上流貴族の地位を継げないようなので大人しく一般人になります

９１話 ライバルよ、永遠なれ

　寝耳に水、とはまさにこのことで。
　状況の理解も出来ずただただ言葉を聞いているだけだった。

『シュン、今すぐこちらに来てほしい。Warpワープ魔法が使えるようなら使ってくれ。手順は指示する』

　なぜ、サレスティが？
　訳も分からなかったが、Warpワープ魔法の準備は出来ていた。

『シュン、いいか？リンク地点を一にして一方的ワープを試みてくれ。パスワードは#FFFだそうだ』

　僕は言葉の意味を理解する以前にすでに口が動いていた。

「Warp toA A="一" Pass="#FFF"一にワープ、パスワード・白」

　その瞬間に周りの景色が消え、そして目の前にアステイモ公が現れた。

「おお、シュンか。わざわざすまないのぉ」

「トリオス公はどちらにいらっしゃいますか？」

「玄関に出ておるぞ、廊下を右に曲がれば分かるはずだ」

　軽く礼をして玄関まで歩く。

「いきなり呼び出して悪いが、シュンはサレスティと仲が良かったし伝えておかなければならない」

　ワープした時位から平静さを取り戻して、なんとか事実を受け入れることが出来ていた。
　当然、いきなりのことなのでまだ少し読み込めていないが。

「サレスティは何者かによって魔法のダメージを受けて亡くなった、魔法は属性魔法の火魔法。犯人は見つかっていない」

　しかし、なぜサレスティが狙われたのか？
　分からないはずなのだが、唐突にとある言葉が思い浮かぶ。

『こういう時は、何らかの争いが起きる』

　セイさんと話していた時のことだっただろうか。
　まだ争いには発展していない。だが、サレスティはトリガーになりえる。

「例えば、犯人を貴族区にいる人だけに絞ると、火魔法を使える人が誰だか分かる？」

「五人くらいは居たような気がするけどなぁ……」

「とりあえず知っている範囲で全員挙げていってくれない？」

　トリオスがその五人を挙げていくが、やはり、というべきかその人物の名前も入っていた。
　その名前は、「シェイド」。
　彼なら、もしかして、サレスティを殺す動機があるかもしれない。

「サレスティは今どこにいる？」

「アトラト家にいるはずだが、向かうか？」

　僕はうなずくと、兄はすぐに馬車を用意した。

「弔いの言葉くらいはかけるのが礼儀ってものか」

　トリオスは馬車でアトラト家まで向かったのだった。


　サレスティはあまりにも無残だった。
　おそらく火魔法を真正面から喰らったのだろう。

　僕は無言で手を合わせると、サレスティをじっと見てみる。
　それにしても、サレスティならよほどのことがなければ火魔法なんてこんな正面から喰らわないと思うのだが……？

　無属性魔法には人を操る魔法があったよな？
　セイさんの妹がそうだったように。