虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

文字の大きさ
77 / 117
番外編

なおくんのともだちがきた!

しおりを挟む
「なおくん、おいで」

直くんの新しい友だちに、直くんは俺のものだと見せつけるために、俺は座ったまま直くんを抱っこして、みんながこっちにくるのを待った。

玄関先でじいちゃんとばあちゃんの楽しそうな声が聞こえる。
合間に直くんのパパの声も聞こえるけれど、聞いたことがない大人の声が何人か聞こえる。

これは誰だ?
一人はその友だちのおとーさんってことだよね?

櫻葉グループの会長さんだ。
じいちゃんとも仲良く話してそうだからきっと一人はその人。
女の人の声も聞こえるからそれはきっとその子のおかーさんかな?

あと二人くらい男の人の声が聞こえる。
あれは誰だろう?

直くんを抱っこしながらも、ずっと玄関の方に集中して声を聞いていると、

「もうーっ、パパたちおしゃべりばっかり! いちかもはやく、おともだちにあいたいよー!!」

という可愛らしい声が響き渡った。

「ははっ。わかった、わかった。それじゃあ、お邪魔させていただきますよ」

その言葉の後、数人が中に入ってくる足音が聞こえてくる。

とうとうきた!

俺は直くんをギュッと抱きしめたまま、入り口をじっと見つめていた。

<side保>

玄関チャイムが鳴り、沙都さんに声をかけられて出迎えにいく。
史紀さんとは仲良くさせてもらっているけれど、今日ここに来るのは櫻葉会長ご夫妻とご子息の一花くんのはず。
寛さんと沙都さんは櫻葉会長ご夫妻とも親しいみたいだけれど、そんなとこに私もついていっていいのか緊張してしまう。

確かに今日のことは私が史紀さんから話を受けて賢将さんに伝えたことで実現した顔合わせだけど、会長とは会社で初日に声をかけていただいた以来だし、ドキドキが止まらない。

「保くん、大丈夫よ。櫻葉さんはもちろんだけど、麻友子さんも保くんに会いたがっていたから」

「えっ? どうしてですか?」

「一花くんがね、お家で話していたみたいよ。ふみくんのお友だちに会ったって。とっても優しそうな人だったって話していたから麻友子さんも史紀さんにお友達ができてよかったって思っていたみたい。だから今日は直くんに一花くんを紹介する日でもあるけど、麻友子さんに保くんを紹介する日でもあるの」

そんなことを言われてさらに緊張が増してしまう。

ドキドキしつつも、とうとう玄関についてしまった。

寛さんが玄関を開けると、想像していたよりも多い人数が入ってきた。

「保くん。こんにちは」

「あ、史紀さん。どうして?」

「私が言い出しっぺだからね。ついてきたんだ」

史紀さんの笑顔にホッとする。来てくれてよかった。

「ふみくん。いちかにもたもつくんとおはなしさせてー」

「ははっ。ごめん、ごめん」

可愛らしい声が会長の後ろから聞こえてきたと思ったら、スッと出てきたのは貴船コンツェルンの次期総帥とその腕に抱かれたご子息の一花くん。

「えっ……」

まさか一緒に来られるとは思っても見なかった。

「せいくんが、いちかといっしょにいきたいっていうから、つれてきたのー。ねっ、せいくん」

「ああ、一花の友だちになる子は私も知っておきたいからな」

その言葉にご子息の一花くんは笑っていたが、次期総帥の表情は本気だ。
その様子を見て史紀さんが笑っているのが見える。

あっ、もしかして……

――征哉くんの嫉妬っぷりが楽しくて……

あの時もそう言っていたけれど、もしかして友だちになる直くんに嫉妬してここまでついてきたとか?

まさかと思いたいけれど、あの表情を見るとそれがしっくりくる。

次期総帥がまだ赤ちゃんと言ってもおかしくない直くんに、嫉妬……。
思わず笑ってしまいそうなのを必死に抑えた。

それからしばらく会長と寛さんの話が続いたからか、一花くんが声を上げた。

「もうーっ、パパたちおしゃべりばっかり! いちかもはやく、おともだちにあいたいよー!!」

「ははっ。わかった、わかった。それじゃあ、お邪魔させていただきますよ」

「わぁーい! せいくん、いこう!」

「では、失礼します」

次期総帥は一花くんを抱っこしたまま、沙都さんの後に続いてスタスタと部屋の奥に進んでいく。
私も急いでそのあとを追うと、リビングが見えるその場所で立ち尽くしている次期総帥の姿があった。

<side昇>

俺が直くんを抱っこして待っていると、突然見たことのない背の高い男の人が可愛い子を抱っこして現れた。

えっ、だれ?

俺が背の高い人を茫然として見ていると、あっちも俺を見てその場に立ち尽くしていた。

「わぁー! かわいいっ! ねぇ、せいくん。おろしてー!」

「ん? ああ」

せいくんと呼ばれた男の人は抱っこしていた可愛い子を下ろすと、その子がタタタっと俺と直くんの方に走ってきた。

「このこが、なおくん?」

「――っ、う、うん。そうだよ。ね、なおくん」

あまりにも可愛い顔で尋ねられて一瞬戸惑ってしまったけど、直くんを紹介できた。
そうしたら、直くんは可愛い笑顔でその子に挨拶した。

「いちょやま、なおー」

「わぁー! あいさつ、じょうずだねー。ぼくは、いちかだよ」

「いーちゃ?」

「かわいい! それがいい! いーちゃだよー!」

「ふふ。なお、じょーじゅ」

その子に褒められて、直くんはとっても嬉しそうに笑っていた。
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

一日だけの魔法

うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。 彼が自分を好きになってくれる魔法。 禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。 彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。 俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。 嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに…… ※いきなり始まりいきなり終わる ※エセファンタジー ※エセ魔法 ※二重人格もどき ※細かいツッコミはなしで

王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『目には目を歯には歯を』 プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...