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第四章
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「あれ? 体が……軽い!」
ボヨンボヨンの体型が固太りのレスラーのように絞られ、本人からも驚きの声が聞こえた。他力で見事ダイエットに成功した村長さんはクワッと目を見開き、えいやっとその場で宙返りをして見せる。
「ちゃーん!」
村長さんがシュタッと再び地面に着地した時、たぬコスの耳と尻尾は消え、身軽だけど見た目は普通なおっちゃんが目の前に現れ、つい心のまま叫んでしまった。
「いやぁ、それほどでもありやせん」
私の歓声に照れるおっちゃんは、また猫背になってしまっていたが、少し真面目な顔をグラハムに向ける。
「あのぉ、こちらのお嬢さんはいったい……?」
おっちゃんの疑問にグラハムは表情一つ変えず、私を簡単に紹介した。
「青の番人であるフィーネ様です」
「青の……と言うことは、領主様が守護者になられたというのは本当だったんですね」
一般的に青色は有名らしいことが、おっちゃんの言葉のニュアンスで伝わってくる。けれど、青色が歓迎されているふうでは決してなく、表情は胸中を表すように複雑だと書いてあった。グラハムが沈黙で返事をすると、おっちゃんは慌てて「出過ぎた言葉でした、どうかお許しを」と器用に一瞬で正座し額を地面に擦り付けた。
「結界の補強に来ました。基点の呪符を」
土下座を完全スルーして、グラハムは要件を簡潔に伝える。するとおっちゃんは懐から一枚のお札のような物を取り出しグラハムに手渡した。お札がグラハムの手の中で青い炎のようになり、燃えたのか溶けたのか定かでない消え方をすると、地面に手のひらほどの正方形の石板が現れていた。石板の表面には不思議な模様が彫り込まれており、センスの良い人が使えばオシャレな鍋敷きにもなりそう。
「……以前より脆くなっている」
跪き石板に手を置くと、グラハムは小さな声で呟く。表情や声に変化はないが、言葉から結界が良い状態でないのは分かった。呪文とか肉眼で分かる光みたいな力の動きはないんだけど、グラハムが力……魔力って言えばいいのかな、結界を保つためのガソリンのような物を石板に送り込んだのが不思議と分かった。
「今から全ての基点を回りますので、少しお時間を頂きます。フィーネ様がお休み出来そうな場所はありませんか?」
グラハムが私を置いて一人で仕事をしようとしているのを察し、私は石板を指差して無理やりにでも絡んでいく。
「こぇ、いっぱぁ、あぅ?」
同じ物がたくさんあるのか問いかけると、おっちゃんがしゃがみ込んで答えてくれる。
「集落をぐるっと一周する場所に一定の間隔をあけて残り三十五か所、ですかね確か。同じ物がございますよ」
私はグラハムがしたのと同じように石板の上に手のひらを置いてみた。そして妖精さんにグラハムの真似ができるか聞いてみる。すると、私の手の甲に無数の小さな光が集まり、ちょっと他の子とは同じように見られなくなってしまったぽちゃが、服の中に隠した首飾りをしきりに叩いた。
ボヨンボヨンの体型が固太りのレスラーのように絞られ、本人からも驚きの声が聞こえた。他力で見事ダイエットに成功した村長さんはクワッと目を見開き、えいやっとその場で宙返りをして見せる。
「ちゃーん!」
村長さんがシュタッと再び地面に着地した時、たぬコスの耳と尻尾は消え、身軽だけど見た目は普通なおっちゃんが目の前に現れ、つい心のまま叫んでしまった。
「いやぁ、それほどでもありやせん」
私の歓声に照れるおっちゃんは、また猫背になってしまっていたが、少し真面目な顔をグラハムに向ける。
「あのぉ、こちらのお嬢さんはいったい……?」
おっちゃんの疑問にグラハムは表情一つ変えず、私を簡単に紹介した。
「青の番人であるフィーネ様です」
「青の……と言うことは、領主様が守護者になられたというのは本当だったんですね」
一般的に青色は有名らしいことが、おっちゃんの言葉のニュアンスで伝わってくる。けれど、青色が歓迎されているふうでは決してなく、表情は胸中を表すように複雑だと書いてあった。グラハムが沈黙で返事をすると、おっちゃんは慌てて「出過ぎた言葉でした、どうかお許しを」と器用に一瞬で正座し額を地面に擦り付けた。
「結界の補強に来ました。基点の呪符を」
土下座を完全スルーして、グラハムは要件を簡潔に伝える。するとおっちゃんは懐から一枚のお札のような物を取り出しグラハムに手渡した。お札がグラハムの手の中で青い炎のようになり、燃えたのか溶けたのか定かでない消え方をすると、地面に手のひらほどの正方形の石板が現れていた。石板の表面には不思議な模様が彫り込まれており、センスの良い人が使えばオシャレな鍋敷きにもなりそう。
「……以前より脆くなっている」
跪き石板に手を置くと、グラハムは小さな声で呟く。表情や声に変化はないが、言葉から結界が良い状態でないのは分かった。呪文とか肉眼で分かる光みたいな力の動きはないんだけど、グラハムが力……魔力って言えばいいのかな、結界を保つためのガソリンのような物を石板に送り込んだのが不思議と分かった。
「今から全ての基点を回りますので、少しお時間を頂きます。フィーネ様がお休み出来そうな場所はありませんか?」
グラハムが私を置いて一人で仕事をしようとしているのを察し、私は石板を指差して無理やりにでも絡んでいく。
「こぇ、いっぱぁ、あぅ?」
同じ物がたくさんあるのか問いかけると、おっちゃんがしゃがみ込んで答えてくれる。
「集落をぐるっと一周する場所に一定の間隔をあけて残り三十五か所、ですかね確か。同じ物がございますよ」
私はグラハムがしたのと同じように石板の上に手のひらを置いてみた。そして妖精さんにグラハムの真似ができるか聞いてみる。すると、私の手の甲に無数の小さな光が集まり、ちょっと他の子とは同じように見られなくなってしまったぽちゃが、服の中に隠した首飾りをしきりに叩いた。
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