虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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祖父母との対面

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<side絢斗>

ーあ、お義母さん。絢斗です。

ーあら、絢斗くんが電話くれるなんて嬉しいわ。直くんのことかしら?

ーはい。卓さんの話では今日一般病棟に移れるみたいなので、お義母さんとお義父さんもよかったら直くんに会いにきてくれませんか?

ーまぁ! 許可が出たのね! それを待っていたのよ、嬉しいわ! これからすぐに行くのかしら?

ーはい。なので病院で待ち合わせでもいいですか?

ーええ。もちろんよ! 秋穂さんたちも一緒かしら?

ーいえ。急に大勢で押しかけると直くんもびっくりするかと思って、一般病棟に移ってからお義母さんたちと交代で来てもらうことにしてます。

ーそう。わかったわ。じゃあ、すぐに寛さんと向かうわね。聖ラグエル病院だったわよね?

ーはい。ではロビーで待ってますね。

ふふっ。想像以上に喜んでくれていたな。
お義母さんにはあれから何度か直くんの写真や動画送っていたからその時から反応がよかったし、実物の直くんに会ったらきっとメロメロになっちゃうだろうな。うちのお母さんもすでにメロメロだもんね。

私は急いで準備をして病院に向かった。

「絢斗くん!」

駐車場で車を降りると、ちょうど駐車場に入ってきた車から名前を呼ばれた。
お義母さんだ。

お義母さんたちの家の方が病院から離れているのに、ここで会うなんて本当に急いで駆けつけてくれたんだ。
直くんに会えるのを楽しみにしてくれていたんだな。

「よかったわ、ここで会えて」

「はい。お義父さんも急にお呼び出ししてすみません」

「いや、楽しみにしていた連絡だったから嬉しかったよ」

「ふふっ、寛さん。毎日、今日は連絡が来るんじゃないかってそわそわしていたのよ。絢斗くんが送ってくれる写真と動画も私以上に楽しみにしていたんだから」

「そうなんですね。直くんもお義母さんとお義父さんに会えて喜ぶと思いますよ」

私はニコニコ顔の義両親を連れてPICUに向かった。

「絢斗さん、磯山先生と奥さまもご無沙汰しております」

義両親の姿を見て、榎木先生は深々と頭を下げる。
こんな姿はなかなか見られない光景かもしれない。

「榎木くんと息子さんも元気かな?」

「はい。おかげさまで」

「それならよかった。ところで直くんにはもう会えるのかな?

「はい。今から一般病棟に移動するところです。ベッドごとこちらに連れてきますのでここでしばらくお待ちください」

榎木先生は笑顔でその場から離れるとPICU病棟に入り、数人の看護師さんと一緒に直くんのベッドを動かし始めた。直くんは起きているようで少し不安そうにベッドの中央に座っているのが見える。その手にはこの前私がプレゼントしたウサギのぬいぐるみが握られていた。

「あ、直くんがこっちを見てるわ!」

お義母さんが嬉しそうに手を振ると、直くんはすぐそれに気づきはにかんだ笑顔を見せてくれる。

「きゃー、可愛い!」

それだけでお義母さんはもうメロメロだ。

PICUの扉が開き、直くんのベッドが出てくると私とお義母さんは急いでそこに駆け寄った。

「あーちゃ」

「そう、あーちゃんが来たよ。直くん、こっちは……お義母さん、直くんになんて呼んでもらいますか?」

「えっ、あ、そうね……寛さん、何がいいかしら?」

少し離れた場所で私たちの様子を見ていたお義父さんに声をかけると、

「ばあちゃんは昇が言っているから、直くんは名前でいいんじゃないか? そのほうが可愛いだろう」

という返事が返ってきた。

そっか、お義父さん。お義母さんのことを可愛く呼んでもらいたいんだ。
なんか、こういうところ卓さんに似てる。やっぱり親子だな。

「じゃあ、沙都のさーちゃんにしましょう。絢斗くんがあーちゃんだし、お揃いで可愛いでしょ。直くん、さーちゃんよ」

「ちゃーちゃ」

「ふふっ、そうよ。直くん、よろしくね。榎木先生、抱っこしてもいいかしら?」

「はい。大丈夫ですよ」

「直くん、おいで」

お義母さんが両手を差し出すと直くんはその手に小さな手を伸ばした。
その姿が可愛くて見惚れてしまった。

お義母さんがそっと抱きかかえると直くんはその腕の中にすっぽりとおさまった。

「直くん、さーちゃんに抱っこしてもらえて良かったね」

直くんの目の高さに屈んで笑顔を見せると、直くんが

「あーちゃ、あーちゃ」

と声をあげながら私に手を伸ばしてくる。

「あら、絢斗くんにも抱っこしてもらいたいみたい。もう絢斗くんを親だと認識しているのかもね」

「直くん……おいで」

手を伸ばすと直くんが私の腕の中にやってきた。
PICUで眠っている時に何度か抱かせてもらったけれど、直くんの意思で抱っこするのは初めてだ。

「可愛い……」

私は直くんを優しく抱きしめながら柔らかな温もりに思わず涙を潤ませていた。
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