おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち

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第三章

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 朝食を終えた後、グラハム以外の五人で片付けまで済ませると、ミルカはにこやかな雰囲気を途切れさせた。

「フィーネと二人だけにしてくれるかしら。少しお話しておきたいことがあるの」

 ミルカにそう言われると三人は恭しく一礼し部屋を出て行った。私は何を言われるのか少しだけ緊張しながらミルカと向き合うと、そこには何故か少しニヤニヤした顔と鉢合わせる。

「フィーネのハートはとってもすてきな人ね」

 これはアレだ。恋バナ大好き女子の顔だ。無駄に緊張して損した気分になりつつ、ミルカ特有の妙な呼び方について聞いてみる。

「はぁと?」

 ハートはハートだと思うけれど、それが何を指すのかイマイチ分からない。いわゆるダーリンとかそういう感じの意味合いで使っているのかなと思ったのだけど、ミルカはじっと私を探るような目で見つめて「まだ何も知らないのね」と言った。

「彼はあなたのハート、命そのものなの」

 曖昧な、それでもどこか決定的な言葉にどう反応したらいいのか迷っていると、ミルカは自分の胸に手を当てる。

「彼らがアタシたちに命をくれたのよ」

 本気で意味がわからない。戸惑っていると、ミルカは私の手を取り(動揺しているのが手のひら越しに分かる)小さな胸にそっと押し当てた。

「ここで動いているでしょ。これは彼のものだったの」

 ハート、心臓。これがグラハムのものだったとは、どういう意味なんだろう。まさか本当にそのままの意味だとしたら、ここが異世界だとしてもどう捉えていいのか、さっぱり分からない。大人と子供では心臓の大きさは違うだろうし……いやそんなことは問題じゃない。そもそも心臓を人に渡すということは持ち主の死を意味する。

「彼を心配しているの? 大丈夫、これは契約なのよ」
「けぇや、く」
「そう……契約。アタシとディノは二人で一人なの。アタシが生きている限り、ディノは死なない。彼の命はここにあるから」

 ミルカのどこか遠くへ向ける眼差しは、誇らしくもあり少し悲しげだった。小さく息を吐くと、ミルカに愛らしい笑顔が戻る。

「フィーネのハートは優しい人ね」

 私はグラハムのことをまだ何も知らない。けれど、どうしてかミルカの言葉に全力で頷いていた。

 少し長くなるから座りましょう。そう前置きされたので、クッションを床に敷き、二人で簡易ソファーのようなものを作って、肩を寄せ合い座った。ミルカが私の手を握るので、ぎゅっと握り返すとくすぐったそうに笑ってくれる。

「フィーネは生まれた時を覚えている?」

 生まれた時、私が意識を取り戻した日のこと……ではないと思い、首を左右に振る。

「アタシたちは世界そのものが産み落とす子供ならしいの。だから、お父さんもお母さんもいないのよ」

 いきなり異世界ハードル高い。根本的に違う気はするけど、錬金術とかの漫画にあるホムンクルスとかそういう感じなのかなと無理やり納得しておく。

「生まれてくる時に力の源である石を握っているの。それは世界との繋がりを強くしてくれるのよ。でも生まれたばかりの時は封印されてるの。悪いことを考える人に持っていかれたら困るでしょう。だから、ちゃんとハートとの契約を結ばれた後で、先代が封印を解いてお役目を引き継ぐらしいの」

 何故かミルカの表情から疑問符がいっぱい読み取れてしまう。もしかして、ミルカもちゃんと理解していないのでは? と思い、穴を開けるつもりで、ミルカの頬の辺りを凝視する。

「うっ、視線が痛いわ。ちょっとふわっとしてるけど、嘘じゃないのよ。ちゃんと始祖様のお手紙に書いてあったんだから」

 そもそも始祖様とは誰なのか、問い詰めたい気持ちがミルカに無言の圧力をかけてしまう。

「お手紙はむずかしい文字が多くて一人じゃ読めなかったけど、セバスちゃんに読んで教えてもらったから大丈夫なのよ」

 目に見えてしょげてしまったので、首肯でフォローしておく。力のある石の封印を解くため、ミルカは一人で私を訪ねてくれたらしいことは理解できた。そもそも、私には生まれた時の記憶がないので、自分が石を持っていたかは正直分からないが、恐らくグラハムが管理してくれているに違いない……と思いたい。
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