妻を殺すのが一番難しい

僕の妻は魔王や勇者、独裁者や大統領、軍人や警察官、海賊王やサイヤ人なんかじゃない。
無敵どころか弱々で、権力なんて手にしたこともない。
そんな「あーさん」と生きていく日々。思い出は増えてくけど、その分思い出せないことも増えていく。
子供がいない僕たち。僕があーさんとの思い出を忘れていってしまうということはどういうことだろう。
僕があーさんを緩やかに殺しているとは言えないだろうか。
こんなに愉快でふてぶてしく愛らしくも馬鹿馬鹿しくて痛ましいながら痛快な僕らの日々。
あーさんか世界かどちらか1つしか救えないとなったら。神様。そんな選択は僕にだけは突き付けないでください。
そんなの選択じゃなくて一択だ。あーさんこそが僕の世界。
僕にとって一番難しいことは、きっと妻を殺してしまうこと。
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