118 / 145
8巻
8-2
しおりを挟む
「とりあえず座りましょうか」
「はい……」
とりあえず二人で席に着く。
じいやさんが紅茶を淹れて、カップを私の前に置いてくれた。
「改めて、急に呼び出したりしてごめんなさい。気を遣わせてしまいましたよね」
「い、いえ! そんなことないです!」
そんな風になおもカチンコチンな私を見て「ふふっ」と笑みを零してから、クリスティ様は言う。
「今日お招きしたのは、サキさんに頼みたいことがあったからです」
た、頼みたいこと……?
いったいなんだろう。
クロード家は、四公爵家の中で一番の戦闘技術を誇る家。
国家規模の軍事的な依頼とかも、まず最初に声が掛かるわけで……。
あ、もしかして魔法武器について聞きたいことがある、とか?
いや、でもシンプルにレオンさんの話って可能性もあるよね。
……まさか、貴族の義務よりアメミヤ工房を優先して、自由に生きているレオンさんをどうにかしたいとか!? そ、それは困る!
「頼みたいことと言うのは……」
私はクリスティ様の言葉を遮るようにして、口を開く。
「レ、レオンさんは、もう私たちにとってはいてくれなきゃ困る存在なんです!」
「……え?」
「で、ですから! レオンさんの貴族としての時間は確保しますので、何卒! 何卒レオンさんをアメミヤ工房から連れ戻さないでください!」
私は勢いよく頭を下げた。
すると、戸惑ったような声が聞こえてくる。
「頭を上げてください。何か思い違いをしているようですが、私はレオンのことを家に縛り付けるようなお願いをしようとしているのではありません」
「え? そうなんですか?」
恐る恐る頭を上げると、クリスティ様が苦笑いを浮かべていた。
も、もしかして……私、早とちりでやらかした!?
「すすす、すみません! 私また変なことを!」
私は再び頭をビュンッと下げ、ゆっくりと上げる。
すると、クリスティ様は口元を押さえてクスクスと笑い出す。
「サキさんは思ったよりも、賑やかな人なのですね」
「す、すみません……」
クリスティ様はひとしきり笑い終えてから紅茶を飲んで、口を開いた。
「今日お呼びしたのは他でもありません。普段のレオンのことをお聞きしたかったんです」
「普段のレオンさん?」
「はい。その……お恥ずかしい話なのですが、私は母親としてあの子たちのことをちゃんと見ていられていなくて……だから、身近な友人に我が子の様子を聞ければなと」
え、えっと……つまり、貴族家としてってわけじゃなく、一人の母親として子供の様子を知りたかったってことでいいんだよね?
凛としたクリスティ様が、そんなアットホームな悩みを抱いているだなんて……。
いやいや、悩みは人それぞれ。そうとなれば、私のやるべきことは一つ!
私は胸をドンと叩いて言う。
「そういうことなら、お任せください! いくらでもお話しします!」
「ありがとう。助かります」
私は意気揚々と、語り出す。
「まず、レオンさんはいつも頼りになるんです! たまに一人で抱えすぎちゃうところもあるけど、そこがみんなのためだってわかるし、そういうところもかっこいいし……あと……それから……」
それから私は、レオンさんとどこへ行ってどんなことをしたとか、その時にどれだけ素敵だったかとか、いろいろと喋った。
だってお母さんは、子供が活躍していたら嬉しいはずだもんね!
そうして話が一段落したタイミングで、ふとクリスティ様が聞いてくる。
「……サキさん、レオンとの時間は楽しいですか?」
「え? はい! とても!」
私の返事を聞いてクリスティ様は紅茶を一口飲み、カップを机に置いた。
そして、先ほどまでとは一変して、真剣な眼差しを私に向ける。
「サキさん、ここからは少しだけ真面目な話をさせてもらいます」
「は、はい……」
クリスティ様が口を開こうとした瞬間――塀の方から鋭い殺気を感じた。
私はすぐに愛刀・白風を取り出して、殺気がした方へと走りながら構える。
「クロード家当主、クリスティ! お覚悟!」
殺気の主はそう口にしながら塀を飛び越え、剣を振りかぶる。
黒子のように、顔の半分を黒い布で覆っている。きっと、暗殺者だ。
そして声から推測するに、男だろう。
クリスティ様を守らないと!
「させない!」
私は暗殺者の男の剣を受け止めた。
それからは、激しい剣の打ち合いになる。
くっ……こいつ、強い!
レオンさんとの訓練で私も少しは剣の腕が上がっていると思っていたけど、徐々に押されているのがわかる。
私はネルと協力して生み出した剣術――ネル流剣術の技を繰り出す。
「ネル流剣術スキル・【刺々牙き】!」
しかし、暗殺者の男は焦った様子もなく私の技を受ける。
「レインバント流剣術・【天蓋】」
そして、反撃してくる。
「トゥリアフ流剣術・攻の構え・【炎獅子】!」
「なっ!?」
これは学園代表戦で戦った、ロイさんの流派の技!? さっきとは違う流派の技を使うだなんて!
私はそれでもどうにか攻撃を凌ぎ、後ろに飛びのいて距離を空ける。
様々な流派を扱えて、状況に応じて使い分けている……だけじゃない。
一つ一つの技が、どれも食らえば致命傷になりかねないくらいの威力だ。
「ローデンベルク流武術・【早駆け】」
せっかく空けた距離を特殊な歩法で一気に詰めてきたかと思えば、目の前から消えた。
いや、後ろだ! こうなったら一か八か!
私は白風を鞘に収めながら身を捻る。
男は上段に構えていた。
「トゥリアフ流剣術・【天躯】!」
「ネル流剣術スキル・【居合・颪】!」
力強く振り下ろされた剣に向かって、私はネル流の中でも最速の技を放った。
両者の剣が宙を舞う。
男は驚いたようで、一瞬動きが止まる。
この隙を逃さない!
「ネル流魔武術・【陽光一天突き】!」
魔武術とはその名の通り、魔法と武術を融合した技だ。
私の右手に炎が灯り、男のお腹へ向かって加速していく。
その時、男が短刀を振るっているのに気付く。
避けられない……このままじゃ相打ち!? いや、刺し違えてでもクリスティ様を守るんだ!
「そこまでです!」
クリスティ様の声が響いた。
男は攻撃をやめて、私の拳を間一髪で避ける。
私の攻撃によって風が巻き起こり、顔を隠していた布が少し捲れた。
「あ……」
男の正体が、わかった。
「……これはどういうことですか。レガール様」
ちらっとしか見えなかったけど、あの顔は間違いなくレオンさんのお兄さん、レガール様だ。
なんだか騙されたような気分。
私はついつい、ムッとした顔をレガール様に向けた。
レガール様は短刀を懐に仕舞いつつ、軽く頭を下げる。
「すまないな、サキ嬢。詳しい話は母から聞いてほしい」
クリスティ様の方を見る。すると彼女は、先ほどとは違って鋭い目で私のことを見つめていた。
まるで、何かを見定めようとしているかのような、そんな目だった。
「レガール、ありがとう」
そう言って、クリスティ様はさっきまで私が座っていた椅子を手で示す。
レガール様はふっ飛んだ彼の剣と白風を拾う。そして自分の剣を鞘に収め、白風を私に渡してから「それではまた」と口にして、庭から出ていった。
私は白風を鞘に収めて収納空間にしまってから椅子に座り、クリスティ様に向き合う。
「実は現在、クロード家と繋がりのある貴族たちがレガールとレオンのどちらが次期当主にふさわしいかで対立し、派閥が生まれてしまっているのです」
「え……」
私は唐突な話に、驚く。
貴族の後継問題は、その家だけでなくその家と関わりのある貴族をも巻き込むという話は、聞いたことがある。
しかし、いざ自分の身近な人物がその渦中にいると思うとなんというか……テレビで見ているかのような現実感のなさだ。
「レガールを評価する派閥は、レガールがいかにレオンよりも体術、剣術に優れているかということを主張しています。親の私から見てもあの子の身のこなしは天賦のものだと思います。さらに、あの子はカルバート家のメイリーとは幼い頃から親しくしていますし、次の代に繋ぐという意味でも有望だと思われているようですね」
え、えぇ!? それって、レガール様とメイリー様がいい感じってこと……だよね!?
た、確かにお似合いの二人ではあるけど。
そんな風に驚く私に構うことなく、クリスティ様は話を続ける。
「反対にレオンの評価は、クロード家始まって以来の魔術の天才といったところかしら。でも、クロード家において剣術に優れていることは何においても重要。そういった事情で、レガールの方が周囲の評価は高かったのです」
クロード家はこのグリーリア王国が作られた時に一技必殺と謳われた『抜剣術』を評価され、四公爵に選ばれた一族。当然、体術や剣術に秀でた人が歴代当主となっているだろうことは想像に難くない。
私としてはレオンさんの夢……冒険者になっていろいろな場所を旅したいっていう夢を知っているから、そのままレガール様になっちゃえ~って思っちゃう。
でもクリスティ様としてはそんな簡単に決断できない話ではあるだろう。
「でも、それはちょっと前までの話。実は今、状況が変わりつつあります。あの子が生み出した、ある技によって。確か『抜剣術魔纏【断閃】』と呼んでいたかしら」
私の魔剣術と、前に戦ったモーブという男が使っていた魔法を元にレオンさんが編み出した技だったかな。
レオンさんの愛剣であるノーチェと私の白風は、炎の精霊が灯した特別な炎である聖炎によって生み出された、魔力を帯びる鉄――魔含鉄でできている。
そして、魔含鉄によって造られた剣は、他の剣と違って魔力を纏わせることができるのだ。
断閃は、剣の表面に纏った魔力を刃状に形成して高速で放つ、強力な技なんだけど……。
「その技によって、どう状況が変わったんですか?」
「……抜剣術は元々、対人に特化した剣術です。他の流派の剣を置き去りにし、一技必殺とまで言われるほどに、それは強力なものでした。ですが、大量の魔物に対して特別強いというわけではないです。いかんせん、一度の技で斬れるのは一体だけですから」
「それが跡目争いの話にどう……あっ!」
クリスティ様は頷く。
今、リベリオンの召還魔物の軍団による襲撃に対してどう対応するべきか貴族たちが議論しているって、パパが言ってた。
そういった意味で剣術と魔術、どちらも使いこなすレオンさんは、かなり優秀だと言える。
「レオンを支持する者たちが『新たなクロードとしての道を作るのはレオンである』とより強く主張するようになったんです」
なるほど……それは自然な流れだよね。
でも、となると新しい疑問が生じる。
「レオンさんの評価が上がったことは理解しました。でも、それとさっきレガール様が襲ってきたこととはどういった関係があるのでしょうか?」
私が聞くと、クリスティ様は咳払いを一つしてから口を開く。
「……レガールにはメイリーがいますが、レオンには今まで懇意にしている女性がいたことはない。しかし最近、あなたにずいぶんと熱を入れているとの情報を得まして。貴族家には血を重んじる人間が多い。あのレオンが興味を持つ女性ならば、いずれクロードに……ということも考えられますでしょう? あなたがどれだけ強いのかを知りたかったのです。早計なのはわかっているのですが……」
つ、つまり……これは息子の未来の嫁候補を見定めるための試練ということですね!?
どうしよう、なんだか変な汗かいちゃいそう。
するとクリスティ様は居住まいを正す。
「クロードに……半端な者はいらないのです」
背筋が凍るようなプレッシャーを感じた。
でも、私に圧をかけようとしているってわけじゃなさそう。
たぶんこれは……名家の妃としての覚悟なのだろう。
きっとクリスティ様自身もそういう覚悟で、ここに身を置いているんだ。
「えっと……」
私がどう言葉を紡ぐべきか思案していると、クリスティ様は言う。
「とはいえ……予想外でした」
「えっ!?」
「あ、いい意味で、ですよ」
そう言ってクリスティ様はふっと笑う。
一瞬驚いたけど、いい意味ならよかった。
これで『あなたはクロードにふさわしくない』だなんて言われたらショックで気絶しちゃうもん!
クリスティ様は、再度真剣な表情を浮かべ、頭を下げてきた。
「試すようなことをして、すみませんでした。立場上、正しく当主を選ぶ必要があり、強引に事を運んでしまったこと、謝罪いたします。魔術師としての実力はこれまでの功績が裏付けてくれますが、近接戦闘の技量もどうしても見ておきたかったのです。そして、その上で確信しました」
「確信?」
クリスティ様は私の頭を撫でながら、優しい声で言う。
「レオンの近くにいる子が、あなたでよかった」
「え、えっと……」
「最後、剣を弾き飛ばしたあとに相打ちになってでも私を守ろうとしましたね」
「そんなことわかるんですか!?」
「わかりますよ。拳を振るう瞬間に、一瞬こちらに視線を遣ったでしょう?」
剣の達人……恐るべし……。
「太刀筋や所作を見ればわかります。あなたが、自分ではない誰かを守れる優しい人だとね。これからも、レオンと仲良くしてあげてください」
「……はい!」
なんか大変だったけど、クリスティ様にいい印象を持ってもらえたならよかったぁ!
「お時間をとらせてしまいすみませんでした。そこのあなた」
「はい」
クリスティ様に呼ばれた、近くで控えていたメイドさんが、こちらに近づいてくる。
「サキさんを、レオンの部屋に案内してあげて」
「かしこまりました」
「サキさん、またお話ししましょう。私は公務があるので、これから王城へ向かわなければならないのです。ゆっくりしていってください。では」
「ありがとうございました!」
クリスティ様が庭を出ていくのを見送ってから、メイドさんに案内してもらって、私はいよいよご褒美……じゃなくて、レオンさんのお部屋へと向かった。
「こちらが、レオン様のお部屋でございます」
しばらく歩いたところでメイドさんは立ち止まり、そう言った。
目の前の扉はボロボロで、何度も修復した跡がある。
どういうこと……? もしかして前世の私みたいに手ひどく躾けられて、とかじゃないよね?
そんなことを考えている間に、メイドさんが扉をノックしてしまった。
「レオン様、サキ様をお連れいたしました」
「あぁ、入ってきてもいいよ」
部屋の中からレオンさんの声が聞こえてきた。
メイドさんが扉を開けてくれたので、私は中に入る。
「それでは私はこれで」
「あ、はい。ありがとうございます」
メイドさんは頭を下げ、静かに扉を閉めた。
そうして私は、思わず部屋を見回してしまう。
部屋は綺麗に整頓されていた。家具は壁沿いに勉強机や棚に、ベッドがあって……あとは、部屋の真ん中に丸いテーブルと椅子がいくつか置かれているくらい。
飾り気はないけど清潔で、レオンさんっぽい部屋だ。
レオンさんは丸テーブルのところの椅子に座っていた。
そしてその隣にはレガール様がいて、ベッドにはメイリー様がごろんとしている。
三人は幼馴染で一緒に過ごすことが多いって知ってはいたけど、メイリー様とレガール様がいい感じだって聞いたばかりだからなんだかドキドキしちゃう!
「やぁ、サキ。大変だったね」
「まったくです。もしかして、ほんとはレオンさんはこうなるって聞いてました?」
レオンさんがそんな風に話しながら自分の隣の空いている椅子に座るよう私に促してきたので、私はそこに座る。
「いや、知らなかったよ。サキを待つために部屋に行くと、兄上がいなくて姉さんがくつろいでたから、なんとなく察したけど」
すると、レガール様がテーブルの上のポットから近くにあったカップに紅茶を注ぎ、私に出してくれつつ口を開く。
「サキ嬢、先ほどは失礼したね」
それを聞いて、メイリー様はがばっと起き上がって、会話に参加してくる。
「いや、ほんとよね。レオンと一緒に遠くから見てたけど、ちょっとは手加減したら? って思ったわよ」
「下手に手加減すると母上にバレてしまうし、それに英雄殿に手加減など不要かと思ってね」
「もぉ……英雄って呼ばないでくださいよ」
私が頬を膨らませると、レガール様はおかしそうに笑う。
「ははっ、すまない。だが、高等科の中でサキ嬢の武勇伝は、話によくあがるのでね」
「そうねぇ、私の学年でも結構話にあがってるわ」
「それじゃあこれからもっと有名になるね」
そんなレオンさんの言葉に、私は首を傾げる。
「どうしてですか?」
「模擬戦とはいえ、兄さんと剣術で張り合ったんだ。そんなことができる人は魔法学園の中でも一握りもいない」
「えぇ!?」
「あぁ、サキ嬢との打ち合いは実に心躍った」
「うぅ……忘れてください。あの時は本当にクリスティ様を守らなきゃって思ってて……」
「守らなきゃって思って、すぐに動けることがすでにすごいことよ。普通の令嬢だったら、固まっちゃうもの」
ん? それじゃあ……。
「メイリー様も――」
「お姉ちゃん!」
あぁ、そういえばそうだった……前にメイリー様を間違って『お姉ちゃん』って呼んだことをきっかけに、そう呼ぶことになっているんだ。
とはいえ『姉』呼びしているのって私とレオンさんくらいらしいから、ちょっと恥ずかしいんだけど……この場にはレオンさんもいるし、いっか。
「お、お姉ちゃんもやったの?」
「ん? あぁ、やったわよ。私の時はレオンが相手だったけどね」
笑顔で言うメイリーさんに対して、レオンさんはその時のことを思い出して苦笑いした。
「姉さんは容赦ないもんだから、大変だったよ」
「あぁ、こいつは加減を知らないからな。あとで庭を修復するのが大変だった」
メイリー様、何したの!?
まぁ、それはこの際置いといて……。
「あ、あのレオンさん。この扉って……」
「ん? あぁ、これ? 昔、僕はこの部屋で剣の練習をしていてね。何度も斬っちゃうものだからついには自分で直すように言われちゃって」
「へ? じゃあ虐待とかそういうわけじゃ……」
素っ頓狂な声で聞き返す私に、レオンさんは微笑む。
「虐待? あぁ、ないない。母様に虐待なんてされたら、今頃僕も兄さんも生きてないさ」
「はははっ! それはそうだな!」
「そ、そうなんだ。よかったぁ……」
レオンさんとレガール様が笑い合っている姿を見て、私は胸を撫で下ろした。
そうだよね。ついつい前世の経験に引っ張られて悪く考えてしまっていたけど、あんな息子思いなお母様がそんなことするわけないもんね。
「はい……」
とりあえず二人で席に着く。
じいやさんが紅茶を淹れて、カップを私の前に置いてくれた。
「改めて、急に呼び出したりしてごめんなさい。気を遣わせてしまいましたよね」
「い、いえ! そんなことないです!」
そんな風になおもカチンコチンな私を見て「ふふっ」と笑みを零してから、クリスティ様は言う。
「今日お招きしたのは、サキさんに頼みたいことがあったからです」
た、頼みたいこと……?
いったいなんだろう。
クロード家は、四公爵家の中で一番の戦闘技術を誇る家。
国家規模の軍事的な依頼とかも、まず最初に声が掛かるわけで……。
あ、もしかして魔法武器について聞きたいことがある、とか?
いや、でもシンプルにレオンさんの話って可能性もあるよね。
……まさか、貴族の義務よりアメミヤ工房を優先して、自由に生きているレオンさんをどうにかしたいとか!? そ、それは困る!
「頼みたいことと言うのは……」
私はクリスティ様の言葉を遮るようにして、口を開く。
「レ、レオンさんは、もう私たちにとってはいてくれなきゃ困る存在なんです!」
「……え?」
「で、ですから! レオンさんの貴族としての時間は確保しますので、何卒! 何卒レオンさんをアメミヤ工房から連れ戻さないでください!」
私は勢いよく頭を下げた。
すると、戸惑ったような声が聞こえてくる。
「頭を上げてください。何か思い違いをしているようですが、私はレオンのことを家に縛り付けるようなお願いをしようとしているのではありません」
「え? そうなんですか?」
恐る恐る頭を上げると、クリスティ様が苦笑いを浮かべていた。
も、もしかして……私、早とちりでやらかした!?
「すすす、すみません! 私また変なことを!」
私は再び頭をビュンッと下げ、ゆっくりと上げる。
すると、クリスティ様は口元を押さえてクスクスと笑い出す。
「サキさんは思ったよりも、賑やかな人なのですね」
「す、すみません……」
クリスティ様はひとしきり笑い終えてから紅茶を飲んで、口を開いた。
「今日お呼びしたのは他でもありません。普段のレオンのことをお聞きしたかったんです」
「普段のレオンさん?」
「はい。その……お恥ずかしい話なのですが、私は母親としてあの子たちのことをちゃんと見ていられていなくて……だから、身近な友人に我が子の様子を聞ければなと」
え、えっと……つまり、貴族家としてってわけじゃなく、一人の母親として子供の様子を知りたかったってことでいいんだよね?
凛としたクリスティ様が、そんなアットホームな悩みを抱いているだなんて……。
いやいや、悩みは人それぞれ。そうとなれば、私のやるべきことは一つ!
私は胸をドンと叩いて言う。
「そういうことなら、お任せください! いくらでもお話しします!」
「ありがとう。助かります」
私は意気揚々と、語り出す。
「まず、レオンさんはいつも頼りになるんです! たまに一人で抱えすぎちゃうところもあるけど、そこがみんなのためだってわかるし、そういうところもかっこいいし……あと……それから……」
それから私は、レオンさんとどこへ行ってどんなことをしたとか、その時にどれだけ素敵だったかとか、いろいろと喋った。
だってお母さんは、子供が活躍していたら嬉しいはずだもんね!
そうして話が一段落したタイミングで、ふとクリスティ様が聞いてくる。
「……サキさん、レオンとの時間は楽しいですか?」
「え? はい! とても!」
私の返事を聞いてクリスティ様は紅茶を一口飲み、カップを机に置いた。
そして、先ほどまでとは一変して、真剣な眼差しを私に向ける。
「サキさん、ここからは少しだけ真面目な話をさせてもらいます」
「は、はい……」
クリスティ様が口を開こうとした瞬間――塀の方から鋭い殺気を感じた。
私はすぐに愛刀・白風を取り出して、殺気がした方へと走りながら構える。
「クロード家当主、クリスティ! お覚悟!」
殺気の主はそう口にしながら塀を飛び越え、剣を振りかぶる。
黒子のように、顔の半分を黒い布で覆っている。きっと、暗殺者だ。
そして声から推測するに、男だろう。
クリスティ様を守らないと!
「させない!」
私は暗殺者の男の剣を受け止めた。
それからは、激しい剣の打ち合いになる。
くっ……こいつ、強い!
レオンさんとの訓練で私も少しは剣の腕が上がっていると思っていたけど、徐々に押されているのがわかる。
私はネルと協力して生み出した剣術――ネル流剣術の技を繰り出す。
「ネル流剣術スキル・【刺々牙き】!」
しかし、暗殺者の男は焦った様子もなく私の技を受ける。
「レインバント流剣術・【天蓋】」
そして、反撃してくる。
「トゥリアフ流剣術・攻の構え・【炎獅子】!」
「なっ!?」
これは学園代表戦で戦った、ロイさんの流派の技!? さっきとは違う流派の技を使うだなんて!
私はそれでもどうにか攻撃を凌ぎ、後ろに飛びのいて距離を空ける。
様々な流派を扱えて、状況に応じて使い分けている……だけじゃない。
一つ一つの技が、どれも食らえば致命傷になりかねないくらいの威力だ。
「ローデンベルク流武術・【早駆け】」
せっかく空けた距離を特殊な歩法で一気に詰めてきたかと思えば、目の前から消えた。
いや、後ろだ! こうなったら一か八か!
私は白風を鞘に収めながら身を捻る。
男は上段に構えていた。
「トゥリアフ流剣術・【天躯】!」
「ネル流剣術スキル・【居合・颪】!」
力強く振り下ろされた剣に向かって、私はネル流の中でも最速の技を放った。
両者の剣が宙を舞う。
男は驚いたようで、一瞬動きが止まる。
この隙を逃さない!
「ネル流魔武術・【陽光一天突き】!」
魔武術とはその名の通り、魔法と武術を融合した技だ。
私の右手に炎が灯り、男のお腹へ向かって加速していく。
その時、男が短刀を振るっているのに気付く。
避けられない……このままじゃ相打ち!? いや、刺し違えてでもクリスティ様を守るんだ!
「そこまでです!」
クリスティ様の声が響いた。
男は攻撃をやめて、私の拳を間一髪で避ける。
私の攻撃によって風が巻き起こり、顔を隠していた布が少し捲れた。
「あ……」
男の正体が、わかった。
「……これはどういうことですか。レガール様」
ちらっとしか見えなかったけど、あの顔は間違いなくレオンさんのお兄さん、レガール様だ。
なんだか騙されたような気分。
私はついつい、ムッとした顔をレガール様に向けた。
レガール様は短刀を懐に仕舞いつつ、軽く頭を下げる。
「すまないな、サキ嬢。詳しい話は母から聞いてほしい」
クリスティ様の方を見る。すると彼女は、先ほどとは違って鋭い目で私のことを見つめていた。
まるで、何かを見定めようとしているかのような、そんな目だった。
「レガール、ありがとう」
そう言って、クリスティ様はさっきまで私が座っていた椅子を手で示す。
レガール様はふっ飛んだ彼の剣と白風を拾う。そして自分の剣を鞘に収め、白風を私に渡してから「それではまた」と口にして、庭から出ていった。
私は白風を鞘に収めて収納空間にしまってから椅子に座り、クリスティ様に向き合う。
「実は現在、クロード家と繋がりのある貴族たちがレガールとレオンのどちらが次期当主にふさわしいかで対立し、派閥が生まれてしまっているのです」
「え……」
私は唐突な話に、驚く。
貴族の後継問題は、その家だけでなくその家と関わりのある貴族をも巻き込むという話は、聞いたことがある。
しかし、いざ自分の身近な人物がその渦中にいると思うとなんというか……テレビで見ているかのような現実感のなさだ。
「レガールを評価する派閥は、レガールがいかにレオンよりも体術、剣術に優れているかということを主張しています。親の私から見てもあの子の身のこなしは天賦のものだと思います。さらに、あの子はカルバート家のメイリーとは幼い頃から親しくしていますし、次の代に繋ぐという意味でも有望だと思われているようですね」
え、えぇ!? それって、レガール様とメイリー様がいい感じってこと……だよね!?
た、確かにお似合いの二人ではあるけど。
そんな風に驚く私に構うことなく、クリスティ様は話を続ける。
「反対にレオンの評価は、クロード家始まって以来の魔術の天才といったところかしら。でも、クロード家において剣術に優れていることは何においても重要。そういった事情で、レガールの方が周囲の評価は高かったのです」
クロード家はこのグリーリア王国が作られた時に一技必殺と謳われた『抜剣術』を評価され、四公爵に選ばれた一族。当然、体術や剣術に秀でた人が歴代当主となっているだろうことは想像に難くない。
私としてはレオンさんの夢……冒険者になっていろいろな場所を旅したいっていう夢を知っているから、そのままレガール様になっちゃえ~って思っちゃう。
でもクリスティ様としてはそんな簡単に決断できない話ではあるだろう。
「でも、それはちょっと前までの話。実は今、状況が変わりつつあります。あの子が生み出した、ある技によって。確か『抜剣術魔纏【断閃】』と呼んでいたかしら」
私の魔剣術と、前に戦ったモーブという男が使っていた魔法を元にレオンさんが編み出した技だったかな。
レオンさんの愛剣であるノーチェと私の白風は、炎の精霊が灯した特別な炎である聖炎によって生み出された、魔力を帯びる鉄――魔含鉄でできている。
そして、魔含鉄によって造られた剣は、他の剣と違って魔力を纏わせることができるのだ。
断閃は、剣の表面に纏った魔力を刃状に形成して高速で放つ、強力な技なんだけど……。
「その技によって、どう状況が変わったんですか?」
「……抜剣術は元々、対人に特化した剣術です。他の流派の剣を置き去りにし、一技必殺とまで言われるほどに、それは強力なものでした。ですが、大量の魔物に対して特別強いというわけではないです。いかんせん、一度の技で斬れるのは一体だけですから」
「それが跡目争いの話にどう……あっ!」
クリスティ様は頷く。
今、リベリオンの召還魔物の軍団による襲撃に対してどう対応するべきか貴族たちが議論しているって、パパが言ってた。
そういった意味で剣術と魔術、どちらも使いこなすレオンさんは、かなり優秀だと言える。
「レオンを支持する者たちが『新たなクロードとしての道を作るのはレオンである』とより強く主張するようになったんです」
なるほど……それは自然な流れだよね。
でも、となると新しい疑問が生じる。
「レオンさんの評価が上がったことは理解しました。でも、それとさっきレガール様が襲ってきたこととはどういった関係があるのでしょうか?」
私が聞くと、クリスティ様は咳払いを一つしてから口を開く。
「……レガールにはメイリーがいますが、レオンには今まで懇意にしている女性がいたことはない。しかし最近、あなたにずいぶんと熱を入れているとの情報を得まして。貴族家には血を重んじる人間が多い。あのレオンが興味を持つ女性ならば、いずれクロードに……ということも考えられますでしょう? あなたがどれだけ強いのかを知りたかったのです。早計なのはわかっているのですが……」
つ、つまり……これは息子の未来の嫁候補を見定めるための試練ということですね!?
どうしよう、なんだか変な汗かいちゃいそう。
するとクリスティ様は居住まいを正す。
「クロードに……半端な者はいらないのです」
背筋が凍るようなプレッシャーを感じた。
でも、私に圧をかけようとしているってわけじゃなさそう。
たぶんこれは……名家の妃としての覚悟なのだろう。
きっとクリスティ様自身もそういう覚悟で、ここに身を置いているんだ。
「えっと……」
私がどう言葉を紡ぐべきか思案していると、クリスティ様は言う。
「とはいえ……予想外でした」
「えっ!?」
「あ、いい意味で、ですよ」
そう言ってクリスティ様はふっと笑う。
一瞬驚いたけど、いい意味ならよかった。
これで『あなたはクロードにふさわしくない』だなんて言われたらショックで気絶しちゃうもん!
クリスティ様は、再度真剣な表情を浮かべ、頭を下げてきた。
「試すようなことをして、すみませんでした。立場上、正しく当主を選ぶ必要があり、強引に事を運んでしまったこと、謝罪いたします。魔術師としての実力はこれまでの功績が裏付けてくれますが、近接戦闘の技量もどうしても見ておきたかったのです。そして、その上で確信しました」
「確信?」
クリスティ様は私の頭を撫でながら、優しい声で言う。
「レオンの近くにいる子が、あなたでよかった」
「え、えっと……」
「最後、剣を弾き飛ばしたあとに相打ちになってでも私を守ろうとしましたね」
「そんなことわかるんですか!?」
「わかりますよ。拳を振るう瞬間に、一瞬こちらに視線を遣ったでしょう?」
剣の達人……恐るべし……。
「太刀筋や所作を見ればわかります。あなたが、自分ではない誰かを守れる優しい人だとね。これからも、レオンと仲良くしてあげてください」
「……はい!」
なんか大変だったけど、クリスティ様にいい印象を持ってもらえたならよかったぁ!
「お時間をとらせてしまいすみませんでした。そこのあなた」
「はい」
クリスティ様に呼ばれた、近くで控えていたメイドさんが、こちらに近づいてくる。
「サキさんを、レオンの部屋に案内してあげて」
「かしこまりました」
「サキさん、またお話ししましょう。私は公務があるので、これから王城へ向かわなければならないのです。ゆっくりしていってください。では」
「ありがとうございました!」
クリスティ様が庭を出ていくのを見送ってから、メイドさんに案内してもらって、私はいよいよご褒美……じゃなくて、レオンさんのお部屋へと向かった。
「こちらが、レオン様のお部屋でございます」
しばらく歩いたところでメイドさんは立ち止まり、そう言った。
目の前の扉はボロボロで、何度も修復した跡がある。
どういうこと……? もしかして前世の私みたいに手ひどく躾けられて、とかじゃないよね?
そんなことを考えている間に、メイドさんが扉をノックしてしまった。
「レオン様、サキ様をお連れいたしました」
「あぁ、入ってきてもいいよ」
部屋の中からレオンさんの声が聞こえてきた。
メイドさんが扉を開けてくれたので、私は中に入る。
「それでは私はこれで」
「あ、はい。ありがとうございます」
メイドさんは頭を下げ、静かに扉を閉めた。
そうして私は、思わず部屋を見回してしまう。
部屋は綺麗に整頓されていた。家具は壁沿いに勉強机や棚に、ベッドがあって……あとは、部屋の真ん中に丸いテーブルと椅子がいくつか置かれているくらい。
飾り気はないけど清潔で、レオンさんっぽい部屋だ。
レオンさんは丸テーブルのところの椅子に座っていた。
そしてその隣にはレガール様がいて、ベッドにはメイリー様がごろんとしている。
三人は幼馴染で一緒に過ごすことが多いって知ってはいたけど、メイリー様とレガール様がいい感じだって聞いたばかりだからなんだかドキドキしちゃう!
「やぁ、サキ。大変だったね」
「まったくです。もしかして、ほんとはレオンさんはこうなるって聞いてました?」
レオンさんがそんな風に話しながら自分の隣の空いている椅子に座るよう私に促してきたので、私はそこに座る。
「いや、知らなかったよ。サキを待つために部屋に行くと、兄上がいなくて姉さんがくつろいでたから、なんとなく察したけど」
すると、レガール様がテーブルの上のポットから近くにあったカップに紅茶を注ぎ、私に出してくれつつ口を開く。
「サキ嬢、先ほどは失礼したね」
それを聞いて、メイリー様はがばっと起き上がって、会話に参加してくる。
「いや、ほんとよね。レオンと一緒に遠くから見てたけど、ちょっとは手加減したら? って思ったわよ」
「下手に手加減すると母上にバレてしまうし、それに英雄殿に手加減など不要かと思ってね」
「もぉ……英雄って呼ばないでくださいよ」
私が頬を膨らませると、レガール様はおかしそうに笑う。
「ははっ、すまない。だが、高等科の中でサキ嬢の武勇伝は、話によくあがるのでね」
「そうねぇ、私の学年でも結構話にあがってるわ」
「それじゃあこれからもっと有名になるね」
そんなレオンさんの言葉に、私は首を傾げる。
「どうしてですか?」
「模擬戦とはいえ、兄さんと剣術で張り合ったんだ。そんなことができる人は魔法学園の中でも一握りもいない」
「えぇ!?」
「あぁ、サキ嬢との打ち合いは実に心躍った」
「うぅ……忘れてください。あの時は本当にクリスティ様を守らなきゃって思ってて……」
「守らなきゃって思って、すぐに動けることがすでにすごいことよ。普通の令嬢だったら、固まっちゃうもの」
ん? それじゃあ……。
「メイリー様も――」
「お姉ちゃん!」
あぁ、そういえばそうだった……前にメイリー様を間違って『お姉ちゃん』って呼んだことをきっかけに、そう呼ぶことになっているんだ。
とはいえ『姉』呼びしているのって私とレオンさんくらいらしいから、ちょっと恥ずかしいんだけど……この場にはレオンさんもいるし、いっか。
「お、お姉ちゃんもやったの?」
「ん? あぁ、やったわよ。私の時はレオンが相手だったけどね」
笑顔で言うメイリーさんに対して、レオンさんはその時のことを思い出して苦笑いした。
「姉さんは容赦ないもんだから、大変だったよ」
「あぁ、こいつは加減を知らないからな。あとで庭を修復するのが大変だった」
メイリー様、何したの!?
まぁ、それはこの際置いといて……。
「あ、あのレオンさん。この扉って……」
「ん? あぁ、これ? 昔、僕はこの部屋で剣の練習をしていてね。何度も斬っちゃうものだからついには自分で直すように言われちゃって」
「へ? じゃあ虐待とかそういうわけじゃ……」
素っ頓狂な声で聞き返す私に、レオンさんは微笑む。
「虐待? あぁ、ないない。母様に虐待なんてされたら、今頃僕も兄さんも生きてないさ」
「はははっ! それはそうだな!」
「そ、そうなんだ。よかったぁ……」
レオンさんとレガール様が笑い合っている姿を見て、私は胸を撫で下ろした。
そうだよね。ついつい前世の経験に引っ張られて悪く考えてしまっていたけど、あんな息子思いなお母様がそんなことするわけないもんね。
13
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?
藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」
9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。
そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。
幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。
叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。