虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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皐月とのお茶会

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卓のために頑張っている彼らのために、ちょっと早く繋がりが持てるように話を入れてみました。
これもIFならではですよね。
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


<side絢斗>

同じ大学で経済学の教授をしている皐月の部屋でお茶をしている最中、スマホが震えるのを感じた。
取り出してみると送り主は二葉さん。

すぐにピンときてメッセージを開くと、

<二人の天使>

という短いメッセージに動画と写真が添付されていた。

これは絶対にそういうことだよねとウキウキしながらまずは動画を開いた。

「――っ、わぁー、なにこれ、可愛い!!」

あまりの可愛さに思わず大声を上げると、おかわりのカフェオレを淹れに行っていた皐月が慌てて駆け寄ってきた。

「なになに? 今度は何が来たの?」

今日のお茶が始まって、散々直くんの可愛い動画と写真を見せまくっていたから、私の声にすぐに皐月もピンときたみたい。

「見てみて! これ! 最新の動画だよ。二人の天使ちゃん」

私がスマホを差し出すと、嬉しそうに受け取って動画を再生する。

「うわぁー! 本当に天使じゃない!」

「でしょう? 私の可愛い息子は本当に天使なんだって。昇くんもすっかりお兄ちゃんしてるよね」

「うんうん。可愛い! というか、お兄ちゃん以上に見えない?」

「それ! 私も思った」

皐月の鋭い指摘に驚いたけれど、正直私も動画を見てすぐに思ったんだよね。

「これ、磯山先生が見たら嫉妬しちゃうんじゃない?」

「そうかな?」

「そうだよ! あれだけ溺愛しているんだから。あの動画、今でも信じられないくらいだよ」

皐月が言っているあの動画は、直くんの病室に泊まった時に卓さんが絵本の読み聞かせをしていた時のもの。
語りかける声も表情も、直くんを優しく抱きしめるあの姿も全てから直くんへの愛情を感じた。
それを皐月も感じ取ったみたい。

「宗一郎さんも伊織を引き取った時、すごく優しかったし愛情を持って接していたけど、伊織はあの時すでに高校生だったしね。直くんくらい小さかったら宗一郎さんのそういう姿も見られたんだろうけどなー」

「確かに。高校生の伊織くんには絵本の読み聞かせはいらないもんねー」

あの伊織くんに、志良堂教授が、絵本の読み聞かせ……。

「プフッ! ククッ!!」

だめだ、笑いがとまらない。

「もう! 絢斗、笑いすぎだって! プフッ!」

「皐月も笑ってるじゃない!」

「だって、伊織が、宗一郎さんに抱っこされて、絵本の読み聞かせ……笑うしかないでしょ」

「だよね、ははっ!」

もう私も皐月も四十を過ぎているのに、いつまで経っても学生の時みたいに戻ってしまう。
皐月とは一生こんな感じなんだろうな。


「ねぇ、可愛い息子の直くん。早く私にも会わせてよ」

ひとしきり笑い合ったところで、落ち着いた皐月が強請ってくる。

「うん。来週には退院だから家に戻ってきたら志良堂教授と遊びに来て」

「やったー! あ、でもその前に伊織が先に直くんに会うのかな?」

皐月と志良堂教授が引き取った安慶名伊織くんは、現在は弁護士になって卓さんの事務所で働いている。
今は直くんのことで忙しなく動き回っている卓さんだけど、それができるのも事務所に優秀な伊織くんと、もう一人成瀬くんという優秀な弁護士の二人がいてくれるおかげだ。

「ああ、そうかもね」

「ええー、ずるい! 私も先に会いたい!」

「わかった、わかった。じゃあ、直くんを家に連れて帰った日に連絡するから少しだけ会いにおいでよ」

「やったー! じゃあ、何か直くんと一緒に食べられそうな美味しいもの買っていくよ」

直くんだけが食べられるものじゃなくてみんなで食べられるもの。
そうやって気遣ってくれる皐月の気持ちが嬉しい。

「あ、そういえば聞いた? 倉橋くんの西表の会社にものすごく優秀な子が入ったんだって」

突然話題が変わるのも私と皐月ならでは。
そういうのも含めて皐月と話をするのは楽しい。

「へぇ、でもなんで皐月がそんなこと知っているの?」

「その子、宗一郎さんの高校の後輩で琉桜りゅうおう大学の与那嶺教授の秘蔵っ子だったみたい。倉橋くんが宗一郎さんにわざわざ電話くれて彼のことを教えてくれたんだ」

「そうなんだ、世間は狭いね」

倉橋くんが優秀だと認めるくらいならかなりのものだろうな。
一度会ってみたい、そんな気にさせられる。

「それでね。その子宮古島の子なんだけど、地元に年の離れた弟がいるんだって。次、高校生とかいってたんだけど、その子が負けず劣らずの秀才みたい。それで倉橋くんが、せっかくだから桜守に通わせたいからって宗一郎さんに東京での保護者になってもらえないかって相談の電話だったんだよ」

「志良堂教授にその子の保護者に?」

思いがけない話になってきて、私は思わず声を上げてしまった。
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