上流貴族の地位を継げないようなので大人しく一般人になります

４５話 トリオスと学園祭

　家から国設アトラト学園までたどり着く方法は三つ。

　一つは上流貴族が使用する馬車だ。お金も払わなくていいし、快適に移動できるのだがなにせ目立つ。上流貴族にはそれぞれ家によって紋章があるため誰がどこに来たかが分かってしまうので却下。

　二つ目は徒歩。身バレの可能性はほとんどなく、一番手軽な移動手段だがなにせ時間がかかる。それに疲れる。疲れてしまっては学園祭が十分に楽しめないと判断し、これも却下した。

　となれば、三つ目は何なのか、という話になる。これは一般の市民がよく使う方法だが、魔法駆動車というものがある。車輪がついており、それを魔法で動かすものだ。これなら少しばかりのお金はかかるものの、一般の市民にカモフラージュも出来るしそこまで時間がかかることもないのでこれを利用することにしよう。

「アトラト学園前駅までの切符をお願いします」

「はい、銀貨一枚でどうぞ」

　駅員さんは俺の出した銀貨を受け取ると、「アトラトガクエンマエエキ」と書いてある切符を渡してくれた。
　ちなみに、この魔法駆動車どの駅に行くにしても一回銀貨一枚で行ける。ここらへんの都市には結構通っているため上流貴族という役職さえなければ割と便利な乗り物だったりする。
　さて、アトラト学園までやってきたが入り口には受付があった。座っていたのははて、誰だろうか？

「こんにちは」

「こんにちは。本日は学園祭となっておりますが招待状はお持ちでしょうか」

　シュンから送られてきた封筒の中には招待状が入っていたのでそれを差し出した。

「ありがとうございます。ごゆっくり楽しんでいってください。トリオスさん」

　あまりにも自然な感じで言われてしまったので一瞬気付かなかった。変装バレたか！？

「これ、バレます？」

「あ、すみません。シュンさんのお兄さんでしたよね、トリオス様って。私は分かりましたがおそらく他の生徒は分からないと思いますけど……」

　いや、けど別に行きの魔法駆動車ではバレなかったから大丈夫かな……。
　あとなんでシュンの兄だと分かる。

「生徒のある程度の情報は生徒会がある程度把握していますので……。当然他に流すことはありませんのでご了承を」

　生徒会の役員だったら納得はできなくもないが、いきなり当てられると驚くよ。

「しれっといてもバレることはないですから……。それよりもシュンさんが待っているんじゃないですか？」

　ここは気になる所だったがそう言われちゃなんとも言い返せない。
　おそらく観察眼とかがこの人はものすごい人なんだよ、きっと。と自分に言い聞かせて俺は学園へ入っていった。

　ちなみに後からその人が生徒会長だったという事を知る。