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本編
プロローグ~神さま(仮)の部屋~
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―んっ、ここは....?
ぼんやりとした意識のまま辺りを見渡す。
が、どこを見ても一面真っ白だった。
「おお、やっと目覚めおったか」
突然声が聞こえた。
しわがれた低い声なので、男の、それもかなり年配の人のものだろうということがわかる。
「......、.......?」
―どうして?
ぼくは誰なのか問おうとしたが、何故か声がでない。
否、そもそも口がないのだ。口だけではない。目も鼻も耳も、体すらもない。
なのに、どうして周りが見えたり音が聞こえたりするのかとても不思議だ。
「おぬしは魂だけの存在になってしまったからのぅ...違和感があるかもしれぬが、少しだけ我慢してくれ」
声に出してないのに、ぼくの疑問に答えが返ってきた。
どうしてぼくの言いたいことがわかったのかという事もとても気になるが、それよりも.....。
―魂だけ、ですか?
「そう、魂だけじゃ。おぬしは下界で既に亡くなっておる。トラックに跳ねられて即死じゃな」
―そうだったんですか........。
「おや、やけにあっさりしておるの?」
―いえ、実感が湧かないというかなんというか。急にそんなこと言われても.....って感じです。それに、もう死んでもいいかななんて思ってたりもしてましたし。
ぼくが死にたいと思うようになった原因を思い出す。本当に辛かった。
もうあんな目にあわなくていいと思うと、物凄くホッとする。
ぼくは、嫌われものだ。クラスメイトにも、先生にも、家族にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯すらもろくに与えられないような日々だった。とても、辛かった。
それでもここまで生きてこられたのは、あの人のお陰だ。
「まあ、あれだけのことを受けたのなら死にたいと思うても仕方あるまい」
―ぼくのこと知ってるんですか?
「神じゃからな、当たり前じゃ」
―え?神さま!?
まさか、神さまだったとは。信じた訳じゃないけど。
「言っておらんかったか?」
―言ってませんよ!
「それはすまんかったのぅ。ちなみに此処は俺の部屋じゃ」
此処は神さま(仮)の部屋だったのか。というか、今までお爺さんみたいなしゃべり方してたのに一人称は俺なんだね。
―それで、神さま(仮)がぼくに何か用があるのですか?
「信じておらぬな......まあよい。本題はここからじゃ」
―本題?
「うむ。俺はおぬしのことをずっと見ておってな。幸せになってほしいと思っておった。じゃが、俺よりも強い力を持つ神が邪魔をしてくるせいで何も、してやることができんかった」
そう言う神さま(仮)の声は悔しそうだった。
―思ってくださっただけでも、ありがたいです。
「そうかの、そう言ってくれると気が楽じゃ。それで、おぬしが死んだ今、あやつの力が及ぶ前に俺が此処に連れてきたという訳じゃ」
―そこまでして、どうしてぼくを?
「それはじゃな.......
おぬし、“転生”してみる気はないかの?」
―........え?
ぼんやりとした意識のまま辺りを見渡す。
が、どこを見ても一面真っ白だった。
「おお、やっと目覚めおったか」
突然声が聞こえた。
しわがれた低い声なので、男の、それもかなり年配の人のものだろうということがわかる。
「......、.......?」
―どうして?
ぼくは誰なのか問おうとしたが、何故か声がでない。
否、そもそも口がないのだ。口だけではない。目も鼻も耳も、体すらもない。
なのに、どうして周りが見えたり音が聞こえたりするのかとても不思議だ。
「おぬしは魂だけの存在になってしまったからのぅ...違和感があるかもしれぬが、少しだけ我慢してくれ」
声に出してないのに、ぼくの疑問に答えが返ってきた。
どうしてぼくの言いたいことがわかったのかという事もとても気になるが、それよりも.....。
―魂だけ、ですか?
「そう、魂だけじゃ。おぬしは下界で既に亡くなっておる。トラックに跳ねられて即死じゃな」
―そうだったんですか........。
「おや、やけにあっさりしておるの?」
―いえ、実感が湧かないというかなんというか。急にそんなこと言われても.....って感じです。それに、もう死んでもいいかななんて思ってたりもしてましたし。
ぼくが死にたいと思うようになった原因を思い出す。本当に辛かった。
もうあんな目にあわなくていいと思うと、物凄くホッとする。
ぼくは、嫌われものだ。クラスメイトにも、先生にも、家族にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯すらもろくに与えられないような日々だった。とても、辛かった。
それでもここまで生きてこられたのは、あの人のお陰だ。
「まあ、あれだけのことを受けたのなら死にたいと思うても仕方あるまい」
―ぼくのこと知ってるんですか?
「神じゃからな、当たり前じゃ」
―え?神さま!?
まさか、神さまだったとは。信じた訳じゃないけど。
「言っておらんかったか?」
―言ってませんよ!
「それはすまんかったのぅ。ちなみに此処は俺の部屋じゃ」
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―それで、神さま(仮)がぼくに何か用があるのですか?
「信じておらぬな......まあよい。本題はここからじゃ」
―本題?
「うむ。俺はおぬしのことをずっと見ておってな。幸せになってほしいと思っておった。じゃが、俺よりも強い力を持つ神が邪魔をしてくるせいで何も、してやることができんかった」
そう言う神さま(仮)の声は悔しそうだった。
―思ってくださっただけでも、ありがたいです。
「そうかの、そう言ってくれると気が楽じゃ。それで、おぬしが死んだ今、あやつの力が及ぶ前に俺が此処に連れてきたという訳じゃ」
―そこまでして、どうしてぼくを?
「それはじゃな.......
おぬし、“転生”してみる気はないかの?」
―........え?
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