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可愛い孫として……
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「それで今日はどうしたんだ?」
「賢将さん。話は先に食事をしてからにしましょう」
「んっ? ああ、そうか。じゃあ、そうしよう。着替えてくるよ」
賢将さんは私たちが来ている理由が気になったようだが、秋穂さんの言葉に耳を傾けて自室へ向かった。
その間にすき焼きを仕上げていく。
秋穂さん特製の割下で作る緑川家のすき焼きは絶品で、初めて食べさせてもらった時はあまりのおいしさに驚いたものだ。
その配合を教えてもらって我が家でも作るようになったから、すき焼きは緑川家の味だ。
「卓さん、お願いできるかしら?」
「はい。喜んで」
すき焼き鍋に牛脂を塗り牛肉を焼いていく。
そして、タイミングを見計らって割下を流し込み、具材を入れていく。
味の染みた白滝や椎茸は食欲をそそる。
絢斗は待ちきれない様子ですき焼き鍋を覗き込んでいた。
その間に秋穂さんはご飯などを並べ、もうそろそろ出来上がるかというくらいに賢将さんがダイニングにやってきた。
「ああ、いい匂いだな。卓くん、ありがとう」
「いえ。それじゃあいただきましょう」
みんなで席につくと、
「卓くん、一杯どうだ?」
と賢将さんが声をかけてくれた。
「ですが、車なので……」
「絢斗が運転して帰ったらいい。もし、無理なら泊まってくれても構わないよ」
遠慮しようかと思ったが、絢斗が私にグラスを渡してくれたから甘えることにした。
「はい。いただきます」
賢将さんと一緒に酒を飲むのは久しぶりだ。
これがいい酒になるかどうかはあの話をしてからだな。
美味しいお肉と楽しい雰囲気に食も進み、あっという間に七割方食事を終えた。
ふぅと一息ついたところで、賢将さんが私たちを見て口を開いた。
「それで、どういう要件だったんだ? そろそろ聞かせてくれてもいいだろう? 秋穂は知っているのか?」
「いえ。私もまだ。でも空腹で話をするよりは食事をしてからの方がいいと思って……」
「それは確かにそうだな」
賢将さんが納得してくれてホッとする。
私は覚悟を決めて、話をすることにした。
「実は、私と絢斗は里親になって子どもを預かることを決めました。その報告がしたくて今日は伺いました」
「二人が、里親に? 二人が決めたことをとやかくいうつもりはないが、養子ではなく里親を選んだ理由は何かあるのか?」
自分の子にするのではなく、実の親の代わりに養育することを選んだ理由を知りたいのだろう。
それは当然だ。
「はい。実は、自分の妻が二歳の息子を虐待していた罪で逮捕された男性と一緒に病院に付き添った縁で、彼らと関わることになりまして、父親は自分が息子を助けられなかったショックで記憶喪失になってしまい、息子のことを忘れてしまったんです」
「なんてことだ……」
医師である賢将さんにはしっかりと話しておいた方がいいと思い、私の両親よりも詳しく保さんの症状を伝えた。
「保さんは退院できたとしても息子について何の記憶もない自分が一人で育てて行くことが困難だということだったので、私が里子に出すことを勧めました。いつかまた彼が父親に戻りたいと思った時に戻れるようにしていたかったんです」
「なるほど……そういうことか。卓くんも絢斗もその表情を見る限り、同情ではなく本気でその子を養育することを決めたんだな?」
「はい。そうです」
「そうか……私たちは二人が決めたことを反対するつもりはないよ」
「――っ!! ありがとうございます。あの……できればその子……直くんには、私たちだけでなく、祖父母の愛情もたっぷりと与えて育ててやりたい。できることなら保さんも含めて大きな家族として成長させてあげたいと思っています。ですから直くんを里子に迎えたらこちらに連れてきても構いませんか?」
「お父さん、お母さん! お願い! 直くんを可愛い孫だと思って欲しい。本当に可愛いんだよ」
私の言葉に被せるように絢斗が直くんへの思いを訴える。
すると、賢将さんと秋穂さんは顔を見合わせて頷いたかと思ったら、私たちに笑顔を見せた。
「もちろん、養子にしろ里子にしろ、二人が育てるなら私たちは孫と思って可愛がるよ。絢斗と卓くんの孫を可愛がれるならこんなに嬉しいことはないよ」
「お父さん! お母さん! ありがとう!!」
絢斗は涙を流しながら、二人に抱きつきに行った。
3人で笑顔で抱き合う姿に私も涙が込み上げていた。
「賢将さん。話は先に食事をしてからにしましょう」
「んっ? ああ、そうか。じゃあ、そうしよう。着替えてくるよ」
賢将さんは私たちが来ている理由が気になったようだが、秋穂さんの言葉に耳を傾けて自室へ向かった。
その間にすき焼きを仕上げていく。
秋穂さん特製の割下で作る緑川家のすき焼きは絶品で、初めて食べさせてもらった時はあまりのおいしさに驚いたものだ。
その配合を教えてもらって我が家でも作るようになったから、すき焼きは緑川家の味だ。
「卓さん、お願いできるかしら?」
「はい。喜んで」
すき焼き鍋に牛脂を塗り牛肉を焼いていく。
そして、タイミングを見計らって割下を流し込み、具材を入れていく。
味の染みた白滝や椎茸は食欲をそそる。
絢斗は待ちきれない様子ですき焼き鍋を覗き込んでいた。
その間に秋穂さんはご飯などを並べ、もうそろそろ出来上がるかというくらいに賢将さんがダイニングにやってきた。
「ああ、いい匂いだな。卓くん、ありがとう」
「いえ。それじゃあいただきましょう」
みんなで席につくと、
「卓くん、一杯どうだ?」
と賢将さんが声をかけてくれた。
「ですが、車なので……」
「絢斗が運転して帰ったらいい。もし、無理なら泊まってくれても構わないよ」
遠慮しようかと思ったが、絢斗が私にグラスを渡してくれたから甘えることにした。
「はい。いただきます」
賢将さんと一緒に酒を飲むのは久しぶりだ。
これがいい酒になるかどうかはあの話をしてからだな。
美味しいお肉と楽しい雰囲気に食も進み、あっという間に七割方食事を終えた。
ふぅと一息ついたところで、賢将さんが私たちを見て口を開いた。
「それで、どういう要件だったんだ? そろそろ聞かせてくれてもいいだろう? 秋穂は知っているのか?」
「いえ。私もまだ。でも空腹で話をするよりは食事をしてからの方がいいと思って……」
「それは確かにそうだな」
賢将さんが納得してくれてホッとする。
私は覚悟を決めて、話をすることにした。
「実は、私と絢斗は里親になって子どもを預かることを決めました。その報告がしたくて今日は伺いました」
「二人が、里親に? 二人が決めたことをとやかくいうつもりはないが、養子ではなく里親を選んだ理由は何かあるのか?」
自分の子にするのではなく、実の親の代わりに養育することを選んだ理由を知りたいのだろう。
それは当然だ。
「はい。実は、自分の妻が二歳の息子を虐待していた罪で逮捕された男性と一緒に病院に付き添った縁で、彼らと関わることになりまして、父親は自分が息子を助けられなかったショックで記憶喪失になってしまい、息子のことを忘れてしまったんです」
「なんてことだ……」
医師である賢将さんにはしっかりと話しておいた方がいいと思い、私の両親よりも詳しく保さんの症状を伝えた。
「保さんは退院できたとしても息子について何の記憶もない自分が一人で育てて行くことが困難だということだったので、私が里子に出すことを勧めました。いつかまた彼が父親に戻りたいと思った時に戻れるようにしていたかったんです」
「なるほど……そういうことか。卓くんも絢斗もその表情を見る限り、同情ではなく本気でその子を養育することを決めたんだな?」
「はい。そうです」
「そうか……私たちは二人が決めたことを反対するつもりはないよ」
「――っ!! ありがとうございます。あの……できればその子……直くんには、私たちだけでなく、祖父母の愛情もたっぷりと与えて育ててやりたい。できることなら保さんも含めて大きな家族として成長させてあげたいと思っています。ですから直くんを里子に迎えたらこちらに連れてきても構いませんか?」
「お父さん、お母さん! お願い! 直くんを可愛い孫だと思って欲しい。本当に可愛いんだよ」
私の言葉に被せるように絢斗が直くんへの思いを訴える。
すると、賢将さんと秋穂さんは顔を見合わせて頷いたかと思ったら、私たちに笑顔を見せた。
「もちろん、養子にしろ里子にしろ、二人が育てるなら私たちは孫と思って可愛がるよ。絢斗と卓くんの孫を可愛がれるならこんなに嬉しいことはないよ」
「お父さん! お母さん! ありがとう!!」
絢斗は涙を流しながら、二人に抱きつきに行った。
3人で笑顔で抱き合う姿に私も涙が込み上げていた。
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