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これからのこと
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「こんにちは」
「あ、先生」
「顔色が良くなっているね。安心したよ」
直くんについての大きな決断をしたことで、心の少しゆとりが出たのかもしれない。
彼の表情は先日よりもずっと明るく見えた。
「食事を美味しく感じられるようになって、夜中に起きることもなくなりました」
「そうか。それはよかった。ああ、これお土産だよ。私の伴侶のおすすめでね、プリンなんだ」
「わぁ、ありがとうございます。プリンなんてもう何年も食べてません」
プリンと聞いてこんなにも目を輝かせてくれるのだから余程甘いもの好きなのだろう。
それなのに何年も食べていないなんて……この数年の彼の生活がますます不憫に思える。
「早速食べるといいよ。林先生にもちゃんと許可はとってるから安心して」
「は、はい。いただきます」
身も心もすり減らしていた彼には食事制限は何もない。
むしろカロリーを摂ることは勧められているくらいだ。
だがずっと食事も受け付けられずにいたと聞いていた。
美味しく感じられるようになったのは、彼が良くなってきている証拠だ。
嬉しそうに口に運び、笑顔を見せる。
「美味しいです!」
「そうか、焦らなくていいからゆっくり食べるといい」
「はい」
笑顔で食べ進めていた保さんだったが、数口で手が止まってしまった。
「口に合わなかったのなら無理しなくていいよ」
「あ、違うんです。あの子にも……私の息子にも食べさせてやりたいと思ってしまって……」
「そう考えるのは当然だよ。記憶がなくても君はあの子の父親なのだからね。でも大丈夫。あの子にもちゃんと食べられそうなものを買ってきているから」
「本当ですか?」
「ああ、だから安心して食べるといい」
その言葉に安心したのか彼は小さく頷いてプリンを食べ始めた。
そして、全てを食べ終えてから私はこれからのことを話すことにした。
「保さん、先日お話しした里親探しの件だが……直純くんを引き取る人が決まったよ」
「えっ! もう? こんなに早く?」
「ああ。直純くんと保さんの事情を考慮して、行政が動いてくれたんだ。保さん、最後の確認だが……あの子を里親に預ける意思は変わらないかな?」
「…………はい。それが今のあの子にとっては一番幸せなことだと思います」
彼は自分自身を納得させるように、ゆっくりとその言葉を口にした。
「あ、あの……その人がどういう人かは、私にも会わせてもらえるんでしょうか?」
「保さんも、会いたいかな?」
「はい! もちろんです! 自分の息子だとはっきりと言い切れないですが、あの子に幸せになって欲しいので……私の口からもしっかりとお願いしたいです。だから……」
「大丈夫。保さんの気持ちは十分理解しているよ。直純くんを引き取るのは、私だからね……」
「えっ!!!! せ、先生が?」
目を丸くする保さんに私は笑顔で頷いて見せた。
「あの、ほ、本当なんですか?」
「ああ。保さんの事情も直純くんのことも全て知っている私が適任だろうと思ったんだ。それに私自身が直くんを育てたいと感じたからね」
「あの、でもご家族とか反対はなかったんですか?」
「伴侶には一番に話をして喜んで賛成してくれたよ。両家の親にも話をして賛成してくれているし、安心して欲しい。それに。直純くんを里子として預かるというよりは、保さんも含めて大きな家族になりたいというのが私たちの総意だよ」
「えっ、私も……?」
キョトンとする保さんに私は頷いて見せた。
「保さんは、退院後の生活を考えているかな?」
「えっ、退院後……あの、それは………すみません」
やっぱり思ったとおりだ。まぁ、今の自分をまだどうすることもできない彼が退院してからのことを考える余裕がないのは当然だ。
「いや、保さんがまだそこまでを考える状況になっていないことはわかっているから謝る必要はない。ただ、これからのことについて少し話がしたいから、答えられることは教えて欲しい」
「は、はい」
「ああ、緊張しないでいいよ。保さんが家族と過ごしていた家は覚えているかな?」
「いえ、家族に関することはあまり……」
「そうか。実際問題、もし記憶が戻ったとしても元の家に帰って生活をするのは難しいと思う」
「えっ? そう、なんですか?」
「ああ、近所でも今回の件は大きな騒ぎになっているからね。その中で生活をするのはかなり厳しいだろう」
「あっ……そう、ですね……」
直くんが傷つけられた後、周りの人たちの通報によって救急搬送されたことは保さんも知らされているからそれは理解できているようだ。
「だから、これから先会社としての対応も考えないといけないし。第一に保さんが安心して生活する環境を整えなければいけない。そのために、私たちも力を貸したいということなんだよ」
「先生……」
私は直くんだけでなく保さんも救いたい。それが直くんのためにも一番いいことなのだから。
「あ、先生」
「顔色が良くなっているね。安心したよ」
直くんについての大きな決断をしたことで、心の少しゆとりが出たのかもしれない。
彼の表情は先日よりもずっと明るく見えた。
「食事を美味しく感じられるようになって、夜中に起きることもなくなりました」
「そうか。それはよかった。ああ、これお土産だよ。私の伴侶のおすすめでね、プリンなんだ」
「わぁ、ありがとうございます。プリンなんてもう何年も食べてません」
プリンと聞いてこんなにも目を輝かせてくれるのだから余程甘いもの好きなのだろう。
それなのに何年も食べていないなんて……この数年の彼の生活がますます不憫に思える。
「早速食べるといいよ。林先生にもちゃんと許可はとってるから安心して」
「は、はい。いただきます」
身も心もすり減らしていた彼には食事制限は何もない。
むしろカロリーを摂ることは勧められているくらいだ。
だがずっと食事も受け付けられずにいたと聞いていた。
美味しく感じられるようになったのは、彼が良くなってきている証拠だ。
嬉しそうに口に運び、笑顔を見せる。
「美味しいです!」
「そうか、焦らなくていいからゆっくり食べるといい」
「はい」
笑顔で食べ進めていた保さんだったが、数口で手が止まってしまった。
「口に合わなかったのなら無理しなくていいよ」
「あ、違うんです。あの子にも……私の息子にも食べさせてやりたいと思ってしまって……」
「そう考えるのは当然だよ。記憶がなくても君はあの子の父親なのだからね。でも大丈夫。あの子にもちゃんと食べられそうなものを買ってきているから」
「本当ですか?」
「ああ、だから安心して食べるといい」
その言葉に安心したのか彼は小さく頷いてプリンを食べ始めた。
そして、全てを食べ終えてから私はこれからのことを話すことにした。
「保さん、先日お話しした里親探しの件だが……直純くんを引き取る人が決まったよ」
「えっ! もう? こんなに早く?」
「ああ。直純くんと保さんの事情を考慮して、行政が動いてくれたんだ。保さん、最後の確認だが……あの子を里親に預ける意思は変わらないかな?」
「…………はい。それが今のあの子にとっては一番幸せなことだと思います」
彼は自分自身を納得させるように、ゆっくりとその言葉を口にした。
「あ、あの……その人がどういう人かは、私にも会わせてもらえるんでしょうか?」
「保さんも、会いたいかな?」
「はい! もちろんです! 自分の息子だとはっきりと言い切れないですが、あの子に幸せになって欲しいので……私の口からもしっかりとお願いしたいです。だから……」
「大丈夫。保さんの気持ちは十分理解しているよ。直純くんを引き取るのは、私だからね……」
「えっ!!!! せ、先生が?」
目を丸くする保さんに私は笑顔で頷いて見せた。
「あの、ほ、本当なんですか?」
「ああ。保さんの事情も直純くんのことも全て知っている私が適任だろうと思ったんだ。それに私自身が直くんを育てたいと感じたからね」
「あの、でもご家族とか反対はなかったんですか?」
「伴侶には一番に話をして喜んで賛成してくれたよ。両家の親にも話をして賛成してくれているし、安心して欲しい。それに。直純くんを里子として預かるというよりは、保さんも含めて大きな家族になりたいというのが私たちの総意だよ」
「えっ、私も……?」
キョトンとする保さんに私は頷いて見せた。
「保さんは、退院後の生活を考えているかな?」
「えっ、退院後……あの、それは………すみません」
やっぱり思ったとおりだ。まぁ、今の自分をまだどうすることもできない彼が退院してからのことを考える余裕がないのは当然だ。
「いや、保さんがまだそこまでを考える状況になっていないことはわかっているから謝る必要はない。ただ、これからのことについて少し話がしたいから、答えられることは教えて欲しい」
「は、はい」
「ああ、緊張しないでいいよ。保さんが家族と過ごしていた家は覚えているかな?」
「いえ、家族に関することはあまり……」
「そうか。実際問題、もし記憶が戻ったとしても元の家に帰って生活をするのは難しいと思う」
「えっ? そう、なんですか?」
「ああ、近所でも今回の件は大きな騒ぎになっているからね。その中で生活をするのはかなり厳しいだろう」
「あっ……そう、ですね……」
直くんが傷つけられた後、周りの人たちの通報によって救急搬送されたことは保さんも知らされているからそれは理解できているようだ。
「だから、これから先会社としての対応も考えないといけないし。第一に保さんが安心して生活する環境を整えなければいけない。そのために、私たちも力を貸したいということなんだよ」
「先生……」
私は直くんだけでなく保さんも救いたい。それが直くんのためにも一番いいことなのだから。
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