1 / 11
1話
しおりを挟む剣技や魔法の存在する中世ヨーロッパのような街並み。
魔法が存在するように魔物も存在し、魔物を討伐して収入を得る冒険者や、その冒険者を纏める冒険者ギルドというような物も存在している。
数多くの男が叶いようのない夢でありながらも心の隅で待ち望んだファンタジー世界。
そんな世界に気付けば俺は転生していた。
忘れようと思っても絶対忘れそうにない地球という星で社会人として働いていた記憶。その記憶の中には、現在俺が生活しているファンタジー世界を待ち望んでいたという記憶も残っている。しかし、現在俺は今の生活に少し怯えなから過ごしている。
街中を歩いてみれば女性、女性、女性、女性。
地球で住んでいたことを前世というのならば、この世界の女性は前世でいう痴女だろう。
平然と下ネタを友達同士言い合い、男を見たという情報が流れでもしたら見たと言う現場へ直ぐに向かい、服を着るというのは寒い時以外着ることはなく、通常は下着姿で自分の体を周囲に見せ付けながら歩いている。
前世と今世でこんなにも女性の普段の行いが変わっているというのには、男が女性に比べて極端に少ないということが関係していると思う。
前読んでみた本によると、この世界の男女比は大体一対千らしい。
昔は男女比が一対三くらいと、今以上に男女比の差は見られなかったらしいが、魔王と呼ばれる前世のラスボスのような魔物が全世界の女性に男子の出生率を急激に少なくする魔法を掛けたらしく、男の出生率はみるみる内に低下。
現在ではその魔王と呼ばれる奴は討伐されているようだが、現在でも魔王の残した魔法は女性に影響しているらしく、少しずつ影響力は低下しているらしいが男女比が昔のようにまだ戻ることはなく今の一対千という男女比になっているらしい。
そして、男が極端に少なくなるにつれて上昇していったのが女性の性欲。
男が少なくなり、異性を見る機会が極端に少なくなってしまった結果、女性は極端に異性を求めるようになった。下ネタを言い合うのも性欲が溜まっている結果だが、下着を見せているのも男を誘惑する為らしい。
そんな世界な為、俺は現在男であることを隠して生活している。
仮に隠さなかったとしたら、一日中俺は女性に襲われ続けてしまうだろう。
俺のストライクゾーンは、お嬢様のような上品なお方だ。
決して、下ネタを暇さえあれば言っているような奴ではない。
前世ではそんな方との出逢いは無かったが、この世界では男ということもあり前世のイケメンや金持ちを凌駕出来る部分はある。それに、前世基準で言えば俺はかなりの上位に位置する中性的な顔立ちで、前世とは違って顔もいい。
だから、付き合える可能性も十分にあるということだ。
それに、剣技や魔法がある世界なので、折角だし俺は剣技や魔法を極めてみたいのだ。俺よりも魅力的な男が万が一現れてしまった場合でも、力さえあれば俺を選んで貰えるかもしれない。……決して、性欲に染まった女性から逃れる為に力を付けたいとかではない。
「おはようお兄ちゃん!! 一緒にご飯食べよ!!」
「おお。もうそんな時間か。」
ベットの上で今一度今の俺の状況について頭の中で整理していると、ハルが飛び付いて来た。
白銀のシルクのように綺麗で繊細な髪に、子動物のような愛らしさのある肢体に整った顔立ち。
サファイアとエメラルドが調和したような、透き通った綺麗な青碧色のぱっちりとした目。
身長は百五十センチ位で、大体小学校高学年から中学くらいの大きさだろうか。
まるで天使のような可憐さを持つハルは、俺の癒しだ。
前世でもこんな妹が欲しかった。
俺に飛び付いてすりすりと甘えるように俺の体に顔を擦るハルを、俺は優しく抱き寄せた。
「ん……お兄ちゃん温かい。」
「ポカポカして気持ちいいな。」
この世界の季節は前世の日本のように四季があり、現在の季節は春。
春は寒さで眠っていた動植物を起こし、心地よい暖かい風を吹かせるイメージだが、朝はまだ寒い。
だから、春の朝はハルと抱き合って体を温める。
けっして、やましい気持ちをもってやっている訳ではない。
大天使ハルが甘えて来たので、俺は甘やかしているだけだ。
……たまに俺から頼むこともあるけど。
ハルの繊細な銀色の髪を優しく撫でていると、下から母さんの大きな声が聞こえてきた。
「朝ごはん出来たから下りておいで。」
今世の母さんは物凄く温厚で落ち着いた性格で、基本呼び掛けるようなことはせず大体は俺達に自由にさせる。遅刻しそうになった時や間違ったことだけ呼び掛けたり注意をしてくれる、聖母のような母さんだ。
だというのに、声を掛けてきたということは……ハルの髪を撫で過ぎたということだろう。
俺に撫でられて気持ち良くなったのか、ぱっちりとした目を閉じて再び眠りにつきそうになっていたハルを抱っこして、階段を下りた。
「母さん。おはよう。」
「おはようノア。ハルが呼びに行ったと思ったけど……もしかして、寝ちゃってた?」
「いや、髪の毛を撫でてたら寝ちゃってさ。声を掛けてくれてありがとう。あのままだったら遅刻してた。」
「ふふっ。遅刻しないように、ご飯早く食べちゃいなさい。」
俺の腕の中で寝ていたハルをソファーに寝かせ、椅子に座って既に用意されていた朝食を食べることにする。
ハルは俺と違ってまだ時間があるため、まだ起こさなかった。寝ているのを起こすのは可哀想だし、恐らく時間になればお母さんが起こしてくれるだろう。
すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てるハルを横目に、美味しそうな朝食を食べ進めた。
79
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる