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私の初恋
* ゆずといつき
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「はぁっはぁっ…」
「柚子!どうだった?渡せた?」
「何とか渡せた…でも、あんまり嬉しそうじゃなかった気がする…。迷惑だったかな…。」
私はたった今、上崎先輩に書いた手紙を渡し終えて一年二組の教室に戻って来たところだった。
無事に手紙を渡せた安堵感と手紙を受け取った上崎先輩があまりいい表情ではなかったことに対しての不安感で押し潰されそうだった。
そんな私を乙葉は大丈夫だよと諭してくれた。
夕方のピアノ教室のレッスンも全くといっていいほど頭に入ってこなくて恋は盲目とはこういうことなのかな、なんて考えながら一日を終えた。
翌日、いつものようにココアと一番最初に顔を合わせて私の一日は始まった。
家を出てからも昨日の上崎先輩の浮かない顔が頭にこびりついていて胸が苦しくなった。
やっぱり、私にはまだ恋なんて早かったのかな…。
今日の私は放課後までずっとそんな思いを抱いて過ごしていた。
ホームルームが終わると、生徒達が一斉に教室からいなくなリ始める。
私はいつものようにノロノロと教材を通学用のカバンに入れ始めた。
「もお、柚子ってば早くしなさい!」
「はあい」
いつの間にか隣に来ていた乙葉に急かされながら帰り支度を急いだ。
乙葉は携帯を触って私を待っている時間を潰していた。
ようやく帰り支度が済み、乙葉に声をかけようとした時。
「花白さーん!呼ばれてるよ」
クラスメイトの女子が私の名前を呼んだ。
私は乙葉と顔を合わせると、呼ばれた方へ足を運んだ。
教室の入口まで来ると、私への来客が誰か分かり声を失った。
「花白柚子さん」
「はっ…はい」
私の視界には昨日ぶりの上崎先輩が写っていた。
心臓が壊れそうなくらい大きな音を立てて動き始める。
「昨日はありがとう。あの…これ…よかったら見てください。じゃあ、これで」
上崎先輩は私に白い封筒の手紙を手渡してそれだけ言うと走り去っていった。
私は呆然と小さくなっていく上崎先輩の背中を見つめていた。
上崎先輩が見えなくなると同時に私の後ろから乙葉が声をかけた。
「よかったじゃん!柚子!」
「うん!手紙貰った」
「読んでみたら?」
「今読んで振られたら悲しいから家で読むことにする!」
私は上崎先輩から貰った手紙を抱きしめて教室に戻り、カバンに手紙をしまった。
今日の部活はいつもより長く感じた。
上崎先輩から貰った手紙を早く読みたい気持ちから時間が進むのが遅く感じている。
そんなに私は恋をしているんだと実感すると頬が熱くなった。
「花ちゃん、顔が真っ赤だよ!お熱?」
「いっいや!大丈夫です。」
愛理先輩の心配を浮かべた顔が私を覗き込んだ。
「愛理先輩、大丈夫ですよ!柚子は今、いい感じなんです」
「いい感じ?」
乙葉が楽しそうにそう言うと愛理先輩はすぐに食いついた。
「恋してるんですよ!」
「恋!?ああ、例の二年生の彼?」
「はい、実は今日…」
「乙ちゃん!!ちょっと待って…!」
乙葉の性格からきっとこのまま放っておいたら全てを話してしまうと察した私は慌てて乙葉の言葉を制した。
「花ちゃん、続き気になる!」
話の途中でお預けを食らった愛理先輩が私に近寄り続きを催促した。
「愛理先輩、先輩にはちゃんと教えますから今はまだ話せません」
私の真剣な目に愛理先輩は、負けてくれた。
「花ちゃんのお願いなら聞いてあげなきゃね!絶対上手くいったら教えてね」
「はい!頑張ります」
一連の話を漫画を読みながら聞いていた穂乃果先輩が吹き出した。
「花ちゃんまさかまだ上崎に片思いしてるの?」
私は恥ずかしさから顔を両手で覆いながら頷いた。
「花ちゃん可愛い。こんなに可愛いのに何故上崎なんかに惚れちゃったのかね」
「上崎先輩みたいな素敵な人はなかなかいません!!」
私は思わず穂乃果先輩に向かって言い返していた。穂乃果先輩はそんな私をみてまたまた吹き出した。
「ははっ!花ちゃん可愛い!上崎にやるくらいなら私が嫁にもらいたいくらいだわ、まあ上崎なら彼女もいないしすぐオッケイくれるでしょ」
その言葉に私は飛びついた。
「上崎先輩って彼女いないんですか!?」
「いない、いない!」
穂乃果先輩は不敵な笑みを浮かべながらそう答えた。私は安心してホッと胸を撫で下ろした。
「上崎はいじられキャラだから本気で告る子はいないし、話しかける女子の目的は大抵、罰ゲームで利用するためだから安心して大丈夫だよ」
「罰ゲーム…?」
「まあ、あいつも可哀想だよ…」
何かを思い出したように呟いた穂乃果先輩の顔を眺めながら私は首を傾げた。
「ううん、花ちゃんなら大丈夫だよ!上手くいったら私にも教えてね」
私は頷いた。
今日の部活は穂乃果先輩以外のメンバーで体育祭の写真を物販用に加工してアルバムにしたりした。
穂乃果先輩は週刊の漫画に没頭していた。
アルバムが完成すると同時に今日の部活は幕を閉じた。
先輩達に手を振って部室から出た。
そこからはいつも通り電車に乗り家路を急いだ。
乙葉と別れてから、いつもなら歩いて帰る道を小走りで帰った。
早く早く、先輩からの手紙を読みたい。
ただそれだけが私の活力だった。
ガチャン。
「ただいま!」
私はいつも通りココアを抱きしめるとリビングのソファーに勢いよく腰掛けた。
いつもと違うのは、通学用のカバンから手紙を取り出し読み始めたことだった。
糊付けされた封筒を丁寧に開けると中からは一枚の手紙が現れた。
ココアを膝に抱いたまま手紙を開いた。
深呼吸して読み始める。
『花白柚子さんへ
初めまして、上崎樹です。
昨日は本当にありがとうございました。
花白さんからの手紙を読んで元気をもらいました。
まさか、自分宛に手紙を貰える日が来るなんて思ってもみなくて、正直、驚いています。
もしよかったら連絡して下さい。
写真、ありがとうございました。
連絡先…。
上崎樹より』
「わあああ!」
手紙を読み終えた私は溢れ出す感情を堪えきれず大きな声で叫んでいた。
いきなりの大声に、膝にいたココアが驚いて身震いした。
私の心臓は壊れそうなくらい高まっていた。
ココアを膝から下ろすと自分の部屋に駆け上がり、着替えを済ました。
手紙に書いてある連絡先を携帯の連絡先に追加した。
深呼吸をして上崎先輩の連絡先にダイヤルした。
プルルルルップルルルルッ
恥ずかしさから2ゴールだけして切ってしまった。
その次にもう一つ記載されていたメッセージアプリの友達に追加してメッセージを送った。
『上崎』
という名前で登録された先輩のアカウントを見るだけでドキドキしてしまう。
先輩のアカウントの写真が黒い柴犬になっていて犬が好きなのかな、なんて勝手に思い込み嬉しくなってしまった。
私は先輩にメッセージを打つ。
『お疲れ様です。
花白です。手紙を読ませていただきました。
すごく嬉しかったです。
また機会がありましたら、お時間がある時にお話したいです。
よろしくお願いします。』
初めてのメッセージ…絵文字は付けない方がいいかな…。いや、でも少しくらい何かあった方が可愛いかな…。
散々悩んだ結果、自分の名前のところに向日葵の絵文字を付けてみた。
「はあ…。緊張する。まだバイト中かな」
私は夕飯の時も入浴の時も携帯を気にしていた。
今まで携帯をこんなに気にしたことはなかったから私が私じゃないみたいだ。
夜9時を過ぎて今日はもう返事は来ないのかな…。
と諦めていた時。
ピロンッ。
メッセージを受信したことを知らせる通知音が私の部屋に響いた。
慌てて携帯を握りしめ、画面を見つめた。
『こんばんは、上崎です。
遅くにすみません。
連絡していただき嬉しかったです。
もし、今からお時間があれば電話してもいいですか?』
私は画面に指を走らせ返信をした。
『はい、今から大丈夫です。』
私の携帯が着信を告げるまで1分もかからなかった。発信元には夢に見た上崎先輩の文字があり、慌てて画面をスライドして応答した。
「はい、もしもし」
『もしもし、花白さんですか?』
「はい!花白です」
『あっえっと…上崎です。こんばんは』
「こんばんは!あのっお手紙ありがとうございました。」
『こちらこそありがとうございました。バイト終わるの遅くなっちゃって、こんな時間にごめんなさい。よかった、電話出来て。』
やっぱり、バイトしてたんだ。
上崎先輩の話し方は丁寧で、聞いていると不思議と安心感を覚えた。
「こちらこそありがとうございます。あのっバイトお疲れ様でした!」
『ありがとうございます!なんか嬉しいな。この間、花白さんうちの店に来てくれたよね?』
「おっ覚えてて下さったんですか!?」
上崎先輩に覚えていて貰えたことが嬉しくて反射的にそう答えていた。
『うちの店に来る生徒は大体決まってるから珍しくて頭に残ってた。』
「覚えててもらって嬉しいです。」
『よかったら、また食べに来てください。』
「はい」
『今日はお礼が言いたくて電話したんだけど、今度直接会って話をしたいんだけど大丈夫?』
「いつでも大丈夫です!」
『また、メッセージ送っても大丈夫かな?えっと…あんまり女の子と話さないから…なんか緊張しちゃって…あの、花白さんの気持ち、嬉しかった。
俺も花白さんのこともっとよく知って仲良くなりたいと思った。だから、あの…お付き合いしてくれませんか?』
「…はい?!わっ私なんかで良ければ喜んで!」
私は喜びのあまり飛び跳ねていた。
目には熱いものが浮かび、体中が嬉しさで溢れそうだった。
『また、直接ちゃんと告白させてください。今日は遅くにありがとう、ゆっくり休んで下さい。じゃあまた!』
「先輩もゆっくり休んでください。おやすみなさい!」
ピッ
電話を切った後も耳には上崎先輩の優しい声が残っていて。私の心臓は活発に動いたままだった。
私が先輩とお付き合い…。
こんな日が来るなんて…。
私はこの日、遠足の前日の眠れない夜のように、心が踊ってよく寝付けなかった。
私の初恋は今日、成就しました。
私はこの初恋を抱きしめて目を閉じた。
「柚子!どうだった?渡せた?」
「何とか渡せた…でも、あんまり嬉しそうじゃなかった気がする…。迷惑だったかな…。」
私はたった今、上崎先輩に書いた手紙を渡し終えて一年二組の教室に戻って来たところだった。
無事に手紙を渡せた安堵感と手紙を受け取った上崎先輩があまりいい表情ではなかったことに対しての不安感で押し潰されそうだった。
そんな私を乙葉は大丈夫だよと諭してくれた。
夕方のピアノ教室のレッスンも全くといっていいほど頭に入ってこなくて恋は盲目とはこういうことなのかな、なんて考えながら一日を終えた。
翌日、いつものようにココアと一番最初に顔を合わせて私の一日は始まった。
家を出てからも昨日の上崎先輩の浮かない顔が頭にこびりついていて胸が苦しくなった。
やっぱり、私にはまだ恋なんて早かったのかな…。
今日の私は放課後までずっとそんな思いを抱いて過ごしていた。
ホームルームが終わると、生徒達が一斉に教室からいなくなリ始める。
私はいつものようにノロノロと教材を通学用のカバンに入れ始めた。
「もお、柚子ってば早くしなさい!」
「はあい」
いつの間にか隣に来ていた乙葉に急かされながら帰り支度を急いだ。
乙葉は携帯を触って私を待っている時間を潰していた。
ようやく帰り支度が済み、乙葉に声をかけようとした時。
「花白さーん!呼ばれてるよ」
クラスメイトの女子が私の名前を呼んだ。
私は乙葉と顔を合わせると、呼ばれた方へ足を運んだ。
教室の入口まで来ると、私への来客が誰か分かり声を失った。
「花白柚子さん」
「はっ…はい」
私の視界には昨日ぶりの上崎先輩が写っていた。
心臓が壊れそうなくらい大きな音を立てて動き始める。
「昨日はありがとう。あの…これ…よかったら見てください。じゃあ、これで」
上崎先輩は私に白い封筒の手紙を手渡してそれだけ言うと走り去っていった。
私は呆然と小さくなっていく上崎先輩の背中を見つめていた。
上崎先輩が見えなくなると同時に私の後ろから乙葉が声をかけた。
「よかったじゃん!柚子!」
「うん!手紙貰った」
「読んでみたら?」
「今読んで振られたら悲しいから家で読むことにする!」
私は上崎先輩から貰った手紙を抱きしめて教室に戻り、カバンに手紙をしまった。
今日の部活はいつもより長く感じた。
上崎先輩から貰った手紙を早く読みたい気持ちから時間が進むのが遅く感じている。
そんなに私は恋をしているんだと実感すると頬が熱くなった。
「花ちゃん、顔が真っ赤だよ!お熱?」
「いっいや!大丈夫です。」
愛理先輩の心配を浮かべた顔が私を覗き込んだ。
「愛理先輩、大丈夫ですよ!柚子は今、いい感じなんです」
「いい感じ?」
乙葉が楽しそうにそう言うと愛理先輩はすぐに食いついた。
「恋してるんですよ!」
「恋!?ああ、例の二年生の彼?」
「はい、実は今日…」
「乙ちゃん!!ちょっと待って…!」
乙葉の性格からきっとこのまま放っておいたら全てを話してしまうと察した私は慌てて乙葉の言葉を制した。
「花ちゃん、続き気になる!」
話の途中でお預けを食らった愛理先輩が私に近寄り続きを催促した。
「愛理先輩、先輩にはちゃんと教えますから今はまだ話せません」
私の真剣な目に愛理先輩は、負けてくれた。
「花ちゃんのお願いなら聞いてあげなきゃね!絶対上手くいったら教えてね」
「はい!頑張ります」
一連の話を漫画を読みながら聞いていた穂乃果先輩が吹き出した。
「花ちゃんまさかまだ上崎に片思いしてるの?」
私は恥ずかしさから顔を両手で覆いながら頷いた。
「花ちゃん可愛い。こんなに可愛いのに何故上崎なんかに惚れちゃったのかね」
「上崎先輩みたいな素敵な人はなかなかいません!!」
私は思わず穂乃果先輩に向かって言い返していた。穂乃果先輩はそんな私をみてまたまた吹き出した。
「ははっ!花ちゃん可愛い!上崎にやるくらいなら私が嫁にもらいたいくらいだわ、まあ上崎なら彼女もいないしすぐオッケイくれるでしょ」
その言葉に私は飛びついた。
「上崎先輩って彼女いないんですか!?」
「いない、いない!」
穂乃果先輩は不敵な笑みを浮かべながらそう答えた。私は安心してホッと胸を撫で下ろした。
「上崎はいじられキャラだから本気で告る子はいないし、話しかける女子の目的は大抵、罰ゲームで利用するためだから安心して大丈夫だよ」
「罰ゲーム…?」
「まあ、あいつも可哀想だよ…」
何かを思い出したように呟いた穂乃果先輩の顔を眺めながら私は首を傾げた。
「ううん、花ちゃんなら大丈夫だよ!上手くいったら私にも教えてね」
私は頷いた。
今日の部活は穂乃果先輩以外のメンバーで体育祭の写真を物販用に加工してアルバムにしたりした。
穂乃果先輩は週刊の漫画に没頭していた。
アルバムが完成すると同時に今日の部活は幕を閉じた。
先輩達に手を振って部室から出た。
そこからはいつも通り電車に乗り家路を急いだ。
乙葉と別れてから、いつもなら歩いて帰る道を小走りで帰った。
早く早く、先輩からの手紙を読みたい。
ただそれだけが私の活力だった。
ガチャン。
「ただいま!」
私はいつも通りココアを抱きしめるとリビングのソファーに勢いよく腰掛けた。
いつもと違うのは、通学用のカバンから手紙を取り出し読み始めたことだった。
糊付けされた封筒を丁寧に開けると中からは一枚の手紙が現れた。
ココアを膝に抱いたまま手紙を開いた。
深呼吸して読み始める。
『花白柚子さんへ
初めまして、上崎樹です。
昨日は本当にありがとうございました。
花白さんからの手紙を読んで元気をもらいました。
まさか、自分宛に手紙を貰える日が来るなんて思ってもみなくて、正直、驚いています。
もしよかったら連絡して下さい。
写真、ありがとうございました。
連絡先…。
上崎樹より』
「わあああ!」
手紙を読み終えた私は溢れ出す感情を堪えきれず大きな声で叫んでいた。
いきなりの大声に、膝にいたココアが驚いて身震いした。
私の心臓は壊れそうなくらい高まっていた。
ココアを膝から下ろすと自分の部屋に駆け上がり、着替えを済ました。
手紙に書いてある連絡先を携帯の連絡先に追加した。
深呼吸をして上崎先輩の連絡先にダイヤルした。
プルルルルップルルルルッ
恥ずかしさから2ゴールだけして切ってしまった。
その次にもう一つ記載されていたメッセージアプリの友達に追加してメッセージを送った。
『上崎』
という名前で登録された先輩のアカウントを見るだけでドキドキしてしまう。
先輩のアカウントの写真が黒い柴犬になっていて犬が好きなのかな、なんて勝手に思い込み嬉しくなってしまった。
私は先輩にメッセージを打つ。
『お疲れ様です。
花白です。手紙を読ませていただきました。
すごく嬉しかったです。
また機会がありましたら、お時間がある時にお話したいです。
よろしくお願いします。』
初めてのメッセージ…絵文字は付けない方がいいかな…。いや、でも少しくらい何かあった方が可愛いかな…。
散々悩んだ結果、自分の名前のところに向日葵の絵文字を付けてみた。
「はあ…。緊張する。まだバイト中かな」
私は夕飯の時も入浴の時も携帯を気にしていた。
今まで携帯をこんなに気にしたことはなかったから私が私じゃないみたいだ。
夜9時を過ぎて今日はもう返事は来ないのかな…。
と諦めていた時。
ピロンッ。
メッセージを受信したことを知らせる通知音が私の部屋に響いた。
慌てて携帯を握りしめ、画面を見つめた。
『こんばんは、上崎です。
遅くにすみません。
連絡していただき嬉しかったです。
もし、今からお時間があれば電話してもいいですか?』
私は画面に指を走らせ返信をした。
『はい、今から大丈夫です。』
私の携帯が着信を告げるまで1分もかからなかった。発信元には夢に見た上崎先輩の文字があり、慌てて画面をスライドして応答した。
「はい、もしもし」
『もしもし、花白さんですか?』
「はい!花白です」
『あっえっと…上崎です。こんばんは』
「こんばんは!あのっお手紙ありがとうございました。」
『こちらこそありがとうございました。バイト終わるの遅くなっちゃって、こんな時間にごめんなさい。よかった、電話出来て。』
やっぱり、バイトしてたんだ。
上崎先輩の話し方は丁寧で、聞いていると不思議と安心感を覚えた。
「こちらこそありがとうございます。あのっバイトお疲れ様でした!」
『ありがとうございます!なんか嬉しいな。この間、花白さんうちの店に来てくれたよね?』
「おっ覚えてて下さったんですか!?」
上崎先輩に覚えていて貰えたことが嬉しくて反射的にそう答えていた。
『うちの店に来る生徒は大体決まってるから珍しくて頭に残ってた。』
「覚えててもらって嬉しいです。」
『よかったら、また食べに来てください。』
「はい」
『今日はお礼が言いたくて電話したんだけど、今度直接会って話をしたいんだけど大丈夫?』
「いつでも大丈夫です!」
『また、メッセージ送っても大丈夫かな?えっと…あんまり女の子と話さないから…なんか緊張しちゃって…あの、花白さんの気持ち、嬉しかった。
俺も花白さんのこともっとよく知って仲良くなりたいと思った。だから、あの…お付き合いしてくれませんか?』
「…はい?!わっ私なんかで良ければ喜んで!」
私は喜びのあまり飛び跳ねていた。
目には熱いものが浮かび、体中が嬉しさで溢れそうだった。
『また、直接ちゃんと告白させてください。今日は遅くにありがとう、ゆっくり休んで下さい。じゃあまた!』
「先輩もゆっくり休んでください。おやすみなさい!」
ピッ
電話を切った後も耳には上崎先輩の優しい声が残っていて。私の心臓は活発に動いたままだった。
私が先輩とお付き合い…。
こんな日が来るなんて…。
私はこの日、遠足の前日の眠れない夜のように、心が踊ってよく寝付けなかった。
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