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番外編
なおくんはおれのだ!
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<side昇>
「昇、明日は家族みんなで磯山のおじいちゃんたちの家に行くわよ」
学校から帰って、手を洗い、おやつのどら焼きにかぶりついたところでおかーさんが教えてくれた。
「んっ、それって、むぐっ、なおくんも、くる?」
口の中のものを飲み込んでからなんとか尋ねると、おかーさんは笑って俺にお茶を渡した。
「ええ。磯山のお家に直くんの新しいお友だちが遊びにくるから、昇も一緒にどうかって誘われたの」
「なおくんの、おともだち? それ、だれ?」
「寛おじいちゃんが顧問弁護士を務めている櫻葉グループの息子くんで、一花くんっていう子。昇と同じ一年生よ」
じいちゃんがものすごい偉い弁護士さんだっていうのは知っている。
今は、大きな会社のお仕事だけをしているとも聞いている。
櫻葉グループっていうのは、テレビでも新聞でもよく聞く大きな会社だ。
そこの息子がなおくんの新しい友だち?
もしかしてなおくんのお兄ちゃんになろうとしているのかな?
なおくんのお兄ちゃんは俺だけなのに!!
「なおくんはおれのだよ!」
「大丈夫、誰もとったりしないわ。でも、お友だちが増えるのは嬉しいことでしょう?」
おかーさんはそういうけれど、なおくんに会ったら絶対に自分のものにしたくなる。
それくらい可愛いんだもん。
よし! 明日はなおくんから絶対に、はなれないぞ!
「おとーさん! はやくいこー! なおくんが、まってるよー!」
「わかった、わかった」
俺は待ちきれずにさっさと車の後ろの席に座って待っていると、おとーさんとおかーさんがやっと来た。
そうして、車はじいちゃんちに到着した。
「こんにちはー!」
駐車場にはもうすぐるおじちゃんの車があったからもう来ているはず!
すると、部屋の奥からトタトタと可愛い足音が聞こえたと思ったら、なおくんが俺に向かって走ってきた。
「のぼりゅーっ、おかーりー!」
笑顔で俺に抱きついてくる。
俺はその勢いに倒れそうになるのを必死にこらえていると、おとーさんが俺のすぐ後ろに立って身体で俺を支えてくれた。
「なおくん。えっと……ただいま?」
この返しが合っているのかはわからないけれど、おかえりと言われたんだから多分合っているはず。
「のぼりゅー、なおねー、いちょやま、なおー」
「えっ?」
今、直くんはなんて言ったんだろう?
「いちょやま、なおなのー」
「なおなの?」
少し拗ねた様子の直くんを見て、慌てて聞き返すと、俺のすぐ隣からおかーさんの声が割り込んできた。
「あら、直くん、上手にご挨拶できるのね。えらいわー」
「ふふっ、なお、えりゃいのー!」
おかーさんの言葉に直くんが一気に笑顔になった。
どういうこと?
頭の中がハテナでいっぱいになっていると、おとーさんが俺の耳元で囁いた。
「直くんは昇に自己紹介したんだよ。磯山直だって。今日、新しいお友だちがくるから練習したんじゃないか? その成果を昇に見せてくれたんだよ」
「あっ!」
いちょやま、なおってそういうことだったんだ……。
ああ……俺はまだまだ直くんの言葉が聞き取れないな。
勉強しなくっちゃ!
「直くん、ご挨拶できたー?」
部屋の奥からあやとさんの声が聞こえて、こっちに笑顔でやってくる。
直くんはあやとさんを見ると、俺に抱きついていた手を離し、あやとさんに駆け寄って行ってしまった。
「あーちゃっ、いちょやま、なお、ちたー」
「そっか。上手に言えたね」
「じょーじゅ、じょーじゅ!」
嬉しそうな直くんを抱っこするあやとさんは本当の親子みたいだ。
「さぁ、中に入って。って、ここ毅さんの実家か」
「ははっ。お邪魔しますよ。昇も中に入って」
俺はおとーさんに言われて、あやとさんと直くんを追いかけるように中に入った。
「昇、手を洗ってからよ」
「わかってる!」
いつもここにくるとおかーさんには同じことを言われるんだ。
もうわかってるのに。
直くんにお兄ちゃんらしいところを見せたいのに……もっと頑張らないとな。
ちゃんと手を洗って、直くんのために持ってきたおもちゃで直くんのパパも一緒に遊んでいると玄関チャイムが鳴った。
「だりぇー?」
いつものメンバーが揃っているから直くんは誰が来たんだろうと思っているみたいだ。
「あら、一花くんたちが来たみたいよ。保くん、一緒に行きましょうか」
じいちゃんとばあちゃんは直くんのパパと一緒に玄関に向かった。
「昇、明日は家族みんなで磯山のおじいちゃんたちの家に行くわよ」
学校から帰って、手を洗い、おやつのどら焼きにかぶりついたところでおかーさんが教えてくれた。
「んっ、それって、むぐっ、なおくんも、くる?」
口の中のものを飲み込んでからなんとか尋ねると、おかーさんは笑って俺にお茶を渡した。
「ええ。磯山のお家に直くんの新しいお友だちが遊びにくるから、昇も一緒にどうかって誘われたの」
「なおくんの、おともだち? それ、だれ?」
「寛おじいちゃんが顧問弁護士を務めている櫻葉グループの息子くんで、一花くんっていう子。昇と同じ一年生よ」
じいちゃんがものすごい偉い弁護士さんだっていうのは知っている。
今は、大きな会社のお仕事だけをしているとも聞いている。
櫻葉グループっていうのは、テレビでも新聞でもよく聞く大きな会社だ。
そこの息子がなおくんの新しい友だち?
もしかしてなおくんのお兄ちゃんになろうとしているのかな?
なおくんのお兄ちゃんは俺だけなのに!!
「なおくんはおれのだよ!」
「大丈夫、誰もとったりしないわ。でも、お友だちが増えるのは嬉しいことでしょう?」
おかーさんはそういうけれど、なおくんに会ったら絶対に自分のものにしたくなる。
それくらい可愛いんだもん。
よし! 明日はなおくんから絶対に、はなれないぞ!
「おとーさん! はやくいこー! なおくんが、まってるよー!」
「わかった、わかった」
俺は待ちきれずにさっさと車の後ろの席に座って待っていると、おとーさんとおかーさんがやっと来た。
そうして、車はじいちゃんちに到着した。
「こんにちはー!」
駐車場にはもうすぐるおじちゃんの車があったからもう来ているはず!
すると、部屋の奥からトタトタと可愛い足音が聞こえたと思ったら、なおくんが俺に向かって走ってきた。
「のぼりゅーっ、おかーりー!」
笑顔で俺に抱きついてくる。
俺はその勢いに倒れそうになるのを必死にこらえていると、おとーさんが俺のすぐ後ろに立って身体で俺を支えてくれた。
「なおくん。えっと……ただいま?」
この返しが合っているのかはわからないけれど、おかえりと言われたんだから多分合っているはず。
「のぼりゅー、なおねー、いちょやま、なおー」
「えっ?」
今、直くんはなんて言ったんだろう?
「いちょやま、なおなのー」
「なおなの?」
少し拗ねた様子の直くんを見て、慌てて聞き返すと、俺のすぐ隣からおかーさんの声が割り込んできた。
「あら、直くん、上手にご挨拶できるのね。えらいわー」
「ふふっ、なお、えりゃいのー!」
おかーさんの言葉に直くんが一気に笑顔になった。
どういうこと?
頭の中がハテナでいっぱいになっていると、おとーさんが俺の耳元で囁いた。
「直くんは昇に自己紹介したんだよ。磯山直だって。今日、新しいお友だちがくるから練習したんじゃないか? その成果を昇に見せてくれたんだよ」
「あっ!」
いちょやま、なおってそういうことだったんだ……。
ああ……俺はまだまだ直くんの言葉が聞き取れないな。
勉強しなくっちゃ!
「直くん、ご挨拶できたー?」
部屋の奥からあやとさんの声が聞こえて、こっちに笑顔でやってくる。
直くんはあやとさんを見ると、俺に抱きついていた手を離し、あやとさんに駆け寄って行ってしまった。
「あーちゃっ、いちょやま、なお、ちたー」
「そっか。上手に言えたね」
「じょーじゅ、じょーじゅ!」
嬉しそうな直くんを抱っこするあやとさんは本当の親子みたいだ。
「さぁ、中に入って。って、ここ毅さんの実家か」
「ははっ。お邪魔しますよ。昇も中に入って」
俺はおとーさんに言われて、あやとさんと直くんを追いかけるように中に入った。
「昇、手を洗ってからよ」
「わかってる!」
いつもここにくるとおかーさんには同じことを言われるんだ。
もうわかってるのに。
直くんにお兄ちゃんらしいところを見せたいのに……もっと頑張らないとな。
ちゃんと手を洗って、直くんのために持ってきたおもちゃで直くんのパパも一緒に遊んでいると玄関チャイムが鳴った。
「だりぇー?」
いつものメンバーが揃っているから直くんは誰が来たんだろうと思っているみたいだ。
「あら、一花くんたちが来たみたいよ。保くん、一緒に行きましょうか」
じいちゃんとばあちゃんは直くんのパパと一緒に玄関に向かった。
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