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絢斗くんのおかげ
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「んー」
「あら、直くん。起きたみたいね」
まだ半分眠った状態なのに、無意識に添い寝していた昇の胸に擦り寄っていく直くんが可愛い。
そんな直くんの姿に昇も満更じゃないみたい。
「なおくん、おはよう」
「のぼりゅー」
「なおくん。きょうはおれもここにとまるんだよ」
「ん? なぁに?」
嬉しそうに昇が伝えたけれど、流石に直くんには難しかったみたいね。
「夜も一緒に直くんとおねんねするって」
「のぼりゅと、おねんね?」
直くんの言葉に昇が嬉しそうに頷くと、直くんはよほど嬉しかったのか昇の身体によじ登っていく。
昇はそんな直くんを落とさないようにしっかりと抱きしめていた。
「あらあら、仲良しさんね」
二葉さんはそう言いながらバッチリスマホで写真を撮っていた。
これはきっと絢斗くんと秋穂さんにも送るわね。
二人とも笑顔が止まらなくなるわ。
それからしばらくして、毅が二葉さんと昇を迎えにやってきた。
「おいちゃ!」
「おお、直くん! 私のことを覚えていてくれたんだな。本当に賢い子だ」
直くんに覚えられていたのがよほど嬉しかったみたいで、直くんをさっと抱き上げると頬を擦り寄せようとした。
けれどその瞬間、
「おとーさん! だめだよ! すぐるおじちゃんにおこられるよ!!」
と昇からの注意が入る。その言葉に昼間の卓の姿を思い出したんだろう。慌てたように直くんをベッドに戻していた。
直くんだけはキョトンとしていたけれど、私たちは毅の慌てっぷりについ笑ってしまった。
「じゃあそろそろ帰ろうか。昇、準備しなさい」
「おれ、かえらないよー」
「帰らないってどういうことだ?」
驚いた毅に二葉さんがなんて言おうかと悩んでいる様子だったから、私の方から説明することにした。
「毅、昇だけ預かることにしたから今日は二人で帰りなさい。昇は明日家に送るわ」
「えっ? でもそれは……」
よほど卓の姿が印象に残っているみたいで昇を置いて帰るのはちょっと……と言いたげな表情をしている。
「大丈夫。卓には私から話しておくから卓と絢斗くんがくる前にさっさと帰っておきなさい」
毅は躊躇いつつも、二葉さんとの二人っきりの夜だとわかって機嫌良く帰って行った。
二葉さんは最後まで昇を……というよりは卓の反応を心配していた様子だったけれど、大丈夫と何度も言いふくめてようやく納得したみたいだった。
それからしばらくして卓と絢斗くんが病院についたと連絡があった。
病室に来る前に先に連絡をくれたのは、直くんが起きているかどうかの確認だったのかもしれない。
<直くん、卓と絢斗くんが来るのを楽しみにしているわ>
それだけ送るとすぐに部屋にやってきた。
「直くん」
一気に親の顔をした卓と絢斗くんが部屋に入ってきて、直くんもその声を聞いてぱあっと顔を綻ばせた。
今日はずっとご機嫌だったけれど、やっぱり親の二人には勝てないわ。
「あーちゃ! ちゅぐぅちゃ! おかーりー」
起き上がってベッドの柵まで歩いていく直くんに駆け寄って絢斗くんがさっと抱き上げる。
「直くん、ただいま。お迎えしてくれて嬉しいよ」
チュッとほっぺたにキスをすると、直くんも嬉しそうに絢斗くんのほっぺたに口を当てる。
卓とも同じことを繰り返し、卓は嬉しそう。
この機嫌がいい時なら大丈夫かしら。
その話をしようと思っていたところに、
「あれ? なんで昇だけ残ってるんだ?」
と卓の声が聞こえた。
「きょうね、おれ……ここにおとまりするんだ!」
「はっ? なんで?」
卓は目を丸くして驚いている。ああ、ちょっとタイミングが悪かったかしら。
「ええー、本当! よかった、直くんも昇くんが一緒なら楽しいね」
「たのちー!!」
暗くなりそうな雰囲気をかき消すような絢斗くんの楽しそうな声と、直くんの嬉しそうな声に一気に場が和むのがわかる。
「卓さん、直くんも大人ばっかりじゃなくて子どもとの触れ合いもして欲しかったから、お兄ちゃんな昇くんと一緒にお泊まりできて嬉しいんだよ。昇くんがいてくれてよかったね」
「ん? あ、ああ。そうだな」
絢斗くんの言葉に説得されて卓も納得したみたい。
それでもしばらく抱っこを離さなかったけれど、また明日の朝来るからと言って絢斗くんと二人で帰っていった。
「ふぅ、よかったわ」
とりあえず、今夜は私たちと昇と直くんで楽しい夜になりそうね。
「あら、直くん。起きたみたいね」
まだ半分眠った状態なのに、無意識に添い寝していた昇の胸に擦り寄っていく直くんが可愛い。
そんな直くんの姿に昇も満更じゃないみたい。
「なおくん、おはよう」
「のぼりゅー」
「なおくん。きょうはおれもここにとまるんだよ」
「ん? なぁに?」
嬉しそうに昇が伝えたけれど、流石に直くんには難しかったみたいね。
「夜も一緒に直くんとおねんねするって」
「のぼりゅと、おねんね?」
直くんの言葉に昇が嬉しそうに頷くと、直くんはよほど嬉しかったのか昇の身体によじ登っていく。
昇はそんな直くんを落とさないようにしっかりと抱きしめていた。
「あらあら、仲良しさんね」
二葉さんはそう言いながらバッチリスマホで写真を撮っていた。
これはきっと絢斗くんと秋穂さんにも送るわね。
二人とも笑顔が止まらなくなるわ。
それからしばらくして、毅が二葉さんと昇を迎えにやってきた。
「おいちゃ!」
「おお、直くん! 私のことを覚えていてくれたんだな。本当に賢い子だ」
直くんに覚えられていたのがよほど嬉しかったみたいで、直くんをさっと抱き上げると頬を擦り寄せようとした。
けれどその瞬間、
「おとーさん! だめだよ! すぐるおじちゃんにおこられるよ!!」
と昇からの注意が入る。その言葉に昼間の卓の姿を思い出したんだろう。慌てたように直くんをベッドに戻していた。
直くんだけはキョトンとしていたけれど、私たちは毅の慌てっぷりについ笑ってしまった。
「じゃあそろそろ帰ろうか。昇、準備しなさい」
「おれ、かえらないよー」
「帰らないってどういうことだ?」
驚いた毅に二葉さんがなんて言おうかと悩んでいる様子だったから、私の方から説明することにした。
「毅、昇だけ預かることにしたから今日は二人で帰りなさい。昇は明日家に送るわ」
「えっ? でもそれは……」
よほど卓の姿が印象に残っているみたいで昇を置いて帰るのはちょっと……と言いたげな表情をしている。
「大丈夫。卓には私から話しておくから卓と絢斗くんがくる前にさっさと帰っておきなさい」
毅は躊躇いつつも、二葉さんとの二人っきりの夜だとわかって機嫌良く帰って行った。
二葉さんは最後まで昇を……というよりは卓の反応を心配していた様子だったけれど、大丈夫と何度も言いふくめてようやく納得したみたいだった。
それからしばらくして卓と絢斗くんが病院についたと連絡があった。
病室に来る前に先に連絡をくれたのは、直くんが起きているかどうかの確認だったのかもしれない。
<直くん、卓と絢斗くんが来るのを楽しみにしているわ>
それだけ送るとすぐに部屋にやってきた。
「直くん」
一気に親の顔をした卓と絢斗くんが部屋に入ってきて、直くんもその声を聞いてぱあっと顔を綻ばせた。
今日はずっとご機嫌だったけれど、やっぱり親の二人には勝てないわ。
「あーちゃ! ちゅぐぅちゃ! おかーりー」
起き上がってベッドの柵まで歩いていく直くんに駆け寄って絢斗くんがさっと抱き上げる。
「直くん、ただいま。お迎えしてくれて嬉しいよ」
チュッとほっぺたにキスをすると、直くんも嬉しそうに絢斗くんのほっぺたに口を当てる。
卓とも同じことを繰り返し、卓は嬉しそう。
この機嫌がいい時なら大丈夫かしら。
その話をしようと思っていたところに、
「あれ? なんで昇だけ残ってるんだ?」
と卓の声が聞こえた。
「きょうね、おれ……ここにおとまりするんだ!」
「はっ? なんで?」
卓は目を丸くして驚いている。ああ、ちょっとタイミングが悪かったかしら。
「ええー、本当! よかった、直くんも昇くんが一緒なら楽しいね」
「たのちー!!」
暗くなりそうな雰囲気をかき消すような絢斗くんの楽しそうな声と、直くんの嬉しそうな声に一気に場が和むのがわかる。
「卓さん、直くんも大人ばっかりじゃなくて子どもとの触れ合いもして欲しかったから、お兄ちゃんな昇くんと一緒にお泊まりできて嬉しいんだよ。昇くんがいてくれてよかったね」
「ん? あ、ああ。そうだな」
絢斗くんの言葉に説得されて卓も納得したみたい。
それでもしばらく抱っこを離さなかったけれど、また明日の朝来るからと言って絢斗くんと二人で帰っていった。
「ふぅ、よかったわ」
とりあえず、今夜は私たちと昇と直くんで楽しい夜になりそうね。
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