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私の初恋
* あたらしいきせつ
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「わあ、綺麗」
「そうだな」
「いいお天気でよかった…」
四月になり桜が満開に咲き乱れている公園に樹君とやってきていた。久しぶりに二人で会う時間に笑顔が溢れる。
「柚子?桜撮るんだろう?」
「そうだった!」
樹君の言葉でここに来た目的を思い出しカメラを構える。何枚か桜の写真を撮った後、持ってきたレジャーシートの上に座っていた樹君の手を引いた。
「樹君、写真撮ろう?」
「えっ!?俺も!?」
「そう!二人で撮りたいの」
私の言葉に樹君は苦笑いをしながら立ち上がってくれた。
「よし、撮るよ!」
パシャ。
携帯とデジタルカメラでそれぞれ何枚か写真を撮った。画面の中の笑顔はとても輝いて見えた。
樹君とは、半年以上付き合っているのに未だにドキドキしている私がいる。
私は画面の中の笑顔の二人を眺めていると、だんだん視界がぼやけていくのを感じた。
目頭が熱くなり、涙がゆっくりと頬を伝う。そんな私を見ていた樹君が、慌てて涙を拭いてくれた。
「どうしたんだ柚子?」
「だって…だって…」
私の言葉の続きを知ろうと樹君は静かに待ってくれた。
「だって、樹君が卒業しちゃうと思ったら寂しくて…三年生になっちゃうのずっと嫌だったのに…」
「おいおい、まだ先の話だろ…それに、卒業したからって会えなくなるわけじゃないし!卒業しても柚子とは一緒にいたいし!分かったら、泣きやめよ」
樹君の言葉に頷くと、私の頭に優しく触れる樹君の手が愛おしくて胸が熱くなった。
「樹君、卒業式の日に第二ボタン貰いに行くね」
「おう!」
「卒業しても会いにきてね」
「当たり前だろ!」
私たちは一年後の二人の幸せを願って指切りをした。来年も仲良くしていたい、ずっとこうやって二人で笑いあっていたい、そう思った。
私たちがこうしてゆっくり過ごせるのは今まで嫌いだったテスト期間中のおかげだった。
樹君はテスト期間中だけバイトがお休みになる。
だからテスト期間中はこうしてゆっくりデートができる。私にとってテスト期間は幸せな期間に変わっていた。
「柚子、団子食べるか?」
「食べる!」
「ほら、服につかないように気をつけろよ」
「あっ、ありがとう…あっ!樹君、お茶どうぞ」
「おう、ありがとう」
満開の桜の下で樹君が持ってきたみたらし団子を頬張った。程よい甘みが私の持ってきた緑茶にすごくよくあった。
「そういえば、純一はちゃんと部活来てるか?」
「うん、来てるよ!乙ちゃんとすごく仲がいいの」
「ふうん、柚子は意地悪されてないか?」
「うん、とっても優しいよ」
「なら、いいけど」
不安そうな表情の樹君を励まそうと新しいお茶を注いで渡した。
樹君の言う純一というのは今年写真部に入部した一年生の霧島純一君のことだ。
彼は少し癖のある性格らしいが、私達の前ではそういう素ぶりは一切なくとても優しく丁寧なイメージが強かった。
どうして樹君が純一君を気にしているのかというと、バイト先の先輩の霧島さんの弟に当たるのが純一君だかららしい。
昔から知り合いで、四月からは樹君と同じバイトを始めた純一君を樹君はやけに敵対視していた。
そんな樹君も何だか見ていて頬が緩んだ。
未だに怪訝そうな顔をしている樹君に少しだけ胸の内を話す。
「樹君、あのね…霧島君と乙ちゃんが仲が良すぎて、少し寂しいかな…」
親友の新しい恋にヤキモチを妬いているなんて、恥ずかしくて打ち明けられなかったけどやっぱり誰かに聞いて欲しくて樹君に打ち明けた。
「柚子は乙葉ちゃんのことが大切なんだな…よし、寂しくなったら俺の胸に飛び込んでこい!」
「樹君…嬉しい…」
両手を広げて私を招くような仕草をしてみせた樹君を見ているだけで安心かんが広がった。
一人じゃない、樹君がいてくれるんだ。そう、心から実感できた。
「柚子、早く団子食べちゃえよ!」
「はい!」
私達の新しい季節は始まったばかりだ。
少し冷たい春風が私の髪を優しく撫でた。
少しだけ香った桜の花は恋の匂いがした。
「そうだな」
「いいお天気でよかった…」
四月になり桜が満開に咲き乱れている公園に樹君とやってきていた。久しぶりに二人で会う時間に笑顔が溢れる。
「柚子?桜撮るんだろう?」
「そうだった!」
樹君の言葉でここに来た目的を思い出しカメラを構える。何枚か桜の写真を撮った後、持ってきたレジャーシートの上に座っていた樹君の手を引いた。
「樹君、写真撮ろう?」
「えっ!?俺も!?」
「そう!二人で撮りたいの」
私の言葉に樹君は苦笑いをしながら立ち上がってくれた。
「よし、撮るよ!」
パシャ。
携帯とデジタルカメラでそれぞれ何枚か写真を撮った。画面の中の笑顔はとても輝いて見えた。
樹君とは、半年以上付き合っているのに未だにドキドキしている私がいる。
私は画面の中の笑顔の二人を眺めていると、だんだん視界がぼやけていくのを感じた。
目頭が熱くなり、涙がゆっくりと頬を伝う。そんな私を見ていた樹君が、慌てて涙を拭いてくれた。
「どうしたんだ柚子?」
「だって…だって…」
私の言葉の続きを知ろうと樹君は静かに待ってくれた。
「だって、樹君が卒業しちゃうと思ったら寂しくて…三年生になっちゃうのずっと嫌だったのに…」
「おいおい、まだ先の話だろ…それに、卒業したからって会えなくなるわけじゃないし!卒業しても柚子とは一緒にいたいし!分かったら、泣きやめよ」
樹君の言葉に頷くと、私の頭に優しく触れる樹君の手が愛おしくて胸が熱くなった。
「樹君、卒業式の日に第二ボタン貰いに行くね」
「おう!」
「卒業しても会いにきてね」
「当たり前だろ!」
私たちは一年後の二人の幸せを願って指切りをした。来年も仲良くしていたい、ずっとこうやって二人で笑いあっていたい、そう思った。
私たちがこうしてゆっくり過ごせるのは今まで嫌いだったテスト期間中のおかげだった。
樹君はテスト期間中だけバイトがお休みになる。
だからテスト期間中はこうしてゆっくりデートができる。私にとってテスト期間は幸せな期間に変わっていた。
「柚子、団子食べるか?」
「食べる!」
「ほら、服につかないように気をつけろよ」
「あっ、ありがとう…あっ!樹君、お茶どうぞ」
「おう、ありがとう」
満開の桜の下で樹君が持ってきたみたらし団子を頬張った。程よい甘みが私の持ってきた緑茶にすごくよくあった。
「そういえば、純一はちゃんと部活来てるか?」
「うん、来てるよ!乙ちゃんとすごく仲がいいの」
「ふうん、柚子は意地悪されてないか?」
「うん、とっても優しいよ」
「なら、いいけど」
不安そうな表情の樹君を励まそうと新しいお茶を注いで渡した。
樹君の言う純一というのは今年写真部に入部した一年生の霧島純一君のことだ。
彼は少し癖のある性格らしいが、私達の前ではそういう素ぶりは一切なくとても優しく丁寧なイメージが強かった。
どうして樹君が純一君を気にしているのかというと、バイト先の先輩の霧島さんの弟に当たるのが純一君だかららしい。
昔から知り合いで、四月からは樹君と同じバイトを始めた純一君を樹君はやけに敵対視していた。
そんな樹君も何だか見ていて頬が緩んだ。
未だに怪訝そうな顔をしている樹君に少しだけ胸の内を話す。
「樹君、あのね…霧島君と乙ちゃんが仲が良すぎて、少し寂しいかな…」
親友の新しい恋にヤキモチを妬いているなんて、恥ずかしくて打ち明けられなかったけどやっぱり誰かに聞いて欲しくて樹君に打ち明けた。
「柚子は乙葉ちゃんのことが大切なんだな…よし、寂しくなったら俺の胸に飛び込んでこい!」
「樹君…嬉しい…」
両手を広げて私を招くような仕草をしてみせた樹君を見ているだけで安心かんが広がった。
一人じゃない、樹君がいてくれるんだ。そう、心から実感できた。
「柚子、早く団子食べちゃえよ!」
「はい!」
私達の新しい季節は始まったばかりだ。
少し冷たい春風が私の髪を優しく撫でた。
少しだけ香った桜の花は恋の匂いがした。
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