ゲームのキャラに恋するのは規約違反ですか？

この世界にはヒーローがいない

ゲームのキャラに恋するのは規約違反ですか？ １６

　このゲームは、キーボードとマウスでも操作可能だが、私はやっぱりコントローラーで遊ぶのが好きだ。ゲームと言ったらコントローラーと言うのが子供の頃から染み着いているからかもしれない。
「さて、今日は何をしようかな……」
　レベル上げか、それともアイテム集めか、はたまた未消化のクエストを進めるか。
　そんなことを悩みながら、毎日の日課であるプレイヤーが個人経営している店のチェックを始めた。
　アイテムの値段を見て、相場が変動しているかどうかを判断し、安いものがあれば、透かさず購入する。
「お！　激安杖発見！　購入購入」
　杖は魔法使いの武器だが、私のキャラクターは残念ながら戦士だ。使うことはないだろう。
　だが、不要なものであれば、買った時の値段よりも高く売ればいいだけだ。
　こうやって、アイテムの値段を調査し、安く買ったり、相場より少し高くアイテムを売るというのは、少し株ににているのだが、私の場合は、どちらかというと衝動買いに近いのかもしれない。現実の世界でこれをやっていたら、私の通帳には０が縦に並んでいただろう。
「お金はまだまだあるけど、程々にしておかないとな……」
　これが最後と、自分に言い聞かせながら、それを守れず、次の店へとコントローラーのスティックを倒していた。
　一通り、出展している店を周り終えたところで、やっと、これからの予定を思い出すことができた。
「そうだった。今日はみんなと一緒にダンジョン攻略に行くんだった」
　うっかり、友達との約束をすっぽかすところだった。
「時間は……よかった。まだ間に合いそう」
　ちょうど、待ち合わせの時間まで時間を潰せたようだ。
　時間にも余裕があるし、急がなくても平気だろう。
　そう思っていた矢先の出来事だ。
　画面の右上にあるミニマップに、不穏な集団を発見した。
　それは、大通りから外れ、小さな路地の上。そこには、三つのプレイヤーアイコンが、一つのプレイヤーアイコンを囲んでいるように表示されていた。
　場所といい、構図といい、何らかの揉め事が起こっていると見て間違いないだろう。
　だとしたら、私はその場所に行かなければならない。
　だって、私のキャラクターはヒーローだから。