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本編
第二十八話:過去への自責
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「さっき、ホルガー王子にもあってね。悪癖を治すつもりらしいって言ったら丁度良かったかもっていってくれたんだ」
ノゼルはホルガーとさっき会って、悪癖を治すためのこの薬を渡してくれたことを話してくれた。ホルガーは琉璃のために悪癖を治そうと考えていた砕波の思考を見抜いていた証拠だった。
「そうか……」
「ホルガーもメイルたちもやったらしいけど、飲んだ後酷い頭痛症状に悩まされるから覚悟して飲めとさ」
忠告する理由はこの薬を飲んだ時に酷い頭痛症状に苛まれるとは知っていたが、ここまで忠告すると言うことはホルガー達も経験者だからなのだろう。
だが、今はまだ飲まない。
飲む前に、やらなければいけないことがまだ残っているからだ。
「……ありがとう」
「ーーさあて、取り掛かるためにちょっと道具倉庫まで行きましょうかね。二人ともちょっと待っててよ。2日後にはこっちに戻るからそれまでなにかしてなさいよ。ノゼル、冷蔵庫にアイスあるから食べていいよ。」
「あいよー」
ノゼルにお礼を言って、砕波はポケットに治療薬を仕舞った。今度はフリッグが下半身のズボンを素早く脱ぎ捨てて、ここから少し深いところにある隠れ家に行くために薬造りの為に海に飛び込んだのだった。
「出来たらノゼルが迎えに行くから、2日間二人の好きにしていてね」
そう言ってフリッグは海の中へ潜って行った、ノゼルは「アイスアイス」と言いながら体を拭いてダグラスの元に行く。
「おーい、せっかくだしお前達も食っていきなよ」
「アイスか……せっかくだし食いに行こうか」
「――うん!」
琉璃は好物のアイスを貰おうと言う提案に乗って、嬉しそうな表情を浮かべていた。
「人間って食文化広いよねぇ~、詠寿王子が人間たちを高評価するの分かる気がしやすわ」
「現金だな~、人間は悪い奴らもいるから気をつけなさいよ」
「分かってるよ」
ダグラスからアイスを貰って美味しそうに頬張るノゼルは、詠寿が人間に友好的になるのもなんとなくわかると呟きつつ味を堪能する。
ダグラスはノゼルの発言に心配しつつコーヒーを入れ、琉璃は美味しそうにアイスを頬張っていた。
「手伝いはしなくてもいいの?」
「ーーん? あぁ、いいんだよ。アタシがいたら余計邪魔になるしフリッグは思い通りに進行しないとイライラするタイプだから」
琉璃はノゼルにフリッグの魔法役生成の手伝いをしなくてもいいのか尋ねるとそう答え、海の方を眺めていた。
「そうだ、薬が出来るまでに行っておきたいところがあるんだけど……砕波さん良いかな?」
「……?」
琉璃は何か2日間の時間を潰せるものの提案をしたそうだった、琉璃が提案したのは水族館に行こうというものだった。琉璃が行きたいのは琉璃曰く最後に父たちと一緒に言った水族館らしいので、思い出があるから東の人魚界に行く前に行きたいと言うものらしい。
「そう言うことなら……」
「ありがとう」
これを断るわけにはいかない、しかし場所は憶えているのか尋ねてみると……
「俺が場所知っているから、この住所を辿っていけ。鉄道に行きゃすぐだ。」
そう言ってダグラスはメモ帳を引っ張ってその水族館のある住所と降りる鉄道を書き記し、それを破って琉璃に手渡した。
――そして翌日、久々に琉璃とのデートだった。
今回はダグラスたちはおらず二人っきりでの……。
琉璃も休日だったのが好都合だった、そして住所を辿って父たちと行った思い出の水族館に向かって行く。砕波が鉄道に初めて乗ってそわそわしていた、その様子を隣で見て琉璃はくすくすと笑っていた。
琉璃はずっと窓越しで景色を見ていた、琉璃は「あっ、あの建物古くなっちゃってる」等と呟いている。
「記憶にあるのか……?」
窓から眺める景色に見覚えがあるのか聞くと、琉璃は……
「うん、お父さんたちと一緒に。でも大分景色変わっちゃったな」
自分の目が見えていない間に景色は大分変ってしまっていたが、懐かしく思って外を見てしまうと琉璃は感慨深そうに言う。
そうこうしているうちに、琉璃が行きたがっていた水族館にまで無事辿りつくことが出来た。
「わぁ、あんまり変わってない。なつかしい」
そう言って琉璃は砕波の手を引いて大はしゃぎしている、琉璃の楽しそうな表情を見て砕波もふと笑みがこぼれた。
中に入ると、たくさんの種類の魚が砕波たちを迎えてくれていた。小さい魚や大きな魚、もちろん琉璃の好きな鮫もいた。
ふれあいコーナーもやっていて、琉璃は楽しそうだった。
「ーーおっ、ガラ・ルファだな。東の人魚界の王宮の湯治係の5つ子はガラ・ルファだぜ」
「へぇ~、天職だね」
琉璃は東の人魚界の一部の召使いの魚種を教えられて感嘆の声を上げて、ガラ・ルファの入った水槽に手を突っ込んで水中でひらひらと手を動かすとガラ・ルファは近づいて琉璃の皮膚の古い角膜を食べていく。
しかし見ている分楽しいが歩き疲れた為、水族館にある喫茶店で足を休めていた。
「ーーふふ、久々ではしゃぎ過ぎちゃったな」
二人でコーラ・フロートを頼み、琉璃は一息ついてコーラ・フロートのアイスを頬張る。
「ここのアイス・フロートのアイス、いつもミコトが食べさせてくれたんだよね……」
「……!」
注文したコーラ・フロートを感慨深そうに見つめ、琉璃は思い出話をポロリと口にした。
「……ミコトも、お前に目をくれたデヴィットってやつとここに来たことあったのか?」
「……うん」
琉璃はこの水族館は父たちだけの思い出だけではなく、デヴィット、ミコトを含んだ二人で遊びに行った思い出もあることを話した。目は見えなくて魚の姿も想像するほかなかったが、そのたびにミコトが魚の色はどんな色か教えてくれていたという。
「そうか……。」
「ーー率直に聞くね? 砕波さんは、ミコトの印象良くないでしょう?」
琉璃は、過去の事もあって砕波自身の中ではミコトの印象は悪いのではないかと聞いて来た。
それを聞かれると砕波は複雑そうな表情を浮かべた、ミコトは不良仲間に友人だった琉璃を……。
そう考えると、許せない感情はやはりあるにはあるのだ。でもミコトが嫌いだと言うオーラを出すと、琉璃は悲しそうな表情をするのだ。
「正直言って良くねえよ……。琉璃にあんな目に遭わせやがったあいつを」
ミコトが琉璃に酷いことをしたのは既成事実、あの時早く助けてやれなかった自分も許せないが、琉璃の気持ちを無碍にしたミコトも許せなかった。
「でもね、ミコトは……本当に優しい子だった。でも、ミコトがああなっちゃって目の見えない分ぼくが甘えていたんじゃないかって思ったりするの」
「何でだよ……?」
前々から気付いてはいたが、琉璃は妙にミコトを庇う言動をする。それがなぜなのか砕波にはわからない、何故あそこまでミコトを庇えるのか問いかけてみる。
「ごめんなさい、こんなこと言っても仕方ないよね。でも本当にあのころは3人一緒に居られて楽しかったし……二人とも友達でいてくれた」
「……」
――ポタッ
「でも、どうして……こうなっちゃったんだろう? ミコトもああなっちゃって、デヴィットがああなっちゃって……。ぼくがいない方が、良かったんじゃないかなって思ったりするの」
自分の言動のせいで、ミコトはああなってしまった。自分があの日、デヴィットに連絡しなければデヴィットは生きていられたのではないかと考えが過ってしまうのだった。そう思うと涙が、ぼろぼろと出てきてしまう……。
「どうしてあんな風になっちゃったんだろう……」
ミコトはデヴィットの死を見てショックを受けて責任を感じて少年院に行っても面会謝絶、連絡謝絶するようになってしまった。デヴィットは自分が連絡したことで事故に巻き込まれて命を落としてしまった。
あのころの三人が何故バラバラになってしまったのか。自分が居なければ、ミコトもあんな風にならなかったのではという考えに至ってしまう…。
「――お前のせいじゃねえよ……!」
琉璃は、昔を思い出すと友情に亀裂が入ってしまった事に非常に責任を感じているように思えた。これも全部目の見えなかった自分が悪いのだ、と……。
「ーー泣くなよ琉璃、お前のせいじゃねえって」
「でも、でも……!」
「――いいから泣くなって!」
琉璃は続けたそうにひゃっくりをあげて嗚咽を漏らす、琉璃が泣いていることに気付いた観光客が何事かと琉璃達がいる方向を見ていたが、砕波はなりふり構わず椅子から立って琉璃を胸に抱いた。
「お前は優しすぎるんだよ、誰も目の見えないお前を責めなかったじゃねえか」
琉璃はミコトに怒ってもいい立場なのに、以前まで盲目だったのだから仕方ないのにここまで責任を感じている。
「仮に、デヴィットが死んじまったのもミコトがぐれたのもお前のせいだってダグラスやフリッグや伯父さんはお前を責めたか?」
「……っ」
ダグラスもフリッグも目が見えても見えていなくても琉璃に優しいし、伯父家族も琉璃を大切にしている。それでなければリタを雇うはずがないし、車で送り迎えなんてしてくれるわけがない。デヴィットも琉璃が好きじゃなかったらもし自分の身に何か起こったら琉璃に目を与えたいなんて発言を父親に漏らしたりしないだろう。
――これは砕波にだって分かる。
「それに、俺はお前に救われてここに居るんだ……。もう二度とそんなこと言うんじゃねえ」
初めて会ったあの時、琉璃が見つけてくれなければ自分は脱水症状と足を怪我した状態で干からびていたに違いなかった。琉璃が見つけてくれなければきっと……。
「皆、琉璃が好きだからああやって気にかけてくれるんだろうが……俺だってそうだ。だからもう二度とそんなこと言うんじゃねえ」
「ありがとう、砕波さん……」
砕波は、自分を責めるような言い方はもうしないでほしいと言った。琉璃はずっとひゃっくりをあげたままだったが、すこしずつ落ち着いてきていた。
「ミコトに、会いたいのか……?」
こくん……
こんなことを話すのは、ミコトに会いたいからなのか聞くと琉璃はゆっくりと頷いた。
「でも、面会謝絶にされていて……」
「……俺はあいつの事は許せねえが、お前にとって大事な友達だっていうのは良く分かった。」
自分の中ではミコトは琉璃を傷つけた憎き相手、でも琉璃にとってあんな風に拗れてしまっていたとしても大切な友達に変わりはない、それだけは分かる。
「それで、ミコトについてはどうしたいんだ……?」
「…――。」
琉璃は何かミコトに言いたいのか聞いてみると、琉璃は小声でミコトにしてあげたいことを砕波に告げる。
「――!?」
その言葉に砕波は意外そうな顔をした。
「そこまであいつのこと、捨てきれねえのか」
「……うん」
ミコトに会ったらミコトにしてあげたいこと、琉璃は心の奥でもう決まっていたのだ。
ノゼルはホルガーとさっき会って、悪癖を治すためのこの薬を渡してくれたことを話してくれた。ホルガーは琉璃のために悪癖を治そうと考えていた砕波の思考を見抜いていた証拠だった。
「そうか……」
「ホルガーもメイルたちもやったらしいけど、飲んだ後酷い頭痛症状に悩まされるから覚悟して飲めとさ」
忠告する理由はこの薬を飲んだ時に酷い頭痛症状に苛まれるとは知っていたが、ここまで忠告すると言うことはホルガー達も経験者だからなのだろう。
だが、今はまだ飲まない。
飲む前に、やらなければいけないことがまだ残っているからだ。
「……ありがとう」
「ーーさあて、取り掛かるためにちょっと道具倉庫まで行きましょうかね。二人ともちょっと待っててよ。2日後にはこっちに戻るからそれまでなにかしてなさいよ。ノゼル、冷蔵庫にアイスあるから食べていいよ。」
「あいよー」
ノゼルにお礼を言って、砕波はポケットに治療薬を仕舞った。今度はフリッグが下半身のズボンを素早く脱ぎ捨てて、ここから少し深いところにある隠れ家に行くために薬造りの為に海に飛び込んだのだった。
「出来たらノゼルが迎えに行くから、2日間二人の好きにしていてね」
そう言ってフリッグは海の中へ潜って行った、ノゼルは「アイスアイス」と言いながら体を拭いてダグラスの元に行く。
「おーい、せっかくだしお前達も食っていきなよ」
「アイスか……せっかくだし食いに行こうか」
「――うん!」
琉璃は好物のアイスを貰おうと言う提案に乗って、嬉しそうな表情を浮かべていた。
「人間って食文化広いよねぇ~、詠寿王子が人間たちを高評価するの分かる気がしやすわ」
「現金だな~、人間は悪い奴らもいるから気をつけなさいよ」
「分かってるよ」
ダグラスからアイスを貰って美味しそうに頬張るノゼルは、詠寿が人間に友好的になるのもなんとなくわかると呟きつつ味を堪能する。
ダグラスはノゼルの発言に心配しつつコーヒーを入れ、琉璃は美味しそうにアイスを頬張っていた。
「手伝いはしなくてもいいの?」
「ーーん? あぁ、いいんだよ。アタシがいたら余計邪魔になるしフリッグは思い通りに進行しないとイライラするタイプだから」
琉璃はノゼルにフリッグの魔法役生成の手伝いをしなくてもいいのか尋ねるとそう答え、海の方を眺めていた。
「そうだ、薬が出来るまでに行っておきたいところがあるんだけど……砕波さん良いかな?」
「……?」
琉璃は何か2日間の時間を潰せるものの提案をしたそうだった、琉璃が提案したのは水族館に行こうというものだった。琉璃が行きたいのは琉璃曰く最後に父たちと一緒に言った水族館らしいので、思い出があるから東の人魚界に行く前に行きたいと言うものらしい。
「そう言うことなら……」
「ありがとう」
これを断るわけにはいかない、しかし場所は憶えているのか尋ねてみると……
「俺が場所知っているから、この住所を辿っていけ。鉄道に行きゃすぐだ。」
そう言ってダグラスはメモ帳を引っ張ってその水族館のある住所と降りる鉄道を書き記し、それを破って琉璃に手渡した。
――そして翌日、久々に琉璃とのデートだった。
今回はダグラスたちはおらず二人っきりでの……。
琉璃も休日だったのが好都合だった、そして住所を辿って父たちと行った思い出の水族館に向かって行く。砕波が鉄道に初めて乗ってそわそわしていた、その様子を隣で見て琉璃はくすくすと笑っていた。
琉璃はずっと窓越しで景色を見ていた、琉璃は「あっ、あの建物古くなっちゃってる」等と呟いている。
「記憶にあるのか……?」
窓から眺める景色に見覚えがあるのか聞くと、琉璃は……
「うん、お父さんたちと一緒に。でも大分景色変わっちゃったな」
自分の目が見えていない間に景色は大分変ってしまっていたが、懐かしく思って外を見てしまうと琉璃は感慨深そうに言う。
そうこうしているうちに、琉璃が行きたがっていた水族館にまで無事辿りつくことが出来た。
「わぁ、あんまり変わってない。なつかしい」
そう言って琉璃は砕波の手を引いて大はしゃぎしている、琉璃の楽しそうな表情を見て砕波もふと笑みがこぼれた。
中に入ると、たくさんの種類の魚が砕波たちを迎えてくれていた。小さい魚や大きな魚、もちろん琉璃の好きな鮫もいた。
ふれあいコーナーもやっていて、琉璃は楽しそうだった。
「ーーおっ、ガラ・ルファだな。東の人魚界の王宮の湯治係の5つ子はガラ・ルファだぜ」
「へぇ~、天職だね」
琉璃は東の人魚界の一部の召使いの魚種を教えられて感嘆の声を上げて、ガラ・ルファの入った水槽に手を突っ込んで水中でひらひらと手を動かすとガラ・ルファは近づいて琉璃の皮膚の古い角膜を食べていく。
しかし見ている分楽しいが歩き疲れた為、水族館にある喫茶店で足を休めていた。
「ーーふふ、久々ではしゃぎ過ぎちゃったな」
二人でコーラ・フロートを頼み、琉璃は一息ついてコーラ・フロートのアイスを頬張る。
「ここのアイス・フロートのアイス、いつもミコトが食べさせてくれたんだよね……」
「……!」
注文したコーラ・フロートを感慨深そうに見つめ、琉璃は思い出話をポロリと口にした。
「……ミコトも、お前に目をくれたデヴィットってやつとここに来たことあったのか?」
「……うん」
琉璃はこの水族館は父たちだけの思い出だけではなく、デヴィット、ミコトを含んだ二人で遊びに行った思い出もあることを話した。目は見えなくて魚の姿も想像するほかなかったが、そのたびにミコトが魚の色はどんな色か教えてくれていたという。
「そうか……。」
「ーー率直に聞くね? 砕波さんは、ミコトの印象良くないでしょう?」
琉璃は、過去の事もあって砕波自身の中ではミコトの印象は悪いのではないかと聞いて来た。
それを聞かれると砕波は複雑そうな表情を浮かべた、ミコトは不良仲間に友人だった琉璃を……。
そう考えると、許せない感情はやはりあるにはあるのだ。でもミコトが嫌いだと言うオーラを出すと、琉璃は悲しそうな表情をするのだ。
「正直言って良くねえよ……。琉璃にあんな目に遭わせやがったあいつを」
ミコトが琉璃に酷いことをしたのは既成事実、あの時早く助けてやれなかった自分も許せないが、琉璃の気持ちを無碍にしたミコトも許せなかった。
「でもね、ミコトは……本当に優しい子だった。でも、ミコトがああなっちゃって目の見えない分ぼくが甘えていたんじゃないかって思ったりするの」
「何でだよ……?」
前々から気付いてはいたが、琉璃は妙にミコトを庇う言動をする。それがなぜなのか砕波にはわからない、何故あそこまでミコトを庇えるのか問いかけてみる。
「ごめんなさい、こんなこと言っても仕方ないよね。でも本当にあのころは3人一緒に居られて楽しかったし……二人とも友達でいてくれた」
「……」
――ポタッ
「でも、どうして……こうなっちゃったんだろう? ミコトもああなっちゃって、デヴィットがああなっちゃって……。ぼくがいない方が、良かったんじゃないかなって思ったりするの」
自分の言動のせいで、ミコトはああなってしまった。自分があの日、デヴィットに連絡しなければデヴィットは生きていられたのではないかと考えが過ってしまうのだった。そう思うと涙が、ぼろぼろと出てきてしまう……。
「どうしてあんな風になっちゃったんだろう……」
ミコトはデヴィットの死を見てショックを受けて責任を感じて少年院に行っても面会謝絶、連絡謝絶するようになってしまった。デヴィットは自分が連絡したことで事故に巻き込まれて命を落としてしまった。
あのころの三人が何故バラバラになってしまったのか。自分が居なければ、ミコトもあんな風にならなかったのではという考えに至ってしまう…。
「――お前のせいじゃねえよ……!」
琉璃は、昔を思い出すと友情に亀裂が入ってしまった事に非常に責任を感じているように思えた。これも全部目の見えなかった自分が悪いのだ、と……。
「ーー泣くなよ琉璃、お前のせいじゃねえって」
「でも、でも……!」
「――いいから泣くなって!」
琉璃は続けたそうにひゃっくりをあげて嗚咽を漏らす、琉璃が泣いていることに気付いた観光客が何事かと琉璃達がいる方向を見ていたが、砕波はなりふり構わず椅子から立って琉璃を胸に抱いた。
「お前は優しすぎるんだよ、誰も目の見えないお前を責めなかったじゃねえか」
琉璃はミコトに怒ってもいい立場なのに、以前まで盲目だったのだから仕方ないのにここまで責任を感じている。
「仮に、デヴィットが死んじまったのもミコトがぐれたのもお前のせいだってダグラスやフリッグや伯父さんはお前を責めたか?」
「……っ」
ダグラスもフリッグも目が見えても見えていなくても琉璃に優しいし、伯父家族も琉璃を大切にしている。それでなければリタを雇うはずがないし、車で送り迎えなんてしてくれるわけがない。デヴィットも琉璃が好きじゃなかったらもし自分の身に何か起こったら琉璃に目を与えたいなんて発言を父親に漏らしたりしないだろう。
――これは砕波にだって分かる。
「それに、俺はお前に救われてここに居るんだ……。もう二度とそんなこと言うんじゃねえ」
初めて会ったあの時、琉璃が見つけてくれなければ自分は脱水症状と足を怪我した状態で干からびていたに違いなかった。琉璃が見つけてくれなければきっと……。
「皆、琉璃が好きだからああやって気にかけてくれるんだろうが……俺だってそうだ。だからもう二度とそんなこと言うんじゃねえ」
「ありがとう、砕波さん……」
砕波は、自分を責めるような言い方はもうしないでほしいと言った。琉璃はずっとひゃっくりをあげたままだったが、すこしずつ落ち着いてきていた。
「ミコトに、会いたいのか……?」
こくん……
こんなことを話すのは、ミコトに会いたいからなのか聞くと琉璃はゆっくりと頷いた。
「でも、面会謝絶にされていて……」
「……俺はあいつの事は許せねえが、お前にとって大事な友達だっていうのは良く分かった。」
自分の中ではミコトは琉璃を傷つけた憎き相手、でも琉璃にとってあんな風に拗れてしまっていたとしても大切な友達に変わりはない、それだけは分かる。
「それで、ミコトについてはどうしたいんだ……?」
「…――。」
琉璃は何かミコトに言いたいのか聞いてみると、琉璃は小声でミコトにしてあげたいことを砕波に告げる。
「――!?」
その言葉に砕波は意外そうな顔をした。
「そこまであいつのこと、捨てきれねえのか」
「……うん」
ミコトに会ったらミコトにしてあげたいこと、琉璃は心の奥でもう決まっていたのだ。
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