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第八章 隠された記憶
9 痛み ※
しおりを挟む「んんっ……!」
彼のそこに指がたどり着いたときにはもう、彼のものはしっかりと熱を持って上を向いていた。
ヴォルフの中心も、フランのそれに負けてはいない。彼の甘い声に刺激され、とうの昔に彼の尻に固いしこりをこすりつけるようになっている。フランはゆるやかに腰を動かして、その感触を確かめる様子だった。
「ヴォル……ん、あ」
彼のものを片手で握りこむと、ヴォルフの口の中に彼の吐息が注ぎ込まれる。背中が弓なりにのけぞって、尻はさらにヴォルフのものに押し付けられてきた。
「あ……んっ。ま、待って……ヴォルフ」
熱い吐息に蕩けたような声でフランが囁く。構わず彼のものをしごいてやれば、フランはせつなげに腰をゆらし、喉の奥でくうん、と啼いた。
「は……あっ! だ、だめ──」
「ん? どうした」
ヴォルフは口ではそう言いつつもそれには構わず、彼の耳と言わず首といわず吸いついて跡を残し、その肌に軽く歯を立ててやる。手の動きもいっさい止めない。感度のいいフランの体は、それにいちいち敏感に反応して跳ね上がった。
「あっ……あっんんっ!」
「したくねえか? ……悪いが、今はちょっと止まりたくねえ」
なにしろ、目の前にこの綺麗な裸体をぶら下げられたまま、完全にお預けの状態で過ごして来たのだ。ストレスから解放されたヴォルフの体は、ちょっとこっ恥ずかしいほどに欲望を主張してしまっている。
「無理はさせねえ。約束する」
「んっ……そ、そうじゃなくて……あふっ!」
「じゃ、なんだよ」
こりっと飛び出た乳首を指先ではじいてやるだけで、フランはまた淫靡な動きで腰をくねらせた。彼も欲しがっているのは明らかだ。
表情だけでなく、身体も声も蕩けきっているくせに。今にもヴォルフのものを欲しがって、形のいい尻をこっちの腰に押し付けておきながら。
「ふあっ……ん!」
尻の片方をゆっくりと揉みしだき、その間へ指を滑らせてやると、フランはさらに甘い嬌声をあげて背中を仰け反らせた。
「ここ、めちゃくちゃ欲しがってるぜ? こんなひくついてんの、自分でも分からねえか」
決して嘘は言っていない。確かに彼のそこは、以前のように勝手にとろりと濡れ始めている。可愛い入り口がヴォルフの指先を咥え込もうとばかりに、ゆるゆると蠢いていた。
「そ、……じゃ、なくてえっ……!」
ふうふう言いながら、フランはやっとのことでヴォルフの腕から抜け出してこちらを向いた。その目はすっかり、艶めいて潤んでいる。
「えっと、その……。な、なんにもしないでやっちゃうと……僕、すぐにまたできちゃうと思う、から……」
「ん? ああ。子供のことか?」
「……そ」
こくりと頷いたその顔が、さらにかあっと赤く染まる。
「まあ、そうだな。なにしろお前ら、百発百中なんだもんなあ?」
にやりと笑い、フランの顔を覗き込むと、彼はさらに困った顔になって赤面した。
「えっと……あのね。僕、まだちょっと無理っていうか。そんな、すぐに次の子なんて……」
ごめん、とひどく申し訳なさそうな顔で俯いている。
「ああ、謝んな。そりゃそうだ、無理ねえよ。第一、こんな狭えとこであのでかい卵になられちゃ困るってもんだしな」
彼の髪をわしわしと撫でてやりながら、ヴォルフはちょっと反省した。
考えてみれば当然だった。彼はついさっき、生まれたばかりだったあの赤ん坊との別れを知らされたばかりなのだ。あんな形で兄に奪われ、まだ悲しみや寂しさから立ち直れてもいないのに、すぐに「さあ次の子を」という気持ちにならないのは当たり前のことだった。
ヴォルフはフランの額に軽く音をたてて唇を触れさせた。
「……ん」
フランは素直に目を閉じてそれを受ける。そのまま何度か、互いについばむようなキスを交わす。
「悪い。配慮が足りなかった」
「う、ううん……。こっちこそごめん。なんだか、水を差すみたいになっちゃって」
「気にすんな気にすんな」
がはは、と笑ってヴォルフは今度は彼の髪をぐしゃぐしゃ掻きまわした。
「わぷっ……!」
「で。え~っと、避妊だよな? どうすりゃいい? なんか、どっかにそういう機能があるのか?」
「ん……。あ、でもその前に」
フランは頷いて、なんとなく下を見たようだった。そこには互いの固くそそり立つものがある。
「ちょっといいかな……?」
言って、床に片膝をついた。何をするのかと思ったら、フランはそのまま、片手をついとヴォルフのものに添わせてきた。思わず「んっ」と小さく声が出る。
「おい、フラン──」
「ここ、ちょっとつらそうだし。先に僕、さわってもいい……?」
両手を添えて見上げられる。その唇はもう、ヴォルフのものに寄せられていた。
大切なものに触れる手つきでそっと撫で、裏筋からつうっと舐められる。
「っ……。フラン、おいって」
「いいから。任せて……?」
にこりと天使みたいな笑顔で笑うと、フランはぺろぺろとヴォルフのものを舐め上げ始めた。
(……さすが、もの慣れてんな)
こんな、まるでなんの穢れも知らないような顔をして。
それでも彼は、とんでもなく長い時間をあの兄と、こういうことをして過ごしてきた存在なのだ。そこには、ヴォルフが考えられる以上のありとあらゆる体位やら、プレイやらが含まれてきたことだろう。
時にはかなりアブノーマルなことまで、奴に強要されてきたのに違いない。本人が望むと望まざるとに関わらず、こういう技術を嫌でも教え込まれてきたということなのだ。
そう考えると、どうにも胸が痛んだ。
思った通り、彼の舌使いは巧みだった。
丁寧に裏筋から袋の方を舐め、唇で優しく食み、先端から滲む先走りをさも大切そうにすすり上げる。舌先で先端の入り口を細かく突いて刺激する。
さらに大きく口を開け、すっぽりとヴォルフのものを咥えこんだ。
じゅぷ、じゅるっと股間から淫靡な音が鳴り響く。
「く──」
ヴォルフは眉間に皺をよせ、せり上がる欲望を堪えた。
悦い。さすがの上手さだ。
フランはさらに頬裏や指で両側を刺激しながら、喉奥で先端を受け止め、次第に頭の動きを早くしていく。ヴォルフは思わず彼の頭を片手でつかんでいた。
見下ろすと、涙を浮かべたとんでもなく綺麗な瞳がじっとヴォルフを見上げている。自分のものを咥えた顔は少し間の抜けたような感じではあったものの、それでもフランは美しかった。
「出して……? ヴォルフ」
言いながら、ちゅうっと先端を吸い上げてくる。
「僕、君の……飲みたいよ」
夢みるような瞳でねだられる。
「く……!」
次の瞬間、ヴォルフは彼の口の中で思うさま果てていた。
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