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第三章
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「おー、にゃく、めぇ?」
色々なことを棚上げにして、一番気になる部分を私は必死に口にする。石やら封印の方はグラハムが噛んでいそうなのでいいとして、それらに付随する『お役目』とやらがなんなのか。私は気になりミルカに尋ねた。
「青の番人は新しく生まれた者が担当することになっているの。今まではアタシだったけど、フィーネが生まれたから次はフィーネになるのよ。石の力を解放すると、同時に引き継がれるようになってるの……た、たぶん」
ミルカの言葉はどれも頼りなくて、小さな子供と話している気分になる。でも、まあ、その通りかと現状を認識すると、少しだけ肩の力が抜ける。
本来なら守護者という名の保護者が同伴して、正式に仕事の引き継ぎをするのだろう。けれど守護者が役目を放棄したせいで、よく分かっていないミルカが一人でやってきた、こんなところかなと思う。
「お役目がなんなのかは分からない。手紙によれば新しい世界への道を探さないといけないらしいんだけど、アタシは力が弱くて世界に溢れてる神様の意思を読み取れないの」
神様の意思なんてどうやって読み取れと言うのか。そもそも力という言葉が何を指しているのかさえ、私には判断がつかない。
「だからアタシはこの三十年間、何もできなかった」
けれどただ一つ、聞き捨てならない言葉には即座に反応を返した。
「さん、じゅう?」
私の驚きにミルカは首を傾げて見せた。こちらを見つめ返す瞳はキラキラした幼子の愛らしさをこれでもかと体現している。頭の先からつま先まで、どこを取っても紛れもなく完全無欠の幼女だ。
「ちったぃ」
どう考えても小さい。成長期が遅れてるとかそういう次元でなく、とにかく小さい。ミルカ本人の個性か、青い髪青い目を持つ種族の特徴か、どちらなのか確認せずにはいられなかった。
必死であやしい言葉を重ねてなんとか尋ねると、ミルカは少し頬を膨らませて拗ねたような態度を見せた。
「成長してないなんて失礼ね。ちゃんと大きくなってるわよ。アタシだって十年前にはフィーネくらいの大きさだったんだから! 見てごらんなさい、ほらアタシの方が大きいでしょ」
私の手を取り、その場で立ち上がったミルカは、頭のてっぺんに手のひらを置き、私の方へとすっと移動させ、身長差を確認して『控えめ』という言葉さえ霞む小さな胸を張った。
「ちったぃッ!」
十年前って言うと二十歳⁈ 二十年先までこのサイズなの⁈ 絶望に思わず叫ぶと、ミルカは困った顔をして「じゃあフィーネの言う大きいってどれくらいなのよ」と聞いてきた。
「んん…………もも!」
こちらの世界で知る唯一の成人女性の名前を叫ぶと、ミルカはやれやれと言いたそうな表情で首を左右に振った。
「モモくらい大きくなるには百年はかかるわよ。アタシたちは人間とは違うんだから当たり前でしょ」
ひゃ、ひゃくねん‼︎‼︎‼︎ あまりの衝撃にボンと頭の中で煩悩と呼ぶべき何かが爆発する。前世で燃え残った欲望という名の希望が一瞬で灰になった気がした。
崩れ落ちる様にクッションに倒れ込むと、ミルカが心配そうに寄り添ってくれる。
色々なことを棚上げにして、一番気になる部分を私は必死に口にする。石やら封印の方はグラハムが噛んでいそうなのでいいとして、それらに付随する『お役目』とやらがなんなのか。私は気になりミルカに尋ねた。
「青の番人は新しく生まれた者が担当することになっているの。今まではアタシだったけど、フィーネが生まれたから次はフィーネになるのよ。石の力を解放すると、同時に引き継がれるようになってるの……た、たぶん」
ミルカの言葉はどれも頼りなくて、小さな子供と話している気分になる。でも、まあ、その通りかと現状を認識すると、少しだけ肩の力が抜ける。
本来なら守護者という名の保護者が同伴して、正式に仕事の引き継ぎをするのだろう。けれど守護者が役目を放棄したせいで、よく分かっていないミルカが一人でやってきた、こんなところかなと思う。
「お役目がなんなのかは分からない。手紙によれば新しい世界への道を探さないといけないらしいんだけど、アタシは力が弱くて世界に溢れてる神様の意思を読み取れないの」
神様の意思なんてどうやって読み取れと言うのか。そもそも力という言葉が何を指しているのかさえ、私には判断がつかない。
「だからアタシはこの三十年間、何もできなかった」
けれどただ一つ、聞き捨てならない言葉には即座に反応を返した。
「さん、じゅう?」
私の驚きにミルカは首を傾げて見せた。こちらを見つめ返す瞳はキラキラした幼子の愛らしさをこれでもかと体現している。頭の先からつま先まで、どこを取っても紛れもなく完全無欠の幼女だ。
「ちったぃ」
どう考えても小さい。成長期が遅れてるとかそういう次元でなく、とにかく小さい。ミルカ本人の個性か、青い髪青い目を持つ種族の特徴か、どちらなのか確認せずにはいられなかった。
必死であやしい言葉を重ねてなんとか尋ねると、ミルカは少し頬を膨らませて拗ねたような態度を見せた。
「成長してないなんて失礼ね。ちゃんと大きくなってるわよ。アタシだって十年前にはフィーネくらいの大きさだったんだから! 見てごらんなさい、ほらアタシの方が大きいでしょ」
私の手を取り、その場で立ち上がったミルカは、頭のてっぺんに手のひらを置き、私の方へとすっと移動させ、身長差を確認して『控えめ』という言葉さえ霞む小さな胸を張った。
「ちったぃッ!」
十年前って言うと二十歳⁈ 二十年先までこのサイズなの⁈ 絶望に思わず叫ぶと、ミルカは困った顔をして「じゃあフィーネの言う大きいってどれくらいなのよ」と聞いてきた。
「んん…………もも!」
こちらの世界で知る唯一の成人女性の名前を叫ぶと、ミルカはやれやれと言いたそうな表情で首を左右に振った。
「モモくらい大きくなるには百年はかかるわよ。アタシたちは人間とは違うんだから当たり前でしょ」
ひゃ、ひゃくねん‼︎‼︎‼︎ あまりの衝撃にボンと頭の中で煩悩と呼ぶべき何かが爆発する。前世で燃え残った欲望という名の希望が一瞬で灰になった気がした。
崩れ落ちる様にクッションに倒れ込むと、ミルカが心配そうに寄り添ってくれる。
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