【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

思考機械

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101話「第二階層」(視点・ヒロヤ→マルティナ→レナ)

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「洞窟状のダンジョン──だね……」

 第一階層のロビーから第二階層に先頭で降り立ったマルティナが呟いた。

「正面と左手に洞窟が続いてる。以前のダンジョンとここは構造が一緒だよ?」
「だとすると、次の階層へ向かうには……左だったよな?」

 地図が頭に入ってるマルティナと、以前のダンジョンを知っているリズが左へと歩き出す。
 通路とはいえ、かなり大きい。俺達四人が並んでも余裕のある幅で、高さも3m程ある。

「マルティナ、探知よろしくな。ここまで以前のまんまだと、トラップりの仕掛けを増やしてそうで怖い」
「わかった」

 以前のダンジョンの三階層までは潜った経験があるリズと、地図が頭に入ってて罠やモンスターの探知に長けたマルティナが前を歩き、半歩ほど後ろに俺が続く。その後ろにカズミを両サイドで守る形でアルダとドロシーが続き、レナを守る形でエルダとメルダが続く。

「もうじき一つ目のホールだね」
「……モンスター居るよ。大きいの」

 進もうとするリズをマルティナが制す。

「うん。三体居るね。オーガーか……トロールか……」

 レナの『探知ディテクション』にも引っ掛かったようだ。

「あたしが斥候してくる。トロールだったら事前対策必要だもんね」
「マルティナ、気を付けてね」

 そう言う俺にニコッと微笑み返し、マルティナは静かに先行した。



「大きなホールにトロールが三体。武器は棍棒持ってた」

 ホールを覗いてすぐに帰ってきたマルティナが報告する。

「厄介だね……炎の『魔力付与エンチャント』が必要か」
「れなとカズミ二人じゃ……全員の武器への付与はキツいわよね」
「アタイは対トロール戦想定して、炎の『魔力付与エンチャント』をカズミに教えてもらったから」

 そういや、もともとリズは無属性の『魔力付与エンチャント』は使えたんだっけな。

「わたしも使えます」

 とドロシー。

「なら何とかなりそうね。レナはアルダ達三人に付与お願い。私はヒロヤとマルティナに」

 カズミとレナが魔術を行使する。

「「魔力付与エンチャント」」



「じゃあ、ヒロヤとドロシー、マルティナがそれぞれ一体相手よろしく。レナはドロシー、カズミはマルティナを後方から魔術で援護。アルダ達はレナとカズミを守る事」
「俺がなるべく早く倒す。すぐに他の二人をカバーするから」

 少し不安そうなマルティナとドロシーに声を掛ける。二人は力強く頷いてくれた。

「二人とも回避最優先だからね。隙を見つけて攻撃すること。絶対まともに遣り合っちゃだめだ」

 リズが二人に言い含める。

「俺が真っ先に出る。三体とも注意を引き付けるから、そこで全員突入してくれ」

 俺は『闇斬丸』の鯉口を切る。

身体強化フィジカルブースト

 そしてホールに向かって駆け出した。
 飛び込んだ俺に、こちらを向いたトロール三体が棍棒を振りかぶって攻撃してきた。

(真ん中!る!)

 加速して真ん中のトロールの懐に飛び込む。

「「炎の矢ファイアーアロー!」」

 恐らくは左右のトロールに向かって、カズミとレナから魔術が放たれたのだろう。トロール達がそちらに気を取られる。
 俺は振り下ろされる棍棒を超速で躱し、そのまま抜き放った『闇斬丸』で腕を斬り落とす。

──ゴオッ!

 尾を引く炎が刃の軌跡を描く。

「ハアッ!」

 返す刀で、トロールの左脚に斬りつける。弧を描いた炎がトロールの膝を切り裂く。
 脇を駆け抜けて『闇斬丸』を納刀し、再度トロールに向き直ろうとした時、視界の左端にもう一体のトロールが棍棒を叩きつけて来るのが見えた。

(受け流せるか……!)

 後方に飛び退すさり、襲い来る棍棒に対して、遠心力を加えて抜き放った『闇斬丸』を叩きつける。

(クッ!流石に力負けするっ!)

 何とか弾き返したが、そのままバランスを崩す俺。
 ただ、バランスを崩したのはもう一体のトロールも同じで、棍棒を跳ね上げられて大きく体を開いた。

「もらいました!」

 そこへ、ドロシーがエストックを腰だめに構えて突っ込んでいった。
 炎を上げるエストックを構えて突き進むドロシーはさながら『炎の槍』が如く。
 その突き上げた一撃が脇腹から反対の肩口へと貫通する。
 その隙に何とか体勢を整え、ドロシーの一撃を受けて倒れつつあるトロールの首めがけて、俺は身体を限界までねじりこんだ強烈な一閃を叩き込む。

(完璧に力が乗った!)

 首を落とされ、

──どう!

 と倒れるトロール。『闇斬丸』を納刀し、最初のトロールに目をやると、カズミの『炎の柱ファイアーピラーズ』なのか、地面から立ち昇る三本の炎に包まれていた。

(あとは……マルティナ!)

 ホールの端っこで、トロールの攻撃を機敏な動きで躱し続けるマルティナの姿が見えた。
 そのトロールの身体も、あちこちから炎が揺らめいている。レナやカズミ、リズの攻撃が効いているようだ。
 俺とドロシーは一瞬だけ目を合わせて、マルティナを援護すべく走り出した。
  迫る俺達に、顔を向けるトロール。そこに隙が生まれた。

「ハァァァァァッ!」

 マルティナがトロールの向う脛にショートソードとマン・ゴーシュの連撃を叩き込む。
 リズの矢もトロールの額を見事に捉える。

炎球ファイヤーボール!」

 とても初級魔術とは思えない大きさと勢いのカズミの魔術がトロールへと飛翔し、頭部を吹き飛ばした。……すげえな、スイカ位はあったんじゃないか……



「凄い……」
「エルダ達、出る幕なかった……」
「メルダ……おしっこ漏れるかと思ったよ……」

 流石にトロール相手は怖かったのか、それでもレナとカズミの前に立ち、そのまま立ち尽くす三姉妹。

「みんな怪我はないか?ヒロヤはちょっとヤバかったみたいだけど」

 リズが心配そうに聞く。

「いや、バランスを崩しただけだよ。大丈夫」

 俺の言葉に、ホッとした表情を浮かべるリズ。

「よし、まずは装備の確認を。武器にダメージはないかい?矢の残り本数や魔力量にも注意するんだよ」

 うん。みんな問題ない様子。
「じゃあ、先に進もうか。陣形フォーメーションはさっきと同じだからね」

 リズがマルティナと並んで歩き出した。俺も続く。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「まって……」

 ホールから続く通路を少し歩き出した所であたしは足を止めて隣のリズ姉ちゃんを制する。

「罠がある──みんなはここで待ってて」

 そう言ってゆっくりと数歩進み、しゃがみ込んで地面を調べた。



(起動装置が隠されてる。どういう罠なんだろう……)

「どういう罠かわからない。でも起動装置があるから解除するね……少し離れてて」

 あたしはみんなに声を掛け、ポーチから小さなショベルを取り出して地面を掘る。

(あった……)

 構造はシンプルだった。あたしは慎重に装置を解除する。

「ふう……」
「大丈夫なの?」

 カズミ姉ちゃんが一歩踏みだした。

(え?なんかおかしい……)

 手応えはあったが……なんか変だ。

(まさか……ダブルトラップ?!)

 起動装置を解除すれば、新たな起動装置が働き出す二重の罠。

「カズミ姉ちゃん!動かないで!」

 あたしの言葉と同時に、カズミ姉ちゃんの足が地面につく。

──カチリ

 あたしの身体が一瞬浮遊感に包まれる。

(これは……シュート?!)

「マルティナ! 身体強化フィジカルブースト!」

 ヒロヤ兄ちゃんが凄い速さで駆け出し、あたしに手を伸ばす。
 あたしも手を伸ばしたけど、届かない。
 そのまま飛び込んでくるヒロヤ兄ちゃん。

「──!」

 (あたしだけじゃなく、ヒロヤ兄ちゃんまで……)

 やがて視界は暗闇に包まれた……

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ヒロヤ!」
「マルティナ!」

 みんなで駆け寄るが、既に地面に穿たれたはずの穴は塞がっている。

「……シュートか……恐らくは下の階層に落とされたね……」
「いやぁぁぁ!ヒロヤ!ヒロヤぁ!」
「カズミ、落ち着いて」

 れなはカズミを後ろから抑える。

「私が……動いたから……ヒロヤが……マルティナが……」

 カズミが涙を浮かべる。

「カズミのせいじゃないよ」

 れながカズミを抱き締めて宥めてあげたけど、涙は止まらないし、小刻みに震えている。

「大丈夫ですよ……少なくともヒロヤさんは生きてらっしゃいます」

 そう言って、下腹部を撫でるドロシー。そっか、ドロシーにはわかるんだね。

「早く下に降りる階段探さなきゃ!」

 アルダが前に進もうとするのをリズが止めた。

「……焦っちゃだめだ。まずはどうするか考えよう」
「なんで?!急がなきゃ!」

 エルダもアルダについて前に進もうとする。

「だめだよ!」
「「「なんで!」」」

 三姉妹の抗議に、ゆっくりと首を振るリズ。あぁ……そうだ。ここは考えどころなんだ。

「マルティナはアタイ達の『目』だったんだよ?それが欠けた今、闇雲に進んじゃいけない」
「メルダ達が居る!洞窟なら……」

 叫ぶメルダの肩を掴んで、もう一度ゆっくりと首を振るリズ。

「ソレだけじゃないよ……アタイ達は『パーティー最強の近接戦闘力』を喪失してるんだ……」

 リズの言葉に、全員がハッと息を呑んだ。

「そう。このままれな達だけで進むのは……ましてや下の階層に降りるのは……リスクが大きいのよ」

 れなが苦しそうなリズの言葉を継いだ。

「少し……考える時間をくれないか……」

 リズが苦しそうにひとこと言ってその場に座り込んだ。
 れなは、泣きやまないカズミの背中を擦って上げる事しかできなかった。
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