にも、おれ以外、たぶんだれも気づいていない。おれしか知らない秘密の視線が、ピリピリと指先に痺れを生む。的確に、だけど密やかに注がれるそのまなざしが、身体の真ん中に不思議な居場所を作っていた。

 今付き合っているのは、ひとつ年上の三年の先輩だった。髪もまつげも長くて、赤い唇が印象的な女の子だ。彼女――れなとは夏休み明けに告白されたときからの関係だった。
「愛人くん、れなのこと好き?」
 身体になじんだベッドの上で、下着だけを身につけたれなが腹這いになって頬杖をつく。両親が帰ってくるまでの時間をめいっぱい楽しむのが、おれたちの放課後の定番だった。ほとんど脂肪のないおっぱいが、分厚いブラジャー越しにマットレスに押しつけられる。さっきまで触れていたそこは、れなのたくさんあるコンプレックスのひとつらしい。
「うん、好きだよ」
「ほんと?」
「ほんと」
 れなは、会うたびにおれの気持ちをたしかめたがる。でもそんな自信のない彼女を安心させたいと思うくらいには、おれはれなが好きだった。
 暖房器具のない部屋で、えっちをしたあとの身体はひんやり冷たい。いつまでも続くと思っていた夏が終わり、地球はあっという間に本格的な秋を連れてきた。れなの肩に手をまわし、しっとりした肌に触れる。
「でも、今度クラスの子とあそびにいくんでしょ」
 れなが赤い唇をとがらせる。拗ねる仕草がかわいくて、音を立ててキスをした。
「そう。誘われたから」
「ちゅーとか、するんでしょ?」
 うしろの席の子の、豊かな胸を思いだす。相手次第だけど、きっとそういうことにはなるだろう。おれに好意があるのだから、求めてくるにちがいない。求められたら、受けいれる。
「わかんないけど、そうなるかも」
「……れなのことが好きなのに?」
 問われて答えに詰まる。これまでつきあった恋人たちにも、何度も同じことを聞かれた。だけどいくら言葉を重ねられても、おれには質問の意味がわからない。
「れなは好きだよ。でもあそびたいとか、触ってとか言われたら、それに応えたいって思うのが普通だろ?」
 言いながら、壁時計に目をやる。両親が帰ってくるまでにはまだ余裕があった。もう一回くらいできるはずだと踏んで、細い身体にまわした腕に力を込める。そのまま、やわらかく厚い唇へと顔を寄せた瞬間、れながするりとベッドから降りた。
「え、どうしたの」
 背を向けて制服を身につけはじめた彼女の背中に手を伸ばす。こちらを振り向かせようとして、その肩が震えていることに気づいた。
「……なんで泣いてるの」
 起きあがったせいで、ベッドに接していた肌が空気に晒される。寒さと、いやな予感に、一気に鳥肌が立った。「わかんないの?」と、れながつぶやく。怒りがこもった声だった。無音に満ちた部屋のなかで、甲高い耳鳴りがうるさい。床に落ちていた紺色の制服が、目の前で本来あるべき姿へと戻っていく。女子の制服ってそうやって着るんだ、なんて中身のない感想が頭をよぎった。
「れな、愛人くんのこと好きな自信なくなっちゃった」
 泣きながら、でも涙を拭う素振りも見せずに、彼女はぽつりぽつりと声を落とした。
「彼女がいるのにほかの子とデートするって、ぜったい普通じゃないよ。それ、れなのこと好きじゃないのといっしょだよ」
 自信、なくなっちゃったよ。繰り返した言葉が、涙の粒といっしょに床に落ちて弾ける。
「はじめてだったんだよ。愛人くんのこと、ずっと好きだったんだよ」
 れなが泣いている。それでも、おれは動けなかった。どうしていつもこうなるんだろう。そんな疑問がただ、頭の内側でぐるぐると渦巻く。
「……なにも言ってくれないんだね。やっぱり、れなのことなんて好きじゃないんだ」
 制服をまとい、スクールバッグを手にしたれなは、この部屋にやってくる前とまったく同じ姿をしていた。紺色のセーラー服の、その周囲を包む雰囲気は暗く重い。
「愛人くんも、ちゃんと好きになれるひとができるといいね」
 涙声で吐き捨てて、結局、一度も振り返らないまま、れなはしずかに部屋を出ていった。階段を駆け降り、玄関のドアをそっと閉める音がして、ようやく、自分はまた失ったのだという事実に思い至る。
「……なんでだよ」
 ベッドに倒れこんで漏れた声は、自分でも情けないくらい弱々しかった。
 ――普通じゃないよ。
 さっきまで聞こえていた耳鳴りの代わりに、れなの声がリフレインする。頭を振っても、身体を丸めても、布団をかぶっても、突きつけられたその切っ先が目の前から消えない。
「なんでだよ……」
 わからなくて、わからないことがこわかった。恐怖が、すこしずつ苛立ちに変わっていくのを感じる。階下から両親の帰ってきた音がしても、夕飯に呼ばれても、れなと抱きあったベッドのなかで、呻きながら朝がくるのを待った。

「愛人くん、ばいばい」
「うん、ばいばい」
 授業が終わり、クラスメイトはそれぞれ部活や家へ向かっていった。れなと別れたのだという噂はあっという間に学校じゅうに広まっていて、次におれの彼女になるのがだれか、みんなで腹の探りあいをしているらしい。ちらちらとおれを見る女の子の瞳に、普段より期待が溢れているのが伝わってくる。
 予定のない放課後は久しぶりだった。授業が終わったらすぐに待ち合わせてれなと過ごしていた日常は、あっという間に過去になってしまった。気分が乗らないからと、カラオケに誘ってくれた後ろの席の子との約束はキャンセルした。「また今度ね」と言われたけれど、当分その気になることはないという予感があった。
 秋の夕方、教室にひとりで取り残されるとひどく冷える。窓の外に見える空は、端がほんのわずか夜に染まっていた。手のひらを開いて机に広げる。ついこのあいだまで触れていた肌の感触を、まだ鮮明に思い出せるのに。れながもう恋人ではないという事実だけが、目の前に横たわっている。
 『もう一回話せないかな』。やっとの勇気を振り絞って送ったメールは、だけど送信した瞬間に弾かれて返ってきてしまった。佐々木愛人とつきあっているのだ、という意味の文字列で形成されていたメールアドレスを、れなは新しいものに変えてしまったようだった。
 れなのことが好きだった。低い背を、厚い唇を、真っ平らな胸を、自分自身を嫌う理由にしているれなが、たまらなくまっすぐに思えて大好きだった。れなのことを好きだと口にするたび、眉を下げて笑うところが好きだった。
 携帯電話を開いて、れなとのメールを読み返す。マメな連絡、毎日の「好きだよ」、きらきらにデコレーションされた絵文字。画面のなかできれいに整列していた大量の思い出が、ぽろぽろと手のなかから転がり落ちていく。
 どうして。どうしていつだって、彼女たちは去っていくんだろう。
 相手から好きだと言って、つきあってほしいと乞うて、抱いてとねだってきたのに。必ず最後、捨てられるのはおれのほうだ。
 おれはおれの世界のルールに従って生きているだけなのに、外の世界の人間は、時折おれのルールが間違っているのだと示してくる。
 ――普通じゃないよ。
「……くそ」
 うつむいて、こぼれそうな涙の代わりにつぶやく。シン、とした空間に、苦い自分の声が響いた。返事はない。当たり前だ。おれは、ひとりなんだから。
 音を立てて、廊下に続くドアが開いた。おどろいて顔を上げたら、陽が落ちている暗い教室でも、そこにいるのがだれか、すぐにわかった。真泉海だ。
 真泉くんは目を泳がせてわかりやすく動揺したあと、口を開いた。
「……ごめん邪魔して。忘れもの取りにきただけだからすぐ戻る」
 早口のその言葉に、ああ、結構低い声で話すんだな、と新鮮な感想を抱いた。教室の後ろに並べられたロッカーのひとつに身体を突っ込みながら、真泉くんはなにかを探している。
 ロッカーの中身に夢中なように見えるけど、おれにはわかった。彼が、こちらを意識していること。この状況に、緊張していること。
 おれは、れなに自分の気持ちをわかってもらうことすらできなかったのに、真泉くんの後姿は腹が立つくらい雄弁だった。
 携帯電話に目を落とす。登録されたメールアドレスの文字列から、れなの声が聞こえた。数日前に耳に刺さった言葉は、もとの形よりずっと硬く鋭く脳に響く。
 ――普通じゃないよ。
 それは、だれが決めたルールなんだろう。
「真泉くんさ」
 呼ばれた彼が、ぴたと動きを止めて、ゆっくりこちらを振り向く。無感情で平坦な瞳が、真泉くんの眼鏡越しに見えた。
「……真泉くん、おれのこと、見てる……よね?」
 言ってから、しまったと思った。真泉くんの表情が、わかりやすく動揺する。怯えた顔が、暗がりで色を失っていった。おれより細長く肩幅も広い身体が、その瞬間、子どもみたいに小さく見える。
「え、いや……は? な、に言って」
 ごまかすように笑って、真泉くんが身体を震わせていた。そこにはなんにもないのに、自分の足元に視線を落として、なんとかこの場を切り抜けようとしている。そんな態度を取ったら、もう逃げられない。もっと平静を装って、おれなんかに興味はないと、示さなくてはいけなかったのに。
「……そっか、やっぱそうなんだ」
 つぶやいたおれに、真泉くんの肩が跳ねる。教室の隅で縮こまっている彼のそばにいきたくて立ちあがったら、床と擦れた椅子が派手な音を立てた。その音に、また真泉くんが小さくなる。
 遠くから見ているだけではわからなかったけれど、真泉くんは想像よりもずっと背が高かった。学ランより、陸上部のジャージを身につけた今のほうが、その恵まれた体格には似合っている。
「なんで見てるの……って、聞いてもいい?」
 謝ろうとしたのか、唇が「ごめん」の形に上下して、でもそれは声にはならなかった。真泉くんの心臓は、きっと馬鹿みたいに暴れている。一度越えた境界線から引きさがることはできなかった。緊張がおれにも伝わってきて、思わず唾を飲む。問いかける表情は変えないまま、真泉くんのことをじっと見あげた。
「それは、」
 目はそらされているけれど、視界の端でおれをしっかり意識しているのがわかった。熱っぽくて、すこし粘ついた、真泉くんの視線。クラスが一緒になってから、ずっとこちらに向けられているのと同じまなざしだった。
「おれのこと、好き?」
 口にするだけでのどが渇く。鼓動がうるさくて、自分の声が届いたのかもよくわからない。言葉にした途端、はっとした。これは、真泉くんの緊張が伝わってきているんじゃない。おれ自身も、胸が高鳴っているんだ。
「好きだから、そんな目でおれのこと見るの」
 喉のあたりで暴れる心臓が、声を震わせる。責める口調にならないように精いっぱい息を混ぜながら、真泉くんを覗き込むように首を傾けた。
「そんな目、って、おれ、どんな」
 真泉くんの肌が、どんどん白に近づいていく。いつか親戚の葬式で見たことがある。それは、死んでいるひとの肌の色だった。おれの返答次第で、真泉くんはきっと、ここで一度死ぬんだろう。でもどうしてか、おれは真泉くんに生きていてほしいと思った。
 一歩踏み込んで、真泉くんの手に触れる。グラウンドにいたからか、冷たくて砂っぽい感触をした指先だった。
「こういう、目」
 指先だけで触れあう素肌を、親指でそっと撫でる。たしかな欲を乗せて、すり、すりと冷たい手を温めながら、視線は真泉くんから離さなかった。暗い教室で黒く光る真泉くんの瞳が、揺れて、揺れて、すこしずつ熱を帯びて濡れていく。
「……どうする? おれに触れちゃったけど」
 うるさかった心臓が、緊張から興奮へとそのリズムを変える。氷みたいだった真泉くんの体温は、人間らしい温度へと溶けていった。先に触れたのはおれ、だけどただ触れているだけの指先を離そうとしないのは、真泉くんのほうだった。
「おれがクズなの、知ってるでしょ」
 真泉くんが強く首を横に振る。大人っぽい雰囲気をしているくせに、大げさな仕草はずいぶんかわいらしかった。
「フツーじゃないらしいよ、おれ。それでもいいの」
「……っ、佐々木くんは、普通だ」
 静かに震えていた真泉くんが、急に声を張った。「ごめん」と、また唇だけで謝る。繋がった指先をくい、と動かして、話を続けるように促した。
「佐々木くんは、女の子と、いつも一緒にいる、し、みんなと話してる、し」
 そう言うあいだも、真泉くんはおれの手を離さなかった。身長が低いのはおれのほうなのに、手を引っ張る力は、真泉くんのほうが重い。
「……それが、真泉くんのフツーの定義?」
 音楽室から、吹奏楽部が鳴らす楽器の音が聞こえる。真泉くんの決めた定義のなかで生きるひとたちが奏でる音楽は、夜のはじまりに不釣り合いなほど明るかった。
「じゃあ、フツーじゃないのは、どういうひと?」
「おれ、みたいな」
 触れた指先を、真泉くんがぎゅっと握り締めた。声も、肩も、そしてきっと真泉くんの気持ちも、見ているこっちがつらくなるくらい震えている。どんなに震えていても、どんなに間違っていても、おれはもう、彼の手を離すことはできなくなっていた。
「……ごめん、佐々木くんのこともずっと、笑った顔がキレイだなって、だからずっとキモい目で見てた、ごめん、ごめん、ごめんなさい」
 真泉くんの声に、涙の色が滲んだ。荒い呼吸の合間に、なんとか言葉を紡ぐ姿がかわいそうで、かわいく見えて、思わず腕を伸ばした。ジャージの上から、骨ばった真泉くんの肩に触れる。ぶるぶると震える肩先を撫でるように抱き締めたとたん、「え、」と耳もとで戸惑う声が聞こえた。胸から直接響いた声を無視して、まわした腕に強くつよく力を込める。
 ジャージの奥に隠れている真泉くんのまんなかに触れるように。黒の学生服に隠した、おれ自身をさらけだすように。
「……おれ、男とキスしたことあるよ。初恋も男の子だった」
 肩口にあごを乗せて、静かな声を意識しながら言葉を繋いだ。身体のあいだで痺れたように声が振動する。その向こうで、どちらの音かもわからない心臓の拍が、どんどん早くなっていくのが聞こえた。視界の端で、真泉くんの腕が行き場を失って迷っているのが見える。
「おれたち、おんなじだよ。おんなじのがふたりも揃ってたら、それっておれたちにとってはフツーってことじゃない?」
 真泉くんの首筋に頬を当てる。真泉くんの肌からは、ほんのすこしうみのにおいがした。脈打つ血管の感触が愛おしくて、胸が熱くなる。首に感じるこの冷たさは、たぶん真泉くんの眼鏡だ。
「同盟組もうよ。フツー同盟」
 肩が冷たく濡れたのを感じて、震える身体をぐっと引き寄せた。ゆらゆらしていた彼の腕が、おれの背中を強い力で握りしめて、重心が後ろに下がる。その重さに、真泉くんのいのちを感じた。
「友だちになろ。おれたち」
 熱い息を吐いて、真泉くんが首を縦に振る。愛おしい相手の身体に触れるときの、身体の預け方を知らないでいる真泉くんが、それでもぐいぐいとおれの胸を押す。力強い全身の筋肉から隠しきれない好意が伝わってきて、満たされていく気がした。
 だれもいない教室の片隅で真泉くんを包む自分の腕が、おれのこともそっとあたためていく。いつのまにか、窓から見える空には一番星が出ていた。


***

 冬が近づいてきて、北海道のほうでは初雪が降ったなんてニュースが聞こえてくるようになった。授業が終わったころには空が夜に飲みこまれつつあって、これから部活をする海たちがかわいそうになってくるくらいだ。
 高校生になってから、陸上部での海の練習はどんどん長く、ハードになっている。同時に成績も上がっているようだったけれど、おれと海の過ごす時間は、ほとんどが部活で埋め尽くされていた。授業中に教科書の内容を頭に入れて、朝早く復習し、放課後はすべて部活に当てる。そのルーティンを崩さずにいる海は、どこまでも真面目で、どこまでもかっこいい。
「佐々木先輩、おつかれっす」
「おつかれさまー」
 部室棟の階段の下が、部活終わりのおれの定位置だった。湿ったコンクリートの階段を上がっていく後輩たちに返事をして、また冷たい柱に背を預ける。
 部活のあいだ、練習を黙って眺めているおれにも、部員はあっというまに慣れていった。よほどのことがない限り、どんな天気の日でも、おれはグラウンドの片隅で海たちの練習を見ていた。ただの友だちがそこまでするはずがないことを、みんななんとなく察していて、でもそれについてなにか言ってくるような奴らはひとりもいない。よく言えば嫌味がない。悪く言えば、陰でなにを言われているかわからない。表立って険悪な仲というわけでもないけれど、海とおれは、陸上部のなかでどこか浮いていた。
 見あげた空は深い黒で、星がきれいに光っていた。小学校のとき習って、唯一覚えているオリオン座の三つ星に向かって、はあっと息を吐きかける。顔の前で白いもやができて、視界をくもらせた。冬が近い。海と触れあう時間が、またきっと増える。
 海が部室で着替えているあいだ、考えごとをしているのが好きだった。授業で聞いたおもしろい歴史のエピソードや、友だちとの会話。だけど一番頭によぎるのは、直前まで見ていた陸上部の練習風景だった。じっとしていると寒いくらいの気温のなかで汗を拭う海、後輩に声をかける海、背筋を伸ばして走る海――そのうしろを黙って走り続ける、
 トントン、とコンクリートが響く音がして、顔をあげる。はじめに重そうなスニーカーが見えて、心臓がひとつ大きな脈を打った。そこにいたのは、夏目太一だった。
 いつも以上に硬い表情をした太一が、階段を一歩いっぽ踏みしめて降りてくる。たった今、頭に浮かんだ人物が目の前に現れて、おれはとっさに顔を背けた。太一は無言でおれの横を通りすぎ、白い息を空中に吐きだす。
 その背中が、強烈におれを意識している。よく考えれば、おれがこんな態度をとる必要はどこにもなかった。追いかけるように、声を張る。
「なあ」
 立ち止まった太一が、一瞬の間を置いてゆっくりとこちらに振り向く。横顔にはためらいが見えた。
「じゃーな、またあした」
 笑顔をつくって手を振る。どう反応したらいいのかわからない、そんな顔をした太一が、ぺこりと頭をさげて去っていった。おれより低い、すこし猫背な後姿。見えなくなっても、おれはその影を追うように、視線をそらせなかった。
「悪いまなと、遅くなった」
「おっ、おつかれー」
 震えるほど寒いのに、階段を駆け足で降りてきた海は、額に汗を浮かべていた。おれを待たせまいと急ぎながら、それでもきっと、丁寧に身体を拭いて、きちんと練習着をたたんで、靴の紐を結びなおして部室を出てきたのだ。となりに立つ海からは、あれだけの練習をこなしてきたとは思えない、清潔な香りがする。そういうところが、たまらなく好きだった。
「さむいー」
 空気を吸い込む鼻の先が、氷みたいに冷えているのがわかる。さむいと発音したその息の白さが、さっきより濃くなっていた。闇も、寒さも、ぐっと深くなっている。
「だから部室で待ってろって言ってるのに」
 曇った眼鏡を指であげながら、海がため息をつく。
「あそこで海のこと待ってるのが楽しいんじゃん」
「ばか、風邪ひくだろ」と、海がおれの髪に触れる。乗せられた手のひらがあたたかくて、かちこちに冷えた身体がゆるんだ。
 部員ではないおれが部室に出入りするのは気が引けるということもあるけど、急いで階段を降りてくる海を見あげる瞬間の、どきどきする感覚がたのしかった。
 しあわせだ、と思う。同時に、海をだましているような感覚に、ちり、と指先が痛んだ。海を待ち望む気持ちにうそはない。うそではなかったけれど、一〇〇%の純粋な真実でもない、という自覚も、たしかにあった。
 おれより低い、猫背の後ろ姿を思いだす。気づいたときにはいつも横顔や背中ばかりこちらに向けているあいつは、その一瞬前までは、おれのことをじっと見ている。その熱っぽい視線を知っていながら、おれはあいつを特別扱いすることがやめられなかった。
「……手、冷たくなってるんだけど」
 中学時代も高かった海の身長は、この三年近くでさらに伸びていた。海とは成長が比例しなかったおれは、今でもその顔を下から見あげている。下から見つめるこの角度を海が気に入っていることもわかったうえで、甘えたいときには悟られないようにすこし屈むことにしていた。
「それやめろって言ってるだろ」
 文句を言いながら、乱暴に、だけどひどくやわらかく、冷えた指先を包んでくれる。さっきまで全力で運動をしていた海の手は、湿っていてあたたかい。
「へへへ」
「……顔、ゆるゆるだぞ」
「海がそうしてるってわかってるくせに」
 そっと握り返すと、張りあうみたいにもう一度強く力を込められた。「言ってろ」と吐き捨てて、海は顔を歪める。
 今、おれの手に触れている海の指先は、おれのもっと深いところ、だれにも見せたことがないような部分にまで触れるようになっていた。そういう行為をするようになって久しいのに、海はまだ、おれの言葉を信じられないらしい。おれたちが「ただの友だち」じゃないことなんて、だれの目から見ても明らかだ。でも、肝心のおれたち自身は、最初に定めた「友だち」という枠からどう抜け出せばいいのかわからないまま、こんな関係をもう四年近く続けている。
 部室棟から校門までの短い小道、暗闇に沈んだ校舎の脇をふたりで歩く瞬間が、おれは好きだった。この世界におれたちしかいなくて、ほかの人間は入ってこられなくて、余計なことはなにも考えなくてもいいと、そう思える時間だ。
「――わはは、うるせえよ」
「うるさいのはお前だよ」
 校門の近くまできたとき、静かだった空間に突然笑い声が響いた。その声が聞こえる気配がする直前、海が、おれの手を離す。校門前にあるバス停には、練習を終えたさまざまな部活の面々がいた。
「おー、真泉と佐々木じゃん。おつかれ」
「おつかれ」
 同級生たちと言葉を交わす海の横顔を見あげる。ついさっきまで、おれのことで頭がいっぱいだという顔をしていたのに、すっかりよそいきの表情をして、カラカラの笑みを浮かべている。
 身体を、心を、思いを触れあわせるようになって、それを周囲から認識されるようになっても、海は、やっぱりかわいそうなままだった。この世に味方なんていない、そう思い込んでいる海のことを、だけどおれは苦しいほどに愛していた。

***

「あー……ほんとに今日で最後なのかあ」
 狭いシングルベッドのうえで、海と抱きあったあとだった。仰向けになって、見慣れた天井を見あげる。外では春の訪れを拒むみたいに雪が舞っていて、ストーブを置いていても、指先にほんのりと寒さを感じる。セックスの最中、延長ボタンを押せずに一度切れてしまったストーブの電源は、さっき海が入れ直してくれた。
 いつ訪れてもきれいに片づけられていた海の部屋は、今、片づけなければいけないものすら見えないほどまっさらになっている。何度も眠った硬いマットレスのベッドと、小学校のときから使っているという勉強机以外の持ちものは、すべて新居に送ってしまった。うっすらとブルーに染められた壁紙はいつもと変わらないのに、明日持ち主を失う部屋は色が沈んですこしさみしげだ。
「最後って、なにが最後?」
「海とこの部屋でえっちするのが」
「よかった。おれとするのが最後なのかと思った」
「……そういう冗談、好きじゃない」
「悪い。ちゃんと会いにいくよ。そのために陸上も辞めたし」
 ベッドに腰かけた海が、おれの前髪を梳きながらやさしい声を出す。下着だけを身につけた身体は、びっしりとついた筋肉で引き締まっていて、海の努力を想像させた。その努力のすべてを、海はおれのために捨ててしまうのだと言う。
「なあ、ほんとに陸上辞めちゃうの」
 髪に触れられる心地よさに目を閉じながら、何度も交わしたやりとりを繰り返す。海は小さなため息をついて、でも指先の動きはそのまま、つぶやくように口を開いた。
「距離が遠くなるなら、できることはしたいんだよ」
 わかるだろ、と海が唇の端を上げる。自嘲、というのだろう。海は、こういう顔でよく笑っている。
「……わかるけど。浮気の心配はしてないよ」
 おれが語気を強くしても、海はやっぱり唇を歪めた。返事の代わりに、そういえば、と明るい声が降ってくる。
「最後って、まなと、いつかは帰ってくるんじゃないのか」
 話をそらされた、と思った。でも、ほんとうに聞きたい核心に触れるのはやめる。難しいことを考えるだけの体力は、さっきまでの行為でずいぶんすり減らしてしまった。
 寝返りを打って、海のほうを向く。枕に鼻が近づいて、ふわりと海のにおいがした。重い身体からよけいに力が抜けて、芯のない声が出る。
「んー、どうかなあ」
 今すぐ眠ってしまいそうなまぶたに力を入れて、その言葉に応えた。海はおれの髪を触るのが好きだ。無意識なのだろうけど、ふたりでいるときはよく触れてくれる。きれい好きな海が、汗で湿った髪に手を伸ばしてくれることがくすぐったくて、震えそうなほどうれしい。
「海といっしょに暮らせるなら戻ってきてもいいかも」
「ばか」
 海の声が低くなって、頬をつままれた。口の端をきゅっと結んだのを見て、怒っているんだなとわかった。おれが海のことを想う素振りを見せると、海は必ず不快そうな顔をする。
 信じていないのだ。おれの本気は、いつも海には伝わらない。
「なーんでそうやって信じてくんないのかなあ」
 さらに寝返りを打って、ベッドの上で腹這いになる。髪をもてあそんでいた海の手がするりと離れていった。頬杖をついた手のひらが冷たい。
「それは、おまえが」
 おまえが。そこまで言って、海が黙りこむ。あとに続く言葉は、いったいなんだろう。想像してみて、思いつくそのどれもがおれを責める台詞であることに胸が痛む。
 海といっしょに暮らせるなら、この街に戻ってきてもいい。それは、まぎれもない本心だ。海がおれとともに生きていく決意をして、そしてそれをだれに咎められてもいいと言うのなら、どこにだっていきたかった。
「……そんなこと言うなら、はじめからおれのそばを離れたりするなよ」
 シーツの上で、海がこぶしを握る。手に力を込めることができないのか、指を開いては閉じ、開いては閉じをくり返していた。その動きを止めるように、手のひらを重ねる。
「ごめん。でも、離れても大丈夫だって思いたかったんだよ」
 あと数週間で、おれたちは大学生になる。海は県内の国立大に、おれは関東の私立大に、それぞれ入学することが決まっていた。
「離れて、でもそれでも壊れなかったら、おれたち、ぜったい大丈夫だって思えるじゃん。ほしいんだよ、海といっしょにいる自信が」
 目を合わせようとしない海に言い聞かせながら、心の底で考えていることとはほんのすこし形のちがう言葉がすらすら出てくる自分に笑ってしまう。
「……たった四年だよ。大丈夫、おれたち、それと同じ時間いっしょにいただろ」
 ほんとうは、自信がほしいのは海のほうだ。おれは海に自信をあげたい。自分が自分である自信を、おれがそばにいるという自信を。
「なあ海、もっかいしよ」
 重ねた指をほどいて絡ませる。応えるかわりに、腕をぐっと引かれた。反転する身体の上に海が覆いかぶさってくる。すっかりなじんだ重さが、熱を持って皮膚と言う皮膚のすべてに触れた。
「まなと」
 なんの棘もない声が、その舌や指と同じように肌をなぞって、あとには快感と鳥肌だけが残った。深い深いキスをして、離れていった海と視線が交わる。黒い瞳が、欲に濡れていた。
 ――この目を、おれはほかにも知っている。
 海のうしろを走る猫背が、部員たちにまぎれる硬い髪が、階段を降りてくるスニーカーが、視界の端に映るたびに気づいていた。
 傍から見れば、無表情なあいつの瞳はいつもと変わりないように見えるのかもしれない。だけど、おれにはわかる。
「……まなと、まなと」
 海がかすれた声でおれを呼ぶ。その響きだけで、腰の奥が甘くしびれた。
 見られている。深層に炎を帯びた目が、じっとこちらを見ている。震える肌が、自分のものではなくなったみたいだった。
「海……もっと」
 首に腕を巻きつけて、耳もとでささやく。頭のなかを、海でいっぱいにしてほしい。それ以外のことを考えているおれなんて、いなくなってしまえばいい。
 この街を離れれば、おれが海だけになれるんじゃないかと思った。
 あの視線から逃げれば、迷いなんてなくなるんじゃないか。そう、思った。
 ――またな! 十円ぜったい返すから!
 最後に会ったあの日、あいつに投げかけた台詞を覚えている。すべてを海だけで満たしたいと願って、行き先も告げずに別れたはずだったあいつに、おれはそんな約束を口走ってしまった。
「……好きだよ」
 おれの声に、海が動きを止める。視線を上げた顔は、快楽からか、なにかに耐えるように歪んでいた。
「ずっと、ずっと、好きだよ」
 目を閉じたら、涙が流れていった。奥をこすられる感覚がどんどん強くなっていって、限界が近いことを感じる。苦しいくらい満たされた腹のなかに、どうしようもない空白がある。その場所から、おれは目をそらした。
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