上流貴族の地位を継げないようなので大人しく一般人になります

夏樹

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90話 アトラト神

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 アトラト神。
 学問の神様とされていて、ありとあらゆる学問を教えたとされる神。
 そこから名前を頂いて国設アトラト学園という学校名になっている。

「けど、確かに魔法も文字も計算もアトラト神が教えてくれたものっていうのはなんか変だよな」

 セイヨウがそう言うと、フレイドが賛同する。

「前、アトラト神に関する文献を読んだんですけど、学問自体はそれ以前から発展していたのですが、それぞれを一般教養として統一したのがアトラト神だったような気がします」

 確かに神話になるのなら学問はアトラト神が教えてくれたものと言ったほうがそれっぽくはなる。
 ミトラス神も事実をかなり誇張しているが、神話と事実はそもそも同列で語るものではない。
 しかし、この世界の神というのは最初からいたのではなく、功績が認められて神として語られる。
 でも、その「功績」はただ単純な偉業とかではなさそうであるのだ。

「とりあえず、図書館に行って調べてみるほうが手っ取り早いんじゃないか?」

「そうかもしれないけど、仮説だけでも立てておきたいわね」

 ミンキュが僕に向かっていった。
 その後、仮説は「魔法使いであったアトラト神が貴族文字とともに魔法も教えた」という、至極まともなものに落ち着いた。

「それで、図書館って言っても色々あるけどさ」

 セイヨウが僕に向かって言ってくる。

「とりあえず、できるだけ大きい図書館の方が良いんじゃない?」

「大きい図書館っていうと、国営図書館がこのあたりだと一番でしょうか?」

「え、国設ミトラス図書館があるじゃん」

 どん引きされた。
 詳しく話を聞くと、というか少し考えれば分かることなのだが国設ミトラス図書館に入るためには貴族門を通らなければならない。
 よほど上流貴族と関係のある人じゃなければ手続きがとんでもなく面倒だという。

「大きい図書館だけれども、一般人が行く場所じゃないわね」

 感覚が狂っていた自分を戒めつつ、とりあえず国営図書館に向かうことになった。
 そんな時に貴族のカードが熱を発し始めたので何事かと思ってしまう。

「ご、ごめん。ちょっと先に行っててくれない?」

 慌ててそう言うと、人目のつかないところまで行き貴族のカードを耳にあてる。
 聞こえてきたのは、少し動揺したようなトリオスの声だった。

『シュン、いきなり呼び出してすまない。緊急なんだ』

「どうかしたの?」

『落ち着いて、聞いてくれ。サレスティが……』

 サレスティ?しかも、この切り出し方は嫌な予感がする。

『サレスティが、亡くなった』

 は?
 言葉としては分かったが、状況が理解できなかった。
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