虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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二人の天使

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「毅さん、嬉しそうだったわ」

「名前を呼ばれなくて少し寂しそうだったけど、卓のことを考えたらあれで良かったのかもしれないわね」

「ええ。お義兄さんに嫉妬されると困っちゃいますから」

おかーさんとばあちゃんが二人で楽しそうに喋っている。
でも意味はよくわからない。
とにかくおとーさんが嬉しかったってことはわかった。

「おかーさんも、なおくんにあいさつしないとだめだよ!」

「そうだったわね。直くん、私は二葉。ふーちゃんよ」

「ふーちゃ?」

コテンと首を傾げるのが可愛くてたまらない。
おかーさんも嬉しいみたいで笑顔いっぱいだ。

「そう。ふーちゃん。ああ、直くん、可愛いわー!!」

少し興奮気味に直くんを抱っこする。
直くんは嬉しそうに抱っこされていた。
あの顔、俺に抱っこされていた時もしていたのかな?

それが気になって、つい言ってしまった。

「おかーさん、おれもだっこしたい!」

さっき、すぐるおじちゃんに、直くんの匂い嗅いだのを見られて怒られたけど、今度はしないから大丈夫!

「ねぇ、おれもだっこしたい!」

両手を伸ばしながら言うと、おかーさんは俺に直くんを渡してくれた。

「気をつけるのよ!」

「わかってる! こんどは、においかいだりしないから!」

自信満々に言うと、おかーさんもばあちゃんも、それにじいちゃんまで笑っていた。
なんか俺、おかしいこと言ったっけ?

おかーさんから直くんを渡されて、腕に直くんの重みがのる。
でも軽くて柔らかい。
それにおもちみたいにモチモチして、気持ちがいいな。
甘い匂いがやっぱりしているけど嗅ぐのは我慢だ!
でも匂ってくるのは嗅いでも大丈夫だよね?

本当にあまくていい匂いがする……。
赤ちゃんの独特の匂いなのかな?

「のぼりゅっ!」

考え込んでいると、直くんが俺のほっぺたを触る。

ペチペチと軽く叩いてくるけれど、全然痛くない。
というか、触られて気持ちがいい。

「ここ、ほっぺたっていうんだよ」

「ほっぺちゃ?」

「そうそう。ほっぺた。なおくんのほっぺたも、ほら」

直くんを膝に乗せて支えながら、片方の手でほっぺたを触ってみる。

「うわー!」

あまりにもモチッとしていて思わず声を上げてしまった。
その声に直くんがピクッと震える。

「ふぇっ……っ」

「あっ、ごめん! こわがらせちゃったよね。よしよし」

泣きそうになるのを必死に止めようと、ギュッと抱きしめてしばらく背中をトントンしてあげていると、泣いていた直くんが静かになった。

「なきやんだかな?」

そっと顔を覗き込むけれど、俺の場所からは直くんの顔が見えない。

「おかーさん」

「ふふっ。直くん、寝てるわ」

「ねてるの?」

「ええ、昇のトントンで落ち着いたみたいね。寝かしつけできて偉かったね」

おかーさんに褒められるけど、もっと直くんと遊びたかったな。

「ほら、昇。ここに寝かせて」

「うん、でももうちょっとだけ。おろしたらおきちゃうかも」

ただ離したくないからだったけど、必死にいうとおかーさんは納得してくれたみたいだ。

「そうね。じゃあもう少しだけトントンしてて」

おかーさんに言われた通り、トントンしていると直くんの気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。
それにちょっとあったかくなってきたかも。
なんか安心して寝てくれてるって嬉しいな。

それにしても直くんのほっぺた……つるつるでもちもちしてすごく気持ちが良かった。
赤ちゃんってみんなこんな感じなのかな……。
直くん、可愛い……。俺の可愛い弟だ!

直くんを抱っこしていると、あったかくてポカポカしてきて俺も眠くなってきた。
でも直くんを抱っこしているから頑張らなきゃ!

そう思ったけれど、だんだん目が閉じてくる。

「昇……っ」

じいちゃんの声が聞こえたような気がしたけど、俺はそのまま横になってしまっていた。


<side二葉>

「お義母さん、これ写真撮っちゃってもいいですよね?」

「ええ、こんなチャンス滅多にないわ」

直くんを抱っこしたいという昇に任せていると、直くんが眠ってしまい、そのまま昇まで眠ってしまった。
抱っこしたまま倒れそうになるのをお義父さんがさっと支えてくれて、そのまま二人をベッドに寝かせてくれた。

横たわっても昇は直くんを離さない。
直くんも幸せそうに昇の腕の中にいる。

小さな二人の可愛い寝姿にここにいる大人全員が心を掴まれる。

ああ、本当に可愛い。二人とも天使だわ。

私は二人の可愛い写真を撮って、すぐに絢斗さんに送った。
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