92 / 117
番外編
みんな揃って
しおりを挟む
「寛さん、保。おかえりなさい」
こうして笑顔で出迎えられるのは緑川家も磯山家も同じ。
これだけで仕事の疲れも一気に吹き飛んでしまうのだから不思議だ。
「お義母さん、ただいま。今日のご飯はなんですか?」
「今日は保の好きな天ぷらにしたわ。寛さんが目の前で揚げてくれるわよ」
退院したその足でお義父さん行きつけの天ぷら屋さんに連れて行ってもらってから揚げたての美味しさにハマってしまった家でも外食でも天ぷらを食べさせてもらうことが増えた。外で食べる天ぷらももちろん美味しいけれど、お義父さんが目の前で揚げてくれる天ぷらはまた格別だ。
「わぁ! やった! お義父さん、ありがとうございます」
「ははっ。早速準備するから着替えておいで」
「はーい」
僕は子どものようにはしゃぎながら自室に向かった。
こんなにも浮かれているのは史紀さんの結婚話と、自分の未来にいろんな選択肢を考えられるようになったからかもしれない。
<side沙都>
寛さんがいつものように保を迎えに行くと言って出かけてから少し経って、史紀くんから電話がかかってきた。
ー今、お時間よろしいですか?
ーええ、大丈夫よ。
ー実は今日の昼に保くんにも伝えたんですけど、伊吹と結婚式を挙げることになったんです。
ーまぁ! おめでとう!! 素敵な報告ね!!
ーありがとうございます。それで、結婚式には家族と親しい友人だけを招待しようと思っていて、保くんも含めて磯山家の皆さんを招待しようと思ってるんです。
ーそれは嬉しいわ!! 史紀くん、ドレスを着るんでしょう?
あの安城くんがせっかくの結婚式に史紀くんにドレスを着せないなんてあるわけないもの。
ーちょっと恥ずかしいんですけど、伊吹がどうしてもというので結婚式だけはリクエストを聞いてあげようかと……
ーふふ、ごちそうさま。
普段あまり惚気ることがない史紀くんだけど、結婚式となるとやっぱり喜びが溢れているわね。
ーあの、それでここからが本題なんですけど、私たちの結婚式で一花くんにフラワーガールをやってもらうことになったんです。
ーフラワーガール? ということは一花くんがドレスを着るってことかしら?
ーはい。それで一人だと寂しいから。直くんにもフラワーガールをお願いして、昇くんにはリングボーイをお願いしたいんです。
ーあら、とってもいいアイディアね! いいじゃない!!
ー絢斗さんもすごく乗り気になってくれて、しかももう一つ面白い提案をしてくれたんです。
そう言って教えてくれたのは、まさかの絢斗くんと保が当日ドレスを着てくれるというもの。
一花くんと直くん、それに昇の衣装を決める時に絢斗くんと保のドレスもオーダーで作ろうという計画。
ついでも私と秋穂さん、それに二葉さんの衣装も周平くんのドレスで好きなものを選べるということになったらしい。
ーそれ、すっごくいいわ!
ーですよね。保くんにはドレス選びの当日まで内緒にするそうなので、気づかれないように気をつけてくださいね。
ーええ、わかったわ。
その後、秋穂さんと絢斗くん、それに二葉さんとそれぞれ連絡を取り合い、当然だけど、みんなノリノリであっという間にドレスを選びに行く日が決まった。知らないのはそれぞれの旦那さまと保くんだけ。
ああ、楽しみでたまらないわ。
<side直>
朝からちゅぐぅちゃとあーちゃといっしょに車にのってどこかに来た。
車が止まったら、窓がトントンって音がしてちゅぐうちゃが開けてくれた。
「なおくん!」
ドアに手をかけて声をかけてくれたのはのぼりゅ。
やったー! 今日はのぼりゅと遊ぶんだ!
早く下りたいって足バタバタさせてたらあーちゃがいすから下ろそうと外してくれていた。
「ほら、昇。ちょっと離れていなさい」
ちゅぐうちゃがきて、ぼくをいすから下ろしてだっこしてくれた。
そしてあーちゃがいる方のドアを開けて、ちゅぐうちゃはあーちゃとも手をつなぐ。
どこかに歩いて行こうとしたら、車がふたつ、こっちに向かって走ってきた。
あれ! じいちゃとじいじの車だ!
みたことあるからぜったいそうだ!!
車が近くに止まって、ちゅぐうちゃにお願いしたら下ろしてくれた。
あ! たもちゅおいちゃもいる!
このまえまでぱぱと呼んでいたけど、これからはたもちゅおいちゃと呼ぶことになったんだ。
ふしぎだけど、ぱぱと呼んでいた時よりもずっとずっと笑顔だから、それでいいんだ。
三人で「直くん、おいでー」と呼んでくれる。
えー、ぼく……だれのところに走って行ったらいいのかな?
どうしようか悩んだけど、足は勝手にじいじのところに行っていた。
多分、ちゅぐうちゃに似てるから安心するのかな。
うん、そうかもしれない。
こうして笑顔で出迎えられるのは緑川家も磯山家も同じ。
これだけで仕事の疲れも一気に吹き飛んでしまうのだから不思議だ。
「お義母さん、ただいま。今日のご飯はなんですか?」
「今日は保の好きな天ぷらにしたわ。寛さんが目の前で揚げてくれるわよ」
退院したその足でお義父さん行きつけの天ぷら屋さんに連れて行ってもらってから揚げたての美味しさにハマってしまった家でも外食でも天ぷらを食べさせてもらうことが増えた。外で食べる天ぷらももちろん美味しいけれど、お義父さんが目の前で揚げてくれる天ぷらはまた格別だ。
「わぁ! やった! お義父さん、ありがとうございます」
「ははっ。早速準備するから着替えておいで」
「はーい」
僕は子どものようにはしゃぎながら自室に向かった。
こんなにも浮かれているのは史紀さんの結婚話と、自分の未来にいろんな選択肢を考えられるようになったからかもしれない。
<side沙都>
寛さんがいつものように保を迎えに行くと言って出かけてから少し経って、史紀くんから電話がかかってきた。
ー今、お時間よろしいですか?
ーええ、大丈夫よ。
ー実は今日の昼に保くんにも伝えたんですけど、伊吹と結婚式を挙げることになったんです。
ーまぁ! おめでとう!! 素敵な報告ね!!
ーありがとうございます。それで、結婚式には家族と親しい友人だけを招待しようと思っていて、保くんも含めて磯山家の皆さんを招待しようと思ってるんです。
ーそれは嬉しいわ!! 史紀くん、ドレスを着るんでしょう?
あの安城くんがせっかくの結婚式に史紀くんにドレスを着せないなんてあるわけないもの。
ーちょっと恥ずかしいんですけど、伊吹がどうしてもというので結婚式だけはリクエストを聞いてあげようかと……
ーふふ、ごちそうさま。
普段あまり惚気ることがない史紀くんだけど、結婚式となるとやっぱり喜びが溢れているわね。
ーあの、それでここからが本題なんですけど、私たちの結婚式で一花くんにフラワーガールをやってもらうことになったんです。
ーフラワーガール? ということは一花くんがドレスを着るってことかしら?
ーはい。それで一人だと寂しいから。直くんにもフラワーガールをお願いして、昇くんにはリングボーイをお願いしたいんです。
ーあら、とってもいいアイディアね! いいじゃない!!
ー絢斗さんもすごく乗り気になってくれて、しかももう一つ面白い提案をしてくれたんです。
そう言って教えてくれたのは、まさかの絢斗くんと保が当日ドレスを着てくれるというもの。
一花くんと直くん、それに昇の衣装を決める時に絢斗くんと保のドレスもオーダーで作ろうという計画。
ついでも私と秋穂さん、それに二葉さんの衣装も周平くんのドレスで好きなものを選べるということになったらしい。
ーそれ、すっごくいいわ!
ーですよね。保くんにはドレス選びの当日まで内緒にするそうなので、気づかれないように気をつけてくださいね。
ーええ、わかったわ。
その後、秋穂さんと絢斗くん、それに二葉さんとそれぞれ連絡を取り合い、当然だけど、みんなノリノリであっという間にドレスを選びに行く日が決まった。知らないのはそれぞれの旦那さまと保くんだけ。
ああ、楽しみでたまらないわ。
<side直>
朝からちゅぐぅちゃとあーちゃといっしょに車にのってどこかに来た。
車が止まったら、窓がトントンって音がしてちゅぐうちゃが開けてくれた。
「なおくん!」
ドアに手をかけて声をかけてくれたのはのぼりゅ。
やったー! 今日はのぼりゅと遊ぶんだ!
早く下りたいって足バタバタさせてたらあーちゃがいすから下ろそうと外してくれていた。
「ほら、昇。ちょっと離れていなさい」
ちゅぐうちゃがきて、ぼくをいすから下ろしてだっこしてくれた。
そしてあーちゃがいる方のドアを開けて、ちゅぐうちゃはあーちゃとも手をつなぐ。
どこかに歩いて行こうとしたら、車がふたつ、こっちに向かって走ってきた。
あれ! じいちゃとじいじの車だ!
みたことあるからぜったいそうだ!!
車が近くに止まって、ちゅぐうちゃにお願いしたら下ろしてくれた。
あ! たもちゅおいちゃもいる!
このまえまでぱぱと呼んでいたけど、これからはたもちゅおいちゃと呼ぶことになったんだ。
ふしぎだけど、ぱぱと呼んでいた時よりもずっとずっと笑顔だから、それでいいんだ。
三人で「直くん、おいでー」と呼んでくれる。
えー、ぼく……だれのところに走って行ったらいいのかな?
どうしようか悩んだけど、足は勝手にじいじのところに行っていた。
多分、ちゅぐうちゃに似てるから安心するのかな。
うん、そうかもしれない。
1,060
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます
碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」
そんな夫と
「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」
そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。
嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる