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番外編
楽しい提案
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直くんと一花、二人が会う前の大人たちのお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side賢将>
保くんの就職が決まり、毎日仕事に行くときに彼を櫻葉グループ本社に送り、定時になった頃迎えに行くという生活を続けて、早二週間。
最初の日こそ、緊張の様子を見せていた保くんだったが、直属の上司との相性もよく、迎えに行った時には笑顔で駆け出してきた。そして私の隣に着くや否や、嬉しそうにその日の出来事を話してくれた。
「賢将さん、すごいんですよ! 僕、社長さんとお話ししました!」
「社長、というと史紀くんかな?」
「はい! 朝、待合室に行ったらいらっしゃって最初は社長さんだと知らずにお話ししていてびっくりしました」
史紀くんが自ら新しく入った社員に会いに下りて来るとは……。
よほど保くんが気になったと見える。
「そうか、それでどうだった?」
「とても話しやすい方で、今度一緒に食事をしようと誘われました。多分社交辞令とは思いますけど……」
「いや、そんなことはないよ。史紀くんは社交辞令で誘ったりしないよ」
そういう人だ。
きっと保くんの人柄の良さがわかったんだろうな。
その日から毎日のようにその日の出来事を話してくれるようになった。
まるで学生時代の絢斗が戻ってきたようで懐かしい。
そして、今日もいつものように保くんを迎えに行くと、いつも以上に笑顔の保くんが私の元に駆け寄ってきた。
一緒に駐車場に向かいながら今日の出来事を聞き始める。
「何かいいことでもあったかな?」
「はい。あの、今日貴船コンツェルンの次期総帥と櫻葉グループのご子息にお会いしました」
「えっ? 征哉くんと一花くんに?」
話を聞けば、史紀くんと三時のお茶中に桜カフェに来ていた二人と会ったんだそうだ。
あの征哉くんが桜カフェに……。
なんともミスマッチな感じだが、一花くんがおねだりしたんだろう。
その要望にいとも容易く答えるとは……征哉くんは相当一花くんが可愛いと見える。
征哉くんと一花くんについては、寛さんから話を聞いている。
両家も認める関係で、一花くんの成人を待って結婚するつもりなのだそうだ。
あの征哉くんを射止めるのは誰かと思っていたが、まさか一花くんだったとはな。
もちろん驚いたが、よく見ればお似合いの二人なのかもしれない。
「あの、それで史紀さんが直くんをご子息に会わせてみないかと仰っていて……」
「えっ? 直くんと一花くんを会わせる?」
どうしてそんな話になったのか経緯はわからないが、直くんと一花くんを会わせるのは悪いことではない。
天真爛漫で元気溌剌とした一花くんは、どんな子でも仲間に引き入れるのが上手で良さを引き出しながら引っ張っていってくれる子だ。
優しく元気の良い昇とはまた違ったタイプの子だから直くんの成長にも良い影響を与えるだろう。
直くんも昇もそして一花くんも私が主治医としてみている子だから、間違いない。
「それは楽しそうだな」
「あの、でももし、直くんがご子息に怪我をさせたりしたら大変じゃないですか?」
「ははっ。そんなことを気にしていたのか? 大丈夫、そんなことにはならないし、たとえ怪我をしたとしても直くんのせいじゃない。もちろん保くんのせいでも絢斗たちのせいでもない。子供同士のふれあいの中で大切なことの一つだと考えればいいよ。それに大怪我にはならないように大人がそばにいるんだ。心配しないでいい」
もうすぐ三歳の直くんは最近は割と活発に動くから予想外の行動をするんじゃないかと心配なのだろうが、一花くんは幼稚園でも年下の園児のお世話をよくしていて、そのお世話のうまさは先生たちの折り紙つきだった。
直くんにとっても年齢の近い子と遊んだり、時に喧嘩をすることも良い刺激になるだろう。
「私たちの方で日程を調整して、直くんと一花くんを会わせる日を決めるとしよう。きっと二人とも喜ぶぞ」
少し心配の色を見せていた保くんは、私の言葉にようやく笑顔を見せてくれた。
帰ったら早速卓くんに連絡だな。
ーもしもし、卓くん。今、大丈夫かな?
ーええ。ちょうど食事も終わって三人でのんびりしていたところです。
ーそうか、それならよかった。ところで、今日連絡したのは史紀くんからの提案を伝えようと思ったんだ。
ー史紀くんからの提案ですか? なんでしょう?
ー直くんと一花くんを会わせて見ないかと保くんが言われたようだ。
ーえっ? 直くんと一花くんを?
私は驚く卓くんに保くんから聞いた話を伝えるとなるほどと電話口で納得していた。
ー良いですね。直くんと一花くんは相性も良さそうですし、良いお兄ちゃんな存在になってくれそうですね。
ーだろう? 私もそう思っていたんだ。それでいつなら会えそうか卓くんと絢斗の予定を聞いておこうと思ってね。いつくか日程を出してくれたらその日程で会えるように一眞さんにも伝えて話をつけておこう。
というわけで二人の都合がいい日をいくつかピックアップしてもらい、私はすぐに櫻葉家にも電話をかけた。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side賢将>
保くんの就職が決まり、毎日仕事に行くときに彼を櫻葉グループ本社に送り、定時になった頃迎えに行くという生活を続けて、早二週間。
最初の日こそ、緊張の様子を見せていた保くんだったが、直属の上司との相性もよく、迎えに行った時には笑顔で駆け出してきた。そして私の隣に着くや否や、嬉しそうにその日の出来事を話してくれた。
「賢将さん、すごいんですよ! 僕、社長さんとお話ししました!」
「社長、というと史紀くんかな?」
「はい! 朝、待合室に行ったらいらっしゃって最初は社長さんだと知らずにお話ししていてびっくりしました」
史紀くんが自ら新しく入った社員に会いに下りて来るとは……。
よほど保くんが気になったと見える。
「そうか、それでどうだった?」
「とても話しやすい方で、今度一緒に食事をしようと誘われました。多分社交辞令とは思いますけど……」
「いや、そんなことはないよ。史紀くんは社交辞令で誘ったりしないよ」
そういう人だ。
きっと保くんの人柄の良さがわかったんだろうな。
その日から毎日のようにその日の出来事を話してくれるようになった。
まるで学生時代の絢斗が戻ってきたようで懐かしい。
そして、今日もいつものように保くんを迎えに行くと、いつも以上に笑顔の保くんが私の元に駆け寄ってきた。
一緒に駐車場に向かいながら今日の出来事を聞き始める。
「何かいいことでもあったかな?」
「はい。あの、今日貴船コンツェルンの次期総帥と櫻葉グループのご子息にお会いしました」
「えっ? 征哉くんと一花くんに?」
話を聞けば、史紀くんと三時のお茶中に桜カフェに来ていた二人と会ったんだそうだ。
あの征哉くんが桜カフェに……。
なんともミスマッチな感じだが、一花くんがおねだりしたんだろう。
その要望にいとも容易く答えるとは……征哉くんは相当一花くんが可愛いと見える。
征哉くんと一花くんについては、寛さんから話を聞いている。
両家も認める関係で、一花くんの成人を待って結婚するつもりなのだそうだ。
あの征哉くんを射止めるのは誰かと思っていたが、まさか一花くんだったとはな。
もちろん驚いたが、よく見ればお似合いの二人なのかもしれない。
「あの、それで史紀さんが直くんをご子息に会わせてみないかと仰っていて……」
「えっ? 直くんと一花くんを会わせる?」
どうしてそんな話になったのか経緯はわからないが、直くんと一花くんを会わせるのは悪いことではない。
天真爛漫で元気溌剌とした一花くんは、どんな子でも仲間に引き入れるのが上手で良さを引き出しながら引っ張っていってくれる子だ。
優しく元気の良い昇とはまた違ったタイプの子だから直くんの成長にも良い影響を与えるだろう。
直くんも昇もそして一花くんも私が主治医としてみている子だから、間違いない。
「それは楽しそうだな」
「あの、でももし、直くんがご子息に怪我をさせたりしたら大変じゃないですか?」
「ははっ。そんなことを気にしていたのか? 大丈夫、そんなことにはならないし、たとえ怪我をしたとしても直くんのせいじゃない。もちろん保くんのせいでも絢斗たちのせいでもない。子供同士のふれあいの中で大切なことの一つだと考えればいいよ。それに大怪我にはならないように大人がそばにいるんだ。心配しないでいい」
もうすぐ三歳の直くんは最近は割と活発に動くから予想外の行動をするんじゃないかと心配なのだろうが、一花くんは幼稚園でも年下の園児のお世話をよくしていて、そのお世話のうまさは先生たちの折り紙つきだった。
直くんにとっても年齢の近い子と遊んだり、時に喧嘩をすることも良い刺激になるだろう。
「私たちの方で日程を調整して、直くんと一花くんを会わせる日を決めるとしよう。きっと二人とも喜ぶぞ」
少し心配の色を見せていた保くんは、私の言葉にようやく笑顔を見せてくれた。
帰ったら早速卓くんに連絡だな。
ーもしもし、卓くん。今、大丈夫かな?
ーええ。ちょうど食事も終わって三人でのんびりしていたところです。
ーそうか、それならよかった。ところで、今日連絡したのは史紀くんからの提案を伝えようと思ったんだ。
ー史紀くんからの提案ですか? なんでしょう?
ー直くんと一花くんを会わせて見ないかと保くんが言われたようだ。
ーえっ? 直くんと一花くんを?
私は驚く卓くんに保くんから聞いた話を伝えるとなるほどと電話口で納得していた。
ー良いですね。直くんと一花くんは相性も良さそうですし、良いお兄ちゃんな存在になってくれそうですね。
ーだろう? 私もそう思っていたんだ。それでいつなら会えそうか卓くんと絢斗の予定を聞いておこうと思ってね。いつくか日程を出してくれたらその日程で会えるように一眞さんにも伝えて話をつけておこう。
というわけで二人の都合がいい日をいくつかピックアップしてもらい、私はすぐに櫻葉家にも電話をかけた。
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