おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち

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第四章

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「僕を殺す気か?」

 咳がおさまらずその場に蹲るグラハムは、愉快そうに笑うアルにもっともな苦情を言う。主にやりすぎた私が「ごぇん」と謝ると、アルは呆れたような声で「謝る必要はない」と鼻を鳴らした。

「普通に起こそうとして何度氷漬けにされたことか。その挙句、何故起こさないと理不尽な要求をしやがるからこうなったんだ」

 なかなか乱暴ではあるけれど、理由があるなら仕方ない。
 アルの腕の中から改めてグラハムに朝の挨拶をすると、ようやく私に気付いたらしく、蹲りながらも顔を上げてくれる。

「フィーネ様もご一緒でしたか。お見苦しいところをお見せしました」

 咳がおさまると、グラハムは何事もなかったように立ち上がり、空気を切るように腕を真横に振り切った。すると、辺り一面に広がっていた氷が一瞬で粉々に砕け、白い煙だけを残し消えてしまう。そして煙が消えると見慣れた真っ黒な服を着たグラハムが手品のように現れた。

「お待たせ致しました。では、参りましょう」

 マジシャンのように一礼し歩き出したグラハムに、アルはため息をつきながら「鏡を見ろ」と短く指摘した。手品か魔法か分からないが、それでは直らなかった全力の寝癖を確認するようにグラハムは自分の頭を撫で回す。

「今日は集落をまわるんだろ。ちゃんと見られる格好をしていけ、領主様」

 アルに苦笑されるとグラハムは「すいません、少し時間を下さい」と一言断り、湧水のところでスタイリングを始めたようだった。やれやれと言いたげに肩をすくめたアルは「外で待とう」と私を抱えたまま歩き出す。

「りょぉちゅ」

 私のあやしい鸚鵡返しにアルは小さく頷いてくれる。

「今日は領地内の集落に張ってある瘴気避けの結界を張り直しに行くんだ」
「しゅぅ?」
「集落の数は十、そこに住んでる奴らも一番多いところで百より少し多いぐらいの規模だ」

 初めての異世界散策。こちらの世界の集落を訪ねられるのだと思うと、思わず小さく声が出てしまった。どんな人たちがいるんだろうと期待が膨らむ。

「そんな大した奴らはいないぞ、なんせここは最下層だからな」

 私の興奮を宥めるようにアルは困ったような顔を見せる。

「ここは地上にもっとも近い土地。上には居場所のない力の弱い奴らばかりが集まってくる」
「よぁい?」
「まあ、だから危険も少ないと言えるが……今は瘴気のせいで何が起こるか分からない」

 アルはそう言うと少し真剣な雰囲気を滲ませ、ボールのように跳ねるぽちゃに向かって「しっかり守れよ」と激励を送った。

 グラハムの仕度が整うまでの時間、アルは廊下に古い地図を広げて大雑把に領地内の配置を教えてくれた。昔は栄えていたらしく、地図の色々な所に真新しいバツ印がたくさん書き足されている。

「この土地は昔から元人間が治めている場所でな、100年ほど前までは普通に人間が滞在する町もあったくらい下界に似ていたらしい」

 グラハムの前任者は有能だったのか、描かれている町々はどれも大きくて美しい。きっとそれらの町を束ねるこのお城もちゃんと機能していたに違いないと思わせた。
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