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幸せな日々
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絢斗に直くんを任せてキッチンに行く。
子ども用のカップにリンゴジュースを入れ、私たち大人はそれぞれ好みのコーヒーを入れてリビングに向かうと、鳴宮くんがお土産の箱を開けて直くんに見せている。
「みてー。直くん、可愛いでしょ?」
「うちゃー! かーいー!」
そのはしゃぎように中身が気になってのぞいてみると、うさぎの形をした可愛いマドレーヌが入っていた。
プレーンの生地に耳のところにだけ白い生地が入っているのがうさぎのかわいさを十二分に表していて可愛い。
「さすが鳴宮くん。いいお土産をありがとう」
「もっと柔らかいものにしようかと思ってたんですけど、硬さのあるものも食べられるようになってるって聞いたから。喜んでもらえてよかった。あ、こっちのマカロンも食べやすいかも」
絢斗の好きなものを入れつつ直くんも食べられるものばかりで鳴宮くんの気遣いに安心する。
直くんは嬉しそうにうさぎの形のマドレーヌを手に取り、食べるのが勿体無いと言わんばかりの表情で見つめていたが、長い耳の先をパクッと口に入れてからは目を輝かせて美味しそうに頬張っていた。
詰まらせたりしないように合間に絢斗が手際よくジュースを飲ませる。
その姿を見て鳴宮くんは嬉しそうに笑っていた。
「これからしばらくはオンラインで講義することになるんだよね?」
おやつを食べて一区切りしたところで鳴宮くんから尋ねられる。
「うん。でも週に二日はお義父さんのところで見てもらうし、一日は卓さんの事務所で見ててもらうから、オンラインは実質週に二日くらいかな」
「そっか。なら絢斗とも会えるね」
鳴宮くんは絢斗とお茶の時間を過ごすのを楽しみにしている。
さすがの志良堂も幼稚園の頃からの親友の絢斗とのお茶の時間を邪魔したりしないからな。
「その時にいつも直くんの可愛い写真と動画見せてね」
「もちろん!」
二人のお茶の時間が可愛い直くんを愛でる時間になりそうだな。
* * *
それから直くんとの三人暮らしの生活が始まった。
買い揃えておいた三人用のベッドで直くんを真ん中に眠り、目が覚めたら愛しい女神の唇と可愛い天使の頬にキスをして幸せを感じながら朝食を作る。
直くんにご飯を食べさせる絢斗に私もご飯を食べさせながら朝食を済ませ、直くんを抱っこする絢斗に見送られる。
「卓さん、行ってらっしゃい」
「ちゅぐぅちゃ、いてらっちゃい」
この瞬間、仕事に行きたくない気持ちになってしまうが、二人を抱きしめて絢斗の唇と直くんの頬にキスを贈り、仕事に向かう。
私のデスクには可愛い二人の写真と部屋の二人の様子を映したタブレットが置かれている。
それを時折確認しながら仕事を済ませ、昼食を作りに自宅に戻る。
愛しい女神と可愛い天使と昼食を済ませたあとは天使が昼寝に入るのを見届けて、愛しい女神と甘くて深いキスを楽しんで仕事に戻る。
効率が悪そうに見えるだろうが、安慶名くんと成瀬くんが驚くほどの仕事の捗りようだ。
やはり大切な存在が増えるのは、仕事を頑張ろうという気にさせてくれる。
そうして、仕事を終えて自宅に戻ると、
「ちゅぐぅちゃーっ!!」
部屋の奥からトタトタと可愛い足音が聞こえて玄関に駆け寄ってくる天使に出迎えられる。
「おかーりー! おちごと、おちゅかれちゃま」
小さな身体を抱き上げると、直くんの方から私の頬に唇を当ててくれる。
「直くん、ただいま。いい子で遊んでいたかな?」
「あーちゃとあちょんだー」
「そうか、それはよかった」
こうして話ができるのも楽しい。
「ちゅぐぅちゃ、いおいとゆーちーとあちょんだ?」
「ははっ。そうだな、頑張ったよ」
「ちょれは、よかっちゃ」
私の真似をしているのか、可愛い口調で褒められて笑顔が止まらない。
ふと視線を感じてそちらに目を向けると、絢斗が笑顔で私たちにスマホを向けているのが見える。
「なんだ、なかなか来ないと思ったら動画を撮っていたのか」
「だって、可愛い直くんと卓さんの様子を撮りたかったから」
きっとこの動画も母や秋穂さん、それに二葉さんや鳴宮くんに共有されるのだろう。
自分でもこんなに甘々になるとは思っていなかったから自分のこんな姿をいられるのは気恥ずかしいが、絢斗も直くんも幸せそうだからいいか。
「ほら、絢斗。いつもの出迎えをしてくれないと家に入れないよ」
声をかけるとスマホを下ろして嬉しそうに近づいてくる。
そして、直くんを抱っこした私を抱きしめるように腕を伸ばし、少し屈んであげた私の唇に柔らかな唇を重ねてくれた。
「卓さん、おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
愛しい女神と可愛い天使の出迎えを受け、私は家に入った。
* * *
出会いから二人の子どもになるまでのお話なので、そろそろ本編も終わりどころかな。
おそらくあと1、2話で終わります。
あとは番外編で続けたいと思いますので、どうぞお楽しみに♡
子ども用のカップにリンゴジュースを入れ、私たち大人はそれぞれ好みのコーヒーを入れてリビングに向かうと、鳴宮くんがお土産の箱を開けて直くんに見せている。
「みてー。直くん、可愛いでしょ?」
「うちゃー! かーいー!」
そのはしゃぎように中身が気になってのぞいてみると、うさぎの形をした可愛いマドレーヌが入っていた。
プレーンの生地に耳のところにだけ白い生地が入っているのがうさぎのかわいさを十二分に表していて可愛い。
「さすが鳴宮くん。いいお土産をありがとう」
「もっと柔らかいものにしようかと思ってたんですけど、硬さのあるものも食べられるようになってるって聞いたから。喜んでもらえてよかった。あ、こっちのマカロンも食べやすいかも」
絢斗の好きなものを入れつつ直くんも食べられるものばかりで鳴宮くんの気遣いに安心する。
直くんは嬉しそうにうさぎの形のマドレーヌを手に取り、食べるのが勿体無いと言わんばかりの表情で見つめていたが、長い耳の先をパクッと口に入れてからは目を輝かせて美味しそうに頬張っていた。
詰まらせたりしないように合間に絢斗が手際よくジュースを飲ませる。
その姿を見て鳴宮くんは嬉しそうに笑っていた。
「これからしばらくはオンラインで講義することになるんだよね?」
おやつを食べて一区切りしたところで鳴宮くんから尋ねられる。
「うん。でも週に二日はお義父さんのところで見てもらうし、一日は卓さんの事務所で見ててもらうから、オンラインは実質週に二日くらいかな」
「そっか。なら絢斗とも会えるね」
鳴宮くんは絢斗とお茶の時間を過ごすのを楽しみにしている。
さすがの志良堂も幼稚園の頃からの親友の絢斗とのお茶の時間を邪魔したりしないからな。
「その時にいつも直くんの可愛い写真と動画見せてね」
「もちろん!」
二人のお茶の時間が可愛い直くんを愛でる時間になりそうだな。
* * *
それから直くんとの三人暮らしの生活が始まった。
買い揃えておいた三人用のベッドで直くんを真ん中に眠り、目が覚めたら愛しい女神の唇と可愛い天使の頬にキスをして幸せを感じながら朝食を作る。
直くんにご飯を食べさせる絢斗に私もご飯を食べさせながら朝食を済ませ、直くんを抱っこする絢斗に見送られる。
「卓さん、行ってらっしゃい」
「ちゅぐぅちゃ、いてらっちゃい」
この瞬間、仕事に行きたくない気持ちになってしまうが、二人を抱きしめて絢斗の唇と直くんの頬にキスを贈り、仕事に向かう。
私のデスクには可愛い二人の写真と部屋の二人の様子を映したタブレットが置かれている。
それを時折確認しながら仕事を済ませ、昼食を作りに自宅に戻る。
愛しい女神と可愛い天使と昼食を済ませたあとは天使が昼寝に入るのを見届けて、愛しい女神と甘くて深いキスを楽しんで仕事に戻る。
効率が悪そうに見えるだろうが、安慶名くんと成瀬くんが驚くほどの仕事の捗りようだ。
やはり大切な存在が増えるのは、仕事を頑張ろうという気にさせてくれる。
そうして、仕事を終えて自宅に戻ると、
「ちゅぐぅちゃーっ!!」
部屋の奥からトタトタと可愛い足音が聞こえて玄関に駆け寄ってくる天使に出迎えられる。
「おかーりー! おちごと、おちゅかれちゃま」
小さな身体を抱き上げると、直くんの方から私の頬に唇を当ててくれる。
「直くん、ただいま。いい子で遊んでいたかな?」
「あーちゃとあちょんだー」
「そうか、それはよかった」
こうして話ができるのも楽しい。
「ちゅぐぅちゃ、いおいとゆーちーとあちょんだ?」
「ははっ。そうだな、頑張ったよ」
「ちょれは、よかっちゃ」
私の真似をしているのか、可愛い口調で褒められて笑顔が止まらない。
ふと視線を感じてそちらに目を向けると、絢斗が笑顔で私たちにスマホを向けているのが見える。
「なんだ、なかなか来ないと思ったら動画を撮っていたのか」
「だって、可愛い直くんと卓さんの様子を撮りたかったから」
きっとこの動画も母や秋穂さん、それに二葉さんや鳴宮くんに共有されるのだろう。
自分でもこんなに甘々になるとは思っていなかったから自分のこんな姿をいられるのは気恥ずかしいが、絢斗も直くんも幸せそうだからいいか。
「ほら、絢斗。いつもの出迎えをしてくれないと家に入れないよ」
声をかけるとスマホを下ろして嬉しそうに近づいてくる。
そして、直くんを抱っこした私を抱きしめるように腕を伸ばし、少し屈んであげた私の唇に柔らかな唇を重ねてくれた。
「卓さん、おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
愛しい女神と可愛い天使の出迎えを受け、私は家に入った。
* * *
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