虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

文字の大きさ
76 / 117
番外編

なおくんはおれのだ!

しおりを挟む
<side昇>

「昇、明日は家族みんなで磯山のおじいちゃんたちの家に行くわよ」

学校から帰って、手を洗い、おやつのどら焼きにかぶりついたところでおかーさんが教えてくれた。

「んっ、それって、むぐっ、なおくんも、くる?」

口の中のものを飲み込んでからなんとか尋ねると、おかーさんは笑って俺にお茶を渡した。

「ええ。磯山のお家に直くんの新しいお友だちが遊びにくるから、昇も一緒にどうかって誘われたの」

「なおくんの、おともだち? それ、だれ?」

「寛おじいちゃんが顧問弁護士を務めている櫻葉グループの息子くんで、一花くんっていう子。昇と同じ一年生よ」

じいちゃんがものすごい偉い弁護士さんだっていうのは知っている。
今は、大きな会社のお仕事だけをしているとも聞いている。
櫻葉グループっていうのは、テレビでも新聞でもよく聞く大きな会社だ。

そこの息子がなおくんの新しい友だち?
もしかしてなおくんのお兄ちゃんになろうとしているのかな?

なおくんのお兄ちゃんは俺だけなのに!!

「なおくんはおれのだよ!」

「大丈夫、誰もとったりしないわ。でも、お友だちが増えるのは嬉しいことでしょう?」

おかーさんはそういうけれど、なおくんに会ったら絶対に自分のものにしたくなる。
それくらい可愛いんだもん。

よし! 明日はなおくんから絶対に、はなれないぞ!



「おとーさん! はやくいこー! なおくんが、まってるよー!」

「わかった、わかった」

俺は待ちきれずにさっさと車の後ろの席に座って待っていると、おとーさんとおかーさんがやっと来た。
そうして、車はじいちゃんちに到着した。

「こんにちはー!」

駐車場にはもうすぐるおじちゃんの車があったからもう来ているはず!

すると、部屋の奥からトタトタと可愛い足音が聞こえたと思ったら、なおくんが俺に向かって走ってきた。

「のぼりゅーっ、おかーりー!」

笑顔で俺に抱きついてくる。

俺はその勢いに倒れそうになるのを必死にこらえていると、おとーさんが俺のすぐ後ろに立って身体で俺を支えてくれた。

「なおくん。えっと……ただいま?」

この返しが合っているのかはわからないけれど、おかえりと言われたんだから多分合っているはず。

「のぼりゅー、なおねー、いちょやま、なおー」

「えっ?」

今、直くんはなんて言ったんだろう?

「いちょやま、なおなのー」

「なおなの?」

少し拗ねた様子の直くんを見て、慌てて聞き返すと、俺のすぐ隣からおかーさんの声が割り込んできた。

「あら、直くん、上手にご挨拶できるのね。えらいわー」

「ふふっ、なお、えりゃいのー!」

おかーさんの言葉に直くんが一気に笑顔になった。

どういうこと?
頭の中がハテナでいっぱいになっていると、おとーさんが俺の耳元で囁いた。

「直くんは昇に自己紹介したんだよ。磯山直だって。今日、新しいお友だちがくるから練習したんじゃないか? その成果を昇に見せてくれたんだよ」

「あっ!」

いちょやま、なおってそういうことだったんだ……。
ああ……俺はまだまだ直くんの言葉が聞き取れないな。
勉強しなくっちゃ!

「直くん、ご挨拶できたー?」

部屋の奥からあやとさんの声が聞こえて、こっちに笑顔でやってくる。
直くんはあやとさんを見ると、俺に抱きついていた手を離し、あやとさんに駆け寄って行ってしまった。

「あーちゃっ、いちょやま、なお、ちたー」

「そっか。上手に言えたね」

「じょーじゅ、じょーじゅ!」

嬉しそうな直くんを抱っこするあやとさんは本当の親子みたいだ。

「さぁ、中に入って。って、ここ毅さんの実家か」

「ははっ。お邪魔しますよ。昇も中に入って」

俺はおとーさんに言われて、あやとさんと直くんを追いかけるように中に入った。

「昇、手を洗ってからよ」

「わかってる!」

いつもここにくるとおかーさんには同じことを言われるんだ。
もうわかってるのに。
直くんにお兄ちゃんらしいところを見せたいのに……もっと頑張らないとな。

ちゃんと手を洗って、直くんのために持ってきたおもちゃで直くんのパパも一緒に遊んでいると玄関チャイムが鳴った。

「だりぇー?」

いつものメンバーが揃っているから直くんは誰が来たんだろうと思っているみたいだ。

「あら、一花くんたちが来たみたいよ。保くん、一緒に行きましょうか」

じいちゃんとばあちゃんは直くんのパパと一緒に玄関に向かった。
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

恋人は配信者ですが一緒に居られる時間がないです!!

海野(サブ)
BL
一吾には大人気配信者グループの1人鈴と付き合っている。しかし恋人が人気配信者ゆえ忙しくて一緒に居る時間がなくて…

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『目には目を歯には歯を』 プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

能ある妃は身分を隠す

赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。 言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。 全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。

うちに待望の子供が産まれた…けど

satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。 デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。

処理中です...