神に同情された転生者物語

チャチャ

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第12話:ギルマスの呼び出し

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朝から、俺とギンはギルドマスター・ジークさんに呼ばれていた。

「……また、指名依頼とかじゃないよな……?」

トボトボと歩きながら、頭の上でもふもふが大きく伸びをする。

〈ふぁぁ~……なぁなぁ~、これから何すんだ~?〉

「ギルマスターに呼ばれたんだよ。俺にも理由はわからんけど……」

〈ふ~ん。オイラ、ギルマスターってちょっと怖いイメージ~〉

「俺は毎回ヒヤヒヤしてる」

道中、街の人々がこぞってギンを見つめてくる。
けれど、本人――いや本獣?は、まったく気にしていない様子だった。

「……呑気なやつだな」

 

* * *

 

ギルドに着くなり、すぐ応接室に通された。
ノックすると、いつもの渋い声が返ってくる。

「入ってくれ」

「失礼します。呼ばれたので来ました」

「うむ。そこに座ってくれ」

椅子に腰を下ろした瞬間、ジークさんがじろりとこちらを見る。

「さて……なぜ呼ばれたか、分かるな?」

「えーと……また指名依頼とかじゃないですよね? 嫌ですよ~もう!」

「はぁー……やっぱり忘れてたか。お前、ギルドで“楽しく”やってたらしいな?」

「ああ!もしかして、“もふもふ会”のことですか? ジークさんも触りたかったとか?」

「違うわ!バカ者があああ!!」

机をドンと叩いて、ジークさんが立ち上がった。

「お前、ギンの“従魔登録”してないだろうが!」

「………………やっべー。完全に忘れてた……!」

「街中で従魔を連れまわすなら、必ず登録が必要。それがギルドの規約だ!」

「す、すみません!今すぐ登録します!」

「まあ、初回だし今回は注意だけにしてやる。だが次はないと思え」

「……はい。以後、気をつけます……!」

 

* * *

 

その後、ギルドで従魔登録の手続きをした。

登録には“証明”として、首輪の装着が義務づけられている。
ギンには、深紅の首輪を選んだ。

「どう? 苦しくないか?」

〈うん!ぜーんぜん平気!むしろ、かっこよくないか~?〉

「めっちゃ似合ってるよ!……って、何この親バカ感」

俺のアマアマ具合は今日も健在だった。

さあ、これで一件落着――と思ったその時。

「おい、新人!ちょっと触らせてくれ!」

「俺もだ!前回触れなかったから今度こそ!」

冒険者たちに囲まれ、ギンの“もふもふ会・第二弾”が突如始まった。

「……またかよ」

そして――

「……な、なんだこの感触は……お、俺も混ぜてくれぇぇ!」

ジークさん、まさかの参戦。

もふもふを抱いたその顔は、職務の重みをすべて忘れたような陶酔の表情だった。

「ふ、ふふふ……! もふもふは……正義……! 最強……! サイコー……!」

ギルドマスター、完全に堕ちた。

「……なんかもう、誰もギンには勝てない気がしてきた……」

 


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