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番外編
可愛い弟たち
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<side卓>
絢斗と直くんと三人でお風呂に入り、はしゃいでいた直くんはあっという間に夢の世界に落ちていった。
周りに大好きなぬいぐるみたちを並べて、私と絢斗はそっと寝室から抜け出した。
モニターのスイッチを入れ、寝ている直くんの様子を見ながら、リビングで二人のひとときを過ごす。子どもができてもこうした夫夫の時間は大切だ。
「ね、今日から保くん。磯山家に移動したんだよね?」
「ああ、今日は父さんも母さんも直くん並にはしゃいでいるだろうな」
一ヶ月交代という約束で保くんと一緒に生活をすることになった、絢斗の実家と私の実家。
まずは絢斗の実家に世話になることになり、父と母は保くんと暮らす日を今か今かと待ち侘びていた。
その代わりにうちの実家には週に二度、直くんを預かってもらっていたから、寂しくは感じなかったようだが、やはり私や毅と違って、可愛らしい息子という呼び名に相応しい保くんと毎日一緒に過ごせるというのは格別なのだろう。
「うちの実家は逆に寂しがってるだろうな。その分明後日、直くんをお泊まりさせたら大喜びしてくれそう」
「そうだな。直くんにとってはうちも絢斗の実家もどちらも楽しい祖父母の家だから、直くんも喜ぶはずだよ」
そして、直くんを預かってもらう日は、私と絢斗の二人時間を満喫できる日でもある。
直くんがいる日は三人で川の字になって大きなベッドで寝ているが、直くんを預かってもらう日には二人だけの寝室で愛し合う。私だけの絢斗に戻る日だ。
「卓さん……明後日は、いっぱい愛して……」
「もちろん。寝室でも風呂場でも、な」
愛しい絢斗を抱きしめて、唇を重ねたところでテーブルに置いていた私のスマホが着信を告げた。
「誰だ、この時間に」
無視したいところだが、そうはいかない。
絢斗をソファーに残し、スマホを取りにいけば画面表示には父の名前があった。
この時間に電話をかけてくるということは大事な話があるということだ。
いいことか、悪いことかはわからないが、とりあえず電話をとって絢斗の元に戻った。
ー父さん、何かありましたか?
うちの実家で保くんの生活が始まった日だというのに、突然の電話。
何かあったとしか考えられない。
ーこんな時間に悪いな。ただ、どうしても話しておきたいことがあってな。絢斗くんにも聞いてもらいたいからスピーカーにしてほしい。実は、保くんが――
そうして父の口から語られたことを私と絢斗は驚きつつしっかりと聞いた。
ー直くんを私の養子に?
ーそうだ。保くんがそれを望んでいる。直くんのためにもそれが一番いいと言ってくれたんだ。
それは願ってもないことだが、そうなると保くんはどうなるのだろう?
その心配が父にも伝わったのか、すぐに言葉が続いた。
ーそして、もう一つ保くんが望んだのは……私と沙都の養子になることだ。
ーえっ? 父さんと母さんの養子に? つまり、私の弟になる、ということですか?
ーそうだ。そうすれば、直くんとも同じ苗字になり、親戚関係でいられる。私と沙都もずっとそれを望んでいたが、今日保くんの方からそれを望んでくれたんだ。
保くんが、両親の養子になり私と毅の義弟になる。
そうすれば<磯山保>になる、というわけか。
ー私も沙都もそれを喜ばしいことだと思っているが、義理の兄弟となることをお前はどう思う? これから先、遺産相続の話なども出てくることになるが。
ー遺産、ですか? それは全く気にしませんよ。そもそもいつ入ってくるかもわからない両親の遺産を当てにするほど、困ってませんから。
ーははっ。だろうな。
ー冗談はともかく、直くんのためにも、そして保くんのためにもそれが一番いい方法だと思います。私は賛成ですよ。もちろん、絢斗もね。
私の言葉に絢斗は隣で涙を流しながら嬉しそうに笑っていた。
ー毅にも一応話をしてみるつもりだが……
ー大丈夫ですよ、反対することはないでしょう。
ー私もそう思っている。それじゃあ、直くんを養子にする手続きはお前に任せてもいいか?
ーもちろんです。明日、すぐに手続きに入りますよ。
また連絡する、そう言って父の電話は切れた。
「絢斗、これで直くんは正式に私の息子だ。戸籍上は絢斗の弟になるが、実質私たちの息子だよ」
「うん! 保くんも卓さんの弟になるし、可愛い弟が一気に二人も増えるね!」
ずっと願っていたように、直くんと保くんと大きな家族になれた。
それが何よりも嬉しかった。
絢斗と直くんと三人でお風呂に入り、はしゃいでいた直くんはあっという間に夢の世界に落ちていった。
周りに大好きなぬいぐるみたちを並べて、私と絢斗はそっと寝室から抜け出した。
モニターのスイッチを入れ、寝ている直くんの様子を見ながら、リビングで二人のひとときを過ごす。子どもができてもこうした夫夫の時間は大切だ。
「ね、今日から保くん。磯山家に移動したんだよね?」
「ああ、今日は父さんも母さんも直くん並にはしゃいでいるだろうな」
一ヶ月交代という約束で保くんと一緒に生活をすることになった、絢斗の実家と私の実家。
まずは絢斗の実家に世話になることになり、父と母は保くんと暮らす日を今か今かと待ち侘びていた。
その代わりにうちの実家には週に二度、直くんを預かってもらっていたから、寂しくは感じなかったようだが、やはり私や毅と違って、可愛らしい息子という呼び名に相応しい保くんと毎日一緒に過ごせるというのは格別なのだろう。
「うちの実家は逆に寂しがってるだろうな。その分明後日、直くんをお泊まりさせたら大喜びしてくれそう」
「そうだな。直くんにとってはうちも絢斗の実家もどちらも楽しい祖父母の家だから、直くんも喜ぶはずだよ」
そして、直くんを預かってもらう日は、私と絢斗の二人時間を満喫できる日でもある。
直くんがいる日は三人で川の字になって大きなベッドで寝ているが、直くんを預かってもらう日には二人だけの寝室で愛し合う。私だけの絢斗に戻る日だ。
「卓さん……明後日は、いっぱい愛して……」
「もちろん。寝室でも風呂場でも、な」
愛しい絢斗を抱きしめて、唇を重ねたところでテーブルに置いていた私のスマホが着信を告げた。
「誰だ、この時間に」
無視したいところだが、そうはいかない。
絢斗をソファーに残し、スマホを取りにいけば画面表示には父の名前があった。
この時間に電話をかけてくるということは大事な話があるということだ。
いいことか、悪いことかはわからないが、とりあえず電話をとって絢斗の元に戻った。
ー父さん、何かありましたか?
うちの実家で保くんの生活が始まった日だというのに、突然の電話。
何かあったとしか考えられない。
ーこんな時間に悪いな。ただ、どうしても話しておきたいことがあってな。絢斗くんにも聞いてもらいたいからスピーカーにしてほしい。実は、保くんが――
そうして父の口から語られたことを私と絢斗は驚きつつしっかりと聞いた。
ー直くんを私の養子に?
ーそうだ。保くんがそれを望んでいる。直くんのためにもそれが一番いいと言ってくれたんだ。
それは願ってもないことだが、そうなると保くんはどうなるのだろう?
その心配が父にも伝わったのか、すぐに言葉が続いた。
ーそして、もう一つ保くんが望んだのは……私と沙都の養子になることだ。
ーえっ? 父さんと母さんの養子に? つまり、私の弟になる、ということですか?
ーそうだ。そうすれば、直くんとも同じ苗字になり、親戚関係でいられる。私と沙都もずっとそれを望んでいたが、今日保くんの方からそれを望んでくれたんだ。
保くんが、両親の養子になり私と毅の義弟になる。
そうすれば<磯山保>になる、というわけか。
ー私も沙都もそれを喜ばしいことだと思っているが、義理の兄弟となることをお前はどう思う? これから先、遺産相続の話なども出てくることになるが。
ー遺産、ですか? それは全く気にしませんよ。そもそもいつ入ってくるかもわからない両親の遺産を当てにするほど、困ってませんから。
ーははっ。だろうな。
ー冗談はともかく、直くんのためにも、そして保くんのためにもそれが一番いい方法だと思います。私は賛成ですよ。もちろん、絢斗もね。
私の言葉に絢斗は隣で涙を流しながら嬉しそうに笑っていた。
ー毅にも一応話をしてみるつもりだが……
ー大丈夫ですよ、反対することはないでしょう。
ー私もそう思っている。それじゃあ、直くんを養子にする手続きはお前に任せてもいいか?
ーもちろんです。明日、すぐに手続きに入りますよ。
また連絡する、そう言って父の電話は切れた。
「絢斗、これで直くんは正式に私の息子だ。戸籍上は絢斗の弟になるが、実質私たちの息子だよ」
「うん! 保くんも卓さんの弟になるし、可愛い弟が一気に二人も増えるね!」
ずっと願っていたように、直くんと保くんと大きな家族になれた。
それが何よりも嬉しかった。
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