虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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番外編

ほんとうのなまえ

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<side直純改め、直>

「直くん! おめでとう!」

「きゃっ! きゃっ!」

いつものようにちゅぐぅちゃをおむかえに走って行ったら、ちゅぐぅちゃのおててからキラキラしたものが出てきてぼくのまわりをひらひらしながら落ちていった。

何かわからないけれど、とってもきれい!
これなんだろう?

「わぁー! 卓さん、紙吹雪、とっても綺麗!」

「かいふーき?」

「そう。紙吹雪。嬉しい時にかけてあげるんだよ。すごく綺麗で嬉しくなるでしょう?」

「かいふーき、きれー! うれちー!!」

きっとちゅぐぅちゃにいいことがあったんだ! だからうれしいんだろうな。

「ちゅぐぅちゃ、うれちー。なおも、うれちー!」

「そうか。直くん、ありがとう……」

ちゅぐぅちゃはうれしそうにぼくをだきあげて、へやの中に入った。

「ちゅぐぅちゃ、なにか、いいこちょ、あっちゃのかな?」

いつもちゅぐぅちゃにきかれることを、ちゅぐぅちゃに聞いてみた。
すると、ちゅぐぅちゃはあーちゃと顔を合わせてわらった。
何かおかしかったかな?

「ははっ。ああ、とってもいいことがあったんだよ。直くんの名前が<直>だけになったんだよ。だから、もう一つの名前は忘れるんだ。いい? これから直くんは<磯山直>だよ」

うーんと、もう一つの名前……なおずみだっけ。
思い出すだけでこわくなるから思い出さないようにしてたけど、でももうその名前を忘れていいってこと?

よし! 自分でも言ってみよう!!

「いちょやま、なお?」

「そう! 直くん、とっても上手!」

わぁ、あーちゃにほめてもらえてうれしい!!

「いちょやま、なおー!!」

もういちど言うと、今度はちゅぐぅちゃにも上手だよってほめてくれた。

そうか、ぼくは今日から<いそやまなお>になったんだ!

考えてみればちゅぐぅちゃもあーちゃも、じいちゃもあきちゃも、じいじもさーちゃも、おいちゃもふーちゃものぼりゅも、ぱぱもみんなぼくを<なおくん>って呼ぶもんね。
もう一つの名前がまちがいだったんだ!
ぼくのほんとうのなまえは、<いそやまなお>だったんだ!!

「いちょやま、なおー、いちょやま、なおー!」

これでもうこわい人を思い出さずにすむ! ぼくはわすれないように自分の名前をなんどもくり返した。


  *   *   *


「おお、直くん! 来たか」

「じいじー!! おはよー!!」

きょうは朝からちゅぐぅちゃの車に乗ってお出かけ。
ついたところはじいじとさーちゃのおうち。

げんかんに入ると、じいじが笑顔で来てくれた。

じいじって呼びながら近づいたら、ふわっと抱っこしてくれる。
ちゅぐぅちゃの抱っこにすごくにててとってもうれしくなるんだ。

「おお。直くん、おはよう。元気にしてたか?」

「うん。あのねー、なおは、いちょやま、なお、なの」

ぼくが言うと、じいじはちょこっとびっくりした顔をしていたけどすぐにやさしい笑顔になった。

「おおー! 挨拶できるようになったのか。とっても上手だな。もう一度名前を教えてくれ」

「ふふっ。いちょやま、なおー!!」

ぼくが名前を言うと、じいじが嬉しそうに笑ってくれる。

「そうか、磯山も言えるようになったか。じいじと同じだな」

「おなじー?」

「そうだよ。じいじも磯山だからな」

そうなんだ! じいじもなおとおなじなんだ!!

「いちょやま、じいじ?」

「ははっ。磯山じいじか。これは直くんにやられたな」

ぼくがじいじの名前を言うと、大笑いしていたけど、何かまちがってたのかな?
でもたのしそうだから、いいか。

「直くん、沙都にも挨拶しておいで」

笑いながら、じいじがぼくをおろしてくれる。
さとっていうのは、さーちゃのことなんだ。

ぼくはさーちゃに向かって走っていった。

「さーちゃー!」

「直くん、おはよう。元気そうでうれしいわ」

「さーちゃ、おはよー。あのね、なお、いちょやま、なお、なの」

「あらあら、上手にご挨拶できたわね。直くん、偉いわ」

「なお、えらいー!!」

みんながほめてくれるのってうれしいな。
いっしょうけんめい、名前覚えてよかったな。
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