モブでヘタレな俺だけど、異世界に召喚されたらキラキラ王子に溺愛されて困ってます。

古紫汐桜

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恐ろしい真実

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シルヴァはそう話すとゆっくりと俺の手を握り
「多朗……。だから君が完全に水の神になった事を、他の人達に知られてはならないんだ。今なら、まだ中和されている事を知られていない。だから……」
そう言いかけた時だった。
「どうやら、あちら様がご満足なされてようだ」
シルヴァが苦笑いを浮かべて歩き出した。
今の俺達の姿が光の元に行くと、俺(の器)がシルヴァ(の器)に跨って絶頂を迎える所だった。
「多朗、僕もあれをして欲しいな」
「あぁ!あんなん出来るか!」
そう叫んだ瞬間、下の世界の俺の器が
「アァ!イク……っ」
と感極まった声を上げた。
その時、身体が物凄い勢いで水底から浮上していく。
シルヴァと繋いでいた手はいつの間にか離れ、眩しい光に包まれた。
眩しさに慣れて目を開けると、元の器では無い場所に俺は立っていた。
色とりどるの草花に囲まれた場所に立っていて、目の前に青い竜が現れた。
『勇者、多朗よ。我が名はディラン。水の神である』
デカイ竜に圧倒されていると
『長らく器を借りてすまなかった。おそらく戻った時には、元気な身体になっているであろう』
と言われ、わざわざお礼を言いに来たのかと驚いていると
『勇者多朗。お前にお願いがあるのだ』
そう言われて、思わず竜神を見上げる。
「お願い?」
『そうだ。今、この世界は危機的状況にある。シルヴァの中に居る火の神のエイダンは、予知能力を持っている。おそらくシルヴァは、この世界の未来が見えておるのであろう』
「未来が?でも、俺が居れば大丈夫だって……」
『お前は魔石の存在を聞いているか?』
そう聞かれて頷くと
『今までは王家が魔石を悪用されぬよう、大切に保管してきたのだ。しかし、16年。魔石が何者かに盗まれたのだ』
と呟いた。
『その時、魔石を守ろうとした当時水の神を宿していたシルヴァの祖父にあたるリアムが殺されたのだ。リアムは魔石に自分の魔力を吸い取られる前に、異世界で生まれた少年に私を転生させたのだ。それがお前だ、多朗』
竜神の話に頭が真っ白になった。
『この世界に転生させると、赤子のうちに私の魂を魔石に吸い取らせて、我が力を私利私欲に使われてしまうからな。だが、それにより長い事水不足にさせてしまった』
竜神は悲そうに呟いた。
『多朗、そなたはシルヴァと交わった事により、神の力が使えるようになった。だから、この村に井戸を作って欲しい』
「井戸を?」
『そうだ。お前はこの後、元の世界に帰る事になるであろう。そうなると、又、しばらく水不足になってしまう。王都から一番遠く、王家の力が及び難いこの村を救っておくれ』
「待ってくれ!俺が元の世界に戻るって……、どういう事だよ。それはシルヴァと別れるって事なのかよ!」
竜神にそう叫ぶと、竜神は遠くを見つめ
『お前達の思いが本物ならば、奇跡を起こすであろう。多朗、井戸を作ってくれ。頼んだぞ』
と、言いたいことだけを言って、竜神が一声吠えると俺の足元に穴が空いて暗闇に吸い込まれて行く。
「待ってくれ!俺の質問に答えてくれ!!」
必死に手を伸ばして叫ぶと、温かい手に握り返されて目を開けた。
「多朗!」
心配そうに俺を見つめるサファイアの瞳に、俺はホッと息を吐いた。
「多朗、中々戻らないから心配したよ」
身体を抱き締められて、俺はシルヴァの背中に手を回した。
「竜神に会っていたんだよ」
「竜神って、水の神様?」
「うん。井戸を作って欲しいって言われた」
「井戸を?」
そうシルヴァに言われて、俺は飛び起きる。
何か大事な話を聞いていた筈なのに、井戸を作って欲しいという話以外を思い出せない。
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