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番外編
素敵な人
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少し戻って、史紀から結婚すると伝えられた日の保sideのお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side保>
史紀さんの結婚式に招待された。
これまでも何度か職場の同僚の披露宴に招待されたことはあるけれど、これほど楽しみに思ったことはない。
だって、家族と親しい友人だけを招待していると史紀さんに言われたからだ。
史紀さんが僕のことを親しい友人だと思ってくれていると思うと嬉しさが込み上げる。
「あ、お義父さん!」
ウキウキで仕事を終えて、エントランスに降りると寛お義父さんがすでに到着して待ってくれていた。
「保、お疲れ。さぁ行こうか」
磯山家の養子になってお義父さんもお義母さんも僕を呼び捨てで呼んでくれるようになった。
卓兄さんと毅兄さんと本当の兄弟になったみたいで、名前で呼ばれるたびに嬉しくなる。
笑顔のお義父さんが鞄を持ってくれて一緒に駐車場に向かった。
「今日はどうだったね?」
「はい。仕事ももちろんうまくいったんですけど、今日はすごい報告があるんです!」
史紀さんからは、お義父さんとお義母さんにも近々招待状を送る予定だから僕から話をしてくれて構わないと言われている。きっと喜びを隠しきれない僕だから史紀さんもそう言ってくれたんだろう。
プライベートなことだから周りには聞かれてはいけないと思って、お義父さんの車に乗り込んでから嬉しい報告をした。
「史紀さん、ご結婚されるそうなんです。それで僕たち結婚式に招待されました!」
「ほお、ようやく式を挙げることになったか。めでたいことだな」
あれ? 全然驚いてない。
どうやらお義父さんは史紀さんがお付き合いしていたことを知っているみたいだ。
「お義父さんは史紀さんがお付き合いされていたことをご存知だったんですね。もしかしてお相手の方もご存知なんですか?」
そういえば、史紀さんの恋人さんが男性だってことを聞いただけであとは僕の話になっちゃってたから聞いてなかった。僕が浮かれすぎているのがよくわかる。
「よく知っているよ。相手の彼は少し前までうちの事務所に勤めてくれていたからね」
「あ、それじゃあ弁護士さんなんですね」
さすが史紀さんのお相手さんだ。職業で結婚相手を決めるわけではないけれど櫻葉グループの社長さんのお相手が弁護士さんというのはピッタリな気がする。けれど、お義父さんは楽しそうに笑いながら、首を横に振った。
「いいや、彼は今和菓子職人をしているよ」
「えっ? 和菓子、職人さん、ですか?」
法律系でもなんでもない、それどころか想像もしていなかった職業の人にただただ驚きしかない。
「彼は法学部を優秀な成績で卒業して弁護士資格も取った後、しばらくうちの事務所に勤めていたんだが、老舗の和菓子屋を守りたいと言ってね、実家の後を継いで和菓子職人になったんだ。保は<星彩庵>という店を知っているか?」
「星彩庵! 知ってます! 以前、会社で頂き物のどら焼きをもらってすごく美味しかったので覚えてます」
「ははっ。そうか、彼はそこの跡取りなんだよ。そうだ、よかったら今から行ってみようか。沙都もあの店の和菓子が好きだからお土産に買って帰ろう」
お義父さんはそういうが早いか、まっすぐ行くはずの道を左折して進んでいく。
あっという間にお店に到着し、僕はお義父さんと一緒にそのお店に向かった。
「いらっしゃいませ。あ、先生。ようこそお越しくださいました」
お義父さんをみて、女性店員さんが笑顔で駆け寄ってくる。
すごい、お義父さんって店員さんとも顔馴染みなんだ。
「久しぶりだったね。安城くんはいるかな?」
「はい。すぐに呼んできますね」
店員さんが中に入って行ったのをみて僕はお義父さんに声をかけた。
「すごい! お義父さん、常連さんなんですね」
「ははっ。昔からよく買いに来ていただけだよ。本当にここの和菓子は最高だからね」
そんな話をしていると、お店の奥から白い作務衣姿の逞しい男性がやってきた。
「磯山先生、ご無沙汰しております」
「いや、私も最近来られなくてね。今日はかわいい息子を紹介がてら結婚のお祝いを言いに来たんだよ」
その言葉に彼がパッと僕をみた。急に見つめられてなんだかドキドキしてしまう。
「もしかして彼が保さん、ですか?」
「そう、私のかわいい息子で卓と毅の弟になった保だよ。会社では史紀くんによくしてもらっているみたいだ」
「史紀からよく話は聞いていますよ。保さん、史紀の友人になってくれてありがとうございます」
「えっ、いえ。そんなっ、僕の方こそ、史紀さんにはよくしてもらっていて……いつもランチや休憩にも誘ってもらって本当にありがたく思ってるんです」
転職初日から史紀さんに会えて優しく話を聞いてもらえてどれほど心強くて嬉しかったか……。僕が会社にあんなにはやく馴染めたのも史紀さんのおかげだ。
「あの、ご結婚おめでとうございます! 僕、史紀さんが幸せになるのが本当に嬉しくて……お相手さんがこんなに素敵な人ですごく安心です」
テンパりながらも必死に思いを告げると、史紀さんのお相手さんはこの上ない笑顔を見せてくれた。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side保>
史紀さんの結婚式に招待された。
これまでも何度か職場の同僚の披露宴に招待されたことはあるけれど、これほど楽しみに思ったことはない。
だって、家族と親しい友人だけを招待していると史紀さんに言われたからだ。
史紀さんが僕のことを親しい友人だと思ってくれていると思うと嬉しさが込み上げる。
「あ、お義父さん!」
ウキウキで仕事を終えて、エントランスに降りると寛お義父さんがすでに到着して待ってくれていた。
「保、お疲れ。さぁ行こうか」
磯山家の養子になってお義父さんもお義母さんも僕を呼び捨てで呼んでくれるようになった。
卓兄さんと毅兄さんと本当の兄弟になったみたいで、名前で呼ばれるたびに嬉しくなる。
笑顔のお義父さんが鞄を持ってくれて一緒に駐車場に向かった。
「今日はどうだったね?」
「はい。仕事ももちろんうまくいったんですけど、今日はすごい報告があるんです!」
史紀さんからは、お義父さんとお義母さんにも近々招待状を送る予定だから僕から話をしてくれて構わないと言われている。きっと喜びを隠しきれない僕だから史紀さんもそう言ってくれたんだろう。
プライベートなことだから周りには聞かれてはいけないと思って、お義父さんの車に乗り込んでから嬉しい報告をした。
「史紀さん、ご結婚されるそうなんです。それで僕たち結婚式に招待されました!」
「ほお、ようやく式を挙げることになったか。めでたいことだな」
あれ? 全然驚いてない。
どうやらお義父さんは史紀さんがお付き合いしていたことを知っているみたいだ。
「お義父さんは史紀さんがお付き合いされていたことをご存知だったんですね。もしかしてお相手の方もご存知なんですか?」
そういえば、史紀さんの恋人さんが男性だってことを聞いただけであとは僕の話になっちゃってたから聞いてなかった。僕が浮かれすぎているのがよくわかる。
「よく知っているよ。相手の彼は少し前までうちの事務所に勤めてくれていたからね」
「あ、それじゃあ弁護士さんなんですね」
さすが史紀さんのお相手さんだ。職業で結婚相手を決めるわけではないけれど櫻葉グループの社長さんのお相手が弁護士さんというのはピッタリな気がする。けれど、お義父さんは楽しそうに笑いながら、首を横に振った。
「いいや、彼は今和菓子職人をしているよ」
「えっ? 和菓子、職人さん、ですか?」
法律系でもなんでもない、それどころか想像もしていなかった職業の人にただただ驚きしかない。
「彼は法学部を優秀な成績で卒業して弁護士資格も取った後、しばらくうちの事務所に勤めていたんだが、老舗の和菓子屋を守りたいと言ってね、実家の後を継いで和菓子職人になったんだ。保は<星彩庵>という店を知っているか?」
「星彩庵! 知ってます! 以前、会社で頂き物のどら焼きをもらってすごく美味しかったので覚えてます」
「ははっ。そうか、彼はそこの跡取りなんだよ。そうだ、よかったら今から行ってみようか。沙都もあの店の和菓子が好きだからお土産に買って帰ろう」
お義父さんはそういうが早いか、まっすぐ行くはずの道を左折して進んでいく。
あっという間にお店に到着し、僕はお義父さんと一緒にそのお店に向かった。
「いらっしゃいませ。あ、先生。ようこそお越しくださいました」
お義父さんをみて、女性店員さんが笑顔で駆け寄ってくる。
すごい、お義父さんって店員さんとも顔馴染みなんだ。
「久しぶりだったね。安城くんはいるかな?」
「はい。すぐに呼んできますね」
店員さんが中に入って行ったのをみて僕はお義父さんに声をかけた。
「すごい! お義父さん、常連さんなんですね」
「ははっ。昔からよく買いに来ていただけだよ。本当にここの和菓子は最高だからね」
そんな話をしていると、お店の奥から白い作務衣姿の逞しい男性がやってきた。
「磯山先生、ご無沙汰しております」
「いや、私も最近来られなくてね。今日はかわいい息子を紹介がてら結婚のお祝いを言いに来たんだよ」
その言葉に彼がパッと僕をみた。急に見つめられてなんだかドキドキしてしまう。
「もしかして彼が保さん、ですか?」
「そう、私のかわいい息子で卓と毅の弟になった保だよ。会社では史紀くんによくしてもらっているみたいだ」
「史紀からよく話は聞いていますよ。保さん、史紀の友人になってくれてありがとうございます」
「えっ、いえ。そんなっ、僕の方こそ、史紀さんにはよくしてもらっていて……いつもランチや休憩にも誘ってもらって本当にありがたく思ってるんです」
転職初日から史紀さんに会えて優しく話を聞いてもらえてどれほど心強くて嬉しかったか……。僕が会社にあんなにはやく馴染めたのも史紀さんのおかげだ。
「あの、ご結婚おめでとうございます! 僕、史紀さんが幸せになるのが本当に嬉しくて……お相手さんがこんなに素敵な人ですごく安心です」
テンパりながらも必死に思いを告げると、史紀さんのお相手さんはこの上ない笑顔を見せてくれた。
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