おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち

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第五章

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「ぅえっ」

 覚悟して舐めたのに思わず声が出てしまうくらい苦い。モモが飲み物の入ったコップを手渡してくれたので、残っていた分をグビグビやって洗い流す。

 私の味覚では、しょっぱいを通り越して苦かったコリンの実をモモは追加でもう一つ取り出し、野菜を切り終えたまな板の上で包丁の面の部分を使って押し潰した。梅干しのように中から種を取り出して、実を丁寧にみじん切りにしていく。

「油で炒めると味が変わるんです」

 使い込まれた鍋にオイルを多めに垂らしコリンを入れる。かまどに置かれていた薬缶を移動させ、鍋を置いてしばらくすると小さく油の爆ぜる音と一緒に香ばしい匂いが漂ってきた。

 モモは一口サイズのパンで鍋底を少し撫で、ほんのり油の染みたパンを手渡してくれる。鼻を近づけるとオリーブオイルに似た匂いの中に混じる記憶を刺激する何かがあった。一口でパンを頬張り、それが何か一瞬で思い出す。油に混ざったコリンは、ベーコンの味によく似ていた。

 ベジタリアンな食卓でも満足感がある理由を察した私は、大人しく自分の部屋へ戻った。あまり意識していなかったけれど、肉の味は覚えているんだなと自覚すると、あれこれと記憶が蘇ってきそうで、意識を逸せるために外で使用した椅子と机の足を一生懸命に掃除した。

 帰宅後、姿を見なかったアルには声をかけられなかったので、夕食に参加してくれるか分からなかったけれど、グラハムが気を利かせてくれたのか、全員揃って食卓についた。

 ポトフだけでなくサラダやフルーツまで用意された今日の夕食は、質素だけどご馳走に見えた。普段と違う訳じゃないのにそう感じるのは、結界補修という一仕事を終えた後だからかもしれない。適度な労働や運動はごはんを美味しくする、それは異世界でも変わらないみたいだった。

「特に珍しい物はなかっただろうが、集落はどうだった?」

 誰もが自分の前の皿だけに集中している食卓で、突然デフォルメになりつつあった沈黙をアルが破ってくれた。ばっと顔を上げると、先ほどの質問は私に向けられていたらしく、しっかりアルと目が合う。

「るぅ、たぬぅ、ちゃん、ぃた」

 話しかけてくれたことが嬉しくて、つい勢いよく(何も考えず)喋ってしまう。言った後で伝わらないだろうと反省しそうになったけれど、アルは「そうか、狸の旦那と会ったのか」とナチュラルに理解してくれて感動する。

「ひゅい、いしょ、ぃた」

 ヒュイも一緒に手伝ってくれたと補足すると、何故かアルは怪訝な顔を見せた。
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