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第五章 覚醒
3 月光 ※※
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すっかり夜になってしまった森の中で、ヴォルフとタチアナはまず、もと来た道を慎重に戻った。タチアナはバギーから持ち出したらしい携帯用のライトを使い、ヴォルフに肩を貸してくれている。
なにしろ、暗い。空には星々と衛星らしいものが上がっているが、それらに照らされていても夜道の歩行には難儀した。ましてやヴォルフは手負いの身である。そこらで拾った適当な枯れ枝を杖がわりにしていたが、それでも相当な時間がかかった。
タチアナの貼ってくれた治療シートのお陰で傷ついた細胞は少しずつ修復されているはずだったが、安静にしていなければどうしても治癒スピードは落ちてしまう。もう出血はなくなっているが、痛みから来る汗は止まらないし、相変わらず発熱もしているようだ。だが、それでも歩かないわけには行かなかった。
「ちょっとここから、道を変えるぜ」
「え? それは──」
怪訝な顔になったタチアナに、ヴォルフは簡単に説明した。
バギーで入って来た入り口までは相当な坂道を自力でのぼる必要がある。今のヴォルフには正直きつい。それならば、以前フランに案内されて使ったあの「卵」を利用できないかと考えたのだ。使い方にはいまひとつ自信はないが、少なくともあれならば地上まで一歩も歩かずに辿りつけるはずだった。
「幸い、そんなに遠くねえ。目印もある。ほら、あれだ」
ヴォルフの指さす先には、衛星に照らされた巨大な影があった。夜空に大きく腕を広げてそびえた、あの巨大樹である。縦横に張りのばされた梢は、いまや黒々と不気味な姿を晒して天を覆っている。あれならば分かりやすい。どちらに行けばいいかも一目瞭然。足もとに気を付けさえすれば、まず道に迷うこともないだろう。
もちろん、もしもここが野生のままの森だったなら、無鉄砲にも程があるプランではある。普段のヴォルフだったら絶対に誰にもお勧めしない。が、幸いここはそうではないのだ。なにしろ、あのフランの折り紙つきである。
「よちよち歩きの子ども」ですら歩ける森。危険な肉食獣も、害虫もいない。それなら、手負いのヴォルフにもなんとかなるはずだった。
周囲は湿った緑の匂いが濃い。詳しい名までは知らないが、先ほどからリーリー、ころころと涼しげな虫の音が足もとをにぎわせている。遠くでフクロウのものらしいくぐもった声も聞こえた。
道は人ひとりがやっと通れるようなごく狭いものだ。が、二人はどうにかこうにかのろのろと進んでいった。
(ん──?)
先に異変に気付いたのは、ヴォルフだった。
今の今までにぎやかだった生き物たちが、急にぴたりと音楽会をやめたのだ。
それと同時に、空気の中にぴんと張り詰めたような何とも言えない感じが満ちた。タチアナもハッとして足を止め、こちらを振り向いている。
ヴォルフは「静かに」の意味になるよう唇の前に指を立てて見せ、手振りですぐにライトを消させた。そのまま二人で足音をしのばせて近くの木立の陰に隠れる。幸い今は、衛星に少し雲がかかっている。周囲はとぷりと闇に呑まれている。
幹に背をつけ、ほんのわずかに目だけを出してそちらを窺う。
ずしゃ、ずしゃと何かが近づいてくる音がする。
周囲はぴたりとすべての形をひそめ、虫すら息を殺している。
空気がさらに凍り付く。ヴォルフは自分の首の後ろの毛が逆立っているのを自覚した。ここまで嫌な予感に襲われたのは、恐らく生まれて初めてだった。
──何かが、道をやってくる。
とくに慌てるのでもなく、かといって緩みすぎるのでもない足の運び。進むごとに、形容しようのない圧力がぐにゃりと空気を押しつぶし、こちらに向かって圧縮させているのがはっきりと分かった。
その《存在》は、無造作にヴォルフたちの目の前まで歩いてくると、ふとそこで足を止めた。
雲がゆるりと切れる。
切り取られた闇がじわじわと去ったその場所に、「その者」は立っていた。
(こいつ──)
端正な白い横顔。
闇に煌めく紅の瞳。
一糸纏わぬその姿。
それはまちがいなく、あのフランにそっくりだった。
いや、違う。決定的になにかが違った。
甘い金色をしたフランの髪とは違い、光の加減もあってかそいつのそれは銀色に見えた。ヴォルフのように相当短く刈り込んでいる。が、無論髪型の違いなどはどうでもよかった。
フランとよく似た非常な美形ではあったけれども、それの醸し出すものは完全に真逆に見えた。
何より、全身から放たれるその殺気。
いや、闘気とでも言うべきか。
それはほとんど人間と変わらぬ姿をしていた。
ただ一点だけ違うのは、その片腕が奇妙に長くのびていることだった。ほとんど足首ほどまである。先端にいくにつれて次第に細く鋭くなったそれが、衛星の光を跳ね返してちかりと光っているのが見えた。
その先に、何かある。なにやら丸っこいものが。
(なんだ──?)
思いかけて、瞠目した。
丸いものからぽたりぽたりと、何かが地面に滴っている。
(な──)
それが何かを理解した途端、ヴォルフの喉がひゅっと音を立てそうになった。
口の中がカラカラに乾いている。舌がぴたりと口蓋の裏に張り付いている。全身が総毛だっていた。
隣のタチアナをそっと盗み見ると、彼女はもう両手で自分の口を押さえて真っ青になり、細かく震えているばかりだ。
──と。
ブン、とそれが片腕を振りぬいた。
すぐ目の前に、ぼとりと何かが落ちてくる。
数度跳ね返り、そばの木の根元でごろりと止まった。
「……!」
ヴォルフはもう、無我夢中でタチアナの口を手の上から抑え込んだ。
そうしなければ、さすがの彼女でも悲鳴を抑えることは難しかっただろう。
「……ゴミ虫どもが」
聞こえて来たのは、のびやかで艶のある低い男の声だった。
と見る間に、男の体が発光し、変形しはじめた。ゆるゆると増していくその光は、蛍を連想させる鈍いグリーンから、やがてまぶしい白へとかわっていく。
白金に光り輝く影になった人型のものから、にゅっと何かが伸び出した。
(なんだ……? ありゃあ)
いや、次の瞬間には分かった。それが巨大な鳥の翼であるということに。
そこで初めて、ヴォルフはとあることを思いだした。マレイアス号がこの惑星に不時着しようとしていたあの瞬間、ぎりぎりでどうにか危険を脱したあの瞬間に、自分が窓の外に見たものを。
「鳥か?」と思ったあの白い影。
だとしたら、あれは恐らく──。
そこまで思ったところで、目の前で光り輝いているものからしゅうしゅうと奇妙な音が聞こえ始めた。どうやらその者の体から湯気のようなものが立ちのぼっているのだ。皮膚の表面から何かが盛んに蒸発しているようだった。
と見る間に、光でできた翼の輪郭がびりっとぶれた。次の瞬間、細かい光の粒に分かれてぱっと霧散していく。
こんな状況だと言うのにそれは、まるで夢みるように美しかった。
「チッ」とかすかに聞こえたのは、《それ》の立てた舌打ちの音らしい。
《それ》はしばらく自分の手のひらを眺める様子だった。気が付けば、その手が両方とも普通の人間のものに戻っている。星の光だけではよく分からないが、すでに何の汚れも残っていないように見えた。
と、《それ》がくるりと向きを変えた。そのままもと来た道をすたすたと戻っていく。相当な早足だ。あっというまに姿が見えなくなってしまった。
ヴォルフはそこでようやく、肩を落として息をついた。それで初めて、ここまでずっと息を詰めていたことに気づく。
「あ。悪い」
言いながらタチアナの顔から手を離したが、彼女はまだ小刻みに体を震わせていてヴォルフの声は耳に入っていない様子だった。
周囲の虫たちが何ごともなかったかのように夜の演奏を再開させる。
まるですべてが何かの悪夢だったかのように。
ヴォルフは木の後ろから少し体を出すと、そこに転がったものを見下ろした。
まさに最期の一瞬を刻み込んだかのような、恐怖と驚愕にひきつった顔。命を失ってもなお残る恨みと「なぜ」を満載にして、くわっと見開かれた眼。それはまだ赤い体液で、てらてらと濡れ光っている。
ヴォルフはそっと顔の前で両手を合わせて目を閉じた。これもまた、育ての親からうけついだ習慣によるものだ。
(災難だったな……あんたもよ)
それはヴォルフもマレイアス号で何度か目にした男だった。
あちこちをずたずたに引き裂かれたピットという名の男の頭部が、開け放たれた目と口をそのままに、虚しくヴォルフたちを見上げていた。
なにしろ、暗い。空には星々と衛星らしいものが上がっているが、それらに照らされていても夜道の歩行には難儀した。ましてやヴォルフは手負いの身である。そこらで拾った適当な枯れ枝を杖がわりにしていたが、それでも相当な時間がかかった。
タチアナの貼ってくれた治療シートのお陰で傷ついた細胞は少しずつ修復されているはずだったが、安静にしていなければどうしても治癒スピードは落ちてしまう。もう出血はなくなっているが、痛みから来る汗は止まらないし、相変わらず発熱もしているようだ。だが、それでも歩かないわけには行かなかった。
「ちょっとここから、道を変えるぜ」
「え? それは──」
怪訝な顔になったタチアナに、ヴォルフは簡単に説明した。
バギーで入って来た入り口までは相当な坂道を自力でのぼる必要がある。今のヴォルフには正直きつい。それならば、以前フランに案内されて使ったあの「卵」を利用できないかと考えたのだ。使い方にはいまひとつ自信はないが、少なくともあれならば地上まで一歩も歩かずに辿りつけるはずだった。
「幸い、そんなに遠くねえ。目印もある。ほら、あれだ」
ヴォルフの指さす先には、衛星に照らされた巨大な影があった。夜空に大きく腕を広げてそびえた、あの巨大樹である。縦横に張りのばされた梢は、いまや黒々と不気味な姿を晒して天を覆っている。あれならば分かりやすい。どちらに行けばいいかも一目瞭然。足もとに気を付けさえすれば、まず道に迷うこともないだろう。
もちろん、もしもここが野生のままの森だったなら、無鉄砲にも程があるプランではある。普段のヴォルフだったら絶対に誰にもお勧めしない。が、幸いここはそうではないのだ。なにしろ、あのフランの折り紙つきである。
「よちよち歩きの子ども」ですら歩ける森。危険な肉食獣も、害虫もいない。それなら、手負いのヴォルフにもなんとかなるはずだった。
周囲は湿った緑の匂いが濃い。詳しい名までは知らないが、先ほどからリーリー、ころころと涼しげな虫の音が足もとをにぎわせている。遠くでフクロウのものらしいくぐもった声も聞こえた。
道は人ひとりがやっと通れるようなごく狭いものだ。が、二人はどうにかこうにかのろのろと進んでいった。
(ん──?)
先に異変に気付いたのは、ヴォルフだった。
今の今までにぎやかだった生き物たちが、急にぴたりと音楽会をやめたのだ。
それと同時に、空気の中にぴんと張り詰めたような何とも言えない感じが満ちた。タチアナもハッとして足を止め、こちらを振り向いている。
ヴォルフは「静かに」の意味になるよう唇の前に指を立てて見せ、手振りですぐにライトを消させた。そのまま二人で足音をしのばせて近くの木立の陰に隠れる。幸い今は、衛星に少し雲がかかっている。周囲はとぷりと闇に呑まれている。
幹に背をつけ、ほんのわずかに目だけを出してそちらを窺う。
ずしゃ、ずしゃと何かが近づいてくる音がする。
周囲はぴたりとすべての形をひそめ、虫すら息を殺している。
空気がさらに凍り付く。ヴォルフは自分の首の後ろの毛が逆立っているのを自覚した。ここまで嫌な予感に襲われたのは、恐らく生まれて初めてだった。
──何かが、道をやってくる。
とくに慌てるのでもなく、かといって緩みすぎるのでもない足の運び。進むごとに、形容しようのない圧力がぐにゃりと空気を押しつぶし、こちらに向かって圧縮させているのがはっきりと分かった。
その《存在》は、無造作にヴォルフたちの目の前まで歩いてくると、ふとそこで足を止めた。
雲がゆるりと切れる。
切り取られた闇がじわじわと去ったその場所に、「その者」は立っていた。
(こいつ──)
端正な白い横顔。
闇に煌めく紅の瞳。
一糸纏わぬその姿。
それはまちがいなく、あのフランにそっくりだった。
いや、違う。決定的になにかが違った。
甘い金色をしたフランの髪とは違い、光の加減もあってかそいつのそれは銀色に見えた。ヴォルフのように相当短く刈り込んでいる。が、無論髪型の違いなどはどうでもよかった。
フランとよく似た非常な美形ではあったけれども、それの醸し出すものは完全に真逆に見えた。
何より、全身から放たれるその殺気。
いや、闘気とでも言うべきか。
それはほとんど人間と変わらぬ姿をしていた。
ただ一点だけ違うのは、その片腕が奇妙に長くのびていることだった。ほとんど足首ほどまである。先端にいくにつれて次第に細く鋭くなったそれが、衛星の光を跳ね返してちかりと光っているのが見えた。
その先に、何かある。なにやら丸っこいものが。
(なんだ──?)
思いかけて、瞠目した。
丸いものからぽたりぽたりと、何かが地面に滴っている。
(な──)
それが何かを理解した途端、ヴォルフの喉がひゅっと音を立てそうになった。
口の中がカラカラに乾いている。舌がぴたりと口蓋の裏に張り付いている。全身が総毛だっていた。
隣のタチアナをそっと盗み見ると、彼女はもう両手で自分の口を押さえて真っ青になり、細かく震えているばかりだ。
──と。
ブン、とそれが片腕を振りぬいた。
すぐ目の前に、ぼとりと何かが落ちてくる。
数度跳ね返り、そばの木の根元でごろりと止まった。
「……!」
ヴォルフはもう、無我夢中でタチアナの口を手の上から抑え込んだ。
そうしなければ、さすがの彼女でも悲鳴を抑えることは難しかっただろう。
「……ゴミ虫どもが」
聞こえて来たのは、のびやかで艶のある低い男の声だった。
と見る間に、男の体が発光し、変形しはじめた。ゆるゆると増していくその光は、蛍を連想させる鈍いグリーンから、やがてまぶしい白へとかわっていく。
白金に光り輝く影になった人型のものから、にゅっと何かが伸び出した。
(なんだ……? ありゃあ)
いや、次の瞬間には分かった。それが巨大な鳥の翼であるということに。
そこで初めて、ヴォルフはとあることを思いだした。マレイアス号がこの惑星に不時着しようとしていたあの瞬間、ぎりぎりでどうにか危険を脱したあの瞬間に、自分が窓の外に見たものを。
「鳥か?」と思ったあの白い影。
だとしたら、あれは恐らく──。
そこまで思ったところで、目の前で光り輝いているものからしゅうしゅうと奇妙な音が聞こえ始めた。どうやらその者の体から湯気のようなものが立ちのぼっているのだ。皮膚の表面から何かが盛んに蒸発しているようだった。
と見る間に、光でできた翼の輪郭がびりっとぶれた。次の瞬間、細かい光の粒に分かれてぱっと霧散していく。
こんな状況だと言うのにそれは、まるで夢みるように美しかった。
「チッ」とかすかに聞こえたのは、《それ》の立てた舌打ちの音らしい。
《それ》はしばらく自分の手のひらを眺める様子だった。気が付けば、その手が両方とも普通の人間のものに戻っている。星の光だけではよく分からないが、すでに何の汚れも残っていないように見えた。
と、《それ》がくるりと向きを変えた。そのままもと来た道をすたすたと戻っていく。相当な早足だ。あっというまに姿が見えなくなってしまった。
ヴォルフはそこでようやく、肩を落として息をついた。それで初めて、ここまでずっと息を詰めていたことに気づく。
「あ。悪い」
言いながらタチアナの顔から手を離したが、彼女はまだ小刻みに体を震わせていてヴォルフの声は耳に入っていない様子だった。
周囲の虫たちが何ごともなかったかのように夜の演奏を再開させる。
まるですべてが何かの悪夢だったかのように。
ヴォルフは木の後ろから少し体を出すと、そこに転がったものを見下ろした。
まさに最期の一瞬を刻み込んだかのような、恐怖と驚愕にひきつった顔。命を失ってもなお残る恨みと「なぜ」を満載にして、くわっと見開かれた眼。それはまだ赤い体液で、てらてらと濡れ光っている。
ヴォルフはそっと顔の前で両手を合わせて目を閉じた。これもまた、育ての親からうけついだ習慣によるものだ。
(災難だったな……あんたもよ)
それはヴォルフもマレイアス号で何度か目にした男だった。
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