虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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会いにいこう

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「あ、お父さんたちが駐車場に着いたって」

「おお、そうか。じゃあ、迎えに行ってこよう」

「ううん、卓さんは直くんのそばにいてあげて。私が迎えに行ってくるよ」

「だが……」

賢将さんたちは絢斗が迎えに行ったほうが喜ぶだろうが、私としては絢斗を一人で駐車場まで行かせたくない。だが父と母だけをここに残して、私たちが部屋からいなくなって直くんが不安になってしまっては困る。どうしようかと思っているとそれを察したのか、父が口を開いた。

「私が迎えに行ってくるから待っていてくれ」

そういうが早いか、すぐに部屋を出ていく。見えなくなった父の姿にお礼を告げて、私は直くんを絢斗に渡した。

「母さん、賢将さんと秋穂さんが来たら父さんと一緒に保さんに会いに行かないか?」

「会いに行っても大丈夫なの?」

「ああ、だいぶ落ち着いているし、保さんも直くんが引き取られる先の家族に会っておきたいだろうからな」

「それなら喜んでいかせてもらうわ」

「ねぇ、卓さん。うちの両親も会いに行ってもいいの?」

「そうだな。あちらにも時間差で入ったほうがいいだろう。それまでここで直くんと過ごしていてくれるか?」

「うん、わかった」

それからしばらくして父が絢斗の両親と共に部屋にやってきた。
直くんは初めて見る人の姿にピクッと身体を震わせて絢斗に抱きついていたが、

「なおくーん、かわいいワンワンよ」

と小さなぬいぐるみを振りながら笑顔で近づいてくる秋穂さんの姿に興味津々に見つめていた。
秋穂さんはぬいぐるみに興味を向かせながら、直くんを抱いた絢斗のそばに近づく。

「口に入れても大丈夫なぬいぐるみだから安心してくれ」

私の隣で賢将さんがそう教えてくれる。
さすが現役の医師。どんなものがお土産に適しているのかわかるのだな。

「わんわん、かわいいでしょ?」

「わん、わん?」

「そう、わんわん。直くんはお利口さんね」

笑顔でぬいぐるみを渡すと、直くんは絢斗のウサギを指差して「うちゃ、うちゃ」と声をあげる。

「あら、ウサギさんもいるのね。可愛い」

秋穂さんはウサギを手に取るとそれも直くんに渡してあげる。
可愛いぬいぐるみを両手に抱えて直くんはご機嫌になっていた。

「さすが元看護師さんね」

母は秋穂さんを尊敬の眼差しで見ながら絢斗たちに近づき、三人の楽しげな姿を写真に収めていた。

「秋穂さん、この写真あとで差し上げるわ」

「沙都さん、ありがとう」

「私たちはお暇するから、ゆっくり過ごして。あ、そうだ。私、直くんに「さーちゃん」って呼んでもらうことになったの」

「あら、素敵!」

「ふふ、秋穂さんも素敵な呼び名考えてね。直くん、また明日会いにくるからね。さーちゃんも今度はお土産持ってくるわ」

「ちゃーちゃ」

直くんが小さな手を伸ばすと、母は嬉しそうに直くんを抱いている絢斗ごと抱きしめた。
直くんに配慮したんだろうが、絢斗を抱きしめたことには少し反応してしまう自分がいた。
これから直くんの親代わりとして育てていくのだから、もう少し寛大にならないといけないな……。

絢斗と賢将さん、そして秋穂さんに直くんを任せて、私は両親を連れて保さんの病室に向かった。
その前に主治医の林先生に声をかけるとちょうど今、部屋から出てきたところだったそうで入室の許可をもらえた。

部屋の扉を叩くと、「はい、どうぞ」と少し元気な声が聞こえる。
もしかしたら林先生と話をして心にゆとりができたのかもしれない。

扉を開け、顔を見せるとさすがに驚きの表情を見せた。

「驚かせてすまない。さっき保さんと別れたあとで直くんに会ってきたんだ。ちょうど一般病棟に移ったところだったからね」

「そうだったんですね。元気でしたか?」

「ああ、とても元気になっていたよ。よく笑うし、体重も重くなっていた」

「そう、ですか……よかった、ホッとしました」

保さんの中にはPICUに入ったばかりのあの痛々しい姿しかないのだろう。
早く保さんとも合わせてやりたいものだ。

「実はね、保さんに会わせたくて私の両親を連れてきたんだ。あってもらえるかな?」

「えっ、先生のご両親ですか? も、もちろん、私もご挨拶したいです。あ、でもこんな格好で……」

病院着なのが恥ずかしいようだがそこは気にしないでいい。

「入院しているのだから構わないよ。じゃあ入らせてもらうね」

私は扉を広く開け、父と母を中に入れた。
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