騎士団員より屈強な騎士団寮の寮母♂さんのお話。

黒川

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本編

9-2. ピクニックに行こうよ、寮母♂さん。

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と、早いものでバビュンと森の奥に到着です。
みんなでキョロキョロと辺りを見回しますが、ドラゴンの気配はありませんでした。

「やっぱり噂は噂でしか無かったですかね?」

「まぁー、『見たかも知れない』レベルだしな。けど安心しろ、ドラゴンでは無いが、昼メシ用の肉はいっぱい持ってきてるからな?」

非番の騎士たちの心配を、完全にピクニックのご飯だと勘違いしている寮母♂さんが答えます。
そんな勘違いしている寮母♂さんも可愛い♡と、騎士たちはほわわわん♡、となるのでした。
それでも、火のない所に煙は立たないと言いましょうか?1人の騎士君が何かに気づきました。

「あれ?これって⋯⋯」

木の幹に不自然に付いた爪痕です。
良く討伐する魔物の爪痕と言うには、大き過ぎました。

「良く見てるな」

寮母♂さんが気付いた騎士の頭をポンポンと撫でました。
そして、他の騎士たちも周りを注意深く観察するのです。

「落ち葉に隠れていますが、足跡が⋯⋯」
「これ、カラカラに乾いてますが糞ですね」
「そう言えば、この周辺やたらと静か過ぎるのも気になります」
「春先とは言え、ここまで土は暖かくなりませんよね?花の散り具合も進み過ぎてる⋯⋯?」

それぞれが気になった事を口にすると、団長は満足気にウンウンと頷き、寮母♂さんは満面の笑みで5人まとめて抱き込みました。

「偉いっ!!お前らは自慢の騎士たちだ!そうだな!良く気付いたな!」

まとめて抱き込んだ後に、寮母♂さんは一人一人を大事に抱き締め、雄胸に騎士のお顔を挟み、頭上にチュッチュするのでした。

騎士たち、昇天。

そして団長もソワソワと寮母♂さんの周りをウロウロしますが、団長は何も発言しなかったので、寮母♂さんからの抱擁とチュッチュは勿論ありません。

「俺は全部気付いてたけどなぁー?」

と、残念そうに団長。
けどこれも部下たちの成長を見守る上司の定めです。

「お前が気付くのは当然だろ?」

寮母♂さんは、ポンと団長の肩を叩きました。

「頼りにしてるよ、団長」

寮母♂さんがニコっと笑うと、団長も満足気に鼻をならすのでした。
ここはここで、国営騎士として共にお勤めしていた元同僚です。
2人にしか出せない空気もあります。

密着は無いにしても、独特の空気感を見て、騎士たちはちょっとだけ団長を羨ましいと思うのでした。


𓂃𓈒𓂂𓏸


それはそうと、ドラゴン問題です。
木に付いていた爪痕も、落ち葉に隠れていた足跡も、カラカラに乾いている糞も、やたら静かな周辺も、春にしては暖かすぎる空気も、全てドラゴンが近くに居る目印でした。

寮母♂さんも、団長も、騎士たちも辺りを警戒します。
耳を澄まして周辺の音を探ります。
非番の騎士の中でも、ひときわ聴力と嗅覚に優れた騎士が気付きました。

「前方で魔物の争うような声と、少し焦げた臭いが⋯⋯」

「⋯⋯当たりだな。十中八九ドラゴンだ。幸い非番とは言え現役騎士が5人、そして団長の俺が居る。城への報告はどうにでもなるだろ。しかも寮母♂付と来りゃピクニックでしかねぇ」

団長がガハガハ笑いながら言いました。
ドラゴンが出たとしても、討伐しても怒られる事は無いと、暗に仄めかしているのです。
騎士たちは少し緊張し、寮母♂さんは安心しました。
そう、寮母♂さんはニジョーの件がありましたからね(5.騎士じゃないよ、寮母♂さん。参照)、ウッカリ高ランク魔物を討伐ハントして宰相に怒られながら報告書を作成するのは、ご遠慮したいのです。

「お前らが居れば俺も安心だな!」

寮母♂さんは、意気揚々と歩みを進めるのでした。
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