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初めての言葉
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<side寛>
「なんだ、お前たち。来ていたのか?」
沙都とともに自宅に戻ると家の前に毅と二葉さん、それに昇まで来ていた。
「来ていたのかじゃないですよ。今日、父さんたちと話がしたいって伝えていたでしょう?」
「あ、そうだったわ。うっかりしてたわ、ごめんなさい」
そういえばそんな話を沙都から聞いていたな。
絢斗くんからの連絡ですっかり忘れてしまっていた。
約束の時間から三十分ほど待たせてしまっていたようだ。
直くんと会ってから、保さんの買い物に行ったりしていたからスマホを見る余裕もなかったな。
「とりあえず中で話そう。昇、外で待たせて悪かったな」
「ううん、じいちゃんもばあちゃんも、うれしそうだからきっといいことがあったんでしょう? じいちゃんたちがうれしいならおれもうれしいからいいんだ」
「そうか、優しい子だな」
さっと昇を抱き上げ私の腕に乗せると、以前より重くなっているのを感じるとともに直くんの小ささを改めて感じる。
「もう! じいちゃん、おれもういちねんせいだよ。だっこなんてはずかしいよ」
「ははっ。そうか。大きくなったんだな」
可愛い孫の成長は嬉しいものだ。
私はそっと昇を下ろし、一緒に家に入った。
「さぁ、昇。手を洗っておいで。おやつを出してやろう」
「わぁー! やったぁー!!」
昇は嬉しそうに部屋の奥の洗面所に駆けていく。
「昇、走っちゃダメよ」
二葉さんはそう言いながら昇の後についていった。
「ははっ。相変わらず元気いっぱいだな」
「ええ。でもあれでいて小学校ではみんなをうまく引っ張っているようですよ」
「そうか、それなら安心だな」
面倒見がいいなら直くんのことも可愛がってくれそうだ。
直くんとは年の近い従兄弟として、いや兄的存在として仲良くしてくれたら嬉しいものだ。
「それで何の話なんだ?」
「分かっているでしょう? 兄さんが里子を引き取るって話ですよ」
そうだと思っていたが、やっぱりな。
「お前は反対なのか?」
「そうじゃないです。兄さんとも話をして、本気だってこともわかったし、覚悟も決めてた。絢斗さんも納得しているなら俺が意見できる立場にはないですよ」
そうか、毅はそこまで卓の気持ちを理解していたか。
それなら卓もホッとしただろうな。
「じゃあ、なんだ?」
「兄さんが覚悟を決めたのなら俺たちもその子を昇の従兄弟として扱いたいと思ってるんです。だから、父さんたちがその子に会うときに俺たちも一緒に付き添いたいと思って……」
「なんだ、そういうことか。それなら今日会いに行ってきたよ」
「えっ? 今日、ですか?」
流石に予想外だったんだろう。
目を丸くして大きな声を出したものだから、洗面所から昇の驚いた声が聞こえる。
「おとーさん、どうしたのー?」
「いや、なんでもないよ。手を洗ったらおいでー」
「はーい」
トタトタと廊下を走ってきた昇は、綺麗になった手を見せてきた。
「きれいになったよ」
「よし。じゃあ、キッチンで昇のおやつの準備を沙都がしているから手伝っておいで」
「はーい」
素直にキッチンに向かう昇を見送ってから私は毅を座敷で話そうと誘った。
「今日、その子が一般病棟に移ることになって絢斗くんが誘ってくれたんだ。それで沙都と会いに行ってきた。この子が卓と絢斗くんが引き取る子だよ。直純くんという子だが、母親のことを思い出させないようにするため直くんと呼んでいる」
私はスマホを取り出し、今日撮ったばかりの直くんの動画を毅に見せた。
「んー、ぱくっ」
「きゃっ、きゃっ」
「ちゃーちゃ」
「はい、はい。んー、ぱくっ」
「きゃっ、きゃっ」
絢斗くんと沙都と直くんが三人で楽しそうに遊んでいた時の動画だ。
「――っ、この子が、直くん……」
「どうだ? 可愛いだろう?」
「え、ええ。天使みたいな笑顔を見せる子ですね」
「ああ、本当に天使みたいに可愛い子なんだよ」
映像でも十分可愛いが、実物はその何倍も可愛い。
毅はその映像を食い入るように見つめていた。
「おとーさん、なにみてるの?」
饅頭の載った皿を手に私たちの元にやってきた昇は、毅が一心不乱に見つめていた動画が気になったようで、後ろから覗き込んだ。
「わぁ、かわいー! このこ、すっごくかわいいねー!」
目を輝かせて何度も可愛いと告げる昇に私はもちろん、動画を見つめていた毅も、そして後ろからついてきていた二葉さんも驚きしかなった。
なんせ、昇の口から<可愛い>なんて言葉が出たのが、初めてだったのだから。
「なんだ、お前たち。来ていたのか?」
沙都とともに自宅に戻ると家の前に毅と二葉さん、それに昇まで来ていた。
「来ていたのかじゃないですよ。今日、父さんたちと話がしたいって伝えていたでしょう?」
「あ、そうだったわ。うっかりしてたわ、ごめんなさい」
そういえばそんな話を沙都から聞いていたな。
絢斗くんからの連絡ですっかり忘れてしまっていた。
約束の時間から三十分ほど待たせてしまっていたようだ。
直くんと会ってから、保さんの買い物に行ったりしていたからスマホを見る余裕もなかったな。
「とりあえず中で話そう。昇、外で待たせて悪かったな」
「ううん、じいちゃんもばあちゃんも、うれしそうだからきっといいことがあったんでしょう? じいちゃんたちがうれしいならおれもうれしいからいいんだ」
「そうか、優しい子だな」
さっと昇を抱き上げ私の腕に乗せると、以前より重くなっているのを感じるとともに直くんの小ささを改めて感じる。
「もう! じいちゃん、おれもういちねんせいだよ。だっこなんてはずかしいよ」
「ははっ。そうか。大きくなったんだな」
可愛い孫の成長は嬉しいものだ。
私はそっと昇を下ろし、一緒に家に入った。
「さぁ、昇。手を洗っておいで。おやつを出してやろう」
「わぁー! やったぁー!!」
昇は嬉しそうに部屋の奥の洗面所に駆けていく。
「昇、走っちゃダメよ」
二葉さんはそう言いながら昇の後についていった。
「ははっ。相変わらず元気いっぱいだな」
「ええ。でもあれでいて小学校ではみんなをうまく引っ張っているようですよ」
「そうか、それなら安心だな」
面倒見がいいなら直くんのことも可愛がってくれそうだ。
直くんとは年の近い従兄弟として、いや兄的存在として仲良くしてくれたら嬉しいものだ。
「それで何の話なんだ?」
「分かっているでしょう? 兄さんが里子を引き取るって話ですよ」
そうだと思っていたが、やっぱりな。
「お前は反対なのか?」
「そうじゃないです。兄さんとも話をして、本気だってこともわかったし、覚悟も決めてた。絢斗さんも納得しているなら俺が意見できる立場にはないですよ」
そうか、毅はそこまで卓の気持ちを理解していたか。
それなら卓もホッとしただろうな。
「じゃあ、なんだ?」
「兄さんが覚悟を決めたのなら俺たちもその子を昇の従兄弟として扱いたいと思ってるんです。だから、父さんたちがその子に会うときに俺たちも一緒に付き添いたいと思って……」
「なんだ、そういうことか。それなら今日会いに行ってきたよ」
「えっ? 今日、ですか?」
流石に予想外だったんだろう。
目を丸くして大きな声を出したものだから、洗面所から昇の驚いた声が聞こえる。
「おとーさん、どうしたのー?」
「いや、なんでもないよ。手を洗ったらおいでー」
「はーい」
トタトタと廊下を走ってきた昇は、綺麗になった手を見せてきた。
「きれいになったよ」
「よし。じゃあ、キッチンで昇のおやつの準備を沙都がしているから手伝っておいで」
「はーい」
素直にキッチンに向かう昇を見送ってから私は毅を座敷で話そうと誘った。
「今日、その子が一般病棟に移ることになって絢斗くんが誘ってくれたんだ。それで沙都と会いに行ってきた。この子が卓と絢斗くんが引き取る子だよ。直純くんという子だが、母親のことを思い出させないようにするため直くんと呼んでいる」
私はスマホを取り出し、今日撮ったばかりの直くんの動画を毅に見せた。
「んー、ぱくっ」
「きゃっ、きゃっ」
「ちゃーちゃ」
「はい、はい。んー、ぱくっ」
「きゃっ、きゃっ」
絢斗くんと沙都と直くんが三人で楽しそうに遊んでいた時の動画だ。
「――っ、この子が、直くん……」
「どうだ? 可愛いだろう?」
「え、ええ。天使みたいな笑顔を見せる子ですね」
「ああ、本当に天使みたいに可愛い子なんだよ」
映像でも十分可愛いが、実物はその何倍も可愛い。
毅はその映像を食い入るように見つめていた。
「おとーさん、なにみてるの?」
饅頭の載った皿を手に私たちの元にやってきた昇は、毅が一心不乱に見つめていた動画が気になったようで、後ろから覗き込んだ。
「わぁ、かわいー! このこ、すっごくかわいいねー!」
目を輝かせて何度も可愛いと告げる昇に私はもちろん、動画を見つめていた毅も、そして後ろからついてきていた二葉さんも驚きしかなった。
なんせ、昇の口から<可愛い>なんて言葉が出たのが、初めてだったのだから。
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